きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

アマゾン 宅配の闇② 格差生む多重下請け

2022-11-12 07:13:04 | 働く権利・賃金・雇用問題について
アマゾン 宅配の闇② 格差生む多重下請け
インターネット通販の利用拡大と同時に宅配ドライバーの過重労働が社会問題となっています。配達を委託するだけのネット通販企業はドライバーの人間らしい働き方を保障しようとはしません。
2021年度の宅配便取扱個数は49億5323万個と過去最多を更新しました。新型コロナウイルス禍も相まって、前年度から1億1676万個(約2・4%)増えています。
配達員の多くは労働法が適用されない個人事業主です。ネット通販企業や下請けの運送会社は個人事業主を使って残業規制の網をくぐりぬけ、増える荷量に対応してきました。
膨張を続ける荷量にドライバーの働き方は過酷の度を増し、体力と精神をすり減らす日々に多くのドライバーが去っていきます。




「7次」の例も
都内に住む健さん(25)=仮名=は8月末、個人事業主として1年2カ月所属した運送会社を辞めました。会社は、ネット通販大手・アマゾンの3次下請けです。朝5時ごろ起床し、7時半に指定の倉庫で積み込みを始めます。荷量の多寡に関係なく日当は1万5千円。過酷な勤務に加え、賃金格差への不満が日に日にたまっていきました。
「同じ仕事をしているのに何次下請けの会社に属するかで金額が変わるんです」。アマゾンから委託を受ける元請けの大手運送会社、2次下請け会社の日当はそれぞれ2万4千円と1万8千円。月に22日間働いて、健さんの月給との差額は19万8千円、6万6千円に上りました。
ネット通販企業を頂点にしたピラミッド型の多重下請け構造が賃金格差を生んでいます。元請け会社の下に何社もの下請け企業が連なり、各社が運賃の一部を中抜きする慣行が業界にはびこってきました。運送会社による中間搾取です。取材では、7次下請けまで再委託が繰り返される事例もありました。
アマゾンや大手の運送会社は表向き多重下請けを認めていません。公益社団法人全日本トラック協会は17年に出した行動計画で、「適正取引や安全義務の観点から、全ての取引について、原則、2次下請までに制限する」と明記しています。

実態は労働者
業界の慣行を横目にアマゾンが拡大しているのが、運送会社を介さず直接個人事業主に配達を委託する制度「アマゾンフレックス」です。中抜きもなく、自らの裁量で働けるとの理由から、会社に属さず一匹おおかみとして働くドライバーも少なくありません。
国交省によると、軽貨物の運送業者は20年度末に19万7千人を記録。15年度比4万3千人近く増えました。車両1台から始められる手軽さから、「コロナ禍で飲食業から転向する人も増えています」(運送会社社長)。
しかし、働く実態は労働者なのに、形式的には独立して仕事を請け負う業務委託契約で働くため最低賃金保障もなく、社会保険料も自己負担です。
アマゾンが個人事業主と結ぶ「独立請負業務委託規約」には、一切の雇用関係を認めない旨が記されています。ドライバーは、「国の失業補償または労働災害補償に基づく給付またはいかなる形の支払いも受ける権利を有さず、これらを求めることもできません」。
個人事業主を労働者として保護しようと法整備を進める世界の潮流にならい、日本も法制化を急ぐ必要があります。そうしなければ社会インフラとしての宅配を維持することはできません。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年11月10日付掲載


「同じ仕事をしているのに何次下請けの会社に属するかで金額が変わるんです」。アマゾンから委託を受ける元請けの大手運送会社、2次下請け会社の日当はそれぞれ2万4千円と1万8千円。月に22日間働いて、健さんの月給との差額は19万8千円、6万6千円に。
ネット通販企業を頂点にしたピラミッド型の多重下請け構造が賃金格差を。
業界の慣行を横目にアマゾンが拡大しているのが、運送会社を介さず直接個人事業主に配達を委託する制度「アマゾンフレックス」。
実態は労働者なのに、形式的には独立して仕事を請け負う業務委託契約で働くため最低賃金保障もなく、社会保険料も自己負担。


アマゾン 宅配の闇① 過重労働がミスを誘発

2022-11-11 07:10:51 | 働く権利・賃金・雇用問題について
アマゾン 宅配の闇① 過重労働がミスを誘発
インターネット通販大手のアマゾンが、個人事業主のドライバーに宅配業務を直接委託する制度「アマゾンフレックス」をめぐり、4月下旬に規約を一部改定しました。商品の破損や紛失の補償責任は原則ドライバーにあると追記。一方的に規約を改定したアマゾンに対し「ドライバーの過重労働を置き去りにしている」と反発の声があがっています。
(小村優)

アマゾンが改定したのはアマゾンフレックスの「独立請負業務委託規約」です。「補償」の項で、故意、過失または業務違反によって荷物の紛失や損傷が生じた場合に損害額をアマゾンへ支払う必要があると定められました。



アマゾンフレックス専用のアプリ画面

義務負わせる
さらに、配達後に第三者によって商品が盗まれた場合、アマゾンが納得できる説明がなければドライバーの責任になると明記。販売価格や再配達費用をアマゾンへ支払う義務を負わせました。
建交労軽貨物ユニオンは一方的な規約改定が、独占禁止法が禁じる優越的地位の乱用にあたるとして6月に公正取引委員会へ調査を依頼。公取委は現在調査中です。
ユニオンは、規約改定前まで販売価格の補償も、再配達費用の支払いも原則アマゾンがしており、ドライバーに求償することはなかったと指摘。第三者による盗難についても、配達を終えた商品にまでドライバーが責任を負っていては次の配達ができないと問題視しています。
改定の背景について運送業界の関係者は、玄関前に商品を置く「置き配」の普及を挙げます。アマゾンは新型コロナウイルスの感染が本格化した2020年3月から一部の都道府県で置き配を配達指定の初期設定にするサービスを始めました。関係者は、商品の紛失・盗難が多発したことで「代品にかかるアマゾンの負担もかなりあったはずだ」と指摘。ドライバーへの求償を明確化することでコスト削減を図る狙いがあるとみられます。
一方、規約改定について「わざと商品を盗むドライバーを抑制する意図もあるのではないか」と推測するのは首都圏の運送会社社長です。同社では以前、下請けのドライバーが商品を盗みブリマアプリのメルカリで転売、警察沙汰になったことがありました。
通常、ドライバーは置き配後、商品の写真を撮り「配達完了」を通知します。通知を受けた客は商品を確認。すぐに玄関を見ても商品がなければドライバーの盗難が疑われます。しかし、ドライバーの故意か、ドライバー以外の第三者による盗難か、「配達員から事情を聞く会社も、何が真実かを判断するのは非常に難しい」(社長)のが実態です。




責任押し付け
一方社長は、余裕のない働き方がミスや破損を誘発していると現場の窮状を訴えます。
建交労軽貨物ユニオンが21年5月~22年10月にかけて実施した個人事業主へのアンケート調査によると、配達員132人のうち最多の25%が1日に平均12時間以上働き、49%が「週6日」「ほぼ毎日」働いていると回答しました。
社長は、故意の盗難問題と、過重労働による紛失・損傷事案は別に考える必要があるとした上で、「責任を押し付ける前にドライバーに人間らしい働き方を保障するのが先ではないか」と問題提起しています。
(つづく)(2回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年11月9日付掲載


アマゾンが改定したのはアマゾンフレックスの「独立請負業務委託規約」。「補償」の項で、故意、過失または業務違反によって荷物の紛失や損傷が生じた場合に損害額をアマゾンへ支払う必要があると。
建交労軽貨物ユニオンは一方的な規約改定が、独占禁止法が禁じる優越的地位の乱用にあたるとして6月に公正取引委員会へ調査を依頼。公取委は現在調査中。
運送会社の社長は、余裕のない働き方がミスや破損を誘発していると現場の窮状を訴えます。
建交労軽貨物ユニオンが21年5月~22年10月にかけて実施した個人事業主へのアンケート調査によると、配達員132人のうち最多の25%が1日に平均12時間以上働き、49%が「週6日」「ほぼ毎日」働いていると回答。
「責任を押し付ける前にドライバーに人間らしい働き方を保障するのが先ではないか」

軍事最優先 大手振る軍産複合体の論理 日本の産業基盤を掘り崩す

2022-11-10 07:05:40 | 経済・産業・中小企業対策など
軍事最優先 大手振る軍産複合体の論理 日本の産業基盤を掘り崩す
岸田文雄政権は、軍事最優先の国づくりにのめり込んでいます。2日に開かれた経済財政諮問会議でも、軍事力の強化について議論しました。

 経済財政諮問会議に経団連の十倉雅和会長ら民間議員が提出した提言に驚かされた。「防衛力強化に向けて踏まえるべき基本的方向性」として、「防衛装備・技術の充実と民間の産業基盤・国際竸争力の強化」を一体的に進めることを求めた。
 さらに「防衛力強化には、経済基盤の強靱(きょうじん)化も含めた総合的な対応が必要」としていた。

軍事力強化が目的
 ということは、経済力を強化する目的が軍事力を強化するためのものだ、ということになるね。
 研究開発のあり方については具体策に踏み込んだ。首相が議長を務める内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)や防衛省、大学、国立研究開発法人などの研究機関が連携して、軍民両用の研究活動を推進し、成果を利用する仕組みづくりを求めた。
 政府はいま、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画のいわゆる安保3文書改定の詰めの作業を進めている。今回の民間議員の提言は、政府の狙い通りの方向だ。



所信表明演説をする岸田首相=10月3日、衆院本会議

米政権をお手本に
 3文書改定のお手本となるのが、バイデン米政権が発表した「国家安全保障戦略」などの一連の軍事戦略だ。実は、すでに今年1月7日に開かれた日米の外交・軍事担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は、日米一体の軍事戦略づくりで一致していた。
 共同発表文書は、「閣僚は、変化する安全保障上の課題に、パートナーとともに、国力のあらゆる手段、領域、あらゆる状況の事態を横断して、いまだかつてなく統合された形で対応するため、戦略を完全に整合させ、ともに目標を優先づけることによって、同盟を絶えず現代化し、共同の能力を強化する決意を表明した」と強調していたね。
 つまり、①日米の軍事戦略を一致させていくこと②何が優先的目標なのか、ともに設定していくこと―を確認したというわけだ。しかも、それは、「いまだかつてなく統合された形」で実行していくという。
 さらに、「日米は、今後作成されるそれぞれの安全保障戦略に関する主要な文書を通じて、同盟としてのビジョンや優先事項の整合性を確保する」とした。
 アメリカは、日米の「戦略を完全に整合」するよう日本に求め、「ともに目標を優先づける」ために、「主要な文書」作成にも関与していくとしたんだね。

軍民を分けず運用
 財界は、軍事技術の開発に政府資金を投入させることに重点を置いているようだ。
 10月20日に開かれた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」では、「ほかの省庁の予算であっても防衛省が関与できる仕組みをつくる必要」との意見や「軍用と民生に分けず、国力としての防衛力という観点で一体として運用すべき」などの意見がだされていた。
 そもそも兵器は戦争で使用されることが最大の目的であり、その使用価値は、戦争に勝つことだ。それを経済力の推進力にする、産業競争力を強化する、という論理の中に組み込んでしまえば、日本の産業基盤そのものを危険にさらすことになる。軍産複合体の論理をまかり通させてはいけない。
 憲法のもとで平和産業を発展させてきた。軍事優先の国づくりは国を滅ぼすというのは歴史の教訓だよ。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年11月8日付掲載


研究開発のあり方については具体策に踏み込んだ。首相が議長を務める内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)や防衛省、大学、国立研究開発法人などの研究機関が連携して、軍民両用の研究活動を推進し、成果を利用する仕組みづくりを求めた。
政府はいま、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画のいわゆる安保3文書改定の詰めの作業を進めている。今回の民間議員の提言は、政府の狙い通りの方向。
10月20日に開かれた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」では、「ほかの省庁の予算であっても防衛省が関与できる仕組みをつくる必要」との意見や「軍用と民生に分けず、国力としての防衛力という観点で一体として運用すべき」などの意見。
憲法のもとで平和産業を発展させてきた。軍事優先の国づくりは国を滅ぼすというのは歴史の教訓。

大企業の利益 史上最高に 法人税は優遇税制で巨額減税

2022-11-08 07:11:39 | 経済・産業・中小企業対策など
大企業の利益 史上最高に 法人税は優遇税制で巨額減税
大企業の今年3月期の純利益が史上最高益と報道されています。円安による輸出増、海外でのもうけが円換算で増えた企業、世界的な資源価格や輸送価格の上昇の恩恵を受けた石油会社や海運会社、商社などがあります。国民の暮らしや中小企業の営業に苦しさを与える円安と物価高が、大企業の利益にはプラスとなっています。

史上最高益を上げている大企業・利益上位20社の税負担の実態を分析しました。(表)


大企業の法人3税の負担率(%
利益上位20社(抜粋)法定実効税率実際の税負担率
①トヨタ自動車30.124.5
②日本電信電話(連)31.530.0
③ソニークループ(連)31.520.5
④日本郵船28.74.1
⑤日本郵政(連)30.626.3
⑬本田技研工業30.29.9
⑮伊藤忠商事31.02.8
⑳三菱商事30.61.0
20社の平均30.418.0
持ち株会社、金融業は除く。(連)は実質持ち株会社化している場合などで連結損益計算書から作成した企業。
菅隆徳税理士が作成


各社の有価証券報告書から、①税引き前純利益の金額②法人3税の金額(その会社の納税した法人税、法人住民税、法人事業税)③法定実効税率(その会社が公表した法定負担率)④実際の税負担率(②÷①)―を明らかにしました。
税負担率は、本来ならば、ほぼ法定実効税率と同じになるはずです。しかし、実質負担率が法定実効税率を大きく下回っている会社が多いのは、大企業優遇税制によるばく大な減税があるためです。平均の法定実効税率は30・4%であるのに、実質負担率の平均は18・0%です。
有価証券報告書から個別企業の減税額を推定すると、①トヨタ自動車=受取配当益金不算入(子会社などからの受取配当金を利益から除く減税、以下受配という)2367億円、試験研究費の税額控除(研究開発費の2~14%を法人税額から差し引く減税)608億円②本田技研工業=受配1768億円③伊藤忠商事=受配3430億円④三菱商事=受配1399億円―というように巨額の減税があります。

「日経」(8月20日付)が「繰り返す法人税ゼロ」の見出しで、ソフトバンクG(通信会社ソフトバンクの持ち株会社)が21年3月期の決算で1兆4538億円の利益を上げながら、法人税がゼロだったことを報道しています。原因は受配4863億円の減税です。財務省出身の識者も「適法でも兆円単位の利益のある会社が何年も法人税額がゼロなのは違和感がある。制度に問題がないか検討すべきだ」とコメントしています。
アメリカやヨーロッパでは大企業の税負担の軽さが問題視され、納税情報を透明化する制度づくりが進んでいます。日本でも、大企業の軽い税負担が報道されるようになっています。
日本国憲法の言う税金の「応能負担原則」に従って、大きな利益を上げた大企業は相応の税負担をするように、法人税の不公平をただすことが必要です。大企業優遇税制を廃止し、法人税にも累進税率を導入すれば、19兆円余(20年度)の財源が生み出せます。
菅隆徳(すが・たかのり税理士、不公平な税制をただす会共同代表)

「しんぶん赤旗」日曜版 2022年11月6日付掲載


税負担率は、本来ならば、ほぼ法定実効税率と同じになるはずです。しかし、実質負担率が法定実効税率を大きく下回っている会社が多いのは、大企業優遇税制によるばく大な減税があるためです。平均の法定実効税率は30・4%であるのに、実質負担率の平均は18・0%。
有価証券報告書から個別企業の減税額を推定すると、①トヨタ自動車=受取配当益金不算入(子会社などからの受取配当金を利益から除く減税、以下受配という)2367億円、試験研究費の税額控除(研究開発費の2~14%を法人税額から差し引く減税)608億円②本田技研工業=受配1768億円③伊藤忠商事=受配3430億円④三菱商事=受配1399億円―というように巨額の減税が。
日本国憲法の言う税金の「応能負担原則」に従って、大きな利益を上げた大企業は相応の税負担をするように、法人税の不公平をただすことが必要です。大企業優遇税制を廃止し、法人税にも累進税率を導入すれば、19兆円余(20年度)の財源が生み出せます。

福島原発事故は「人災だった」 東電元社長が語った後悔

2022-11-06 07:05:26 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
福島原発事故は「人災だった」 東電元社長が語った後悔
「しんぶん赤旗」社会部長 三浦誠

福島第1原発事故を「人災だった」と言い切った東京電力元社長がいます。南直哉(みなみ・のぶや)氏(86)です。事故の少し後から、今年10月24日に亡くなるまで定期的に南氏を取材してきました。原発を必要とする持論を曲げることはありませんでしたが、事故の反省を繰り返し述べていました。「(東電が)傲岸(ごうがん)で思いあがっていることがあった」と。
南氏は電気事業連合会の会長も務めました。2002年に点検データ改ざんの責任をとって東電社長を辞任。事故当時は東電顧問でした。



南直哉東電元社長(東電提供)

電力業界の本丸
なぜ事故が起きたのか―。そんな疑問をぶつけるため、雨のなか自宅前で待っていました。妻が運転する車で帰宅した南氏は、ぬれた姿を気の毒に思ったのか、こう言って家に入りました。「取材を受けるので、東電顧問室に来なさい」
東電本社近くにあった顧問室を訪問したのは、11年7月7日。南氏は「あんな事故が起こると思っていなかったのは傲岸だった」として、突然、日本共産党の吉井英勝衆院議員(当時)の国会質問について語りだしました。
「吉井さんの質問を現役時代に聞いていれば検討したかもしれない。正直言って今回の事故が起きるまで知らなかった」
吉井氏は事故前に、巨大地震で原発の外部電源や非常用電源が断たれ炉心が冷却できなくなる最悪の事態を想定するよう国会で求めていました。財界、電力業界の本丸ともいえる東電の元社長が、共産党の国会質問にふれ悔悟の念を吐露したことは驚きでした。



福島第1原発1号機。右側は2号機=2021年2月5日(本紙チャーター機から佐藤研二撮影)

「あせりがでた」
木川田一隆元社長(故人)による原発建設の黎明(れいめい)期についても何度か話を聞きました。木川田氏は当初、原発に「非常に慎重」でした。それが関西電力に先を越されたことで「あせりがでた」といいます。
木川田氏は故郷、福島県で関西電力とは型式の違う沸騰水型原発(BWR)の建設を決め、米GE社と「ターンキー契約」をします。設計から建設、試運転までGE社が責任をもつという内容です。
南氏は付き合いのあった中島篤之助氏(故人、非核の政府を求める会常任世話人)から「もうけ主義の民間に原発をやらせると手を抜く」と言われたとしてこう続けました。「その通りになった。GEは津波のことを考えていなかったから非常用発電機を地下にいれた」
事故に話が及ぶときは、いつも目を閉じ、苦しそうに話していました。立地の問題も再々指摘していました。「30~40メートルあった崖をけずり、(海面から)10メートルのところに原発を設置した。崖の上にポンプを循環するとエネルギーロスが大きくなるからだ。それで津波にやられた。電気設備は水につかるとパンクするのは、それは電気屋の常識だ。検討すべき余地がたくさんあった。これは本当に人災だ」
事故から11年がすぎたいま、岸田文雄首相は原発の最大限活用へとかじを切っています。首相から南氏のような事故への反省や苦悩の言葉は聞かれないままです。もうけ主義から原発を推進し、再び人災を起こすことは決して許されません。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年11月5日付掲載


福島第1原発事故を「人災だった」と言い切った東京電力元社長が。南直哉(みなみ・のぶや)氏(86)。事故の少し後から、今年10月24日に亡くなるまで定期的に南氏を取材。原発を必要とする持論を曲げることはありませんでしたが、事故の反省を繰り返し述べて。
南氏は「あんな事故が起こると思っていなかったのは傲岸だった」として、突然、日本共産党の吉井英勝衆院議員(当時)の国会質問について語りだしました。
「吉井さんの質問を現役時代に聞いていれば検討したかもしれない。正直言って今回の事故が起きるまで知らなかった」
GEは津波のことを考えていなかったから非常用発電機を地下にいれた。
30~40メートルあった崖をけずり、(海面から)10メートルのところに原発を設置した。崖の上にポンプを循環するとエネルギーロスが大きくなるからだ。それで津波にやられた。
事故から11年がすぎたいま、岸田文雄首相は原発の最大限活用へとかじを切っています。首相から南氏のような事故への反省や苦悩の言葉は聞かれないままです。もうけ主義から原発を推進し、再び人災を起こすことは決して許されません。