先日、仕事で久しぶりに情けないというか悲しくなることがあった。嫌なことは早く忘れたほうがいいのだが、このタイトルに目がとまった若い臨床医の役に立てばと思い、書き残しておく。
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レジデントが悲しそうな顔で、「(コロ健)先生、この患者さんのことで相談があるんですけど」といって、病理標本を持ってきた。
時々、臨床から持ち込まれる他所の病院で手術された組織から作られた標本だった。
少しの間、顕微鏡で標本を見てから、「これって、どこから取ってきたもの?それに、そもそも、この人(患者さん)何歳、というか男?女?」
レジデント「それが・・・」などと、口ごもっている。
コロ健「クイズじゃないんだから、臨床情報が無ければいったいなんなんだかわかるわけないじゃない」標本だけ持ってこられても、何もわかるわけがないのは、レジデントも知っているはず。
レジデント「そうなんです、私もそう思って、この標本の診断の申し込みをしてきた担当の先生に問い合わせたんです。
そうしたら、『詳しいことはよくわからない』って、言うんです。ああ、若い男の人だとは言ってました。30才くらいとか。」
コロ健「え?一体どういうこと?じゃあ、診断できるわけないじゃない。そう言った?」
レジデント「ええ。臨床情報が無ければちゃんと診断できないって、言ったんです。そうしたら『先生は、診断だけしてくれればいいですから』って言い返されたんです。仕方ないと思ったので、そのまま電話、切りました。」
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その担当医というは医者になって6、7年目ぐらいらしい。まあ、その年限だと研修が終わって自分は何でも知っています、みたいな感じで怖いもの無しのようなところなのだろう。
知らないことは無いので、自分がすでに医療の最先端をいっているような気になってしまう。
そういう医者からみると、病理診断なんて検査の一つ、機械にかけて出てくるデータと同じようにしか見えないのだろう。
たしかに経験を積んだ臨床医にもよく「病理診断の結果というのは、患者さんに関する多くのデータの一つに過ぎません」という人がいる。それでも、その医者が手術までのデータをきちんと臨床情報をこちらに渡してくれていれば、なんと言おうが私たち病理医に不満は無い。プロ同士なのだから、相手がどう取ろうがそんなの勝手だ。
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だが、くだんの担当医は、病理医にクイズのようなことをして、自分に落ち度があるなどということに考えは全く至っていない。
こういう医者にかかると、看護師などのコメディカルも苦労するだろうし、患者さんも苦労しそうで気の毒だ。
幸い、その上司はまともな人で、詳細はその上司に相談してことなきを得た。
こういうことは、医者なんてやっていると大なり小なりしてしまいそうだ。自分ばかりが何でも知っていて、なんでも出来ると思ってつけあがったりしないようにしなくてはいけない。
もちろん、不肖コロ健もである。