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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

どうぶつえん 獣医師奮闘記① ヘビに注射 手も足も出ず!

2010-09-26 22:07:28 | 政治・社会問題について
どうぶつえん獣医師奮闘記①
ヘビに注射 手も足も出ず

大阪・天王寺動物園名誉園長、近畿大学先端技術総合研究所教授  宮下 実

1972年の夏は今年と同じくらい暑い、暑い夏でした。
獣医学科4年生の私は、卒業論文のための実験を放り出して大阪市天王寺動物園で汗だらけになって獣医実習をしていました。野生動物の診療に携わりたいと、夏休みを利用して動物園の動物病院に来ていたのです。


最初の仕事は
 少年時代の私は『ファーブル昆虫記』を読みふけり、昆虫採集に明け暮れる日々。将来は昆虫学者になろうと思っていました。昆虫への関心から始まった生き物への尽きぬ興味はイヌヘと移り、家庭で飼った何頭ものイヌが私に大きな影響を及ぼしました。自分のイヌは自らの力で治してやりたい、それが獣医師を目指した大きな理由でした。
 しかし大学の獣医学科に入学してみると、未知の領域の野生動物、それも大きなゾウやキリンやライオンヘの思いが強まり、動物園での実習を希望したのです。短い実習期間でしたが動物園の仕事は大変興味深く、それをきっかけとして動物園への就職を目指しました。幸運にも翌年、卒業と同時に天王寺動物園の獣医師として奉職することができ、待望の動物園生活が始まりました。
 1973年4月に勤務して最初の仕事は動物園で飼育している爬虫類のサルモネラ検査でした。サルモネラはヒトでは食中毒を起こす病原細菌として知られていますが、ペットのヘビやトカゲ、カメなどの爬虫類はこのサルモネラを高率に保有していると報告されていましたが、天王寺動物園で飼育していた爬虫類もその保菌率は66%と高いことには驚かされました。私たちの腸管の中には大腸菌という細菌が普通に存在していますが、爬虫類にとってはこのサルモネラは腸管内に当たり前にいる細菌のようです。というのも爬虫類はこのサルモネラを保有していても、体の調子を悪くすることはないからです。爬虫類にとっては無害でも、ヒトにとってはこのサルモネラは恐ろしい細菌です。


「どこが首?」
 そこでサルモネラを保有しているアオダイショウを用いて、抗生物質注射による強制的な除菌を試みることにしました。サルモネラによく効く2種類の抗生物質を選び、その注射量をヒトの通常量、その倍量、3倍量などと種類、量を変えて10頭のアオダイショウに注射することになりました。私にとってヘビは生まれてこのかた、一度も触れたことも捕まえたこともない動物でしたから、最初は不安と緊張でいっぱいでした。
 先輩獣医師の「首をすばやく押さえて」の指示に「どこが首やねん…?」と私。「尻尾を腕に巻きつけてきても大丈夫だから」に「こんなに冷たい鱗の尻尾で巻かれたら気色ワルー」などと心の中でつぶやいていたら、「この一番大きなアオダイショウなら注射しやすいから、一度やってごらん」と言われ「エッ…」と絶句。
 大学ではウシ、イヌ、ニワトリ、マウスには注射したことがあるものの、ヘビはもちろん初体験。しかも四肢のないヘビのどこに注射してよいものやら、注射器を持ってしばし考え込みました。先輩の指導のもと、どうにか注射を終えましたが、ヘビのように私には手も足も出なかった新人時代の思い出です。(金曜掲載)




「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年9月3日付掲載

今では、檻のない動物園が普通になっていますが、その動物の生態研究など地道な研究は欠かせないものでしょうね。

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