
ある晴れた日に第222回
「お父さん行ってきます」と出かけたり新年より月給500円の君
「木が3本で森ですよ」と君が言えば「では2本では何ですか」と散髪しながら小林君が訊ねる
最愛のあなたの息子が障がい者ならホーム建設に反対しますか?
生れし子のすべてが障がいを持つならば初めて人は優しくなるだろう
わが息子が描きしわれの肖像画遠き亜細亜の草莽の民
十年に一度、百年に一度の台風が次々に襲い来る年なりき
わたくしの大好きな日本男児が一心不乱に走っている
私が歩けば私の内なる祖父も一緒に歩いている
我が家の屋根の上で背伸びした棟梁が、次はあの家を直そうと呟きたり
生まれて初めて青蚊帳の下で眠ると大騒ぎしている青ゐけ家かな
誰ひとり弾く人のいなくなりしピアノの蓋を開けておくかな
この木はトビこの電柱はカラス鳥たちも張り巡らす防空識別圏
なんじゅうんねん働いてきた御褒美に朝七時まで眠っていられる
地球人みんな自己中で地球をぐるぐる引っ張り回すので地球は目を回している
人よりも猫可愛がる小春かな
でんでん虫のその歩みもて冬生きる
十年の年賀状を捨てる松の内
春の風静かな海と楽しい航海
爺と孫餅搗きする目出度さや
孫の無き夫婦で過ごす松の内
我が家よりよく陽の当たる墓場かな
飛行機雲は消して見ており冬の空
激流を小さき魚遡りゆく
松の内去りゆく頃の別れかな
出す訳も出さぬ訳もあり年賀状
止めんとしなお止め難かりき年賀状
直筆のなき年賀状の冷たさよ
なにゆえにハンミョウを有毒という毒々しけれど無毒の昆虫なるに 蝶人