これでいいのか 温暖化対策・中期目標③
偽りの「省エネ世界1」
温暖化対策の負担を公平にすれぱ、日本は1990年比で温室効果ガスを1%増やしても、2020年には先進国全体で25%削減できる(選択肢②)1政府が示す中期目標の選択肢の多くは、こんな、日本に好都合な想定で決められています。国連の会合で確認されている「25~40%削減」の最低水準は満たせるとの算段です。
それは、①日本は世界一の省エネ国で、同じ量の温室ガスを減らすにも他国より経費がかかる②各国の負担を公平にするには「限界削減費用」
で比較すべきだ―との主張を前提としています。これらは根拠があるのか。
購買力平価では
「考えてみませんか?私たちみんなの負担額」-3月17日付各紙に日本経団連など財界58団体の全面広告が載りました。1億円かけたとされる広告の最大の“売り”は、「日本は世界トップレベルの低炭素社会」です。
06年の国内総生産(GDP、2000年基準為替レート)あたりの二酸化炭素排出量は、日本が0.24キロで、欧州連合(EU)27ヶ国の0.42キロを下回るというのです。
「地救ふおーらむ」分科会で報告した環境省の寺田達志地球環境局長も、日本が世界で最も省エネ国である証拠を問われ、GNP(国民総生産)あたりのエネルギー使用量などを挙げました。
これに対して環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、▽GDPを購買力平価で比較すれば日本がより省工ネとはならない▽産業部門のエネルギー効率で日本はEUだけでなく米国にも劣る―と指摘。日本で省エネが進んでいるのは、国民が寒いのを我慢する「貧エネ」の家庭部門と、満員電車に頼る運輸部門だけだと述べました。寺田氏から反論はありませんでした。
各国から疑念も
「日本は世界一の省エネ国」との前提で、低い削減目標を合理化するために持ち出されている理屈が、「限界削減費用」です。
限界削減費用とは、省エネが最も進み、温室ガス排出量1トンを減らす費用が一番高い国でXドルかかる場合、Xドルまでの対策は各国がすべて実施し、負担を公平にするという考え方です。日本では「乾いたぞうきんを絞る」ようにしないと減らないが、さほど省エネが進んでいない国は同じ経費で多く減らせるといいます。
政府が示す選択肢③では限界削減費用を130~187ドル、⑤は285~295ドルと想定。③の場合、この経費で日本は7%しか減らせないが、EUは26~27%、米国は23~24%減らせ、先進国全体では25~29%削減できると計算しています。
限界削減費用を推奨する人々は、これが最も現実的だと言います。しかし、これほど身勝手な論理が国際交渉で受け入れられると想定すること自体、非現実的です。各国の負担の公平の指標としては、歴史的な排出量や国民一人あたりの排出量などもあります。日本の主張は交渉不成立が狙いだとの疑念が出かねません。
(つづく)
【しんぶん赤旗日刊紙より転載】
偽りの「省エネ世界1」
温暖化対策の負担を公平にすれぱ、日本は1990年比で温室効果ガスを1%増やしても、2020年には先進国全体で25%削減できる(選択肢②)1政府が示す中期目標の選択肢の多くは、こんな、日本に好都合な想定で決められています。国連の会合で確認されている「25~40%削減」の最低水準は満たせるとの算段です。
それは、①日本は世界一の省エネ国で、同じ量の温室ガスを減らすにも他国より経費がかかる②各国の負担を公平にするには「限界削減費用」
で比較すべきだ―との主張を前提としています。これらは根拠があるのか。
購買力平価では
「考えてみませんか?私たちみんなの負担額」-3月17日付各紙に日本経団連など財界58団体の全面広告が載りました。1億円かけたとされる広告の最大の“売り”は、「日本は世界トップレベルの低炭素社会」です。
06年の国内総生産(GDP、2000年基準為替レート)あたりの二酸化炭素排出量は、日本が0.24キロで、欧州連合(EU)27ヶ国の0.42キロを下回るというのです。
「地救ふおーらむ」分科会で報告した環境省の寺田達志地球環境局長も、日本が世界で最も省エネ国である証拠を問われ、GNP(国民総生産)あたりのエネルギー使用量などを挙げました。
これに対して環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、▽GDPを購買力平価で比較すれば日本がより省工ネとはならない▽産業部門のエネルギー効率で日本はEUだけでなく米国にも劣る―と指摘。日本で省エネが進んでいるのは、国民が寒いのを我慢する「貧エネ」の家庭部門と、満員電車に頼る運輸部門だけだと述べました。寺田氏から反論はありませんでした。
各国から疑念も
「日本は世界一の省エネ国」との前提で、低い削減目標を合理化するために持ち出されている理屈が、「限界削減費用」です。
限界削減費用とは、省エネが最も進み、温室ガス排出量1トンを減らす費用が一番高い国でXドルかかる場合、Xドルまでの対策は各国がすべて実施し、負担を公平にするという考え方です。日本では「乾いたぞうきんを絞る」ようにしないと減らないが、さほど省エネが進んでいない国は同じ経費で多く減らせるといいます。
政府が示す選択肢③では限界削減費用を130~187ドル、⑤は285~295ドルと想定。③の場合、この経費で日本は7%しか減らせないが、EUは26~27%、米国は23~24%減らせ、先進国全体では25~29%削減できると計算しています。
限界削減費用を推奨する人々は、これが最も現実的だと言います。しかし、これほど身勝手な論理が国際交渉で受け入れられると想定すること自体、非現実的です。各国の負担の公平の指標としては、歴史的な排出量や国民一人あたりの排出量などもあります。日本の主張は交渉不成立が狙いだとの疑念が出かねません。
(つづく)
【しんぶん赤旗日刊紙より転載】