日航123便事故 30年目の夏③ 空の安全確率いつ・・・
航空機事故の根絶、空の安全の確立は、遺族に共通する願いです。しかし、日本航空123便墜落事故から30年の今、日航をはじめとする航空各社は、「競争力」を合言葉にしたコスト縮減・人員削減を進め、その結果、人材不足や技術継承の断絶など、安全を脅かす事態が生まれています。
「利益なくして安全なし」「御巣鷹がトラウマに」(日航の稲盛和夫会長=当時=、2011年の雑誌インタビューで)―
永遠に教訓としなければならない123便事故を「トラウマ」と呼び、「利益」の追求に狂奔してきた日航は今、深刻な矛盾に直面しています。
日航は、10年の大みそかにベテランの運航乗務員(パイロット)、客室乗務員の解雇を強行するなど、人員削減を進めてきました。その後日航は、将来不安や労働条件への不満などで退職、外部流出に歯止めがかからず、人員不足に陥っています。

墜落した日航ジャンボ機=1985年8月、群馬県上野村
パイロット不足
日航の場合、運航乗務員の乗務時間は年間900時間を上限としています。昨年、この上限に10月ごろに達する乗務員が出てしまいました。日航は今年も前年同期を上回る退職者が出ていることから急きょ、一部の教育・訓練など地上業務を見直し、削減して乗務員をねん出する苦しいやりくりを強いられています。
航空労組連絡会の津恵正三(つえ・しょうぞう)事務局長は、「そもそも上限に達するパイロットが続出すること自体、安全面から好ましくありません。余裕のない体制では、多客期に臨時便を飛ばすことができなくなるなど、公共交通機関としての役割も果たせなくなります」と指摘します。
日航では客室乗務員の退職も相次ぎ、大量の新規採用を行っています。そのため、バランスのよい配置ができず、ベテランから新人への指導、技術の継承が進まない状況が生まれています。
離陸から着陸までの間にやるべき仕事をうまくこなせず、機内食を運ぶカートが飛び出す事故が起きるなど、トラブルが続く背景には、こうした問題があるとみられます。
問題は日航だけに限りません。全日空も、「再生した日航の競争力は脅威」などと、日航に先駆けて賃下げ、労働強化を進めました。格安航空会社(LCC)各社は昨年、大量の欠航を生み、運航乗務員不足が露呈しました。
日本の主要航空各社の運航乗務員の年齢構成は40代に偏っており、今後15~20年で大量退職時期が到来します。また、世界的にも運航乗務員が不足し、「争奪戦」となる事態が指摘されています。
国土交通省は4月、運航乗務員の年齢制限を64歳から67歳に引き上げる規制緩和を行いました。乗務時間の上限引き上げなども検討しています。
競争が基盤崩す
津恵氏は、「人が足りないから規制緩和という発想が誤っています。競争力の強化という航空会社の施策が安全の基盤を崩しています。パイロットを養成する体制を充実させ、航空労働者が意欲と喜びを持てる労働条件を整備することが、安全のために大切です」と指摘しています。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年8月12日付掲載
人材育成には、時間とお金がかかるものです。一朝一夕にはいかないもの。
そのように位置付けて、パイロットや客室乗務員を育成してほしいですね。
航空機事故の根絶、空の安全の確立は、遺族に共通する願いです。しかし、日本航空123便墜落事故から30年の今、日航をはじめとする航空各社は、「競争力」を合言葉にしたコスト縮減・人員削減を進め、その結果、人材不足や技術継承の断絶など、安全を脅かす事態が生まれています。
「利益なくして安全なし」「御巣鷹がトラウマに」(日航の稲盛和夫会長=当時=、2011年の雑誌インタビューで)―
永遠に教訓としなければならない123便事故を「トラウマ」と呼び、「利益」の追求に狂奔してきた日航は今、深刻な矛盾に直面しています。
日航は、10年の大みそかにベテランの運航乗務員(パイロット)、客室乗務員の解雇を強行するなど、人員削減を進めてきました。その後日航は、将来不安や労働条件への不満などで退職、外部流出に歯止めがかからず、人員不足に陥っています。

墜落した日航ジャンボ機=1985年8月、群馬県上野村
パイロット不足
日航の場合、運航乗務員の乗務時間は年間900時間を上限としています。昨年、この上限に10月ごろに達する乗務員が出てしまいました。日航は今年も前年同期を上回る退職者が出ていることから急きょ、一部の教育・訓練など地上業務を見直し、削減して乗務員をねん出する苦しいやりくりを強いられています。
航空労組連絡会の津恵正三(つえ・しょうぞう)事務局長は、「そもそも上限に達するパイロットが続出すること自体、安全面から好ましくありません。余裕のない体制では、多客期に臨時便を飛ばすことができなくなるなど、公共交通機関としての役割も果たせなくなります」と指摘します。
日航では客室乗務員の退職も相次ぎ、大量の新規採用を行っています。そのため、バランスのよい配置ができず、ベテランから新人への指導、技術の継承が進まない状況が生まれています。
離陸から着陸までの間にやるべき仕事をうまくこなせず、機内食を運ぶカートが飛び出す事故が起きるなど、トラブルが続く背景には、こうした問題があるとみられます。
問題は日航だけに限りません。全日空も、「再生した日航の競争力は脅威」などと、日航に先駆けて賃下げ、労働強化を進めました。格安航空会社(LCC)各社は昨年、大量の欠航を生み、運航乗務員不足が露呈しました。
日本の主要航空各社の運航乗務員の年齢構成は40代に偏っており、今後15~20年で大量退職時期が到来します。また、世界的にも運航乗務員が不足し、「争奪戦」となる事態が指摘されています。
国土交通省は4月、運航乗務員の年齢制限を64歳から67歳に引き上げる規制緩和を行いました。乗務時間の上限引き上げなども検討しています。
競争が基盤崩す
津恵氏は、「人が足りないから規制緩和という発想が誤っています。競争力の強化という航空会社の施策が安全の基盤を崩しています。パイロットを養成する体制を充実させ、航空労働者が意欲と喜びを持てる労働条件を整備することが、安全のために大切です」と指摘しています。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年8月12日付掲載
人材育成には、時間とお金がかかるものです。一朝一夕にはいかないもの。
そのように位置付けて、パイロットや客室乗務員を育成してほしいですね。