空気は冷たいけれど、青空が気持ちいい。
フラットコーテットレトリバーのナイトは、自力ではほとんど動けなくて、昨日からお腹で荒い息をしている。
昨晩は娘が添い寝した。ナイトが夜中におもらしをしてしまったとかで、一人で随分頑張って世話をしてくれたそうだ。
もう、ヘトヘトの妻と娘を出かけさせて、私とマルチーズのコロとでナイトの面倒をみることにした。
コロはナイトの調子が思わしくないことがわかっているのか、付かず離れずいてくれる。
コロはさっきまでナイトのそばで日向ぼっこをしていた。十分お日様を浴びて気が済んだのか、コロがどいたので、今度は私がここにきてこの記事を書いている。日差しが暖かい。コロは家の中で一番気持ちのいい場所を知っているのだ。
ナイトの手を私の膝の上に置いている。手も足もほとんど力が入らないようで、腕を持つとブラブラさせるばかり。まだ、9歳だから、体格もまだまだいいし、毛艶もいい。それでも、がんはコントロールできなかった。
からだを撫でてやっていると、少し呼吸の調子が変わる。まだまだ私のことがわかる。
”いいこだね”とか、”グッドボーイ!”などと褒め言葉を耳元で囁いてやるのだが、そうしていると、元気だった頃の思い出が次々と湧いて出てきて、泣けてくる。
「みんなと一番一緒にいたいのは、ほかならぬナイトだよ」という娘の言葉はそうだと思う。命あるもの、少しでも長く、愛する人と一緒にいたいと思うはず。
ナイトは犬だから、わたしたち人間とはまったく違うだろうけど、この子はこの子なりにそんな思いをしているのではないかと、ナイトの冷たい手を握りながら私は考える。
命ある限り