GAFA支配③ 米の諜報機関が後押し
10月28日、インターネット交流サイト(SNS)世界最大手の米フェイスブックは、社名を「Meta(メタ)」に変更すると発表しました。利用者の投稿の扱いなどをめぐって批判が強まる中、社名変更はそれをかわすための窮余の策と受けとめられています。
フェイスブックをめぐっては、昨年の米議会襲撃事件の際、破壊活動が本格化するまで、暴力をあおる投稿を制限しなかったことに批判の声があがりました。フェイスブックの約5千万人の個人情報が、2016年の米大統領選でドナルド・トランプ候補(当時)陣営に利用されたことも報じられています。
最近でも、米ワシントン・ポスト紙(21年10月25日付)は、フェイスブックのザッカーバーグ氏がベトナム共産党の要求を受け入れ、反政府派の投稿を検閲することを認めていたとする証言を紹介しています。
米カリフォルニア州クパチーノにあるアップル本社(ロイター)
行動巧みに誘導
スマートフォン(スマホ)はその便利さ、手軽さから身近な存在となり、生活のあらゆる場面に関わっています。私たちはスマホで本を注文し、疑問に思うことを検索し、目的地までの経路を調べ、他人の投稿に「いいね!」をクリックし、好みの動画を見ます。
グーグルやフェイスブックはそうした情報を蓄積して、利用者の趣味、交友関係、思想、支持政党まで分析することができます。グーグルは検索履歴から、フェイスブックは投稿や「いいね!」の履歴から、個人の行動に関する情報を独占的に蓄積し、解析しています。アマゾンも購入・閲覧履歴から個人情報を集積します。
世界の数十億人分の個人情報が吸い上げられ、人工知能(AI)によって分析されて、スマホの画面に購買意欲をくすぐる商品を表示するために活用されています。各人の好みに合わせて表示内容を変える「ターゲティング広告」です。
グーグルやフェイスブックやアマゾンは、あたかも自分の自由意思で判断しているかのように利用者の行動を巧みに誘導し、支配しているのです。
「われわれの生活に関するあらゆる情報が収集・販売されるのは正常で不可避なことだと認めてしまったら、われわれは情報以上のものを失う。人としての自由を失うのだ」
アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は21年1月、個人情報の収集に依存するフェイスブックやグーグルの事業構造をこう批判しました。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック〈現メタ〉、アマゾン)の一角を占める巨大企業からの本質を突いた指摘です。
監視や規制回避
新自由主義のイデオロギーに染まった権力や、「テロとのたたかい」を叫ぶ米国の諜報(ちょうほう)機関にも、GAFAは積極的に接近しています。
GAFAは新自由主義の流れに乗り、法律や規制からのあらゆる「自由」を要求しています。そしてプラットフォーム(インターネット上で売り手と買い手を結びつけるビジネス)やアルゴリズム(AIによるデータ処理の手順)を制限するような外部からの監視や規制を「表現の自由」の名のもとに避けることに成功してきました。
1996年に米国で成立した「通信品位法」230条は、ウェブサイトは発行者ではなく仲介者だという考え方を制度化しました。利用者が発信した情報に関する訴訟からウェブサイトの所有者を保護する法律で、フェイスブック、グーグル、ツイッターを守る要塞(ようさい)となっています。
さらに、GAFAの異常な成長を米諜報機関が後押ししています。デジタル情報の収集・分析を行う米国家安全保障局(NSA)のマイク・マッコーネル第13代長官は2010年にこう述べました。
「国の重要なインフラを守るために、…情報が公的機関と民間機関、機密と非機密との間を速やかに行き来できるよう、民間企業との効果的なパートナーシップを築かなければならない」
NSAの元長官キース・アレクサンダー氏は20年9月、アマゾンの取締役に就任しました。「9・11テロ」を契機に強まったGAFAと米諜報申機関との蜜月は、現在にいたるまで継ぎ目なく続いています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年12月2日付掲載
「われわれの生活に関するあらゆる情報が収集・販売されるのは正常で不可避なことだと認めてしまったら、われわれは情報以上のものを失う。人としての自由を失うのだ」
アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は21年1月、個人情報の収集に依存するフェイスブックやグーグルの事業構造をこう批判しました。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック〈現メタ〉、アマゾン)の一角を占める巨大企業からの本質を突いた指摘。
便利さとの代わりに、プライバシーが握られ、操られている実態。
10月28日、インターネット交流サイト(SNS)世界最大手の米フェイスブックは、社名を「Meta(メタ)」に変更すると発表しました。利用者の投稿の扱いなどをめぐって批判が強まる中、社名変更はそれをかわすための窮余の策と受けとめられています。
フェイスブックをめぐっては、昨年の米議会襲撃事件の際、破壊活動が本格化するまで、暴力をあおる投稿を制限しなかったことに批判の声があがりました。フェイスブックの約5千万人の個人情報が、2016年の米大統領選でドナルド・トランプ候補(当時)陣営に利用されたことも報じられています。
最近でも、米ワシントン・ポスト紙(21年10月25日付)は、フェイスブックのザッカーバーグ氏がベトナム共産党の要求を受け入れ、反政府派の投稿を検閲することを認めていたとする証言を紹介しています。
米カリフォルニア州クパチーノにあるアップル本社(ロイター)
行動巧みに誘導
スマートフォン(スマホ)はその便利さ、手軽さから身近な存在となり、生活のあらゆる場面に関わっています。私たちはスマホで本を注文し、疑問に思うことを検索し、目的地までの経路を調べ、他人の投稿に「いいね!」をクリックし、好みの動画を見ます。
グーグルやフェイスブックはそうした情報を蓄積して、利用者の趣味、交友関係、思想、支持政党まで分析することができます。グーグルは検索履歴から、フェイスブックは投稿や「いいね!」の履歴から、個人の行動に関する情報を独占的に蓄積し、解析しています。アマゾンも購入・閲覧履歴から個人情報を集積します。
世界の数十億人分の個人情報が吸い上げられ、人工知能(AI)によって分析されて、スマホの画面に購買意欲をくすぐる商品を表示するために活用されています。各人の好みに合わせて表示内容を変える「ターゲティング広告」です。
グーグルやフェイスブックやアマゾンは、あたかも自分の自由意思で判断しているかのように利用者の行動を巧みに誘導し、支配しているのです。
「われわれの生活に関するあらゆる情報が収集・販売されるのは正常で不可避なことだと認めてしまったら、われわれは情報以上のものを失う。人としての自由を失うのだ」
アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は21年1月、個人情報の収集に依存するフェイスブックやグーグルの事業構造をこう批判しました。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック〈現メタ〉、アマゾン)の一角を占める巨大企業からの本質を突いた指摘です。
監視や規制回避
新自由主義のイデオロギーに染まった権力や、「テロとのたたかい」を叫ぶ米国の諜報(ちょうほう)機関にも、GAFAは積極的に接近しています。
GAFAは新自由主義の流れに乗り、法律や規制からのあらゆる「自由」を要求しています。そしてプラットフォーム(インターネット上で売り手と買い手を結びつけるビジネス)やアルゴリズム(AIによるデータ処理の手順)を制限するような外部からの監視や規制を「表現の自由」の名のもとに避けることに成功してきました。
1996年に米国で成立した「通信品位法」230条は、ウェブサイトは発行者ではなく仲介者だという考え方を制度化しました。利用者が発信した情報に関する訴訟からウェブサイトの所有者を保護する法律で、フェイスブック、グーグル、ツイッターを守る要塞(ようさい)となっています。
さらに、GAFAの異常な成長を米諜報機関が後押ししています。デジタル情報の収集・分析を行う米国家安全保障局(NSA)のマイク・マッコーネル第13代長官は2010年にこう述べました。
「国の重要なインフラを守るために、…情報が公的機関と民間機関、機密と非機密との間を速やかに行き来できるよう、民間企業との効果的なパートナーシップを築かなければならない」
NSAの元長官キース・アレクサンダー氏は20年9月、アマゾンの取締役に就任しました。「9・11テロ」を契機に強まったGAFAと米諜報申機関との蜜月は、現在にいたるまで継ぎ目なく続いています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年12月2日付掲載
「われわれの生活に関するあらゆる情報が収集・販売されるのは正常で不可避なことだと認めてしまったら、われわれは情報以上のものを失う。人としての自由を失うのだ」
アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は21年1月、個人情報の収集に依存するフェイスブックやグーグルの事業構造をこう批判しました。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック〈現メタ〉、アマゾン)の一角を占める巨大企業からの本質を突いた指摘。
便利さとの代わりに、プライバシーが握られ、操られている実態。