ASEANとインド太平洋 成果と展望① 団結の力 世界に広げる
国際社会で東南アジア諸国連合(ASEAN)をインド太平洋地域の中心として重視する傾向が強まっています。ASEANが築いたどのような成果が、各国を引き付けるのか。厳しい国際情勢下での課題と展望について、ベトナム高官代表としてASEAN外交に携わってきたファム・クアン・ビン元外務次官に考えを聞きました。
(ハノイ=井上歩 写真も)

ベトナム元外務次官 ファム・クアン・ビンさんに聞く

ファム・クアン・ビン 1980年ベトナム外務省入省。85年豪キャンベラ大学外学院卒。国連駐在代表部公使参事官などを経て2007年から14年まで、外務省ASEAN局長、大臣補佐官、外務次官(11~14年)としてベトナムのASEAN高官会合(SOM)代表を務める。14~18年に駐米大使。
ASEANの55年を振り返り、最も重要だったのはASEANが10力国になったことです。東南アジアの国々はもともと分断され、疑心を持って互いに対立していました。しかし95~99年にベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアが加盟し、分断の歴史を閉じ、東南アジア10カ国が団結して地域を代表できるようになりました。10カ国の和解、合意と一致。まさにこれがASEANにとても大きな力を持たせたのです。
第二は、ASEANが自らを強化したことです。1967年の静かなASEAN設立宣言から出発して、憲章と行動規範、組織とメカニズムを持つ地域機構に成長しました。いま、“政治的に結束し、経済的に統合し、社会的に責任ある”共同体を構築するプロセスを進んでおり、さらに共通の利益を広げようとしています。

ARF ASEAN地域フォーラム。27力国・地域機構がアジア太平洋の安全保障問題を議論。南シナ海問題対応で90年代から役割。
EAS 東アジアサミット。ASEANを中心に日米中ロなど18力国首脳が戦略問題を議論。2011年、地域平和のための「バリ原則」宣言を採択。インド太平洋地域の主要な対話・協力枠組みとして強化の過程にある。
ADMMプラス 拡大ASEAN国防相会議。EASと同様の18力国で国防当局間の信頼構築、感染症・災害対応などでの協力を進める。
地域外とも協力
第三は、ASEANが地域外のパートナー(協力国)との結びつきを強めてきたことです。いまASEANが持つ協力のネットワークには世界の主要国がそろって参加しています。国連安保理常任理事国、日本、インド、韓国、オーストラリア、ニュージーランドといった重要な国々です。
このことには多くの意義があります。パートナーとなった国々は、ASEANの目標を支持し、共同体構築を支援する。私たちが原則や方向性を地域外の諸国に共有してもらいたい時も、パートナーたちに支持される。東南アジア友好協力条約(TAC)などのASEANの規範と原則は、より広範囲の地域・国際規範へと拡大しています。ASEANは大国との関係でも、地域平和、ルールに基づく秩序、平等互恵などの原則を強調しています。
共通の行動計画
第四に、ARF、EAS、ADMMプラス(別項)などの多国間メカニズムを構築してきたことが重要です。
こうした共通のプロセスで諸国を結ぶと、少なくとも問題を日常的に協議する場を得られます。いずれもASEANのパートナーである大国同士が、対話する機会を得ます。
さらに、感染症対策、気候危機対策などの課題で共通の行動計画を作成し、南シナ海問題やメコン川の水資源管理で共同声明を出すなど、問題に共同で対応できます。各国が共に行動を決めていくことには、とても重要な意義があります。
ASEANのように十数力国のパートナーとつながって、政治、安全保障、経済、文化、社会を広範に議論している地域機構はほかにありません。中小国が集まったASEANは積極的中立を志向し、だれも傷つけずに、地域共通の財産を積み上げていく場所を生み出しました。このようなやり方だからこそ、ASEANの目標や原則、行動計画は各国から支持されるのです。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年1月6日付掲載
ASEANの55年を振り返り、最も重要だったのはASEANが10力国になったこと。95~99年にベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアが加盟し、分断の歴史を閉じ、東南アジア10カ国が団結して地域を代表できるようなった。
ARF、EAS、ADMMプラスなどの多国間メカニズムを構築してきたことが重要。
日本共産党の2022年党旗びらきの志位委員長のあいさつで、EAS(東アジアサミット)が紹介されました。ASEANにプラス、日本、韓国、中国に、オーストラリア、ニュージーランド、インド、米国、ロシアが加わった東アジアの平和の枠組みがすでに存在していること。
日本共産党は、北東アジアでもASEANの様な平和の共同体を提唱していますが、すでに存在しているASEANを主体をした平和の共同体を北東アジアまで拡大することで東アジア全体の平和の共同体の実現が現実味を帯びてきます。
国際社会で東南アジア諸国連合(ASEAN)をインド太平洋地域の中心として重視する傾向が強まっています。ASEANが築いたどのような成果が、各国を引き付けるのか。厳しい国際情勢下での課題と展望について、ベトナム高官代表としてASEAN外交に携わってきたファム・クアン・ビン元外務次官に考えを聞きました。
(ハノイ=井上歩 写真も)

ベトナム元外務次官 ファム・クアン・ビンさんに聞く

ファム・クアン・ビン 1980年ベトナム外務省入省。85年豪キャンベラ大学外学院卒。国連駐在代表部公使参事官などを経て2007年から14年まで、外務省ASEAN局長、大臣補佐官、外務次官(11~14年)としてベトナムのASEAN高官会合(SOM)代表を務める。14~18年に駐米大使。
ASEANの55年を振り返り、最も重要だったのはASEANが10力国になったことです。東南アジアの国々はもともと分断され、疑心を持って互いに対立していました。しかし95~99年にベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアが加盟し、分断の歴史を閉じ、東南アジア10カ国が団結して地域を代表できるようになりました。10カ国の和解、合意と一致。まさにこれがASEANにとても大きな力を持たせたのです。
第二は、ASEANが自らを強化したことです。1967年の静かなASEAN設立宣言から出発して、憲章と行動規範、組織とメカニズムを持つ地域機構に成長しました。いま、“政治的に結束し、経済的に統合し、社会的に責任ある”共同体を構築するプロセスを進んでおり、さらに共通の利益を広げようとしています。

ARF ASEAN地域フォーラム。27力国・地域機構がアジア太平洋の安全保障問題を議論。南シナ海問題対応で90年代から役割。
EAS 東アジアサミット。ASEANを中心に日米中ロなど18力国首脳が戦略問題を議論。2011年、地域平和のための「バリ原則」宣言を採択。インド太平洋地域の主要な対話・協力枠組みとして強化の過程にある。
ADMMプラス 拡大ASEAN国防相会議。EASと同様の18力国で国防当局間の信頼構築、感染症・災害対応などでの協力を進める。
地域外とも協力
第三は、ASEANが地域外のパートナー(協力国)との結びつきを強めてきたことです。いまASEANが持つ協力のネットワークには世界の主要国がそろって参加しています。国連安保理常任理事国、日本、インド、韓国、オーストラリア、ニュージーランドといった重要な国々です。
このことには多くの意義があります。パートナーとなった国々は、ASEANの目標を支持し、共同体構築を支援する。私たちが原則や方向性を地域外の諸国に共有してもらいたい時も、パートナーたちに支持される。東南アジア友好協力条約(TAC)などのASEANの規範と原則は、より広範囲の地域・国際規範へと拡大しています。ASEANは大国との関係でも、地域平和、ルールに基づく秩序、平等互恵などの原則を強調しています。
共通の行動計画
第四に、ARF、EAS、ADMMプラス(別項)などの多国間メカニズムを構築してきたことが重要です。
こうした共通のプロセスで諸国を結ぶと、少なくとも問題を日常的に協議する場を得られます。いずれもASEANのパートナーである大国同士が、対話する機会を得ます。
さらに、感染症対策、気候危機対策などの課題で共通の行動計画を作成し、南シナ海問題やメコン川の水資源管理で共同声明を出すなど、問題に共同で対応できます。各国が共に行動を決めていくことには、とても重要な意義があります。
ASEANのように十数力国のパートナーとつながって、政治、安全保障、経済、文化、社会を広範に議論している地域機構はほかにありません。中小国が集まったASEANは積極的中立を志向し、だれも傷つけずに、地域共通の財産を積み上げていく場所を生み出しました。このようなやり方だからこそ、ASEANの目標や原則、行動計画は各国から支持されるのです。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年1月6日付掲載
ASEANの55年を振り返り、最も重要だったのはASEANが10力国になったこと。95~99年にベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアが加盟し、分断の歴史を閉じ、東南アジア10カ国が団結して地域を代表できるようなった。
ARF、EAS、ADMMプラスなどの多国間メカニズムを構築してきたことが重要。
日本共産党の2022年党旗びらきの志位委員長のあいさつで、EAS(東アジアサミット)が紹介されました。ASEANにプラス、日本、韓国、中国に、オーストラリア、ニュージーランド、インド、米国、ロシアが加わった東アジアの平和の枠組みがすでに存在していること。
日本共産党は、北東アジアでもASEANの様な平和の共同体を提唱していますが、すでに存在しているASEANを主体をした平和の共同体を北東アジアまで拡大することで東アジア全体の平和の共同体の実現が現実味を帯びてきます。