この1ヶ月、かなり基礎的な部分を重視してきました。意識する部分に関しては極力シンプルに。元々あれもこれもやりたいタイプなので取捨選択は非常に難しい。基礎段階を徹底してやるので時間がかかります。1ヶ月間で120mを走ったのは1本だけ。極端すぎるという気もしますが。
グランドのこともありショートスプリント中心に練習を組み立てています。せめて200mまでは走れるようにしたいなとは思っていますが。走る練習を増やす前に「やりたいこと」を徹底するというところに時間とエネルギーを割く。
そして練習の理解。難しい話は最小限にする。それでも「なぜこの練習をするのか」に対する理解をしてもらわなければいけない。根拠なき練習は不要だと思っています。時として根性練習のように走り込むことも必要になりますが、基本は「コンセプト」に沿ったものでなければいけない。そう考えると「練習での強さ」と「レースでの強さ」は別物になるのかなという気はします。
講義で「慣性の法則」について話をしました。イメージとしては「電車の中」が多いと思います。電車で吊革につかまっていて、止まったら身体が前方向に動くというやつですね。「動いているものは動き続けたい」というもの。動き続けるために邪魔になるのは何か?そこを考えると「やるべきこと」は明確になると思います。
「動く」という部分に関しての「慣性の法則」はイメージしやすい。が、「動かない」事に関してはあまり議論されません。「物体は外から力が加わらない限りその場に留まろうとする」というのがあります。これも物体は今置かれている状況を変えたくないのです。人間と同じなのかもしれないですね。
周りが何かをしているので何も考えずにその流れに乗って行動する。これはかなり楽に動けます。自分が主体にならずに周りに動かしてもらってやる。力は使いません。何もやらない。これはその場に止まっているのだからエネルギーは使いません。周りの状況がどうであれ動かないのだから。そう考えると「慣性の法則」というのは物事の真理を突いているのかもしれないですね。
話を戻して。「外から力が加わらない限りその場に留まる」というのはスプリントに関しても同じ部分があります。最初投げかけた時には理解ができませんでした。「慣性の法則」が分からないのか、私の質問の意図が分からないのか。その辺りはよく分かりませんが。スプリントの局面にもこの部分はいえます。
重心移動がない場面。スタートです。ここでは大きな力を発揮しなければいけない。パワーポジションについてしつこく話をしていますがこの辺りは繋がってもらいたい部分です。スタートに関しては議論の余地があると思っています。適当にスタートをする指導者もいます。これは理解が浅いからではないかと考えています。失礼かもしれませんが。「やっていたら速くなる」の延長。私は嫌ですが。
スタート局面。考え方が幾つかあると思います。つま先をするようにスタートする選手もいます。ここは明確な理由が私には分からないので何とも言えません。以前議論になったことがあります。「1歩目は速く着く」という人と話をしました。膝が開いてつま先を擦るように一歩目を持ってくる。他県の指導者に教えてもらったということでした。それは理由としてどうなのか?意味があるからその動きをするのではないか。平行線だったのでそれ以上のことは言わず。
私は一歩目は膝を締めて大きく動く方がいいと思っています。主流ではないのかもしれませんが。後ろ足を畳んで前方向に引き出す。膝が開くと慣性モーメントが大きくなるので遅くなる。さらに力の方向定まらない。膝を締めてしっかりと力を加えて重心の移動を生み出す。「慣性の法則」に従えば「動いている物は動き続けたい」のですから最初の段階で重心が大きく動けばその後も動き続けることができるという考え方です。
そうなると「膝締め」が大切になってくる。膝が開いて持ってくると一歩目が着いた時に明らかに角度が悪くなります。地面に力を加える部分ができない事に加え身体が起きてしまう事になる。「前傾を保つ」と言いながらも膝が開く事で「前屈」になる。身体のラインが保てなくなるからです。
更に膝が開くと一歩目の接地のポジションが悪くなる。間違いなく前接地になります。膝 角度が悪く更にブレーキがかかるので身体が起き上がる原因となる。私にはメリットが見つけられません。速く着く事で最初の数メートルは速いのかもしれませんが「加速」という意味では早い段階で加速区間が終わってしまうのではないかなと。
「慣性の法則」というごく一般的なモノにスプリントを当てはめる。膝が開いて一歩目が重心よりも前になれば「動き始めたモノ」に対して再びブレーキをかける事になる。そこは避けなければいけないのではないか。一流選手がやっている動きだからそれをやるという流れではなくそこに「根拠」が存在しなければいけないのではないか。そういう視点から見ていくと本当にやるべきことは何かを考えることができる。
コンセプトについて書こうと思っていたら一部分だけで長くなりました。他のことはまた別に書きたいと思います。頭の中を整理したいと思います。