眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

惰性コーヒー

2023-06-26 20:51:00 | コーヒー・タイム
 コーヒーには代わりがないのだろうか。僕は本当にコーヒーが好きなのだろうか。ふとした時に疑問は湧いてくる。2時間持つというコーヒーは何リットルもあるのか? 本当に好きならすぐになくなるのではないだろうか。好きな漫画や小説を一気読みするみたいに止まらなくなるのではないか。本当はそんなにも好きではないのかもしれない。
 毎日毎日、好きでもないのにつき合っているのか? だったらあまりに馬鹿らしいから好きである必要があるのではないか。今更嫌いになるわけにはいかない。他に行くところがないではないか。コーヒーとポメラがあれば落ち着ける。落ち着いているのに時間は早くすぎる。時間は不思議だ。
 ふとした瞬間など存在するのだろうか。最初から全部組み込まれているということはないか。時々そのように考えることもある。


「発車まで5分ほどお待ちください」

 それでさえただ待つとなると長く感じられる。時間は意識するきつくなることがある。

「まだ15時か」
 退勤時間を気にしながら時計を見ているようでは、時はなかなか経たないだろう。
「もう2時か」「もう3時か」
 眠れない夜に時計の針だけが進んでいくのも苦しいものだ。
「もう7時か!」
 一度も時計を見ずに(意識せずに)一気にまとまった時間を飛び越えるのは、充実している証拠だ。布団の中でそうなったのなら熟睡できたということで、理想的な睡眠と言える。


「塩麹をつけて冷蔵庫で3時間ほど寝かせてください」

 3時間?
 初めてそれを聞いた時、僕は地球の外に放り出された時のようなめまいを覚えたものだ。3時間は長すぎる。確かに3分と比べればあまりにも長い。だけど、ずっと意識する必要はない。覚えておくことはない。冷蔵庫の前で正座して3時間待ち続けなくてもいいのだ。一旦冷蔵庫に入れたら忘れていればよく、忘れてから思い出せばいいのだ。上手く忘れることができれば、3時間などないに等しいとわかる。

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惑星ランナー

2023-06-26 02:27:00 | グレート・ポメラーへの道
「私がいたところでは何もかもが落ち着いていて、緩急というものがなかった。こうして追い立てられたり、行き詰まってしまうのも悪くはない。元には戻れなくても、私はここに来たことを楽しみたい。力を失った自分にできることを今は探したい」

 ここは本当に地球なの。
 ポメラとの距離が100万キロほど開いていた。好きなものを前にして指が止まることが恐ろしかった。紙とペンを使って下書きを殴り書きしている。(きれいには書けない時もある)
「中途半端に飲みたくない」
 ランチには決まってコーラを飲んでいた。あの日のおじさんの言葉が理解できた気がした。一度ポメラが開いたらとことん打ち込みたいのだ。ポメラがいない間、自分が失われていく不安が募る。想像することができなかった世界。僕は僕だろうか。クリエイティブだろうか。誰が知るだろうか。夢かもしれない。地球にはまだ夢がある。

 スタート地点は山の頂上にあるというので、皆嫌がっていた。スタッフも、観客も、選手もだ。走り出す前に体力を吸い取られてしまうようで、馬鹿げている。きっとよい記録は出せないだろう。そう思うとなぜか気楽でもあった。

 もうすぐカテゴリ・バスがやってくる。バスを待つ人々の前で、僕はまな板小説のあらすじについて語っている。彼女はまな板の上で葱を切る。葱を蓄えることが彼女のサイクルであり生き甲斐にもなっていた。けれども、彼女が消えた瞬間、まな板は掲示板と誤認され心ない書き込みに彼女の聖域は荒らされてしまう。少年と彼女の交わることのない闘いが続く。彼女は強く葱を切る。葱を切ることは道を歩くことにつながっている。ある時、彼女は葱を切る仕草を責められる。男はまな板にされたことに憤っている。なぜなら、それは言葉の受け皿だったからだ。
 自作にいついてなら遠慮なく語ることができる。バスがやってきた。僕は乗ることができなかった。ここにいるのは選ばれた人々だった。

 マラソンのコースは電車の中を通っていた。逆行して走るため、観客はみんな逆を向いていた。すれ違うワゴン・ロボットが毎回コップをこぼすのを、僕は手助けしてしまう。ロボットは少しはにかみながら、申し訳ないという顔をする。
「いいんだよ」ほっとけないよ。
 タイムが削られて行く。けれども、その行いは観衆の信頼を集め、後に大きな成果を生むのではないかと囁かれている。
 改札を抜けるとカテゴリの神さまが横を走っていた。

「何が足りないのです?」
「数えきれるようなものではない」
「例えば何です」
「例えようもない。たどり着くゴールを探しているのか」
「それがみんなの物語でしょ」

「足りない何かを探すより欲しいものを1つ見つければいいだろうに」
「その何が違うと言うんですか」
「次元だよ」
「このルートは合っていますか」
「ここに来るのは早すぎたようだな」

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