あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

リュック・ベッソン監督の「サブウェイ」をみて~「これでも詩かよ」第74番

2014-04-12 03:53:34 | Weblog


ある晴れた日に第223回&闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.635


ビヤンヴニュ! 
ようこそモンパルナス・ビヤンヴニュ駅へ!
ようこそ黄泉の国へ!

地下鉄に轢き殺された人たちは、みな地下鉄の下に隠れ住んでいた。
ACミランの本田選手のように黄色い髪の毛のクリストフ・ランベール、
蒼ざめた頬のイザヴェル・アジャーニ

颯爽とローラースケートで疾走するジャン=ユーグ・アングラード、
花売り男のリシャール・ボーランジェ、
そして激しくドラムを叩くジャン・レノ

彼らは黄泉の国の住人となって、地上と地下を行き来していたのである。
この世のはずれ者たちを懸命に追う素っ頓狂な刑事や警官も、みなこの暗黒の地下室に寝起きしながら、朝から晩まで意味不明のおっかっけっこをして遊んでいる。

ああ、またしてもメトロの急ブレーキの音が聴こえる。
猛烈なスピードで走っていたバットマン刑事は、追跡の職務を放棄して、その場で立ちすくむ。

火花を発した鉄の輪が悲鳴を上げて静止すると、また一人の新人がこの闇の国の住人となる。それは男か女か。若いか年寄りか。
敵も味方も息を凝らしてその人物が姿を現すのを待っている。

ああ、どんどんどんどん人死にがでるね。
安西マリアも安西水丸も死んだ。「東京の地霊」の鈴木博之も死んだ。
伊勢丹の元バイヤーも死んだ。クラウディオ・アバドも死んでしまった。

明日もまた有名無名の人々が死んでゆくのだろう。
そうして人々が地上から姿を消すにつれ、
地下の黄泉の国はますます賑やかになってゆくのだ。

ビヤンヴニュ! 
ようこそモンパルナス・ビヤンヴニュ駅へ!
ようこそ黄泉の国へ!


なにゆえに今年の春はまだ来ない我が家の桜がまだ咲かぬから 蝶人
コメント
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