気候危機打開へ 北欧フィンランド先進都市を訪ねて① 脱炭素「1.5度生活」 トゥルク市、2029年実質ゼロへ
北欧フィンランドの南西部トゥルク市は、2029年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロ、40年までに廃棄物もなくして完全ゼロを達成する目標を掲げており、欧州を代表する気候先進都市です。市は「1・5度生活キャンペーン」を展開し、.市民や企業に、温室効果ガスの排出削減のための行動を呼びかけています。市を訪れ、取り組みの一部を取材しました。(トゥルク〈フィンランド南西部〉=桑野白馬 写真も)

2月の市内の気温は氷点下で、市内中心部を通る川は凍っています。それでも、自転車に乗る人の姿をあちこちで見かけます。市内を走るバスは、3分の1が電動車です。騒音や振動が少なく、快適な乗り心地です。市は今後、すべてのバスを電動車に切り替える方針です。
停留所で、ハートマークに「1・5度生活」と書いた広告が目に留まりました。「気候に優しいクリスマスの過ごし方とは。市のウェブサイトをご覧ください」。市のホームページを開くと、ツリーやプレゼントから出るクリスマス関連のごみのリサイクル方法や、電力消費量を抑えるコツを参照できます。

「1.5度生活」を呼びかける広告と市内を走る電動バス=2021年12月、トゥルク市内
市は1990年代から、温室効果ガスの排出量削減による持続可能な街づくりを目指してきました。2015年、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」で、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2度未満、できれば1・5度に抑えるとの目標が制定されたことを受け、脱炭素の生活を送る「1・5度生活キャンペーン」を始めました。
「今年はクリスマスのライトアップを控えめにしてみた。雰囲気もいい感じでしょう」。市内の学生寮で暮らすマルティーナ・アンジェレリさん(33)が、ペットの猫と出迎えてくれました。アンジェレリさんは、イタリア北西部アレッサンドリア出身。トゥルク市に留学して以降、「キャンペーンを知り、環境への影響を考えて行動するようになった」と言います。
「必要な物だけ買いものするようにしている。自分も温暖化対策に貢献できている気がして、うれしい」
おしゃれに小さな一歩
アンジェレリさんは同じ寮に住むエルミラさん(35)と、シャワーを浴びる時間を短縮する「5分間シャワーチャレンジ」にも参加しています。これは、寮を運営する「トゥルク学生財団」(TYS)が市を通じて呼びかけるキャンペーンの一つ。入居者や関心のある人におしゃれな砂時計を渡して啓発活動をします。
エルミラさんは砂時計をひっくり返し「5分は少ないと思うけど、意外と大丈夫。あなたもやってもたら」と笑顔をみせます。「環境問題に貢献したいと思っても、大胆なことはなかなかできない。でも、一人ひとりが責任を持ち、小さな一歩を踏み出すことならできる」

シャワーチャレンジの砂時計を見せるアンジェレリさん
TYSのピルヨ・ウァイトマー渉外担当責任者は「水の生産には大量のエネルギーが必要となるため、水の節約はエネルギー消費の抑制につながる」と話します。シャワーの時間を10分から5分に減らすだけで、毎回60リットルの水を節約できるといいます。
TYSは500枚以上の太陽光パネルを設置した学生寮も運営し、余剰電力を供給しています。ウァイトマー氏は「住まい関連の二酸化炭素排出量は非常に多い。私たちは、持続可能な学生寮の運営を通じ『1・5度生活』に貢献する」と語りました。
気候変動直撃のフィンランド 国も先進的政策掲げる
フィンランドは、北極圏の国として温暖化の直撃を受けています。ニーニスト大統領は、昨年11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、「北極圏を失えば、地球を失うことになる」と警告しました。
政府は、世界でも先進的な2035年までの実質排出ゼロの実現を目指しています。目標達成へ向け、環境・気候変動相が主催する「作業部会」では、経済、運輸、貿易、農林、厚生などの閣僚が省庁横断的に、排出削減や省エネ、エネルギーや食糧生産の転換を進めています。
政府はまた、自治体の気候変動対策を推進するために、補助金で支援。住民や企業の行動を変えていく働きかけを期待しています。
フィンランドは19年の総選挙を受け、社民党、中央党、緑の党、左派同盟、スウェーデン人民党の5党による左派・環境保護派主体の連立政権が誕生しています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年1月16日付掲載
北欧フィンランド南西部のトゥルク市は1990年代から、温室効果ガスの排出量削減による持続可能な街づくりを目指してきた。
発電に再生可能エネルギーを使うのはもちろんの事、電力の消費を抑えることも、「ちょこっと」から工夫している。
シャワーを浴びる時間を短縮する「5分間シャワーチャレンジ」という取り組みも。水の生産には大量のエネルギーが必要となるため、水の節約はエネルギー消費の抑制につながると。
もちろん大本で、経済、運輸、貿易、農林、厚生などの閣僚が省庁横断的に、排出削減や省エネ、エネルギーや食糧生産の転換を進めてる。
北欧フィンランドの南西部トゥルク市は、2029年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロ、40年までに廃棄物もなくして完全ゼロを達成する目標を掲げており、欧州を代表する気候先進都市です。市は「1・5度生活キャンペーン」を展開し、.市民や企業に、温室効果ガスの排出削減のための行動を呼びかけています。市を訪れ、取り組みの一部を取材しました。(トゥルク〈フィンランド南西部〉=桑野白馬 写真も)

2月の市内の気温は氷点下で、市内中心部を通る川は凍っています。それでも、自転車に乗る人の姿をあちこちで見かけます。市内を走るバスは、3分の1が電動車です。騒音や振動が少なく、快適な乗り心地です。市は今後、すべてのバスを電動車に切り替える方針です。
停留所で、ハートマークに「1・5度生活」と書いた広告が目に留まりました。「気候に優しいクリスマスの過ごし方とは。市のウェブサイトをご覧ください」。市のホームページを開くと、ツリーやプレゼントから出るクリスマス関連のごみのリサイクル方法や、電力消費量を抑えるコツを参照できます。

「1.5度生活」を呼びかける広告と市内を走る電動バス=2021年12月、トゥルク市内
市は1990年代から、温室効果ガスの排出量削減による持続可能な街づくりを目指してきました。2015年、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」で、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2度未満、できれば1・5度に抑えるとの目標が制定されたことを受け、脱炭素の生活を送る「1・5度生活キャンペーン」を始めました。
「今年はクリスマスのライトアップを控えめにしてみた。雰囲気もいい感じでしょう」。市内の学生寮で暮らすマルティーナ・アンジェレリさん(33)が、ペットの猫と出迎えてくれました。アンジェレリさんは、イタリア北西部アレッサンドリア出身。トゥルク市に留学して以降、「キャンペーンを知り、環境への影響を考えて行動するようになった」と言います。
「必要な物だけ買いものするようにしている。自分も温暖化対策に貢献できている気がして、うれしい」
おしゃれに小さな一歩
アンジェレリさんは同じ寮に住むエルミラさん(35)と、シャワーを浴びる時間を短縮する「5分間シャワーチャレンジ」にも参加しています。これは、寮を運営する「トゥルク学生財団」(TYS)が市を通じて呼びかけるキャンペーンの一つ。入居者や関心のある人におしゃれな砂時計を渡して啓発活動をします。
エルミラさんは砂時計をひっくり返し「5分は少ないと思うけど、意外と大丈夫。あなたもやってもたら」と笑顔をみせます。「環境問題に貢献したいと思っても、大胆なことはなかなかできない。でも、一人ひとりが責任を持ち、小さな一歩を踏み出すことならできる」

シャワーチャレンジの砂時計を見せるアンジェレリさん
TYSのピルヨ・ウァイトマー渉外担当責任者は「水の生産には大量のエネルギーが必要となるため、水の節約はエネルギー消費の抑制につながる」と話します。シャワーの時間を10分から5分に減らすだけで、毎回60リットルの水を節約できるといいます。
TYSは500枚以上の太陽光パネルを設置した学生寮も運営し、余剰電力を供給しています。ウァイトマー氏は「住まい関連の二酸化炭素排出量は非常に多い。私たちは、持続可能な学生寮の運営を通じ『1・5度生活』に貢献する」と語りました。
気候変動直撃のフィンランド 国も先進的政策掲げる
フィンランドは、北極圏の国として温暖化の直撃を受けています。ニーニスト大統領は、昨年11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、「北極圏を失えば、地球を失うことになる」と警告しました。
政府は、世界でも先進的な2035年までの実質排出ゼロの実現を目指しています。目標達成へ向け、環境・気候変動相が主催する「作業部会」では、経済、運輸、貿易、農林、厚生などの閣僚が省庁横断的に、排出削減や省エネ、エネルギーや食糧生産の転換を進めています。
政府はまた、自治体の気候変動対策を推進するために、補助金で支援。住民や企業の行動を変えていく働きかけを期待しています。
フィンランドは19年の総選挙を受け、社民党、中央党、緑の党、左派同盟、スウェーデン人民党の5党による左派・環境保護派主体の連立政権が誕生しています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年1月16日付掲載
北欧フィンランド南西部のトゥルク市は1990年代から、温室効果ガスの排出量削減による持続可能な街づくりを目指してきた。
発電に再生可能エネルギーを使うのはもちろんの事、電力の消費を抑えることも、「ちょこっと」から工夫している。
シャワーを浴びる時間を短縮する「5分間シャワーチャレンジ」という取り組みも。水の生産には大量のエネルギーが必要となるため、水の節約はエネルギー消費の抑制につながると。
もちろん大本で、経済、運輸、貿易、農林、厚生などの閣僚が省庁横断的に、排出削減や省エネ、エネルギーや食糧生産の転換を進めてる。