変わる高校野球② 大阪・独自リーグ戦 成功体験が選手伸ばす
10月の日曜日、大阪府東大阪市の府立花園高校グラウンドで、同校と府立香里丘(こうりがおか)高校(枚方市)が独自リーグ戦「リーガ・アグレシーバ(スペイン語で『積極的なリーグ』)」の公式戦を行いました。負けたら終わりのトーナメントが主流の高校野球ながら、リーグ戦には、選手を伸ばすルールや工夫がありました。(山崎賢太)
外野に飛んだヒット性の当たりを、落下点に駆け込んだ外野手が捕球すると、周りから「ナイス!」「いいプレーだ!」と声が上がりました。
継投、代打、代走が頻繁に送られ、次々とベンチから選手が飛び出していきます。
選手同士の声がけは自然で前向き。好投する投手がベンチで「頼むわ、点取ってくれ。俺、のってきてるから!」と明るくチームを鼓舞します。
特殊なルール
毎年10月から11月にかけての週末を使って行われるこのリーグには、特殊なルールがあります。
投手は1試合の球数制限と、50球以上投げた場合の連投制限があります。また、1日2試合消化する際はベンチ入りした選手全員を一定イニング以上出場させなければいけません。
バットは木製か低反発金属バットを使用。投手は直球中心で変化球は肘への負担が比較的軽いカーブとチェンジアップが推奨されます。
部員の多い高校は複数のチームでエントリーでき、多くの出場機会を保証します。
2015年に大阪の6校ではじまったこのリーグは、毎年参加校を増やし、いまや14都府県約80校に広がり、それぞれの地域でリーグ戦が行われています。
創設当時から関わる香里丘高の藤本祐貴部長(28)=同校保健体育教諭=は「それぞれのルールに目的があって、それは選手にうまくなってもらうこと、けがをさせないことにつながっています」と語ります。
中でもバットの規制は効果が大きいといいます。「選手たちに力がつきました。試合用として販売される従来のよく飛ぶ金属バットとは違うので、体全体を使ったスイングが必要です。ボールをとらえるポイントが体の近くになって、手も足も出なかった強豪校の投手からもいい当たりが出るようになりました」
プレーする選手たち=大阪・東大阪市の花園高校グラウンド
失敗が経験に
香里丘高ではリーグ戦期間中は平日をすべて自主練習にしています。「毎週末試合があるので、そこで課題を持ち帰ることができる。平日の練習で改善し、次の試合でうまくいけば成功体験になりますよね。失敗したなら成功するまで改善を繰り返せばいいんです」
花園高の山住将也監督(35)=同校社会科教諭=もリーグ戦の効果を実感しています。「試合後のミーティングでも、選手自身でチーム全体について話し合えるようになりました。試合から得られる課題は具体的なので振り返りやすい」
同校の榛田(はりた)雅人部長(54)=同校保健体育教諭=は言います。「最後の夏の公式戦はトーナメントなので、エース格にはこのリーグよりも多くの球数を投げてもらうことがあります。でも、普段から投げ過ぎないようにしているから少し無理できる余裕がある。もちろん控えもリーグで育っているから、継投もできる。チームが強くなりますよ」
リーグに取り組む思いを指導者は、こう語ります。
「高校野球がけがをして終わり、公式戦に出ないまま終わりだと、選手が将来、自分の子どもに野球をやらせたくなるだろうかと疑問に思います。野球の発展を考えると、大学野球やプロを目指さない子でも自分で考えてうまくなる経験をして引退してほしい」(香里丘高・藤本部長)
「同感です。やっぱり“野球ってええな”で終わってほしいです」(花園高・山住監督)
2試合を終え、上級生同士のアフターマッチファンクション(試合の振り返り)とグラウンド整備を済ませた選手たちは、午後3時ごろに帰宅しました。
「早くていいでしょう。このくらいの時間に帰れたら野球以外のこともやれる。高校生なんやからそういうのも大事です。その時間で勉強をするかは知らんけどね」。花園高・榛田部長は笑いました。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年12月9日付掲載
リーグ戦なので、一度負けたら終わりでなくって、チームも選手も出場機会が増えます。
木製か低反発金属バットを使用、投手は直球中心で変化球は肘への負担が比較的軽いカーブとチェンジアップが推奨。選手に力がつくように。
野球を楽しんでもらえるように。
10月の日曜日、大阪府東大阪市の府立花園高校グラウンドで、同校と府立香里丘(こうりがおか)高校(枚方市)が独自リーグ戦「リーガ・アグレシーバ(スペイン語で『積極的なリーグ』)」の公式戦を行いました。負けたら終わりのトーナメントが主流の高校野球ながら、リーグ戦には、選手を伸ばすルールや工夫がありました。(山崎賢太)
外野に飛んだヒット性の当たりを、落下点に駆け込んだ外野手が捕球すると、周りから「ナイス!」「いいプレーだ!」と声が上がりました。
継投、代打、代走が頻繁に送られ、次々とベンチから選手が飛び出していきます。
選手同士の声がけは自然で前向き。好投する投手がベンチで「頼むわ、点取ってくれ。俺、のってきてるから!」と明るくチームを鼓舞します。
特殊なルール
毎年10月から11月にかけての週末を使って行われるこのリーグには、特殊なルールがあります。
投手は1試合の球数制限と、50球以上投げた場合の連投制限があります。また、1日2試合消化する際はベンチ入りした選手全員を一定イニング以上出場させなければいけません。
バットは木製か低反発金属バットを使用。投手は直球中心で変化球は肘への負担が比較的軽いカーブとチェンジアップが推奨されます。
部員の多い高校は複数のチームでエントリーでき、多くの出場機会を保証します。
2015年に大阪の6校ではじまったこのリーグは、毎年参加校を増やし、いまや14都府県約80校に広がり、それぞれの地域でリーグ戦が行われています。
創設当時から関わる香里丘高の藤本祐貴部長(28)=同校保健体育教諭=は「それぞれのルールに目的があって、それは選手にうまくなってもらうこと、けがをさせないことにつながっています」と語ります。
中でもバットの規制は効果が大きいといいます。「選手たちに力がつきました。試合用として販売される従来のよく飛ぶ金属バットとは違うので、体全体を使ったスイングが必要です。ボールをとらえるポイントが体の近くになって、手も足も出なかった強豪校の投手からもいい当たりが出るようになりました」
プレーする選手たち=大阪・東大阪市の花園高校グラウンド
失敗が経験に
香里丘高ではリーグ戦期間中は平日をすべて自主練習にしています。「毎週末試合があるので、そこで課題を持ち帰ることができる。平日の練習で改善し、次の試合でうまくいけば成功体験になりますよね。失敗したなら成功するまで改善を繰り返せばいいんです」
花園高の山住将也監督(35)=同校社会科教諭=もリーグ戦の効果を実感しています。「試合後のミーティングでも、選手自身でチーム全体について話し合えるようになりました。試合から得られる課題は具体的なので振り返りやすい」
同校の榛田(はりた)雅人部長(54)=同校保健体育教諭=は言います。「最後の夏の公式戦はトーナメントなので、エース格にはこのリーグよりも多くの球数を投げてもらうことがあります。でも、普段から投げ過ぎないようにしているから少し無理できる余裕がある。もちろん控えもリーグで育っているから、継投もできる。チームが強くなりますよ」
リーグに取り組む思いを指導者は、こう語ります。
「高校野球がけがをして終わり、公式戦に出ないまま終わりだと、選手が将来、自分の子どもに野球をやらせたくなるだろうかと疑問に思います。野球の発展を考えると、大学野球やプロを目指さない子でも自分で考えてうまくなる経験をして引退してほしい」(香里丘高・藤本部長)
「同感です。やっぱり“野球ってええな”で終わってほしいです」(花園高・山住監督)
2試合を終え、上級生同士のアフターマッチファンクション(試合の振り返り)とグラウンド整備を済ませた選手たちは、午後3時ごろに帰宅しました。
「早くていいでしょう。このくらいの時間に帰れたら野球以外のこともやれる。高校生なんやからそういうのも大事です。その時間で勉強をするかは知らんけどね」。花園高・榛田部長は笑いました。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年12月9日付掲載
リーグ戦なので、一度負けたら終わりでなくって、チームも選手も出場機会が増えます。
木製か低反発金属バットを使用、投手は直球中心で変化球は肘への負担が比較的軽いカーブとチェンジアップが推奨。選手に力がつくように。
野球を楽しんでもらえるように。