検証 超円高② 日本が支える衰退ドル
経済は低成長、財政赤字も多い日本が投機筋から安全とみなされ、資金の“逃避先”として円を買う理由は何でしょうか。経常収支、外貨準備、対外純資産などが挙げられます。
2011年の経常収支は、貿易収支の赤字転落を受けて前年比44%減となりました。15年ぶりに10兆円を割ったとはいえ、9兆6289億円の黒字です。海外子会社からの配当や海外証券投資による収益を表す所得黒字が20%増の14兆296億円で、貿易赤字を穴埋めしています。これに対し主要国の11年経常収支は米国が4734億ドル(約40兆円)の赤字、欧州連合が712億ユーロ(約7兆8000億円)の赤字です。
外貨準備高は9月末時点で1兆2770億ドルで、過去8番目の高水準。中国に次ぐ世界2位は揺らぎません。
11年末の対外資産・負債残高は253兆100億円(前年末比0・6%増)。2位中国の138兆円を大きく引き離し、21年連続で世界一です。対外純資産残高は、政府、企業、個人が海外に保有する資産から海外勢による対日投資(負債)を差し引いたもの。国としての余剰マネーを意味します。
東京証券取引所に表示された各国市場の株価と為替相場(ロイター)
■従属の構造
今宮謙二中央大学名誉教授は、世界経済が下向きのときに円が買われる根本的な理由として日本の対米従属を指摘します。
「日本は日米安保条約第2条で米国経済と一体化しています。日本は何があっても基軸通貨ドルを守るということは世界に知られています。だから投機筋は円を買っておいたほうがいいと考えているのです」
安保条約2条は日米両国が「国際経済政策におけるくい違いを除く」と定めています。軍事、政治だけでなく経済政策でも日本が米国に従属した経済政策をとる根拠となっています。
米政府は1971年、金とドルの交換を停止しました。もともと金と固定レートで交換できる唯一の通貨であったことが基軸通貨の前提でしたが、それを米国自らやめてしまいました。
■“安全”通貨
それから41年、世界の基軸通貨ドルの地位は揺らぎ続けています。71年当時と今を比べると、円との交換レートは1ドル=360円から80円程度に、金価格は1オンス(約31グラム)が35ドルから1700ドル台になり、ドルの値打ちは大きく下がりました。国連やG20(主要20力国・地域)の場でドルが基軸通貨としてふさわしいかが議論されるまでになっています。
にもかかわらず、日本は輸出でためこんだドルで米国債を購入することによって、ドルを米国に還流させています。10月末時点で1兆2742億ドルの外貨準備のうち93%は米国債を中心とする外貨証券です。米国債保有高は中国に次いで世界2位。
基軸通貨の地位が大きく揺らいでいるとはいえ、ドルにとって代わる基軸通貨が見えてこないため、ドル体制は当分続かざるをえません。日本がドルを支える姿勢を変えないと、円高も続くことになります。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年12月19日付掲載
基軸通貨としてユーロが一時期期待されましたが、ヨーロッパの通貨危機などでとん挫しています。中国の元ですが、GDPこそ世界第2位になりましたが、国民一人当たりの所得から見れば「発展途上国」の域をでていません。まだまだ、基軸通貨への道は遠いです。
日本はどうかと言えば、政治も経済もアメリカ言いなりで、とてもとても基軸通貨たる権威はありません。
日本が、アメリカ言いなりから脱却して、自分の言葉で世界に語り、経済活動をするようになれば、投機マネーが日本に集中することがなくなり、円高も解消されるでしょうね。
経済は低成長、財政赤字も多い日本が投機筋から安全とみなされ、資金の“逃避先”として円を買う理由は何でしょうか。経常収支、外貨準備、対外純資産などが挙げられます。
2011年の経常収支は、貿易収支の赤字転落を受けて前年比44%減となりました。15年ぶりに10兆円を割ったとはいえ、9兆6289億円の黒字です。海外子会社からの配当や海外証券投資による収益を表す所得黒字が20%増の14兆296億円で、貿易赤字を穴埋めしています。これに対し主要国の11年経常収支は米国が4734億ドル(約40兆円)の赤字、欧州連合が712億ユーロ(約7兆8000億円)の赤字です。
外貨準備高は9月末時点で1兆2770億ドルで、過去8番目の高水準。中国に次ぐ世界2位は揺らぎません。
11年末の対外資産・負債残高は253兆100億円(前年末比0・6%増)。2位中国の138兆円を大きく引き離し、21年連続で世界一です。対外純資産残高は、政府、企業、個人が海外に保有する資産から海外勢による対日投資(負債)を差し引いたもの。国としての余剰マネーを意味します。
東京証券取引所に表示された各国市場の株価と為替相場(ロイター)
■従属の構造
今宮謙二中央大学名誉教授は、世界経済が下向きのときに円が買われる根本的な理由として日本の対米従属を指摘します。
「日本は日米安保条約第2条で米国経済と一体化しています。日本は何があっても基軸通貨ドルを守るということは世界に知られています。だから投機筋は円を買っておいたほうがいいと考えているのです」
安保条約2条は日米両国が「国際経済政策におけるくい違いを除く」と定めています。軍事、政治だけでなく経済政策でも日本が米国に従属した経済政策をとる根拠となっています。
米政府は1971年、金とドルの交換を停止しました。もともと金と固定レートで交換できる唯一の通貨であったことが基軸通貨の前提でしたが、それを米国自らやめてしまいました。
■“安全”通貨
それから41年、世界の基軸通貨ドルの地位は揺らぎ続けています。71年当時と今を比べると、円との交換レートは1ドル=360円から80円程度に、金価格は1オンス(約31グラム)が35ドルから1700ドル台になり、ドルの値打ちは大きく下がりました。国連やG20(主要20力国・地域)の場でドルが基軸通貨としてふさわしいかが議論されるまでになっています。
にもかかわらず、日本は輸出でためこんだドルで米国債を購入することによって、ドルを米国に還流させています。10月末時点で1兆2742億ドルの外貨準備のうち93%は米国債を中心とする外貨証券です。米国債保有高は中国に次いで世界2位。
基軸通貨の地位が大きく揺らいでいるとはいえ、ドルにとって代わる基軸通貨が見えてこないため、ドル体制は当分続かざるをえません。日本がドルを支える姿勢を変えないと、円高も続くことになります。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年12月19日付掲載
基軸通貨としてユーロが一時期期待されましたが、ヨーロッパの通貨危機などでとん挫しています。中国の元ですが、GDPこそ世界第2位になりましたが、国民一人当たりの所得から見れば「発展途上国」の域をでていません。まだまだ、基軸通貨への道は遠いです。
日本はどうかと言えば、政治も経済もアメリカ言いなりで、とてもとても基軸通貨たる権威はありません。
日本が、アメリカ言いなりから脱却して、自分の言葉で世界に語り、経済活動をするようになれば、投機マネーが日本に集中することがなくなり、円高も解消されるでしょうね。