あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

池澤夏樹編・河出書房日本文学全集「近現代作家集Ⅰ」を読んで

2017-04-15 12:36:41 | Weblog


照る日曇る日第961回


本書に収録されたのは、久生十蘭「無月物語」、神西清「雪の宿り」、芥川龍之介「お富の貞操」、泉鏡花「陽炎座」、永井荷風「松葉巴」、宮本百合子「風に乗って来るコロボックル」、金子光晴「どくろ杯(抄)」、佐藤春夫「女誡扇綺譚」、横光利一「機械」、高村薫「晴子情歌(抄)」、掘田善衛「若き日の詩人たちの肖像(抄)」、岡本かの子「鮨」の12編です。

明治以降昭和初期までの文学作品を「もっぱらモダニズムの尺度から」セレクトした「傑作、名作」と編者は自負していますが、じつに読み応えのあるラインンアップですね。

スタンダールの「チェンチ一族」を換骨奪胎したという「無月物語」、切れ味抜群の「お富の貞操」、哀切極まりない哥沢節が身に沁みる「松葉巴」、青春の流転の歯車が軋る「どくろ杯」、鰊漁の労働現場のリアルを徹底的に抉った「晴子情歌」もさることながら、神西清「雪の宿り」の教養ある彫琢の名文、掘田善衛「若き日の詩人たちの肖像」の歴史の中の個我を適切にレイアウトした広角構想力が素晴らしい。

これは本シリーズ終盤の思いがけない実りある落ち穂拾いとなりました。


   85歳にて松本俊夫氏身罷る共に作りしCM懐かし 蝶人

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