茫洋物見遊山記第188回 鎌倉ちょっと不思議な物語第354回
鏑木清方の旧邸に建つ美術館で、清方の多彩な表現を楽しむ「秋の情趣展」を鑑賞しました。今回は「孤児院」という珍しい題材の大きな日本画に接してちょっと驚きました。制作されたのは明治35年ということですが、当時はとても珍しい社会福祉施設だったと思われますが、それゆえに画家の好奇心が動かされたのではないでしょうか。
おそらく孤児たちの教育を担当するであろう若く美しい女性が描かれているのですが、その華やかな衣裳(トップスは着物でボトムは緑色のロングスカート)と足を無造作に投げ出したポーズがちょっとこの場になじまない感じで、そこが面白いと思いました。
ちなみにこの年清方は24歳、夏目漱石は倫敦にあって精神衰弱の噂を立てられており、9月には根岸の子規庵で正岡子規が34歳の若さで亡くなっております。鏑木清方は、なんと94歳の天寿をまっとうしたのでした。
なお本展は来る月10月18日まで閑古鳥鳴く鳴く開催中。
なんとなく先逝く人が羨まし日に日に近付く嵐思えば 蝶人