これでいいのか温暖化対策中期目標④
問われる日本の未来像
今の「高炭素・高原発」の、経済モデルを十余年後の2020年も変えないという前提で示された政府の温室効果ガス排出量の中期目標案。ところが、昨年来の米国発の世界経済危機で日本は大きな打撃を受け、この前提条件が早くも目の前で崩壊しつつあります。
政府の中期目標検討委員会の論議では、さまざまな抽象的なモデルが使われました。
「これらのモデルは今の世の中の産業連関表を前提に数式化したもので、想定外の出来事は考慮されていない。ところが今、(それらのモデルで温暖化対策の悪影響として想定された)粗鋼生産12%減がとっくに起こるなど、思いも及ばないことが起こりつつある」と環境省高官は語ります。
一定の手直しも
1月発足のオバマ米政権が経済再建策の柱に温暖化対策をすえる「グリーン・ニューディール」に着手すると、日本政府も、限界はあるものの一定の手直しも始めました。
中期目標検討委の議論でも、太陽光発電の増設は現状の「10倍」が精いっぱいで、25倍化案は「とてもできない」と否定されてきました。
ところが政府が景気対策で「20倍」という数字をポンと出し、10倍限度論は簡単に突破されました。
麻生太郎首相は4月9日の日本記者クラブでの演説で、「2020年には、エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率を今より倍増して、世界最高水準の20%まで引き上げたい」とぶちあげ、注目されています。
具体的には太陽光発電の規模を20倍にするというだけ。その他の再生可能エネルギーは依然カヤの外の一方、「20%」には大型水力発電が含まれているもようです。そうであっても、政府の選択肢③(7%減)では太陽光は10倍化しか想定しておらず、これ以上の案でなければ麻生構想は実現不可能ということになります。
怖い国際的孤立
麻生演説にも米国の影響が感じられます。オバマ氏は電力に占める再生可能エネルギーの比率を12年までに10%、25年までに25%にする目標を掲げ、4月下旬の演説では風力だけで30年までに20%にすると表明しました。
これらを具体化する法案の審議も米議会で始まっています。
年末のCOP15(国連気候変動枠組み条約第十五回締約国会議)に向け、欧州連合(EU)や中国と協議を重ねる米国。京都で開かれたCOP3と違い、日本の面目を立てる必要もない。国際的孤立への恐れが、政府を一連の手直しに駆り立てているようです。
しかし、今のような程度で間に合うのか。
「(求められているのは)日本という国を二十、三十年後にどうするかの議論だ。新しい経済政策がどうしても必要だ。モデルにインプットしたら、どういう数字が出たという話ではない。こういう議論を続けている限り、理路整然と日本は間違う」1政府の地球温暖化に関する懇談会の委員で国連環境計画・金融イニシアチブ特別顧問の末吉竹二郎氏は9日、都内で開かれた会合で断言しました。
(おわり)
【しんぶん赤旗日刊紙より転載】
問われる日本の未来像
今の「高炭素・高原発」の、経済モデルを十余年後の2020年も変えないという前提で示された政府の温室効果ガス排出量の中期目標案。ところが、昨年来の米国発の世界経済危機で日本は大きな打撃を受け、この前提条件が早くも目の前で崩壊しつつあります。
政府の中期目標検討委員会の論議では、さまざまな抽象的なモデルが使われました。
「これらのモデルは今の世の中の産業連関表を前提に数式化したもので、想定外の出来事は考慮されていない。ところが今、(それらのモデルで温暖化対策の悪影響として想定された)粗鋼生産12%減がとっくに起こるなど、思いも及ばないことが起こりつつある」と環境省高官は語ります。
温暖化防止を訴え世界80力国以上で、行われた「アースアワー」のイベントでろうそくを手にするグアテマラの少女=3月28日(ロイター) |
一定の手直しも
1月発足のオバマ米政権が経済再建策の柱に温暖化対策をすえる「グリーン・ニューディール」に着手すると、日本政府も、限界はあるものの一定の手直しも始めました。
中期目標検討委の議論でも、太陽光発電の増設は現状の「10倍」が精いっぱいで、25倍化案は「とてもできない」と否定されてきました。
ところが政府が景気対策で「20倍」という数字をポンと出し、10倍限度論は簡単に突破されました。
麻生太郎首相は4月9日の日本記者クラブでの演説で、「2020年には、エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率を今より倍増して、世界最高水準の20%まで引き上げたい」とぶちあげ、注目されています。
具体的には太陽光発電の規模を20倍にするというだけ。その他の再生可能エネルギーは依然カヤの外の一方、「20%」には大型水力発電が含まれているもようです。そうであっても、政府の選択肢③(7%減)では太陽光は10倍化しか想定しておらず、これ以上の案でなければ麻生構想は実現不可能ということになります。
怖い国際的孤立
麻生演説にも米国の影響が感じられます。オバマ氏は電力に占める再生可能エネルギーの比率を12年までに10%、25年までに25%にする目標を掲げ、4月下旬の演説では風力だけで30年までに20%にすると表明しました。
これらを具体化する法案の審議も米議会で始まっています。
年末のCOP15(国連気候変動枠組み条約第十五回締約国会議)に向け、欧州連合(EU)や中国と協議を重ねる米国。京都で開かれたCOP3と違い、日本の面目を立てる必要もない。国際的孤立への恐れが、政府を一連の手直しに駆り立てているようです。
しかし、今のような程度で間に合うのか。
「(求められているのは)日本という国を二十、三十年後にどうするかの議論だ。新しい経済政策がどうしても必要だ。モデルにインプットしたら、どういう数字が出たという話ではない。こういう議論を続けている限り、理路整然と日本は間違う」1政府の地球温暖化に関する懇談会の委員で国連環境計画・金融イニシアチブ特別顧問の末吉竹二郎氏は9日、都内で開かれた会合で断言しました。
(おわり)
【しんぶん赤旗日刊紙より転載】