軍事依存経済④ 米の軍産複合体に融合
2014年5月13~14日、日米の軍需産業と政府(防衛省、経済産業省、米国防総省)の関係者が米国テネシー州に結集しました。同州に本部を置くバンダービルト大学で1990年から毎年続く「日米技術フォーラム」の25回目の会合が開かれたためです。
■「運用が鍵」
日米技術フォーラムは「安全保障上の共通の関心事項を強化するための、日米の技術協力と共同事業に関して自由に論議できる唯一の場」(『月刊JADI』13年12月号)と評されてきました。
14年フォーラムの参加者数は99人。過去最高を記録した前回13年フォーラムのー・5倍にのぼりました。参加者が急増した理由は一つです。「日本が2014年4月1日に長年維持してきた武器輸出三原則を見直したことで生まれた好機をものにしたいという両国の企業、政府の思惑」(『月刊JADI』14年12月号)が働いたのです。
『JADI』14年12月号に掲載された14年フォーラムの「参加報告」は、冒頭で13年フォーラムの“成果”を誇りました。
「日本政府に対して、米国との有意義な協力と世界の防衛産業への日本の参入を可能にするため、規制を十分に緩和すべきだ」と13年フォーラムの共同声明で迫ったところ、「この要請に日本政府が応えた」。
日米の軍事関係者が結束して行動した結果として、安倍政権が武器輸出禁止原則を破棄したというわけです。
これを受け、14年フォーラムでは「これまでで最も現実的な機会に的を絞った」議論が行われました。米国政府関係者は「日本の政策見直しは両国に重要な結果をもたらすとの楽観的観測を表明」し、「運用が鍵になる」と付け加えました。
そのうえで、14年フォーラムの共同議長は「多数の参加者の意見が盛り込まれた声明文」を作成。「日本は新政策を円滑かつ柔軟に実施すべきだ」と主張しました。安倍政権に対し、日米軍需産業と米国政府に「現実的な機会」をもたらすよう迫ったのです。
「機会」とは何か。
『JADI』によれば、日本政府は「新体制の下で日本企業が目指すべき3つのビジネスモデル」を想定しています。①救助、輸送、捜索、機雷除去などの協力事業のまとめ役②日米間の共同開発・共同生産事業の戦略的協力者③国際的な共同開発・共同生産・部品共同管理システムへの参加者―の三つです。
このうち①はアジア諸国、③は欧米諸国との協力を主に想定していると考えられます。米国との2国間協力は②。「共同開発・共同生産」が中心になるということです。

戦時中にドイツの資料を参考にして開発されたロケット推進式の戦闘機「秋水」=愛知県豊山町の名古屋航空宇宙システム製作所資料室
■うまみ増す
『JADI』は14年フォーラムで次のような議論が行われたことを紹介しています。
「日本の輸出政策見直しに伴い、米国の研究開発プログラムへの有意義な関与も現実的可能性を帯びている」
共同で研究開発した武器やその部品を、日本から米国へ輸出し、米国から第三国へ輸出することが可能になったため、広範な共同研究が一気にうまみを増したというわけです。
共同生産の分野でも「日本企業の米国市場浸透を拡大するため」の「いくつかのアプローチ」が議論になりました。一例は「米国防衛企業の資産買収」です。「中小企業をターゲットにすれば、より初期段階の研究開発機会へのアクセスを増やせる可能性がある」と指摘されました。
米国では、巨大な軍事組織と軍需産業が「軍産複合体」を形成し、学界を巻き込んで社会全体に影響を及ぼす危険が指摘されてきました。安倍政権が開こうとしているのは、米国の軍産複合体に日本の軍需産業と研究機関を大動員し、融合させる「機会」なのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年8月25日付掲載
武器の国際的な共同開発が可能になったもとで、一気に市場が広がる。
日本企業にとって、これほどの「うまみ」はないでしょうね。
日本国憲法のもとでは許されない事です。
2014年5月13~14日、日米の軍需産業と政府(防衛省、経済産業省、米国防総省)の関係者が米国テネシー州に結集しました。同州に本部を置くバンダービルト大学で1990年から毎年続く「日米技術フォーラム」の25回目の会合が開かれたためです。
■「運用が鍵」
日米技術フォーラムは「安全保障上の共通の関心事項を強化するための、日米の技術協力と共同事業に関して自由に論議できる唯一の場」(『月刊JADI』13年12月号)と評されてきました。
14年フォーラムの参加者数は99人。過去最高を記録した前回13年フォーラムのー・5倍にのぼりました。参加者が急増した理由は一つです。「日本が2014年4月1日に長年維持してきた武器輸出三原則を見直したことで生まれた好機をものにしたいという両国の企業、政府の思惑」(『月刊JADI』14年12月号)が働いたのです。
『JADI』14年12月号に掲載された14年フォーラムの「参加報告」は、冒頭で13年フォーラムの“成果”を誇りました。
「日本政府に対して、米国との有意義な協力と世界の防衛産業への日本の参入を可能にするため、規制を十分に緩和すべきだ」と13年フォーラムの共同声明で迫ったところ、「この要請に日本政府が応えた」。
日米の軍事関係者が結束して行動した結果として、安倍政権が武器輸出禁止原則を破棄したというわけです。
これを受け、14年フォーラムでは「これまでで最も現実的な機会に的を絞った」議論が行われました。米国政府関係者は「日本の政策見直しは両国に重要な結果をもたらすとの楽観的観測を表明」し、「運用が鍵になる」と付け加えました。
そのうえで、14年フォーラムの共同議長は「多数の参加者の意見が盛り込まれた声明文」を作成。「日本は新政策を円滑かつ柔軟に実施すべきだ」と主張しました。安倍政権に対し、日米軍需産業と米国政府に「現実的な機会」をもたらすよう迫ったのです。
「機会」とは何か。
『JADI』によれば、日本政府は「新体制の下で日本企業が目指すべき3つのビジネスモデル」を想定しています。①救助、輸送、捜索、機雷除去などの協力事業のまとめ役②日米間の共同開発・共同生産事業の戦略的協力者③国際的な共同開発・共同生産・部品共同管理システムへの参加者―の三つです。
このうち①はアジア諸国、③は欧米諸国との協力を主に想定していると考えられます。米国との2国間協力は②。「共同開発・共同生産」が中心になるということです。

戦時中にドイツの資料を参考にして開発されたロケット推進式の戦闘機「秋水」=愛知県豊山町の名古屋航空宇宙システム製作所資料室
■うまみ増す
『JADI』は14年フォーラムで次のような議論が行われたことを紹介しています。
「日本の輸出政策見直しに伴い、米国の研究開発プログラムへの有意義な関与も現実的可能性を帯びている」
共同で研究開発した武器やその部品を、日本から米国へ輸出し、米国から第三国へ輸出することが可能になったため、広範な共同研究が一気にうまみを増したというわけです。
共同生産の分野でも「日本企業の米国市場浸透を拡大するため」の「いくつかのアプローチ」が議論になりました。一例は「米国防衛企業の資産買収」です。「中小企業をターゲットにすれば、より初期段階の研究開発機会へのアクセスを増やせる可能性がある」と指摘されました。
米国では、巨大な軍事組織と軍需産業が「軍産複合体」を形成し、学界を巻き込んで社会全体に影響を及ぼす危険が指摘されてきました。安倍政権が開こうとしているのは、米国の軍産複合体に日本の軍需産業と研究機関を大動員し、融合させる「機会」なのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年8月25日付掲載
武器の国際的な共同開発が可能になったもとで、一気に市場が広がる。
日本企業にとって、これほどの「うまみ」はないでしょうね。
日本国憲法のもとでは許されない事です。