コンビニ見切り品値下げ拡大 本部の妨害退け オーナーの勇気 共産党議員の追及
コンビニエンスストアは、全国6万店近くにのぼり、物販だけでなく、防犯や物流を担うなど生活に不可欠な存在です。そのコンビニで消費期限が迫った総菜など見切り品を値下げして販売する店舗が全国に広がっています。店舗オーナーからは「対等でない本部との関係の是正に向けた重要な一歩だ」との声があがっています。(小村優、清水渡、日隈広志)
かつては見られなかったコンビニの見切り販売。今ではどこでも日常の風景になっています。
見切り販売が広がるきっかけは、業界トップのセブン-イレブン本部が2009年、見切り販売に関する加盟店への妨害に対して公正取引委員会から排除命令を受けたことでした。
本紙の取材に対し、ローソン本部は「9割の店舗で見切り販売を行っている」と認めました。
公取動かす
日本共産党は早くからコンビニの見切り販売問題を国会で取り上げてきました。2007年には塩川鉄也衆院議員の追及に、当時の公正取引委員会委員長が、見切り販売禁止を各店舗に押し付けることは独占禁止法上の問題になるとの見解を示しました(07年6月6日)。
13年の参院選挙で初当選したたつみコータロー前議員は共産党の独自調査に基づき、繰り返し参院経済産業委員会で同問題を追及しました。公取委の重い腰をあげさせました。公取委は19年、セブン―イレブンなどの全フランチャイズ(FC)加盟店(5万7524店)を対象とした実態調査を実施。今年4月には、「フランチャイズ・ガイドライン」を改正し、見切り販売の制限は独禁法違反だと明確にしたのです。各社は業務改善を余儀なくされています。
コンビニの多くは「コンビニ本部」とFC契約を結び、「売り上げ」から「原価」を差し引いた粗利の一部(ロイヤルティー)を支払うことで商標の使用許可などを受けています。しかし、本部側は巨大資本の力関係を背景に、加盟店に24時間営業や仕入れでの過剰発注などを強要してきました。
ロイヤルティーの計算では、本部は廃棄や万引きなどの欠損分を「原価」から除いて粗利を水増しするという他に例のない特異な会計方式(「コンビニ会計」)をとっています。見切り販売の手法をとらずに廃棄するほど本部のもうけが増えるからくりです。
覚悟の実施
「いかにオーナーが不利な立場に置かれてきたか、一目でわかる仕組みだ」。こう話すのは関東圏でセブン本部とFC契約を結んだコンビニ経営者のAさん。「本部にたてついて契約終了となったオーナーを何人も見てきた。でも経営を続けるために見切り販売は欠かせない。覚悟して踏み切った」。オーナーたちの勇気ある行動が、重い扉をこじあけました。
全国FC加盟店協会の植田忠義事務局長は「オーナーが声をあげ、その声を国会に届けた日本共産党の役割が決定的だ」と指摘します。
たつみ質問 潮目変えた
コンビニ問題を考えるつどいで報告するたつみコータロー参院議員(当時)=2018年9月23日、大阪市
2013年の参院選挙で日本共産党は改選3議席から8議席へと躍進しました。当選したたつみ氏はコンビニ問題を国会で精力的に取り上げました。
16年5月2日の参院決算委員会では、見切り販売に対する凄惨(せいさん)な妨害実態を告発しました。
「1時間前までは見切り販売をするなと。しかし、店舗オーナーからすれば見切り販売1時間前というのはほとんど売れない。足かせをさせて見切りを事実上制限させている」「見切り販売で値下げしたお弁当、おにぎりを購入してもボーナスポイントが付与されない。つまり差別していることになる」
19年3月14日の同経済産業委員会での質疑で、たつみ氏は前年に大阪府内4千店舗を対象に実施した党独自のアンケート調査結果を示しました。「『20年で1日しか休みがない』、『親が死んでも休めない』、『お正月や災害時には休ませてほしい』。あるオーナーの1カ月の労働時間は367時間。残業は200時間に及び、過労死ラインの80時間の2倍以上です」。実態を示された世耕弘成経済産業相(当時)は「ハッキリ言って持続不可能」「当然コンビニチェーン本部にとっても放置しておける問題ではない」と答弁せざるを得ませんでした。
続けてたつみ氏は、こうした実態の背景に、不当に本部収益を増大させる「コンビニ会計」のからくりがあると指摘。加盟店舗に見切り販売を許さず、「本部のもうけのためにあえて廃棄させる行為が横行している」と突き付けたのです。
「普段ヤジを飛ばす自民党議員までも聞き入っていた」といいます。潮目の変化を実感させる瞬間でした。
日本共産党はこの年の6月、「加盟店の営業と権利を守り、コンビニ業界の健全な発展をはかるため、コンビニ・フランチャイズ法の制定を」と題する緊急提言を発表しました。同提言作成の立役者はたつみ氏でした。見切り販売問題については「オーナーにだけ廃棄負担を押し付けるな」として、見切り販売妨害を生み出す「コンビニ会計」の見直しを迫っています。
態度に変化
たつみ氏の質問、共産党の提言を受け、コンビニを監視すべき国の機関が動き出します。19年10月には公正取引委員会が実態調査を行いました。
さらに今年4月には公取委が「フランチャイズ・ガイドライン」を改正。本部に見切り販売の手続きの簡便化・加盟店への周知を求めました。経済産業省の「新たなコンビニの在り方検討会」でも、本部に「改善計画の提出」を求めており、コンビニ各社の対応につながっています。
セブン―イレブン本部とフランチャイズ契約を結ぶAさんは、ここ数年での本部の加盟店に対する態度の変化を感じています。
「以前は冷蔵庫に入り切らないのに、焼き鳥を一度に『数百本仕入れろ』と言われたこともある。クリスマスケーキや恵方巻、お歳暮…、過剰発注で無理難題を押し付けられるのは日常茶飯事だった。異常な横暴さが今は見られない」。
同時に、「見切り販売は最初の一歩だ」とAさん。「お客さんの動向を常に見ているのは、店舗経営者。その意見を踏まえなければ、本部も生き残れない」と語る口調から、固い決意がにじみます。
大本ただせ
全国FC加盟店協会の植田事務局長は、こうしたコンビニ各社の動きについて、「変化はここまで来たかと感じた」と不公正なルールをただすため、声をあげ続ける大切さを実感しています。
一方で、植田事務局長は「原材料費の値上げに伴い、本部からの加盟店に対する仕入れ価格も値上がりしている。各店舗が自由に販売価格を設定できるようにすることも必要だ。見切り販売を確実に加盟店の利益につなげていくために、大本の『コンビニ会計』の見直しが重要だ」と指摘します。
「対等な関係への改善なしには根本的には解決しない。巨大な資本力を持った本部とでは、弱小な小売り店が圧倒的に不利だ。根本問題の是正には、法的な整備が欠かせない」と植田事務局長。来年夏の参院選で市民と野党の共闘の勝利と、日本共産党の躍進で国会での力関係を変えてほしいと希望を託します。
コンビニオーナーがよりよい環境で働けるよう、営業と権利を守るルールづくりが求められています。
【コンビニ会計】
コンビニ本部が高額なロイヤルティー(上納金)を確保するために取られている特異な会計手法のことです。通常の会計では、売上金額から仕入れ金額を引いたものが粗利です。「コンビニ会計」では、仕入れ金額に廃棄分(売れ残り分)を含めない仕組みです。そのため粗利が水増しされ、それをもとにロイヤルティーが計算されるため、加盟店にとって経営上の大きな負担になります。
日本共産党提言 FC法 制定急務
たつみコータロー前参院議員・参院大阪選挙区予定候補の話
期限が迫った見切り品の値下げ販売が広がっていることは、これまで加盟店に大企業・本部の言いなりを強要してきた関係に変化をもたらすもので重要です。
見切り販売の制限は独占禁止法違反であり、許されません。コロナ禍で店舗経営は瀬戸際にあり、見切り販売は切実です。食品ロスの低減は気候危機対策にとっても大切です。
廃棄分を「原価」に含めずロイヤルティーを徴収する「コンビニ会計」は極めて異常で、本部との力関係を端的に象徴する仕組みです。
こうした大企業の不公正取引を抜本的に是正し、加盟店の営業と権利を守るため、日本共産党が提言してきたFC法の制定は急務です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年12月29日付掲載
通常の会計では、売上金額から仕入れ金額を引いたものが粗利です。「コンビニ会計」では、仕入れ金額に廃棄分(売れ残り分)を含めない仕組みです。そのため粗利が水増しされ、それをもとにロイヤルティーが計算されるため、加盟店にとって経営上の大きな負担に。
せめて、賞味期限切れで廃棄する前に、値下げして見切り販売を認めよ。当然の事です。やはり大本の『コンビニ会計』の見直しが重要です。
コンビニエンスストアは、全国6万店近くにのぼり、物販だけでなく、防犯や物流を担うなど生活に不可欠な存在です。そのコンビニで消費期限が迫った総菜など見切り品を値下げして販売する店舗が全国に広がっています。店舗オーナーからは「対等でない本部との関係の是正に向けた重要な一歩だ」との声があがっています。(小村優、清水渡、日隈広志)
かつては見られなかったコンビニの見切り販売。今ではどこでも日常の風景になっています。
見切り販売が広がるきっかけは、業界トップのセブン-イレブン本部が2009年、見切り販売に関する加盟店への妨害に対して公正取引委員会から排除命令を受けたことでした。
本紙の取材に対し、ローソン本部は「9割の店舗で見切り販売を行っている」と認めました。
公取動かす
日本共産党は早くからコンビニの見切り販売問題を国会で取り上げてきました。2007年には塩川鉄也衆院議員の追及に、当時の公正取引委員会委員長が、見切り販売禁止を各店舗に押し付けることは独占禁止法上の問題になるとの見解を示しました(07年6月6日)。
13年の参院選挙で初当選したたつみコータロー前議員は共産党の独自調査に基づき、繰り返し参院経済産業委員会で同問題を追及しました。公取委の重い腰をあげさせました。公取委は19年、セブン―イレブンなどの全フランチャイズ(FC)加盟店(5万7524店)を対象とした実態調査を実施。今年4月には、「フランチャイズ・ガイドライン」を改正し、見切り販売の制限は独禁法違反だと明確にしたのです。各社は業務改善を余儀なくされています。
コンビニの多くは「コンビニ本部」とFC契約を結び、「売り上げ」から「原価」を差し引いた粗利の一部(ロイヤルティー)を支払うことで商標の使用許可などを受けています。しかし、本部側は巨大資本の力関係を背景に、加盟店に24時間営業や仕入れでの過剰発注などを強要してきました。
ロイヤルティーの計算では、本部は廃棄や万引きなどの欠損分を「原価」から除いて粗利を水増しするという他に例のない特異な会計方式(「コンビニ会計」)をとっています。見切り販売の手法をとらずに廃棄するほど本部のもうけが増えるからくりです。
覚悟の実施
「いかにオーナーが不利な立場に置かれてきたか、一目でわかる仕組みだ」。こう話すのは関東圏でセブン本部とFC契約を結んだコンビニ経営者のAさん。「本部にたてついて契約終了となったオーナーを何人も見てきた。でも経営を続けるために見切り販売は欠かせない。覚悟して踏み切った」。オーナーたちの勇気ある行動が、重い扉をこじあけました。
全国FC加盟店協会の植田忠義事務局長は「オーナーが声をあげ、その声を国会に届けた日本共産党の役割が決定的だ」と指摘します。
たつみ質問 潮目変えた
コンビニ問題を考えるつどいで報告するたつみコータロー参院議員(当時)=2018年9月23日、大阪市
2013年の参院選挙で日本共産党は改選3議席から8議席へと躍進しました。当選したたつみ氏はコンビニ問題を国会で精力的に取り上げました。
16年5月2日の参院決算委員会では、見切り販売に対する凄惨(せいさん)な妨害実態を告発しました。
「1時間前までは見切り販売をするなと。しかし、店舗オーナーからすれば見切り販売1時間前というのはほとんど売れない。足かせをさせて見切りを事実上制限させている」「見切り販売で値下げしたお弁当、おにぎりを購入してもボーナスポイントが付与されない。つまり差別していることになる」
19年3月14日の同経済産業委員会での質疑で、たつみ氏は前年に大阪府内4千店舗を対象に実施した党独自のアンケート調査結果を示しました。「『20年で1日しか休みがない』、『親が死んでも休めない』、『お正月や災害時には休ませてほしい』。あるオーナーの1カ月の労働時間は367時間。残業は200時間に及び、過労死ラインの80時間の2倍以上です」。実態を示された世耕弘成経済産業相(当時)は「ハッキリ言って持続不可能」「当然コンビニチェーン本部にとっても放置しておける問題ではない」と答弁せざるを得ませんでした。
続けてたつみ氏は、こうした実態の背景に、不当に本部収益を増大させる「コンビニ会計」のからくりがあると指摘。加盟店舗に見切り販売を許さず、「本部のもうけのためにあえて廃棄させる行為が横行している」と突き付けたのです。
「普段ヤジを飛ばす自民党議員までも聞き入っていた」といいます。潮目の変化を実感させる瞬間でした。
日本共産党はこの年の6月、「加盟店の営業と権利を守り、コンビニ業界の健全な発展をはかるため、コンビニ・フランチャイズ法の制定を」と題する緊急提言を発表しました。同提言作成の立役者はたつみ氏でした。見切り販売問題については「オーナーにだけ廃棄負担を押し付けるな」として、見切り販売妨害を生み出す「コンビニ会計」の見直しを迫っています。
態度に変化
たつみ氏の質問、共産党の提言を受け、コンビニを監視すべき国の機関が動き出します。19年10月には公正取引委員会が実態調査を行いました。
さらに今年4月には公取委が「フランチャイズ・ガイドライン」を改正。本部に見切り販売の手続きの簡便化・加盟店への周知を求めました。経済産業省の「新たなコンビニの在り方検討会」でも、本部に「改善計画の提出」を求めており、コンビニ各社の対応につながっています。
セブン―イレブン本部とフランチャイズ契約を結ぶAさんは、ここ数年での本部の加盟店に対する態度の変化を感じています。
「以前は冷蔵庫に入り切らないのに、焼き鳥を一度に『数百本仕入れろ』と言われたこともある。クリスマスケーキや恵方巻、お歳暮…、過剰発注で無理難題を押し付けられるのは日常茶飯事だった。異常な横暴さが今は見られない」。
同時に、「見切り販売は最初の一歩だ」とAさん。「お客さんの動向を常に見ているのは、店舗経営者。その意見を踏まえなければ、本部も生き残れない」と語る口調から、固い決意がにじみます。
大本ただせ
全国FC加盟店協会の植田事務局長は、こうしたコンビニ各社の動きについて、「変化はここまで来たかと感じた」と不公正なルールをただすため、声をあげ続ける大切さを実感しています。
一方で、植田事務局長は「原材料費の値上げに伴い、本部からの加盟店に対する仕入れ価格も値上がりしている。各店舗が自由に販売価格を設定できるようにすることも必要だ。見切り販売を確実に加盟店の利益につなげていくために、大本の『コンビニ会計』の見直しが重要だ」と指摘します。
「対等な関係への改善なしには根本的には解決しない。巨大な資本力を持った本部とでは、弱小な小売り店が圧倒的に不利だ。根本問題の是正には、法的な整備が欠かせない」と植田事務局長。来年夏の参院選で市民と野党の共闘の勝利と、日本共産党の躍進で国会での力関係を変えてほしいと希望を託します。
コンビニオーナーがよりよい環境で働けるよう、営業と権利を守るルールづくりが求められています。
【コンビニ会計】
コンビニ本部が高額なロイヤルティー(上納金)を確保するために取られている特異な会計手法のことです。通常の会計では、売上金額から仕入れ金額を引いたものが粗利です。「コンビニ会計」では、仕入れ金額に廃棄分(売れ残り分)を含めない仕組みです。そのため粗利が水増しされ、それをもとにロイヤルティーが計算されるため、加盟店にとって経営上の大きな負担になります。
日本共産党提言 FC法 制定急務
たつみコータロー前参院議員・参院大阪選挙区予定候補の話
期限が迫った見切り品の値下げ販売が広がっていることは、これまで加盟店に大企業・本部の言いなりを強要してきた関係に変化をもたらすもので重要です。
見切り販売の制限は独占禁止法違反であり、許されません。コロナ禍で店舗経営は瀬戸際にあり、見切り販売は切実です。食品ロスの低減は気候危機対策にとっても大切です。
廃棄分を「原価」に含めずロイヤルティーを徴収する「コンビニ会計」は極めて異常で、本部との力関係を端的に象徴する仕組みです。
こうした大企業の不公正取引を抜本的に是正し、加盟店の営業と権利を守るため、日本共産党が提言してきたFC法の制定は急務です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年12月29日付掲載
通常の会計では、売上金額から仕入れ金額を引いたものが粗利です。「コンビニ会計」では、仕入れ金額に廃棄分(売れ残り分)を含めない仕組みです。そのため粗利が水増しされ、それをもとにロイヤルティーが計算されるため、加盟店にとって経営上の大きな負担に。
せめて、賞味期限切れで廃棄する前に、値下げして見切り販売を認めよ。当然の事です。やはり大本の『コンビニ会計』の見直しが重要です。