Danny Boy♪
ビル・エヴァンスの夢見るような演奏だ。
一応、アイルランド民謡ってことになっている。
本日の食材で、米国産豚肩ロース。

アイリッシュ・シチューを作る。
本来ならマトンかラムを使いたいところだ。
しかしそれはないので、豚。
あとはタマネギ、ニンジン、メークイン、パセリ。

男爵なんかはダメよ。ここはメークインでないといけない。
それも皮つきで調理。
煮ること100分の長丁場だからね。男爵じゃ崩れてしまう。
小さい鍋を用意しましょう。

小さい鍋に食材をギュッと詰めて、まったく動かさず、そのままただ煮て100分。
動いてはさすがのメークインも崩れそうなので、小さい鍋がいいのだ。
タマネギ。

ニンジンも切って、メークインも切って。
さらに豚肩ロース。

美しいねえ。
アメリカからようこそ鎌倉へ。
頂きます。
切れた。

これで用意が整った。

それをご覧のように詰めて行く。

ギュッとね。
マギーブイヨンをお湯で溶いておく。

パセリは適当にちぎって洗う。
食材が全部詰まったら、そこにマギーブイヨンを溶いたものを注ぎ、パセリを置いて、1枚の月桂樹を置く。

煮たてたら、超弱火にして蓋して放置。

もう何もしない。
鋳鉄製で蓋まで激重いストウブだから、火を弱く調整したら、蓋をしたまま長時間放置して煮続けることが出来る。

そこがストウブの良いところ。
ドガティ君は朝ごはんを食べたが、夕ご飯までの間、またお腹が減るらしい。

これが我が家の空気清浄機。

壊れてしまって、メーカーさんから新品がやって来た。
無料交換で良かった。

ドガティ君はお腹が減ったまま、寝る。

この料理は何もする必要がなく、時々蓋を開けて調整するくらいなので、もはや酒を飲むくらいしかすることがなくなる。

あるいは読書か。
最初は灰汁くらいは取ろう。

この灰汁が取りにくいのだ。
なにせギリギリまで具材がギュッと詰まっており、それを動かしたくないからね。
で、また蓋する。

退屈だ。
ここで読書。リンボウ先生のイギリスはおいしい。

この30年ほどの間に、これを読むのはおそらく3度目だね。
今回は順番に少しずつ読んでいるので、やたら時間がかかる。
いまだ読了せず。
寒いので薄いセーターの上にカナダ製のカウチンを着ている。

お高いカウチンだ。
でも七里ヶ浜のフリマで買った中古品だから、たしか2,700円くらいだったと思うんだよねー。
中古品が大好き(笑)。
英国人がベーコンをただオーブンで焼いてメイン・ディッシュにする話をリンボウ先生が書いている。

文章が本当に上品だな。
おぉ~煮えて来ている。

パセリと月桂樹がとても良い香りを出す。
蓋を閉めて煮始めたら、何もやらなくてよい調理と書いたが、まだやらなければならないことがあるということに思い至った。
マフィンを二分割するという仕事があったのだ。

そしてそのマフィンを焼かなければならない。
さらに、最後にアイリッシュ・シチューにかけるパセリのみじん切りという作業もあったのだ。

キッチンがとてもいい香り。

味みしてみる。

油はまったく使っていないが、豚から脂が少し出ているね。
それで十分。
よく煮えている。

間もなく出来上がりだ。
やっとあとがきに来たぞ。

イギリスはおいしいと言う本のあとには、イギリスはおいしい2という本が出ている。

しかしこの本はリンボウ先生ディープ・イングランドを行くという本の焼き直しだ。

そして私はかつてそれを読んでいる。
しかし今また改めて、その焼き直しであるイギリスはおいしい2を読もうとしているところだ。
煮込み時間があまりに長いので、妻は待ちくたびれている。

あとは塩、胡椒で適宜調整すればよい。

モルドンの塩があるよ。右が普通ので、左が燻製塩だ。
すごくおいしい。
イギリスはおいしい2には、「家の観察」という章がある。

彼の国では家を数百年なんて単位でもたせることはザラであり、そのスタイルも確立して・・・なんてことが書いてあるのだ。
羨ましい話だ。
例えば、これ(↓)。
コッツウォルズ地方の家だけれど、これが正にそれ。

【Source: フリー画像】
あまりに美しい。これは飛びぬけて美しい方だが、ここまで行かなくても、彼の国の住宅街はとても美しい。区画の細分化が起こらないこともあろうが、スタイルが確立され、普通のつくり方で昔からの建材と構法で建てられた家が長期にわたり維持されていることがうまく作用している。家と周囲の環境が長い歴史を経るうちに溶け合い、景観全体が調和して、ますます価値を上げる。
翻って我が国。次々と「新しい建材」「新しい構法」とハウスメーカーや建材メーカーが言うシロモノが生まれ、そのはやりがあって、時に奇抜なデザインの家が作られ続けるが、平均して30年サイクルで早くもそれらは物質的にあるいはデザイン的に劣化して、コロコロと建て替えられる。その頃には古家付き土地の古家部分はほぼ価値を持たず、どうせ多くは更地になるので家があるだけ却って厄介だったりする。斯様にあちこちで絶えず敷地が分割されたり、建物自体が建て替えられ続けていては、家と周囲の環境が定着して景観が調和し、自然と溶け合うなんてことは不可能だ。
人口が増え続けているならそうなることもまだわかるが、世界的に稀な速度で逆方向に動いて世帯数まで減り始めている日本のほとんどの自治体で、なぜこんなことになるのだろうねえ。あまり賢い国とは思えない。
完成だ。

お肉も柔らかく、野菜は適度な固さをまだ保っている。

カリッと焼いたマフィン。

おいしいなあ。
胡椒を振りかけて、食べましょう。

この野菜や肉の食感、わかりますかねえ。
油は使わずして、豚から適度に出る脂がちょうどいいね。

でも「ただ煮ただけ」(笑)
最も怠惰で長丁場で退屈な調理方法である。
ドガティ君はこのアイリッシュ・シチューが欲しいらしい。

無視して食べ続ける。

諦めて寝るドガティ君。

さようなら。よく寝なさいね(笑)。