照る日曇る日 第1624回
細川家の家臣で越中守忠利、肥後守光尚の2代に仕えた都甲太兵衛の逸話を記した短編である。彼の最大の逸事はひとつは難攻不落の原城への一番乗り、その2は江戸城修理の石材の盗難であるが、その他に小倉滞在中の宮本武蔵から異数の人物評価を受けた噺が面白い。
武蔵が越中守忠利とはじめて謁見した折りに、忠利が「当家の侍のうちで逸物はおるか?」と尋ねると、武蔵は諸士の控所にいた太兵衛を連れて来て、「只今一人見受けました」と答えた。
忠利が太兵衛に「何ぞ覚悟の筋があるなら申せ」と訊ねると、太兵衛は「わたくしは、人は据物で何時でも討たれるものじゃと、思うておるのでございます。いつでも平気で討たれる心持に、なるのでございます」と答えたので、武蔵が引き取って忠利に「お聴きになりましたか。あれが武道でござります」と言うたそうだ。
3匹のメダカが次々死んでゆき君らは我らの身代わりとなった 蝶人