コロナ禍にあえぐ農業① ひろがる米価暴落の不安
「このままでは米作りは続けられない」。実りの秋(出来秋)を迎えつつある農村で米価暴落の不安が広がっています。この危機をどう打開するか、米の収穫期と重なる秋の総選挙の大きな争点です。(日本共産党国民運動委員会 橋本正一)
昨年来、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、外食を中心に米需要が大きく減少し、2020年産の米価は下落を続けました。6月の全銘柄平均の取引価格は、1俵(60キロ)当たり1万4225円(消費税、包装・輸送代等込み)と、前年同月比で1147円(9・0%)も下がりました。2000円以上下落した銘柄も少なくありません。
コロナ危機は今年に入っても長引き、需要は引き続き減少。農林水産省が公表した6月末の民間在庫量は219万㌧と、適正在庫とされる180万トンを大幅に上回っています。今年産の収穫期を迎えている産地では、「昨年の米が倉庫にいっぱい残っており、新米を入れる場所がない」という事態まで生まれています。
新米の出荷がすでに始まっている九州南部や高知県の早場米銘柄では、出来秋に農業協同組合(農協)が生産者に渡す概算金が昨年比で1俵当たり1500円程度のマイナスとなっています。続く三重県では3100~3600円減。千葉県の仮渡金では、5000円以上の下落です。6200円下落させた銘柄もあります。20年産の下落をはるかに超える大暴落が始まっています。
「生活できる米価を」と訴える農業者ら=3月19日、農林水産省前
農村崩壊に拍車
米生産者はこの二十数年、米価の下落・低迷に苦しめられてきました。市場まかせの政府の米政策のもとで、かつて1俵平均で2万2000円を超えていたのが、今や1万4000円台です。この額は出荷団体と卸売団体の間の取引価格の平均で、運賃、消費税、包装代を含んだものです。それらを差し引くと、生産者の実質手取りは1俵=1万2000円前後にすぎません。
他方、農水省の調査では、米1俵を生産するのにかかる直近(19年産米)の経費は、平均で1万5000円を超えています。米農家の大多数は赤字生産を強いられ、生産費が平均より高い中小規模や中山間地域の農家は、米代金では家族労働費どころか農機具、肥料などの物財費さえ償えない事態です。
このもとで、中小農家の多くが米作りからの撤退を余儀なくされ、耕作放棄が広がりました。残った大規模経営も低米価のもとで経営困難にあえいでいます。
安倍晋三前政権が18年、米生産調整の配分から撤退し、米作付けへの直接支払い交付金(10アール当たり1万5000円)を廃止したことも、米作経営をいっそう不安定にしてきました。ここに、21年産の米価暴落が襲うことになれば、農山村の崩壊に拍車がかかるのは必至です。
無責任な菅政権
菅義偉政権が昨年来行ってきたのは、生産者の「自己責任」による米生産削減の押し付けでした。昨年秋、過剰在庫を解消するには、21年産の生産量を前年より36万トン(生産量の5%)減らす必要があるとして、過去最大の減反拡大を打ち出し、産地や生産者に実行を迫ったのです。
長年の米生産調整で疲弊し、限界感が広がる中、その方針は生産現場に多大な負担と苦痛を強いることになり、当初は達成が困難視されていました。しかし、作付け後に主食米から飼料用米に転換させるなどの特例措置を行政や農協を通じてなりふり構わず進めた結果、目標はほぼ達成される見通しとなったとされています。
にもかかわらず、コロナ禍が長期化し、需要の減少が続く中、米在庫が当初の見通しより20万トン前後上回って新年度に繰り越されることが明白になり、21年産の大暴落にとどまらず、22年産の米価にまで影響を及ぼしかねない事態になっています。
菅政権は他方で、国内需要の1割に及ぶ77万トンものミニマムアクセス米(MA米)を、義務でもないにもかかわらず、いまだに輸入し続けています。史上最大の減産を強いられた農業者には、とうてい受け入れがたいことです。(つづく)(2回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年8月19日付掲載
新型コロナと農業は関係ないかと思ったら、そうでもないのです。
外食を中心に米の需要が大きく減少して、米価が下落しているのです。
安倍晋三前政権が18年、米生産調整の配分から撤退し、米作付けへの直接支払い交付金(10アール当たり1万5000円)を廃止したことも、米作経営をいっそう不安定に。その上、菅政権は、国内需要の1割に及ぶ77万トンものミニマムアクセス米(MA米)を、義務でもないにもかかわらず、いまだに輸入し続けています。
「このままでは米作りは続けられない」。実りの秋(出来秋)を迎えつつある農村で米価暴落の不安が広がっています。この危機をどう打開するか、米の収穫期と重なる秋の総選挙の大きな争点です。(日本共産党国民運動委員会 橋本正一)
昨年来、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、外食を中心に米需要が大きく減少し、2020年産の米価は下落を続けました。6月の全銘柄平均の取引価格は、1俵(60キロ)当たり1万4225円(消費税、包装・輸送代等込み)と、前年同月比で1147円(9・0%)も下がりました。2000円以上下落した銘柄も少なくありません。
コロナ危機は今年に入っても長引き、需要は引き続き減少。農林水産省が公表した6月末の民間在庫量は219万㌧と、適正在庫とされる180万トンを大幅に上回っています。今年産の収穫期を迎えている産地では、「昨年の米が倉庫にいっぱい残っており、新米を入れる場所がない」という事態まで生まれています。
新米の出荷がすでに始まっている九州南部や高知県の早場米銘柄では、出来秋に農業協同組合(農協)が生産者に渡す概算金が昨年比で1俵当たり1500円程度のマイナスとなっています。続く三重県では3100~3600円減。千葉県の仮渡金では、5000円以上の下落です。6200円下落させた銘柄もあります。20年産の下落をはるかに超える大暴落が始まっています。
「生活できる米価を」と訴える農業者ら=3月19日、農林水産省前
農村崩壊に拍車
米生産者はこの二十数年、米価の下落・低迷に苦しめられてきました。市場まかせの政府の米政策のもとで、かつて1俵平均で2万2000円を超えていたのが、今や1万4000円台です。この額は出荷団体と卸売団体の間の取引価格の平均で、運賃、消費税、包装代を含んだものです。それらを差し引くと、生産者の実質手取りは1俵=1万2000円前後にすぎません。
他方、農水省の調査では、米1俵を生産するのにかかる直近(19年産米)の経費は、平均で1万5000円を超えています。米農家の大多数は赤字生産を強いられ、生産費が平均より高い中小規模や中山間地域の農家は、米代金では家族労働費どころか農機具、肥料などの物財費さえ償えない事態です。
このもとで、中小農家の多くが米作りからの撤退を余儀なくされ、耕作放棄が広がりました。残った大規模経営も低米価のもとで経営困難にあえいでいます。
安倍晋三前政権が18年、米生産調整の配分から撤退し、米作付けへの直接支払い交付金(10アール当たり1万5000円)を廃止したことも、米作経営をいっそう不安定にしてきました。ここに、21年産の米価暴落が襲うことになれば、農山村の崩壊に拍車がかかるのは必至です。
無責任な菅政権
菅義偉政権が昨年来行ってきたのは、生産者の「自己責任」による米生産削減の押し付けでした。昨年秋、過剰在庫を解消するには、21年産の生産量を前年より36万トン(生産量の5%)減らす必要があるとして、過去最大の減反拡大を打ち出し、産地や生産者に実行を迫ったのです。
長年の米生産調整で疲弊し、限界感が広がる中、その方針は生産現場に多大な負担と苦痛を強いることになり、当初は達成が困難視されていました。しかし、作付け後に主食米から飼料用米に転換させるなどの特例措置を行政や農協を通じてなりふり構わず進めた結果、目標はほぼ達成される見通しとなったとされています。
にもかかわらず、コロナ禍が長期化し、需要の減少が続く中、米在庫が当初の見通しより20万トン前後上回って新年度に繰り越されることが明白になり、21年産の大暴落にとどまらず、22年産の米価にまで影響を及ぼしかねない事態になっています。
菅政権は他方で、国内需要の1割に及ぶ77万トンものミニマムアクセス米(MA米)を、義務でもないにもかかわらず、いまだに輸入し続けています。史上最大の減産を強いられた農業者には、とうてい受け入れがたいことです。(つづく)(2回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年8月19日付掲載
新型コロナと農業は関係ないかと思ったら、そうでもないのです。
外食を中心に米の需要が大きく減少して、米価が下落しているのです。
安倍晋三前政権が18年、米生産調整の配分から撤退し、米作付けへの直接支払い交付金(10アール当たり1万5000円)を廃止したことも、米作経営をいっそう不安定に。その上、菅政権は、国内需要の1割に及ぶ77万トンものミニマムアクセス米(MA米)を、義務でもないにもかかわらず、いまだに輸入し続けています。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます