きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証TPP「大筋合意」は何を示したか⑧ 食の安全も危険に

2015-12-25 18:02:35 | 経済・産業・中小企業対策など
検証TPP「大筋合意」は何を示したか⑧ 食の安全も危険に

環太平洋連携協定(TPP)の「大筋合意」を受けて、政府は「食の安全が脅かされることはない」「遺伝子組み換え表示が変わることはない」と強調しています。
しかし、政府が公表したTPP協定の「概要」など一連の文書は、部分的で抽象的な記述が多いため断定的には言えないものの、食に対する懸念を深める表現が随所に見られます。

米企業関与の道
「概要」第7章「衛生植物検疫(SPS)措置」は、食の安全などにかかわる措置について、「貿易に対して不当な障害にならないように」し、世界貿易機関(WTO)の指針や国際的な基準を考慮するとしています。「透明性」の名のもとに、食品添加物や表示基準などを定める場合には、利害関係者および他の締約国が関与できるようにし、策定前60日間に意見を述べる機会を設けることなどを規定しています。
日本はBSE(牛海綿状脳症)や遺伝子組み換え表示で、独自の基準を設けてきました。米国はそれを、“国際的”な基準に合わない、科学的根拠がない、貿易の障害になっている、として是正を執拗(しつよう)に迫ってきました。今回の規定は、こうした圧力をさらに強める根拠にされかねません。
遺伝子組み換え作物に関しては、「概要」第2章「物品市場アクセス」で、組み換え作物の承認や未承認の組み換え作物の微量の混入事案などについて、情報交換のための作業部会を設置することが盛り込まれています。これも遺伝子組み換え作物の輸出拡大を迫る米国の大企業が公然と関与する道になりかねません。



TPP交渉の検証と運動を考える「検証TPP―全国フォーラム」=12月9日、参院議員会館

輸入検査も困難
TPP交渉とともに行われた日米並行交渉の交換文書によると、収穫後に使用する農薬や、日本で認められていない食品添加物の承認に日本政府が誠実に取り組むこと、牛に由来するゼラチンとコラーゲンの輸入規制を緩和することなどで一致したとされています。国民の知らないところですでに具体的な話が進んでいることをうかがわせます。
「概要」第5章「税関当局および貿易円滑化」は、輸入貨物が到着後48時間以内に税関を通過させるルールを導入するとしています。日本では現在、動植物検疫や食品検疫では平均92・5時間かかっています。それを約半分の時間で済ませろというのです。「円滑化」ではなく「拙速化」で、輸入食品検査の「手抜き」になるのは必至です。
輸入食品の検疫を行う食品衛生監視員は、全国で406人しかいません。検査率は、2009年度の12・7%から14年度の8・8%へと、低下の一途です。TPPで海外から輸入が増えれば、検査率はさらに低下し、検査なしで食卓に上る輸入食品がさらに増えるでしょう。
米国産牛肉に日本で禁止されている成長ホルモンが使われ、農作物に収穫後の農薬使用も行われています。その輸入を野放図に広げるTPPに国民の懸念が広がっています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年12月17日付掲載


TPPは、輸入の拡大だけでなく、動植物検疫や食品検疫の時間を半分に減らすように圧力が。「円滑化」ではなく「拙速化」で、輸入食品検査の「手抜き」になるのは必至です。

検証TPP「大筋合意」は何を示したか⑦ 国内農業には大打撃

2015-12-23 21:03:33 | 経済・産業・中小企業対策など
検証TPP「大筋合意」は何を示したか⑦ 国内農業には大打撃

「聖域」としたはずの農産物重要項目の3割に手を付け、その他の農林水産物も関税撤廃―。史上最悪の「自由化」となる環太平洋連携協定(TPP)の「大筋合意」が農林水産業の危機に拍車をかけるのは必至です。

振興策財源失う
米では、現行のミニマムアクセス(最低輸入機会)による77万トンに加えて、米国とオーストラリアに合計7万8400トンもの特別輸入枠を新設。国内消費が年8万トン減少し、過剰在庫と米価暴落に苦しむ農家には受け入れがたい内容です。
政府は、輸入増に見合う備蓄を増やし、国内需給に影響を与えないといいますが、備蓄米の増加が米価下落の圧力となるのは明らかです。
麦は、事実上の関税であるマークアップ(売買差益)を45%削減します。生産者麦価の低下を招き、マークアップ削減で国内麦振興策の財源も失われ、水田の転作や畑作の輪作を支える麦生産が困難になります。
牛肉は、関税率を現行の38・5%を15年間で9%へ引き下げます。安倍晋三政権は昨年4月、日本とオーストラリアの経済連携協定(EPA)を結んだ際、牛肉の関税を19%まで引き下げ、TPPではその線を死守すると約束しました。しかし、それをあっさりほごにしたのです。外国産と競合する乳用種の価格低下を招き、肥育・酪農経営の悪化は避けられません。政府は、畜産経営安定対策を拡充すると説明しますが、財源としてきた牛肉関税が大幅に減る中で、制度を維持できる保障はありません。



TPPの影響調査で酪農家の話を聞く日本共産党の紙智子参院議員(左)=12月3日、北海道幕別町

1兆円超す被害
東京大学大学院の鈴木宣弘教授は、「大筋合意」によって、米では約1100億円、牛肉で3262億円、豚肉で4141億円、乳製品で約960億円など、合わせて1兆円を超える被害が農業分野で出ると試算しています。
農林水産省も11月初旬、「品目ごとの農林水産物の影響について」を公表。「当面影響は限定的」としながらも、多くの品目で「長期的には価格下落が懸念される」と認めました。その上で、「さらなる競争力の強化」「環境整備」が必要だなどとし、外国産と競争できない経営や産地は淘汰(とうた)されても仕方がないという立場です。
農水省は、輸入がTPP域外から域内へ置き換わる可能性を軽視するなど、影響を「軽微」に見せようとしていますが、その控え目の発表でも「合意」が日本農業への打撃となることは否定できません。

生存基盤脅かす
日本農業は、高齢化や担い手の減少が限界まで進み、崩壊の危機が広がっています。TPPはそれへの決定的な追い打ちとなりかねません。それは農家にとどまらず、農村社会の崩壊、国土の荒廃、国民の生存基盤を根底から脅かします。
安倍内閣は今年3月、世界最低水準の食料自給率39%を10年後に45%へ引き上げる計画を閣議決定しました。「大筋合意」は、それを投げ捨て、目先の「安さ」と引き換えに国民の食の安全・安心を放棄するものです。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年12月16日付掲載


TPP交渉は、農業分野にも市場原理を導入するもの。関税撤廃や輸入枠の拡大で、いくら対策をするといっても、国内生産が輸入品に駆逐されるのは火を見るよりも明らか。
今からでもTPPから撤退を。

検証TPP「大筋合意」は何を示したか⑥ 多国籍企業本位に

2015-12-21 23:12:05 | 経済・産業・中小企業対策など
検証TPP「大筋合意」は何を示したか⑥ 多国籍企業本位に

環太平洋連携協定(TPP)は、国境を越えて利益を追求する多国籍企業が各国の制度の違いを意識せずに事業を展開できるよう、共通の基準(ルール),を定めることを主眼にしています。

国が訴えられる

中でも、投資の章に盛り込まれた投資家対国家紛争解決(ISDS)条項には、将来にわたって必要な規制の導入を妨害し、国家の主権を侵害するものだと、米国を含むTPP交渉参加諸国で強い批判があります。
ISDSは、進出先の国の制度・政策変更などで損害を受けたと主張する外国企業が、その国の政府を相手取って損害賠償の訴えを起こせる規定なのです。
日本政府は、「大筋合意」で、らん訴防止措置が盛り込まれたと強調します。日本が訴えられることはなく、海外進出する日本企業にとって必要な規定だというのです。
しかし、オーストラリア政府は、ISDSの適用対象からたばこを除外しました。このことは、らん訴防止措置の効果を疑わせるものです。除外しなければ、訴えられる危険があると、オーストラリア政府が判断したことを意味します。オーストラリア政府は現に、米たばこ企業の香港子会社に訴えられ、4年越しの裁判を行っているのです。
実は、日本政府も、訴えられる可能性を認めています。政府が発表した「総合的なTPP関連政策大綱」の参考資料は、こう述べています。
「近年、これを活用した仲裁提起の件数が増加している。仮に、既存の投資協定等に基づいて訴訟が提起され、わが国が敗訴した場合には、TPP協定発効後には訴訟経験の豊富な外国企業等による更なる訴訟を招く可能性もある」



シドニーの外交貿易省前で行われたTPP反対集会=3月13日(オーストラリア公正貿易投資ネットワーク提供)

新薬データ保護
知的財産の章に盛り込まれた、がん治療薬などバイオ新薬のデータ保護期間も、米製薬大企業の要求を反映したものです。データ保護期間が長ければ長いほど、安価なジェネリック医薬品(後発医薬品)の市販を遅らせ、高値での独占販売が可能になるからです。
ジェネリック医薬品の普及で医療費を抑えたいオーストラリアをはじめ途上国が5年間とするよう求めたのに対し、日米が実質8年間を押し付けました。
日本政府は、TPPが途上国の市場を開放し、スーパーやコンビニの出店が容易になる(ベトナム、マレーシア)、銀行の支店数の上限が拡大され、店舗外の新規ATM(現金自動預払機)の設置制限がなくなる(マレーシア)など、“成果”を誇ります。
しかし、こうしたことで利益を得るのは、多国籍企業化した一握りの大企業です。それと引き換えに、国内市場を米国などの多国籍企業に明け渡し、農業や中小企業、地場産業や地域経済への甚大な影響を顧みなかったのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年12月15日付掲載


新薬データー保護で、ジェネリック医薬品が認められるのが、新薬発売から5年から8年に延ばされるなど、製薬会社の利権を保護するものに。
普通の薬品ならともかく、エイズ治療薬などでは、命にかかわる問題になります。



検証TPP「大筋合意」は何を示したか⑤ 対日要求のデパート

2015-12-20 16:42:16 | 経済・産業・中小企業対策など
検証TPP「大筋合意」は何を示したか⑤ 対日要求のデパート

12力国による環太平洋連携協定(TPP)交渉と並行して、日本と米国だけの交渉も行われました。2013年4月、TPP交渉参加を焦る日本政府が、米国から参加承認を得る見返りに押し付けられたもので、TPP交渉への“入場料”の一つでした。
自動車分野のほか、保険、透明性、投資、知的財産権、規格・基準、政府調達、競争政策、急送便、衛生植物検疫(SPS)の9分野で非関税障壁について交渉し、結果をTPPに組み込むというものです。これらこそ、米国政府が長年、「年次改革要望書」などの形で日本に突き付けてきた要求が集中している分野で、対日要求のデパートです。

諸制度へ口出し

TPP条文案とともに公表された日米並行交渉に関する両国の交換文書は、自動車分野と他の9分野での並行交渉の妥結を確認。9分野では、「日本政府は確認する」「…再確認する」「…認める」「…保証する」といった記述が並び、日本政府が米国政府の要求を次々と受け入れたようすがうかがわれます。
保険分野では、日本郵政の扱いに終始。米国の保険会社が日本郵政の販売網へ参入できるようにすることや、かんぽ生命を他の保険会社と同じ扱いにすることなどが盛り込まれています。
投資分野では、日本の「規制改革」について、外国投資家から意見や提言を求め、政府の規制改革会議に付託し、規制改革会議の提言に従って必要な措置をとることを約束しました。日本の諸制度に対して、米国の多国籍企業が口出しする経路になりかねません。



TPP交渉閣僚会合に集まった12力国の担当相=10月1日、米アトランタ(ロイター)

食の安全脅かす
国民が懸念する食の安全にかかわる衛生植物検疫(SPS)の分野では、政府は、日本の制度変更が必要となる規定は設けられておらず、日本の食品の安全が脅かされるようなことはないと説明してきました。
これについて、並行交渉に関する交換書簡は、防カビ剤、食品添加物、ゼラチンとコラーゲンの扱いで両国の認識を一致させたことを確認。防カビ剤では、日本の厚生労働省は、農薬と食品添加物の承認について統一申請・審議とすることで、収穫前と収穫後の防カビ剤の承認を簡素化するとしました。食品添加物については、原則としておよそ1年以内に、日本政府がまだ承認していない4種の添加物を承認することを約束しました。また、牛に由来するゼラチンとコラーゲンの輸入規制の緩和も確認しました。
このように、国民の暮らしや安全にかかわる諸制度も、米多国籍企業の要求に沿って改変されかねない危険があるのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年12月12日付掲載


TPP交渉では、保険、透明性、投資、知的財産権、規格・基準、政府調達、競争政策、急送便、衛生植物検疫(SPS)なども対象に。
食の安全性も脅かされます。


検証TPP「大筋合意」は何を示したか④ 発効後も続く圧力

2015-12-19 22:16:58 | 経済・産業・中小企業対策など
検証TPP「大筋合意」は何を示したか④ 発効後も続く圧力

環太平洋連携協定(TPP)は、発効しても、それで終わりではありません。関税の撤廃や削減を前倒し実施したり、取り決めの適用範囲を拡大したりする追加の協議や交渉も定められています。
TPP「大筋合意」によると、関税分類に基づく品目(タリフタイン)の数で見て、日本の関税撤廃率は95%に達します。農林水産物では81%、米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の農産物重要5項目では30%です。日本が過去に結んだどの協定よりも高い割合です。その影響をもろに受ける農林水産業者にとって、「交渉結果として最善」(甘利明TPP担当相)どころか、「最悪」です。

関税撒廃を加速
TPP条文案第2章第4条によると、いったん約束した関税の撤廃・削減は予定に従って実施しなければならず、原則として、関税を引き上げることも、新たな関税を設けることもできません。それだけではなく、いずれかの国から要請があった場合には、「関税撤廃の加速を検討するため協議する」ことになっているのです。
さらに、第2章の日本に関する付属書によると、TPP発効から7年以降は、オーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド、米国のいずれかが要請した場合、要請国と日本は、「市場アクセスを向上させる目的で」(日本の輸入を増やすため)、関税、関税割り当て、セーフガード(緊急輸入制限)などで、「日本の誓約を検討するため協議する」とされています。
TPPは、あくまでも関税ゼロが原則です。「聖域なき関税撤廃を前提としない」(安倍晋三首相)というのはその場しのぎにすぎず、「大筋合意」の時点で一部の関税が残ったとしても、関税ゼロへの圧力がかかり続けるのです。



東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の会場前でTPPに反対する人々=11月21日、マレーシア・クアラルンプール(ロイター)

追加的な交渉も
TPPは、関税削減・撤廃だけの協定ではありません。非関税障壁を除去するとして各国の規制緩和も求め、広範な分野で共通の基準(ルール)を定めます。そのうち、政府調達や国有企業などについても、「大筋合意」にとどまらない「追加的な交渉」を予定しています。
政府調達は、官公需の発注を外国企業にも開放する取り決めです。現在は、政府、独立行政法人、都道府県、政令指定都市が対象になっています。政府は、TPP「大筋合意」でも、変更はないと説明します。しかし、条文案第15章第24条によると、TPP発効から3年以内に、適用範囲を拡大し、発注額の閾値(しきいち)(最低額)を引き下げる目的で、「追加的な交渉」を行うことになっています。
また、国有企業と民間企業を同等に扱う取り決めでも、第17章第14条によると、発効から5年以内に、適用の拡大で「追加的な交渉」を行うとしています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年12月11日付掲載


「大筋合意」の内容でも、大幅に関税撤廃して、官公需を海外に市場開放しているんですが…。
さらに適用範囲を広めることが求められます。
まさに、底なし沼です。