アベノミクスと日本経済② 海外生産進み内需停滞
東京工科大学教授 工藤昌宏さんに聞く
日本経済が停滞している最大の要因は、消費基盤の破壊による内需の停滞です。1990年代以降、輸出競争力強化の名目で輸出型関連企業を中心に激しいリストラが行われました。雇用が削減され、賃金が引き下げられました。
同時に、海外現地生産が進展しています。これが内需を停滞させます。国内工場が閉鎖され、国内での設備投資が抑えられ、内需も停滞します。企業が海外へ逃げますから、当然輸出も減ります。
また、政府もリストラを促進するような労働規制の緩和、企業の統廃合促進のための税制を制定し、雇用を不安定にしました。さらに、巨額の財政出動による累積債務の増大は、社会保障など国民負担を増大させ、年金や介護など将来不安を助長しました。
安定した雇用と所得、そして将来への見通しがなければ、消費は増えません。
インドのホンダ四輪工場=ウッタルプランデシュ州
経済構造の変化
日本の経済構造も大きく変化しました。国内需要の減少などを理由に、自動車など消費財を製造する企業が海外へ逃避しました。企業が海外へ逃げるのですから、国内需要はさらに衰弱します。
消費財製造部門が海外へ行ってしまった結果、国内の鉄鋼や素材など生産財部門も衰弱しました。そのため、こちらも海外へ出ていく傾向を強めます。
その結果、「生産→投資→雇用→所得→消費」といった経済循環構造が連鎖的に沈み込みます。製造業という雇用の受け皿が弱体化し、輸出が伸びても投資が伸びず、投資が伸びても雇用や所得が伸びない構造になってしまいました。
産業構造も変化しました。第1次産業が衰退し、製造業は空洞化。産業再編で企業合併や事業統合が進んだ結果、産業間や企業間の連携が弱まりました。連鎖が途切れたことで、政府が財政支出を行っても、波及効果が小さくなりました。
海外進出によって、輸出に依存できない経済構造になってしまいました。
輸出が伸びず、輸入の比率が高まると、円安傾向になります。円安で輸入物価が上昇しても、賃金は伸びませんから、実質賃金は減少します。そのことがさらに内需を冷やすという悪循環に陥ります
原因に目向けず
安倍晋三政権は、こうした日本経済の停滞原因に目を向けず、「デフレなのはお金が足りないからだ」という認識です。つまり、需要が足りない、だから物価が下落して企業収益が伸びない。そのために生産が停滞して設備投資も停滞し、雇用も停滞して、所得も消費も伸び悩んでいる。要するに、お金が足りないから企業の利益が上がらない、これが問題なんだというのです。
そこで、アベノミクスは、民需主導による経済再生というシナリオをつくります。まずは世の中に出回っているお金を増やそうと、金融緩和を行い、大量の国債を購入して銀行に大量の資金を供給します。これで物価が上昇すれば、企業がもうかって、投資も雇用も拡大するだろうという発想です。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年4月4日付掲載
雇用が悪化して、内需のパワーが下がっているのに、それに目をむけず、市場に出回るお金だけを増やすってシナリオ。
でも、出回ったお金は一般国民のところには回ってこず、マネーゲームをする資産家や大企業が潤うだけです。
東京工科大学教授 工藤昌宏さんに聞く
日本経済が停滞している最大の要因は、消費基盤の破壊による内需の停滞です。1990年代以降、輸出競争力強化の名目で輸出型関連企業を中心に激しいリストラが行われました。雇用が削減され、賃金が引き下げられました。
同時に、海外現地生産が進展しています。これが内需を停滞させます。国内工場が閉鎖され、国内での設備投資が抑えられ、内需も停滞します。企業が海外へ逃げますから、当然輸出も減ります。
また、政府もリストラを促進するような労働規制の緩和、企業の統廃合促進のための税制を制定し、雇用を不安定にしました。さらに、巨額の財政出動による累積債務の増大は、社会保障など国民負担を増大させ、年金や介護など将来不安を助長しました。
安定した雇用と所得、そして将来への見通しがなければ、消費は増えません。
インドのホンダ四輪工場=ウッタルプランデシュ州
経済構造の変化
日本の経済構造も大きく変化しました。国内需要の減少などを理由に、自動車など消費財を製造する企業が海外へ逃避しました。企業が海外へ逃げるのですから、国内需要はさらに衰弱します。
消費財製造部門が海外へ行ってしまった結果、国内の鉄鋼や素材など生産財部門も衰弱しました。そのため、こちらも海外へ出ていく傾向を強めます。
その結果、「生産→投資→雇用→所得→消費」といった経済循環構造が連鎖的に沈み込みます。製造業という雇用の受け皿が弱体化し、輸出が伸びても投資が伸びず、投資が伸びても雇用や所得が伸びない構造になってしまいました。
産業構造も変化しました。第1次産業が衰退し、製造業は空洞化。産業再編で企業合併や事業統合が進んだ結果、産業間や企業間の連携が弱まりました。連鎖が途切れたことで、政府が財政支出を行っても、波及効果が小さくなりました。
海外進出によって、輸出に依存できない経済構造になってしまいました。
輸出が伸びず、輸入の比率が高まると、円安傾向になります。円安で輸入物価が上昇しても、賃金は伸びませんから、実質賃金は減少します。そのことがさらに内需を冷やすという悪循環に陥ります
原因に目向けず
安倍晋三政権は、こうした日本経済の停滞原因に目を向けず、「デフレなのはお金が足りないからだ」という認識です。つまり、需要が足りない、だから物価が下落して企業収益が伸びない。そのために生産が停滞して設備投資も停滞し、雇用も停滞して、所得も消費も伸び悩んでいる。要するに、お金が足りないから企業の利益が上がらない、これが問題なんだというのです。
そこで、アベノミクスは、民需主導による経済再生というシナリオをつくります。まずは世の中に出回っているお金を増やそうと、金融緩和を行い、大量の国債を購入して銀行に大量の資金を供給します。これで物価が上昇すれば、企業がもうかって、投資も雇用も拡大するだろうという発想です。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年4月4日付掲載
雇用が悪化して、内需のパワーが下がっているのに、それに目をむけず、市場に出回るお金だけを増やすってシナリオ。
でも、出回ったお金は一般国民のところには回ってこず、マネーゲームをする資産家や大企業が潤うだけです。