COP18閉幕 成果と課題
会議に参加 CASA専務理事 早川光俊さんに聞く
【ドーハ=安川崇】8日に閉幕した国連気候変動枠組み条約第18回締約国会議(COP18)。参加したNGO・地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)の早川光俊専務理事に、COP18の成果と課題について聞きました。
CASAの早川光俊専務理事=8日、ドーハ(安川崇撮影)
先進国に温室効果ガス削減を義務付ける京都議定書の第2約束期間(2013~20年)を、第1期間(08~12年)との間に空白をつくらずに開始できるようになり、まずは安心した。
京都議定書は法的拘束力をもって削減を義務付ける唯一の条約。これが一時的にでも効力を失うと、タガが外れて各国の排出量が増加する事態に陥りかねない。
また、すべての国が参加する新しい枠組み作りについて、具体的な作業計画が合意されたことも評価したい。米国や日本は温暖化対策に消極的だが、深刻化する地球温暖化の影響を前に、COPの交渉は確実に前に進んでいる。
まだ足りない
しかし問題もある。産業革命前より2度以上の平均気温の上昇は、人類の生存を脅かしかねない。これを避けるためには、現在の各国の削減目標の合計では全く足りない。80億~130億トン(CO2換算)のギャツプ(不足)がある。これを埋める作業について、具体的に何も決まらなかった。また、13年以降の先進国から途上国への資金援助も臭体化できなかった。
日本政府の行動は残念だった。「これまで先進国全体の資金援助額の4割を負担したのに、正当に評価されていない」と嘆くだけで、今回の会議の焦点であった13年以降の資金拠出については具体的な約束をしなかった。
もし日本が、これまでと同等の拠出割合を維持すると表明していれば、交渉を大きく前に進めることできた。
日本が会議初日に受けた「化石賞」は京都議定書第2約束期間参加への期待からだった。しかし、第2約束期間参加どころか、政府は国際公約している25%削減目標(20年までに1990年比で25%削減)にすら言及を避け、2度目の化石賞を贈られた。
もし25%削減目標を放棄するようなことになれば、日本は大きな非難を浴びることになる。東日本大震災に対する百数十力国からの支援に対する答えがこの目標の放棄であってはならない。
次代への責務
福島原発事故を理由に温暖化対策より脱原発が先だとの意見もあるが、脱原発と温暖化対策は両立できる。地球温暖化はもう待ったなしのところまで来ている。食い止めることは次世代への責務だと思う。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年12月11日付掲載
一般マスコミは、アメリカと中国を例に挙げて、先進国と発展途上国の対立をあおって報道しています。先進国でもEU諸国などは温室効果ガス削減に戦略的に取り組んでいます。アメリカや日本などが、京都議定書から脱退したり第2約束期間に加わらなかったりしていますが、それが先進国全体の様な報道です。
先進国は今まで技術開発で削減してきたのに、中国などはどんどんCO2を排出しているのでけしからん。って感じですね。
もちろん中国などのCO2排出量の増加は良いものではありません。
京都議定書の理念は「共通だが差異のある責任」です。
先進国は産業革命の時代からCO2を排出してきて、排出量の絶対量も多く主要な責任がある。発展途上国は排出量の伸びが飛躍してきている。世界全体の排出量を減らしていくには共通の責任を負っている。しかし、発展途上国にも生産力(GNP)を向上させる「発達権」がある。
先進国も発展途上国も、温室効果ガスを減らしていくには共通の責任があるが、その技術力や「発達権」の差から「差異のある責任」だという事です。
アメリカは日本は、温室効果ガス削減の取り組みで生産力が阻害されるとの産業界からの圧力に屈しています。EU諸国は、逆に温室効果ガス削減をビジネスとして戦略的に取り組んでいます。
温室効果ガス削減の技術を先に開発した者がそれをビジネスとして売って利益をあげることができる。アメリカや日本の様に消極的な国は、後からその技術を買わざるをえなくなり、逆に産業界は損をする。
目先の利益ばかりを優先していると、あとでしっぺ返しがくるのでは・・・
「原発ゼロ」のために、自然エネルギーの普及に取り組みながら、急場しのぎで5~10年間は火力発電に頼るとのことです。これで、「温室効果ガス削減目標が達成できなくなるのでは」との不安の声を聞きます。
でも、「脱原発と温暖化対策は両立できる」という事を聞いて安心しました。
会議に参加 CASA専務理事 早川光俊さんに聞く
【ドーハ=安川崇】8日に閉幕した国連気候変動枠組み条約第18回締約国会議(COP18)。参加したNGO・地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)の早川光俊専務理事に、COP18の成果と課題について聞きました。
CASAの早川光俊専務理事=8日、ドーハ(安川崇撮影)
先進国に温室効果ガス削減を義務付ける京都議定書の第2約束期間(2013~20年)を、第1期間(08~12年)との間に空白をつくらずに開始できるようになり、まずは安心した。
京都議定書は法的拘束力をもって削減を義務付ける唯一の条約。これが一時的にでも効力を失うと、タガが外れて各国の排出量が増加する事態に陥りかねない。
また、すべての国が参加する新しい枠組み作りについて、具体的な作業計画が合意されたことも評価したい。米国や日本は温暖化対策に消極的だが、深刻化する地球温暖化の影響を前に、COPの交渉は確実に前に進んでいる。
まだ足りない
しかし問題もある。産業革命前より2度以上の平均気温の上昇は、人類の生存を脅かしかねない。これを避けるためには、現在の各国の削減目標の合計では全く足りない。80億~130億トン(CO2換算)のギャツプ(不足)がある。これを埋める作業について、具体的に何も決まらなかった。また、13年以降の先進国から途上国への資金援助も臭体化できなかった。
日本政府の行動は残念だった。「これまで先進国全体の資金援助額の4割を負担したのに、正当に評価されていない」と嘆くだけで、今回の会議の焦点であった13年以降の資金拠出については具体的な約束をしなかった。
もし日本が、これまでと同等の拠出割合を維持すると表明していれば、交渉を大きく前に進めることできた。
日本が会議初日に受けた「化石賞」は京都議定書第2約束期間参加への期待からだった。しかし、第2約束期間参加どころか、政府は国際公約している25%削減目標(20年までに1990年比で25%削減)にすら言及を避け、2度目の化石賞を贈られた。
もし25%削減目標を放棄するようなことになれば、日本は大きな非難を浴びることになる。東日本大震災に対する百数十力国からの支援に対する答えがこの目標の放棄であってはならない。
次代への責務
福島原発事故を理由に温暖化対策より脱原発が先だとの意見もあるが、脱原発と温暖化対策は両立できる。地球温暖化はもう待ったなしのところまで来ている。食い止めることは次世代への責務だと思う。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年12月11日付掲載
一般マスコミは、アメリカと中国を例に挙げて、先進国と発展途上国の対立をあおって報道しています。先進国でもEU諸国などは温室効果ガス削減に戦略的に取り組んでいます。アメリカや日本などが、京都議定書から脱退したり第2約束期間に加わらなかったりしていますが、それが先進国全体の様な報道です。
先進国は今まで技術開発で削減してきたのに、中国などはどんどんCO2を排出しているのでけしからん。って感じですね。
もちろん中国などのCO2排出量の増加は良いものではありません。
京都議定書の理念は「共通だが差異のある責任」です。
先進国は産業革命の時代からCO2を排出してきて、排出量の絶対量も多く主要な責任がある。発展途上国は排出量の伸びが飛躍してきている。世界全体の排出量を減らしていくには共通の責任を負っている。しかし、発展途上国にも生産力(GNP)を向上させる「発達権」がある。
先進国も発展途上国も、温室効果ガスを減らしていくには共通の責任があるが、その技術力や「発達権」の差から「差異のある責任」だという事です。
アメリカは日本は、温室効果ガス削減の取り組みで生産力が阻害されるとの産業界からの圧力に屈しています。EU諸国は、逆に温室効果ガス削減をビジネスとして戦略的に取り組んでいます。
温室効果ガス削減の技術を先に開発した者がそれをビジネスとして売って利益をあげることができる。アメリカや日本の様に消極的な国は、後からその技術を買わざるをえなくなり、逆に産業界は損をする。
目先の利益ばかりを優先していると、あとでしっぺ返しがくるのでは・・・
「原発ゼロ」のために、自然エネルギーの普及に取り組みながら、急場しのぎで5~10年間は火力発電に頼るとのことです。これで、「温室効果ガス削減目標が達成できなくなるのでは」との不安の声を聞きます。
でも、「脱原発と温暖化対策は両立できる」という事を聞いて安心しました。