あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

岡崎京子著「エンド・オブ・ザ・ワールド」を読んで

2018-06-11 10:24:57 | Weblog


照る日曇る日 第1078回 

1994年に祥伝社から発行されたこの本には、表題作を含めて「VANPUS」、「ひまわり」「水の中の太陽」「乙女ちゃん」の5つの短編が収められていて、どれもそれぞれに面白いとしか言いようがないが、本書に見るかぎり、作者の脳裏を過ぎった映画のタイトルやその意匠にヒントを得て創作に入っていくという、やり方をしているようである。

表題作はD・リンチの「ワイルド・アト・ハート」、「情婦マノン」、D・バーンのの「トゥルー・ストーリー」などの映画や画集、写真集などを「パクって」制作したと告白しているが、確かにそういわれて見直せば、そういう形跡はあるが、かというて、それらの単純なコラージュであるはずもない。

ばらばらの参考資料に準拠しながら、それらを大胆不敵に編集し直し、引用原典のいずれにも帰属しない、独自の映像世界を立ち上げる早業は、彼女以降の漫画作家が、誰一人なしえなかった異色の作画法だが、それゆえにもたらされる、ある種の軽薄さと疾走感も、あらかじめ聡明な作者によって計算されていたに違いない。


 かくすればアベ喜ぶと知りながらダミーを選びしニイガタの民 蝶人
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