これでいいのか温暖化対策 中期目標②
「新しい政策入れない」
「新しい政策は入れないというルールがあったんです」~温室効果ガス削減の中期目標案を検討した政府の「中期目標検討委員会」の委員の一人、国立環境研究所参与の西岡秀三さんは、高野山で開かれた「地救ふおーらむ」のパネルディスカッションで明かしました。聴衆から深いため息が漏れました。
経済損失の議論
福井俊彦前日銀総裁を座長とする同委員会のメンバーは八人。環境NGOの代表はいません。公開の議論を傍聴すると、地球温暖化が人類にもたらす影響についての検討はほとんどなし。温暖化対策をとれば経済がいかに損失をこうむるか、欧州と比べて日本が損をしないためにはどうすればいいかが、抽象的なモデルを使って議論されていました。
政府は今、中期目標の六つの選択肢について国民の意見を募集しています。その参考資料には細かい数字や専門用語が並び、一般国民が簡単に意見を述べられる代物ではありません。
「MAKE the RULE キャンペーン」など、1990年比30%減といった野心的な中期目標の決定を願う人々は、▽太陽光や風力などの再生可能エネルギーの大幅導入▽そのための電力固定価格買取制度の導入▽温室ガス削減のための政府と企業の公的協定や環境税▽国内排出量取引の実施―などを求めています。
ところが政府が示す選択肢では、太陽光発電、次世代車、断熱住宅の普及などが想定されているだけです(表)。検討委の議論では、「再生可能エネルギーの導入は金ばかりかかって非現実的だ」といった主張が繰り返されていました。
「新しい政策は入れない」が大前提だったとの西岡さんの説明は、その「謎」を解き明かしてくれます。削減実績のない現在の政策を継続するだけなら、野心的な削減目標を求める方が無理だということになります。
【政府の中期目標案で想定されている主な「対策・政策」】
3条件動かすな
内閣府はまた、選択肢を決めるモデルの前提として①鉄鋼生産は1億2000万トン②原発は4374億キロワット時③輸送量は(実際には減っているのに)2005年と同じ―という三つの条件を示しました。
原発の05年の実績は3048億キロワット時。②は原発9基の増設を意味します。どんな中期目標になろうとも、「低炭素社会」実現の美名のもとで原発拡大を図る政府の本音が浮かび上がります。これなら、再生可能エネルギーの普及が敵視されるのも「当然」です。
「内閣府から、この三つは動かすなと言われた」と語る西岡さん。「これで産業構造が変わるわけがない」と指摘しました。
同じく中期目標検討委の委員で「地救ふおーらむ」のパネルディスカッションに出席した地球環境戦略研究機関理事長の浜中祐徳さんも、「日本の産業界は、高炭素経済の下でのビジネスモデルにしがみつきたいという声が非常に大きい」と述べました。
(つづく)
【しんぶん赤旗日刊紙より転載】
「新しい政策入れない」
「新しい政策は入れないというルールがあったんです」~温室効果ガス削減の中期目標案を検討した政府の「中期目標検討委員会」の委員の一人、国立環境研究所参与の西岡秀三さんは、高野山で開かれた「地救ふおーらむ」のパネルディスカッションで明かしました。聴衆から深いため息が漏れました。
経済損失の議論
福井俊彦前日銀総裁を座長とする同委員会のメンバーは八人。環境NGOの代表はいません。公開の議論を傍聴すると、地球温暖化が人類にもたらす影響についての検討はほとんどなし。温暖化対策をとれば経済がいかに損失をこうむるか、欧州と比べて日本が損をしないためにはどうすればいいかが、抽象的なモデルを使って議論されていました。
政府は今、中期目標の六つの選択肢について国民の意見を募集しています。その参考資料には細かい数字や専門用語が並び、一般国民が簡単に意見を述べられる代物ではありません。
「MAKE the RULE キャンペーン」など、1990年比30%減といった野心的な中期目標の決定を願う人々は、▽太陽光や風力などの再生可能エネルギーの大幅導入▽そのための電力固定価格買取制度の導入▽温室ガス削減のための政府と企業の公的協定や環境税▽国内排出量取引の実施―などを求めています。
ところが政府が示す選択肢では、太陽光発電、次世代車、断熱住宅の普及などが想定されているだけです(表)。検討委の議論では、「再生可能エネルギーの導入は金ばかりかかって非現実的だ」といった主張が繰り返されていました。
「新しい政策は入れない」が大前提だったとの西岡さんの説明は、その「謎」を解き明かしてくれます。削減実績のない現在の政策を継続するだけなら、野心的な削減目標を求める方が無理だということになります。
【政府の中期目標案で想定されている主な「対策・政策」】
1990年比の目標 | 太陽光発電(現状比) | 次世代車(新車販売比) | 断熱住宅(新築住宅比) |
①4%増 | 4倍 | 10% | 70% |
③7%減 | 10倍 | 50% | 80% |
⑤15%減 | 25~40倍 | 53~100% | 100% |
⑥25%減 | 55倍 | 90% | 100% |
3条件動かすな
内閣府はまた、選択肢を決めるモデルの前提として①鉄鋼生産は1億2000万トン②原発は4374億キロワット時③輸送量は(実際には減っているのに)2005年と同じ―という三つの条件を示しました。
原発の05年の実績は3048億キロワット時。②は原発9基の増設を意味します。どんな中期目標になろうとも、「低炭素社会」実現の美名のもとで原発拡大を図る政府の本音が浮かび上がります。これなら、再生可能エネルギーの普及が敵視されるのも「当然」です。
「内閣府から、この三つは動かすなと言われた」と語る西岡さん。「これで産業構造が変わるわけがない」と指摘しました。
同じく中期目標検討委の委員で「地救ふおーらむ」のパネルディスカッションに出席した地球環境戦略研究機関理事長の浜中祐徳さんも、「日本の産業界は、高炭素経済の下でのビジネスモデルにしがみつきたいという声が非常に大きい」と述べました。
(つづく)
【しんぶん赤旗日刊紙より転載】