けいざい四季報2021① 世界経済 原油高 物価抑制へシフト
新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴って、世界的に資源・エネルギー需要が拡大し、原油価格も上昇しました。インフレ高進を憂慮する米国は金融政策の軸足を物価抑制へシフトしました。中国では、不動産大手の経営危機の波及が懸念されています。
ポイント
① 米国が緩和終了時期を前倒し、ゼロ金利を来年解除の方針。物価抑制ヘシフト
② コロナ禍からの回復に伴い、原油価格が上昇。消費国は備蓄を協調放出の構え
③ 格付け大手が中国恒大を一部デフォルトと認定。IMFは市場への影響を警告
緩和を早期終了
米連邦準備制度理事会(FRB)は12月15日、連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的金融緩和の縮小ペースを月300億ドルと従来の2倍に加速し、終了時期の想定を22年6月から3月へ前倒しする方針を決めました。政策金利見通しでは、22年中に事実上のゼロ金利政策を解除し、3回利上げするシナリオが示されました。
FOMC後の声明では、「高インフレは一時的」としてきたこれまでの文言を削除し、物価高への警戒感を強めました。12月10日公表された11月の米消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比6・8%と、第2次オイルショック後の1982年以来約39年ぶりの高水準となりました。物価高は、エネルギーや中古車だけでなく、家賃や衣料品など広範囲に及んでいます。
FRBは、新型コロナウイルス危機を受けて20年に導入した量的緩和の縮小を11月に始めたばかり。物価上昇圧力が強まる中、量的緩和を早期に終え、利上げに踏み切る構えです。
ニューヨーク証券取引所のスクリーンに映し出されたパウエルFRB議長の記者会見=12月15日(ロイター)
世界経済の主な出来事(10~12月)
7年ぶりの高値
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で10月26日、米国産標準油種WTI先物が1バレル=84・65ドルと、14年10月以来7年ぶりの高値を付けました。コロナ禍からの経済回復に伴い、世界的に資源やエネルギーの需要が拡大し、原油価格も上昇に転じました。
22年の中間選挙を前に、インフレ高進を憂慮するバイデン米大統領は11月23日、原油高対策として、主要消費国の日本、中国、インド、英国、韓国と協調して石油備蓄を放出すると発表しました。中国は「自国の需要に基づいて石油備蓄を放出する」と表明。
一方、石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の産油国で構成するOPECプラスは8月以降、小幅増産を継続。足元の需要増より、その後の需要減を考慮しているとされます。その後、新しい変異株のオミクロン株が出現すると、再び需要減の予想から、原油価格が下落しています。
一部債務不履
格付け大手のフィッチ・レーティングスが12月9日、経営危機の中国不動産開発大手、中国恒大集団が「一部債務不履行(デフォルト)」に陥ったと認定しました。部分的ながらデフォルトとしたのは、格付け大手では初めて。中国企業で過去最大のデフォルトになる可能性があります。
恒大は11月に支払期日があった子会社発行のドル建て社債の利息8250万ドル(約93億円)について、30日間の猶予期間の最終日である米東部時間12月6日(日本時間7日)までに支払う必要がありました。しかし、欧米メディアは債権者が利払いを受けていないと報じていました。
国際通貨基金(IMF)は10月12日、世界の金融システムの安定度を分析した報告書を発表。中国恒大集団について「デフォルトへの懸念が市場で高まっている」と指摘し、中国経済をけん引してきた不動産業界全体に危機が波及すれば「世界の資本市場に影響を及ぼす」と警告していました。
(つづく)(4回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年12月21日付掲載
米国が緩和終了時期を前倒し、ゼロ金利を来年解除の方針。日本は明らかに後れをとってる。
コロナ禍からの経済回復に伴い、世界的に資源やエネルギーの需要が拡大し、原油価格も上昇に。日本では、運輸業界、農業や漁業での燃料高騰に圧迫されています。
新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴って、世界的に資源・エネルギー需要が拡大し、原油価格も上昇しました。インフレ高進を憂慮する米国は金融政策の軸足を物価抑制へシフトしました。中国では、不動産大手の経営危機の波及が懸念されています。
ポイント
① 米国が緩和終了時期を前倒し、ゼロ金利を来年解除の方針。物価抑制ヘシフト
② コロナ禍からの回復に伴い、原油価格が上昇。消費国は備蓄を協調放出の構え
③ 格付け大手が中国恒大を一部デフォルトと認定。IMFは市場への影響を警告
緩和を早期終了
米連邦準備制度理事会(FRB)は12月15日、連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的金融緩和の縮小ペースを月300億ドルと従来の2倍に加速し、終了時期の想定を22年6月から3月へ前倒しする方針を決めました。政策金利見通しでは、22年中に事実上のゼロ金利政策を解除し、3回利上げするシナリオが示されました。
FOMC後の声明では、「高インフレは一時的」としてきたこれまでの文言を削除し、物価高への警戒感を強めました。12月10日公表された11月の米消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比6・8%と、第2次オイルショック後の1982年以来約39年ぶりの高水準となりました。物価高は、エネルギーや中古車だけでなく、家賃や衣料品など広範囲に及んでいます。
FRBは、新型コロナウイルス危機を受けて20年に導入した量的緩和の縮小を11月に始めたばかり。物価上昇圧力が強まる中、量的緩和を早期に終え、利上げに踏み切る構えです。
ニューヨーク証券取引所のスクリーンに映し出されたパウエルFRB議長の記者会見=12月15日(ロイター)
世界経済の主な出来事(10~12月)
10/12 | IMF報告書、中国恒大について「債務不履行の懸念」を指摘 |
10/13 | G20財務相・中銀総裁会議、新国際課税ルールを支持 |
10/26 | WTI先物が1バレル=84.65ドルと2014年10月以来7年ぶりの高値 |
11/3 | FRB、量的金融緩和策の縮小を11月中に開始と決定 |
11/23 | 米大統領、主要消費国と協調した備蓄石油の放出を発表 |
12/2 | OPECプラス、2020年1月も小幅増産の方針を決定 |
12/9 | 格付け大手フィッチ、中国恒大が「一部債務不履行」と認定 |
12/10 | 米労働省、11月の消費者物価指数が前年比6.8%上昇と発表 |
12/15 | FRB、量的緩和策終了を2022年3月に前倒しする方針を決定 |
12/16 | 英イングランド銀、政策金利を0.15%引き上げ |
7年ぶりの高値
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で10月26日、米国産標準油種WTI先物が1バレル=84・65ドルと、14年10月以来7年ぶりの高値を付けました。コロナ禍からの経済回復に伴い、世界的に資源やエネルギーの需要が拡大し、原油価格も上昇に転じました。
22年の中間選挙を前に、インフレ高進を憂慮するバイデン米大統領は11月23日、原油高対策として、主要消費国の日本、中国、インド、英国、韓国と協調して石油備蓄を放出すると発表しました。中国は「自国の需要に基づいて石油備蓄を放出する」と表明。
一方、石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の産油国で構成するOPECプラスは8月以降、小幅増産を継続。足元の需要増より、その後の需要減を考慮しているとされます。その後、新しい変異株のオミクロン株が出現すると、再び需要減の予想から、原油価格が下落しています。
一部債務不履
格付け大手のフィッチ・レーティングスが12月9日、経営危機の中国不動産開発大手、中国恒大集団が「一部債務不履行(デフォルト)」に陥ったと認定しました。部分的ながらデフォルトとしたのは、格付け大手では初めて。中国企業で過去最大のデフォルトになる可能性があります。
恒大は11月に支払期日があった子会社発行のドル建て社債の利息8250万ドル(約93億円)について、30日間の猶予期間の最終日である米東部時間12月6日(日本時間7日)までに支払う必要がありました。しかし、欧米メディアは債権者が利払いを受けていないと報じていました。
国際通貨基金(IMF)は10月12日、世界の金融システムの安定度を分析した報告書を発表。中国恒大集団について「デフォルトへの懸念が市場で高まっている」と指摘し、中国経済をけん引してきた不動産業界全体に危機が波及すれば「世界の資本市場に影響を及ぼす」と警告していました。
(つづく)(4回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年12月21日付掲載
米国が緩和終了時期を前倒し、ゼロ金利を来年解除の方針。日本は明らかに後れをとってる。
コロナ禍からの経済回復に伴い、世界的に資源やエネルギーの需要が拡大し、原油価格も上昇に。日本では、運輸業界、農業や漁業での燃料高騰に圧迫されています。