ある晴れた日に第216回
通りすがりに子供の頭をポンと叩きしポンタのおじさんいずこへ行きしか
腕時計を久しぶりに身につけるお前はずっと私のために動いていたのか
1万円の赤いデジカメが壊れたので9千円の若草色に買い替えました
その昔鎌倉に台湾リスを放した奴お前のお陰で小鳥は大被害
全身を針で武装せる樹がありて近よればブスリと刺すなり
電車の中で本を読んでいたら頁の上に誰かの毛が落ちたよ
平成の少年の顔の奥に棲む昭和、大正、明治の人々
タンポポの花が一輪咲いている 世界一弱い国でいいじゃないか
ヨハネの首がお盆に盛られたような月が不気味に輝く夜、無数の星々に混じって星と同じくらいの大きさのホタルたちが夜空に舞っている。
自動車も猫も蛇も利用する道路なり
神仏もまた中国から渡来したり
朝顔はその日限りの命なればよく咲いたねと声掛けるべし
大いなる山を潰して聳え立つすべての墓に夕陽差したり
それがまた一同を不快にしてしまうのさ昼下がりの教室自同律の不快
日銀からお金じゃぶじゃぶ垂れ流し景気がよくなるなんてそりゃアベノリスク
チーヒー、チー0h-イと高らかにさえずる鳥よお前の名前はなんていうの?
必ずこの服でいいのと外出の時に尋ねる私の妻よ
平成をぐいぐいと消し去りて2013年と書きし人かな
「死んでしまったんじゃないかと思って見に来たの」と妻がいう長すぎた昼寝
2年前の震災の悪夢思い出し今日は施設へは行かないと息子はいう
幼き日ヘ短調で鳴りしドイツ製の柱時計の調べわが耳にのみ響く
この分量なら洗濯剤はこのくらいというように外交の目盛を作るとよいのだが
ラジオから流れ来る「蛍の光」さまざまな別れ思い出しけり
長々と布団に腹ばいて動こうともしないなにを考えているのか私の長男
基督教徒のくせに法華経旅館に泊まる小太郎爺目の色変えて銭を数える
窓を開ければ巨大な岩から湧水流れる真っ暗な部屋なり
家康が秀頼さんにガンつけた方広寺国家安康の鐘のみブラリ
京都駅より東山七条めがけて坂を登ればOh Yeah! 進駐軍の兵士が立っていた
つかまえしモンキアゲハの胸押せば殺されてなるものかと押し返す蝶の意気地
明るさは滅びの姿か太宰になりきり夜の銀座歩く
ビニールまたビニールされどどのビニールも勿体なくて捨てられない
前のメールを消さないでその上にまたメールを書く人の無精と礼儀知らずよ
父も母もわれも心臓病で世を去りぬ余もまた狭心症の身なればアンジェリーナ・ジョリーの乳房痛し
すでに見た映画の名前も内容も思い出せない哀れなわたし
砂上の楼閣のごとく日々くずれ行くなりわが脳内のウキペディア
我が死ぬはなんでもないがこの世から君が消えてしまうと思うだにつらい
複数の録音を同時に聴けばいままでに聴いたことの無い音が聞こえてくる
なにゆえに短歌入選で葉書10枚プレゼントこれが朝日と日経の違いか 蝶人