きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証 異次元緩和1年④ 国債膨らみ信用揺らぐ

2014-04-12 21:22:10 | 経済・産業・中小企業対策など
検証 異次元緩和1年④ 国債膨らみ信用揺らぐ

「異次元の金融緩和」では、日本銀行が市場に流すお金の量を、2015年までの2年間で2倍に増やすため、長期国債などの金融資産を市場から大量に買い入れています。

2年間で倍増
長期国債の保有額を年間50兆円増やし、残高を2年間で倍増させます。加えて、株価指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(Jリート)の保有額も大幅に増やしています。その結果、これら金融資産の保有額はこの1年で1・6倍に増え、日銀の資産全体は240兆円を超える規模に膨らみました。うち約150兆円が長期国債です。
国債は政府の借金証書です。お札を発行する日銀が政府の借金を引き受ければ、国が際限のない借金をすることになります。それを防ぐため、以前は、買い入れる金融資産の額が日銀の発行するお札の総額を超えないなど、いくつかの規制がありました。しかし、「異次元緩和」はその規制を取り払い、日銀の国債購入に対する歯止めをなくしてしまいました。
銀行は、政府が発行する国債をいくら買っても、すぐ日銀が買い取ってくれるので、国債の売買益を増やしています。
一方、日銀が政府の借金を大量に抱え込むことは中央銀行としての信用を傷つけます。投機筋が日本国債をいっせいに売れば、国債の価格が下がり、長期金利が上昇。日本経済に打撃を与えます。
日本国債は9割以上が国内で消化されているので安全といわれてきました。しかし、1年以内の短期国債では海外投機筋が13年に国内銀行を抜き、初めて最大保有者になりました。ヘッジファンドなどの投機で日本国債が暴落する危険はじわじわと現実のものになりつつあります。





東京都中央区の日銀本店

出口見通せず
さらに危険なのは15年に2%の物価上昇目標を達成したとして、その後、どうやって「異次元緩和」を終わらせることができるか、まったく見通しがないことです。
今の国債市場は日銀が買い入れることで成り立っています。日銀が長期国債の購入をやめたり、売りに回ったりすれば、国債は支えを失い、暴落します。暴落する国債を買う投資家はいません。
静岡大学の鳥畑与一教授は「国内総生産(GDP)比56%にもなったマネタリーベース(日銀が市場に供給するお金の量)の縮小は不可能です。ものすごい暴走が起きるマグマがいま蓄積されています」と述べ、インフレ抑制策が機能停止に陥る事態を警告します。
「異次元緩和」はいったん始めたらやめることのできない麻薬のような政策で、しかも出口がありません。同じように量的金融緩和を実施している米国でも「出口戦略」は難しい課題です。
国民に何の利益ももたらさなかった「異次元緩和」ですが、大企業の間では、消費税増税後の景気落ち込み対策や株価のさらなる上昇のため、追加緩和を求める声が上がり、「6月説」までささやかれています。
追加緩和はさらに物価を引き上げ、国民の負担を増やします。国の借金である国債を日銀が大量に抱え込むことで財政や金融のリスクもかつてなく拡大します。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年4月11日付掲載


「異次元緩和」はいったん始めたらやめることのできない麻薬のような政策。国債の受け入れは、本来なら民間で引き受けるもの。それを銀行が買い取り、日銀で買い支えるなんて邪道の手段です。
比較的安全とされてきた日本の国債。それが危険にさらされているのです。

検証 異次元緩和1年③ 増えない中小企業融資

2014-04-11 22:26:35 | 経済・産業・中小企業対策など
検証 異次元緩和1年③ 増えない中小企業融資

「『日銀がいくらマネタリーベース(市場に供給するお金の量)を増やしても、金融機関による貸出残高は増加していない』とのご指摘をいただくことがあります」。日銀の岩田規久男副総裁は2月に宮崎県で行った講演でこう認め、なぜ貸し出しが増えないかを言い訳しました。
1年前、「異次元の金融緩和」を始めたとき、黒田東彦(はるひご)総裁は「日銀が長期国債を大量に買い入れる結果として、これまで長期国債の運用を行っていた投資家や金融機関が貸し出しを増やしていくことが期待されます」(2013年4月12日の講演)と語っていました。
実際はどうだったでしょうか。銀行の貸出残高は昨年3月末から12月末までわずか1・5%増えただけ。日本企業の99%以上を占める中小企業向けもたった1・3%増。三菱UFJ、みずほ、三井住友の三大銀行グループの中小企業向け貸し出しは金額、比率ともに減っています。
13年3月期と9月期の三大グループの決算資料で中小企業等向け貸し出しを合計すると、貸出残高は103兆3000億円から102兆8000億円に減少。国内貸し出しに占める中小企業等向けの比率は60・4%から59・8%に低下しました。中小企業等向け貸出比率が60%を割ったのは05年に三大銀行体制が発足して以来、初めてです。




たまる預金高
なぜ増えないか。岩田副総裁は「企業の現預金保有残高は約230兆円と、国内総生産(GDP)の50%近くに達している」ためだと説明しています。大企業が巨額の内部留保をため込んでいるので、日銀が市場に大量のお金を供給しても借り手がなく、銀行の貸し出しは増えないということを日銀副総裁自ら認めてしまいました。「異次元緩和」で貸し出しが増え、経済活動が活発になるという触れ込みは完全に破綻しています。
日銀が供給したお金はどこへ行ったのでしょうか。「異次元緩和」開始前の2013年3月を基準に日銀の統計を見てみると、マネタリーベースは14年2月に1・4倍になっています。これに対して、市中に出回っているお金の総額を示すマネーストックはわずか1・03倍とほぼ横ばいです。増えたのは、金融機関が日銀に預けているお金、日銀当座預金の残高です。同期間1・97倍になりました。
日銀が供給したお金は結局、銀行など金融機関のもとにたまっているだけです。



東京都大田区内の町工場

円滑化法失効
一方、政府は中小企業に冷たい姿勢を示しつつあります。13年3月末には中小企業金融円滑化法を打ち切りました。同法は、中小企業が返済猶予や金利引き下げなど貸し付け条件の変更を申し出た場合、金融機関が応じるよう努力することを定めた法律です。08年のリーマン・ショック後、中小企業支援のために定められました。
金融庁は同法打ち切り後も、金融機関に対し、返済条件の変更に応じるよう指導してきましたが、この方針の転換を検討し始めています。政府の規制改革会議では中小企業の転廃業を促す方針が議論されています。安倍政権は「成長戦略」の名で中小企業の淘汰(とうた)に乗り出そうとしています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年4月10日付掲載


日銀が市場に資金を投入しても、その資金は実経済には回らない。国内生産を担っている中小企業への融資が滞っている。メガバンクと大企業は、マネーゲームに集中。

検証 異次元緩和1年② 円安、大企業に為替差益

2014-04-10 19:35:51 | 経済・産業・中小企業対策など
検証 異次元緩和1年② 円安、大企業に為替差益

「異次元の金融緩和」によって、外国為替市場では円安が進みました。日銀が異次元緩和を決めた2013年4月4日、東京外国為替市場でーが1195円90銭でしたが、約11カ月半後の5月22日には103円台に円安が進みました。今は102円台。12年末の安倍政権発足直前と比べると、20%以上の円安です。
円安は輸入物価の上昇を通じて国民の負担を増やし、景気回復の足を引っ張っています。灯油の価格は13年6月はじめの18リットル=1755円から上がり続け、今年4月はじめには1919円に。9%以上の値上がりです。石油製品価格の上昇により電気・ガス料金も上昇しました。
内閣府が発表している「景気ウオッチャー調査」でも毎月、「円安に伴う原材料の値上がりがあるが、製品価格への転嫁が難しい。経営的に困難」(13年9月、東海地方の紙製造業者)といった声があふれました。サービス業界でも「アベノミクス効果は全くみられない。原材料費が高騰し、非常に利幅が少なく苦しい」(13年7月、南関東地方のホテル)と悲鳴があがりました。




内需拡大せず
円安で輸入物価が高騰したことによって、2013年の日本の貿易赤字は11兆4745億円と過去最大になりました。赤字は3年連続です。以前なら、円安は価格面で輸出に有利に働くので、輸出を増やし、内需も拡大するはずでした。しかし、今、そのような効果はみられません。
日本の輸出をけん引してきた自動車産業をみると、13年の輸出額は10兆4150億円で、前年比12・9%増でした。しかし輸出台数は12年の584万3807台から581万7773台へと2万6034台も減りました。すでに生産拠点を海外に移しているので、円安になっても生産台数を増やすことはありません。



東京港に停泊する貨物船

海外生産移行
日銀が3月に行った金融政策決定会合も、輸出の現状評価を下方修正しました。黒田東彦(はるひご)総裁自身、「わが国の製造業の現地調達を伴う海外生産シフトといった構造的な要因が何がしか作用している可能性がある」と語っています。
3月31日に経済産業省が発表した「海外事業活動基本調査」によると、1992年度に26兆円だった海外現地法人(製造業)の売上高は、2012年度には98・4兆円と3・8倍に増えました。同時に、海外現地法人(同)から日本への逆輸入は12年度、11兆3508億円で、日本の輸入総額の17%にもなります。
輸出大企業は、輸出量を増やさず、為替差益で大もうけしています。トヨタ自動車の場合、対ドルで為替レートが1円下がると、営業利益は為替差益で年間約400億円増えるといわれます。14年3月期、トヨタの営業利益は6年ぶりに過去最高を更新する見通しです。
結局、「異次元の金融緩和」による円安は、輸入物価の高騰を通じて国民に被害をもたらす一方、実体経済を活性化させる役割をまったく果たしません。大もうけするのは多国籍企業だけです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年4月9日付掲載


かつて輸出立国と言われてきた日本ですが、海外生産を進めてきた結果、円安になっても大企業は輸出を増やすことはありません。円安で石油や穀物の価格が上昇。国民生活はたまったもんじゃありません。

検証 異次元緩和1年① 投機あおる 国民には物価高

2014-04-09 22:44:39 | 経済・産業・中小企業対策など
検証 異次元緩和1年① 投機あおる 国民には物価高

日本銀行による「異次元の金融緩和」は、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の「第一の矢」として昨年4月に開始されました。それから1年。大企業は株高の恩恵を受ける一方、国民には物価高がずしりとのしかかります。巨額の長期国債を買い込んだ日銀はかつてないリスクを抱え込んでいます。
(山田俊英)

「異次元の金融緩和」とは、日銀が市場に流すお金の量を、2015年までの2年間で2倍に増やし、物価上昇率を年2%に引き上げる政策です。物価が継続して下がる「デフレ」を克服して、景気を回復するという触れ込みでした。
この政策を始めるにあたって黒田東彦(はるひご)日銀総裁が強調したのは「期待を抜本的に変える」ことでした。「物価が2%程度上がっていくと見込まれた場合には投資の需要も増えてくる」(13年4月4日記者会見)と強調しました。

株や不動産に
「期待を変える」政策であおられたのは金融投機でした。13年4月はじめに1万2000円台だった日経平均株価は5月中旬には1万5000円台に上昇しました。安倍政権発足時の12年末と比べると、約1・5倍の急上昇でした。
特に動いたのは海外の投機マネーです。13年、海外投資家による株の買い越し(売った株を上回る買った株の金額)は15兆円以上にのぼりました。
株価の上昇は株式を保有する大企業や富裕層の資産を増やします。野村証券の試算によると、金融機関を除く上場企業(3月期決算)が保有する株式の14年3月末の含み益は1年前に比べて33・8%増の15兆5600億円。リーマン・ショック前を上回りました。
異次元緩和で日銀は国債だけでなく「上場不動産投資信託(Jリート)」の買い入れも増やしました。Jリートは投資家からお金を集めて不動産に投資する金融商品です。日銀が大量に買い入れれば、値上がりは確実。投機筋は当然、買い入れを増やします。
Jリートは、東京証券取引所の指数でこの1年半で1・5倍に上昇しました。日本不動産研究所によると、13年のJリートによる物件取得価格の総額は2兆1380億円にのぼり、12年の3倍に増えました。「リーマン・ショック前のいわゆるファンドバブル最盛期の水準に近い」と同研究所の報告書は指摘しています。
株などで資産を増やした富裕層はデパートで数十万円から百万円以上もする腕時計や装飾品を買い、高額商品の売り上げを増やしました。



2013年、1000億円を超える大型不動産取引で話題を呼んだソニーシティ大崎ビル=東京都品川区



減る基本賃金
しかし、「バズーカ砲」にたとえられた異次元緩和も実体経済の回復に効果をあげませんでした。国内総生産(GDP)成長率は安倍政権発足以来、下がる一方です。岩田規久男日銀副総裁自身、実体経済について「効果を発揮するのはいよいよこれから」(2月6日宮崎県での講演)と現状で効果があがっていないことを認めています。
消費者物価(生鮮食品を除く総合指数)は13年6月以来、前年同月比で毎月上昇。今年2月には1・3%の上昇でした。その一方、労働者の基本賃金(所定内給与)は今年2月まで前年同月比で23カ月連続減。賃金が下がる中で物価だけが上がっています。日銀が3カ月ごとに行っている「生活意識アンケート調査」でも8割の人が「物価上昇は困ったことだ」と答えています。
その上、4月1日には消費税率が8%に引き上げられました。異次元緩和は富裕層や大企業、投機筋に多大な恩恵をもたらす一方、庶民に与えたのは負担増だけでした。
(つづく)(4回連載の予定です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年4月8日付掲載


物価上昇のもくろみは成功しているのですが、それに続くとされた賃金の上昇は全くかなっていません。
かつての池田内閣当時の「所得倍増計画」にともなう狂乱物価とは、似て非なるものとなっています。
潤ったのは大資産家と大企業だけです。

アベノミクスと日本経済③ 政策視点の転換が必要

2014-04-08 20:55:12 | 経済・産業・中小企業対策など
アベノミクスと日本経済③ 政策視点の転換が必要

東京工科大学教授 工藤昌宏さんに聞く

経済の停滞原因を見ないアベノミクスは空回りしています。「異次元の金融緩和」で日銀は毎月7兆円前後国債を購入し、世の中に投入したお金(マネタリーベース)は48%も増大しました。しかし世の中に出回っているお金(マネーストック)は平均2・9%増えただけです。
弊害も起こしています。最大の問題は財政危機の深刻化です。大量の国債を発行しました。累積債務の増大は国債価格を下落させ、長期金利の上昇圧力となります。国民負担の増大につながり、景気が後退することで、さらに累積債務が増大するという悪循環になりかねません。

株価しがみつき
いまやアベノミクスは株価維持にしがみつく道しか残っていません。金融緩和や財政支出の大盤振る舞いです。株価が上昇すれば国債価格が下落し、長期金利が上昇、景気は悪くなります。そうさせないために日本銀行に国債購入を続けさせるでしょう。そうすると日銀は信頼を失い、機能は低下します。
このままアベノミクス路線を続ければ雇用と所得の環境が悪化し国民生活はますます悪化します。
消費税増税の影響が加わり、国民生活と中小企業の営業を圧迫するでしょう。
販売も減少し、価格抑制のために企業は人件費などコストを削減。リストラがおこなわれるでしょう。
また、日本経済が外需の不安定さに振り回されます。内需が弱いために外需の影響力が強い構造になっています。しかしアメリカ経済に陰りが見られます。ヨーロッパも新興国市場もよくありません。
累積債務の増大は国民負担の増加につながります。国債価格の下落圧力が強まり、国債を抱える金融機関の財務も悪化するでしょう。アメリカのように財政赤字と貿易赤字の双子の赤字にどっぷりつかるでしょう。



消費税が8%に増税された1日の天神橋商店街=大阪市北区

内需の拡大こそ
経済停滞から脱出するためには再生産構造の安定が必要です。
まずは内需の拡大が不可欠です。雇用を安定させ、国民負担を軽減させる必要があります。医療、年金、介護を充実させ、セーフティーネット(安全網)を整備することも大切です。
同時に中小企業の育成も必要です。税制優遇や大企業によるいじめをなくすことなどです。雇用の7割を支える中小企業の動向が日本経済を左右します。
財政再建も重要です。福祉や社会保障を強くするためには、歳入、歳出の両面を見直し、安定的な財政をつくる必要があるからです。
何より必要なのは政策視点の転換です。たとえば「成長主義」から「安定主義」に変えることです。また企業の収益優先から、国民生活を重視する方向への転換も必要です。
輸出中心の発想は世界市場に振り回され、非常に不安定です。国内で循環構造に切り替え、経済の自律的・安定的発展を目指すことが必要です。
都市優先の考え方から地方優先の経済政策も必要です。こういうふうに本当の意味での構造改革をやらないと日本経済の再生はあり得ないと考えています。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年4月5日付掲載


同じお金を投入しようとするのなら、実経済に流通するお金の量を増やすことが肝要です。それには労働者の賃金をアップさせるのが一番の近道。そして社会保障を充実させて、一般国民が、病気や老後の心配をせずに消費にお金を使えるようにすることです。
日本経済にはそれだけの余力は有り余るほどあるのです。要はその活用方法、政策的なイニシアチブです。