最終回を見逃してしまった後味の悪さを私は未だに忘れることができない。あの頃はティーバーなんてなくて、一夜は一夜の内にしかなかったのだ。終わりよければすべてよし。どれだけ途中を楽しめても、結末が収まらないのはずっと胸の奥にわだかまりが残ってしまう。
私にとっての理想のコースは余裕を持って最後のお茶漬けにまでたどり着くことだった。そのためには計画性が大事で、自分の器を見誤ってはならない。本日は前菜のキノコからして嫌な予感がした。大食漢ならば満足するような皿ばかりではないか。まともに相手をしていては最後まで持つまい。私は決断を迫られた。
「この小芋の煮っ転がしは猫たちへ……」
(絶対にゆずらなければならないものがある)
「いいんですか? メインなのに?」
驚いてシェフを呼びに行こうとするウェイターを呼び止め、猫たちへの愛を語ることでごまかした。私にとってはメインよりお茶漬けの方が大事だ。
猫たちは夢を中断して突然の贈り物を受けた。その意味を正確に受け止めたものは誰もいなかったようだ。
煮っ転がしを仲間内で頃がしながら、新しいゲストの下へ運んで行った。
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