ジェンダー平等へ向かう世界 中国のLGBTQ運動 平等・尊厳求めて③ 困難な道 一歩ずつ進む
中国の湖南省長沙で2016年、同性婚の実現を求める裁判がありました。多くのメディアが報道し、同性愛者の主張が社会に知られるきっかけになりました。原告の1人、孫文麟(そん・ぶんりん)さん(32)が本紙のオンライン取材に応じました。

初の裁判に
孫さんは14歳の時に家族に同性愛者だとカミングアウトし、少しずつ家族の支持を得てきました。14年6月に胡明亮さん(42)と出会い、交際を開始。1周年の記念日である15年6月23日に長沙市芙蓉区政府に2人で婚姻登録を申請しました。
2人は中国の婚姻法の中に「同性婚を禁止する文言はない」と主張。しかし当局は「婚姻は男女に限られる」と拒否しました。
孫さんらは15年12月に同性婚の実現を求めて提訴。16年1月に受理され、裁判が始まりました。しかし同年4月13日、長沙市芙蓉区の裁判所は「婚姻は男女に限られる」とし、原告の訴えを棄却しました。
それから6年、孫さんは「判決を聞いた時、頭が真っ白になった。なぜこんなに早く判決が出るのか、裁判所が私たちにきちんと弁論をさせてくれなかったことに失望した」と振り返ります。

提訴が受理されたことを示す書類を持つ孫文麟氏(左)と胡明亮氏=2016年1月5日、中国湖南省長沙(本人提供)
大きな一歩
当時、孫さんは連日深夜まで、多くのメディアの取材を受けました。「社会に注目され、多くの人が同性愛者の主張を知った。また、カミングアウトできない多くの当事者を励ましたと思う」と裁判の意義を語ります。
LGBTQに詳しい中国の朱宝弁護士は裁判について「案件が受理されたこと自体が重要だ。同性婚法制化への大きな一歩となった」と評価。「裁判を通じて、社会の中でLGBTQの人権などについて幅広い討論が起こった。多くの知識人や女性団体も注目するようになった」と語ります。
裁判後の16年5月、2人は長沙市内で結婚披露宴を開きました。孫さんはその後、LGBTQに関するフォーラムやサロンで発言したり、他の同性カップルの結婚式に参加したりしてきました。いまは司法試験に向けて勉強中です。「弁護士となり、当事者の相談を受け、法律の面からLGBTQの権利向上を目指したい」と言います。
孫さんは最後にこう強調しました。「中国では、同性婚法制化の道はゆっくりとしか進まないだろう。しかし私はすでに建設者として歩み始めた。この困難な道を一歩一歩進んでいきたい」(北京=小林拓也)(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年1月14日付掲載
孫文麟氏(左)と胡明亮氏。
民主主義が抑圧された中国で、同性婚を求めた提訴そのものが受理されたことが画期的。
裁判後の16年5月、2人は長沙市内で結婚披露宴を開く。
孫さんは「弁護士となり、当事者の相談を受け、法律の面からLGBTQの権利向上を目指したい」
中国の湖南省長沙で2016年、同性婚の実現を求める裁判がありました。多くのメディアが報道し、同性愛者の主張が社会に知られるきっかけになりました。原告の1人、孫文麟(そん・ぶんりん)さん(32)が本紙のオンライン取材に応じました。

初の裁判に
孫さんは14歳の時に家族に同性愛者だとカミングアウトし、少しずつ家族の支持を得てきました。14年6月に胡明亮さん(42)と出会い、交際を開始。1周年の記念日である15年6月23日に長沙市芙蓉区政府に2人で婚姻登録を申請しました。
2人は中国の婚姻法の中に「同性婚を禁止する文言はない」と主張。しかし当局は「婚姻は男女に限られる」と拒否しました。
孫さんらは15年12月に同性婚の実現を求めて提訴。16年1月に受理され、裁判が始まりました。しかし同年4月13日、長沙市芙蓉区の裁判所は「婚姻は男女に限られる」とし、原告の訴えを棄却しました。
それから6年、孫さんは「判決を聞いた時、頭が真っ白になった。なぜこんなに早く判決が出るのか、裁判所が私たちにきちんと弁論をさせてくれなかったことに失望した」と振り返ります。

提訴が受理されたことを示す書類を持つ孫文麟氏(左)と胡明亮氏=2016年1月5日、中国湖南省長沙(本人提供)
大きな一歩
当時、孫さんは連日深夜まで、多くのメディアの取材を受けました。「社会に注目され、多くの人が同性愛者の主張を知った。また、カミングアウトできない多くの当事者を励ましたと思う」と裁判の意義を語ります。
LGBTQに詳しい中国の朱宝弁護士は裁判について「案件が受理されたこと自体が重要だ。同性婚法制化への大きな一歩となった」と評価。「裁判を通じて、社会の中でLGBTQの人権などについて幅広い討論が起こった。多くの知識人や女性団体も注目するようになった」と語ります。
裁判後の16年5月、2人は長沙市内で結婚披露宴を開きました。孫さんはその後、LGBTQに関するフォーラムやサロンで発言したり、他の同性カップルの結婚式に参加したりしてきました。いまは司法試験に向けて勉強中です。「弁護士となり、当事者の相談を受け、法律の面からLGBTQの権利向上を目指したい」と言います。
孫さんは最後にこう強調しました。「中国では、同性婚法制化の道はゆっくりとしか進まないだろう。しかし私はすでに建設者として歩み始めた。この困難な道を一歩一歩進んでいきたい」(北京=小林拓也)(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年1月14日付掲載
孫文麟氏(左)と胡明亮氏。
民主主義が抑圧された中国で、同性婚を求めた提訴そのものが受理されたことが画期的。
裁判後の16年5月、2人は長沙市内で結婚披露宴を開く。
孫さんは「弁護士となり、当事者の相談を受け、法律の面からLGBTQの権利向上を目指したい」