新型コロナウイルスで日本の死者が少ない理由は、今の段階でははっきりとは判らない。①で書いたように東アジア全般で少ないので、民族性や生活様式の違いがあるのかどうか。しかし、それはこの問題の最大の謎ではない。僕が思うに、一番の謎は「ロシアの死者は何故少ないのか」だと思う。と思ったら、ロシアの死者数は大幅に増えるらしい。WHOの数え方とは違う独自の計算をしていたらしい。
それにしても、アメリカが感染者172万、死者10万、ブラジルが感染者43万、死者2万6千、ロシアが感染者38万、死者4千、イギリスが感染者27万、死者3万7千、スペインが感染者23万、死者2万9千、イタリアが感染者23万、死者が3万3千…と感染者数を並べると、人口規模や人口密度が全然違うけれど、ロシアだけ死者数が一ケタ違う感じがする。これは計算方法だけでは説明できないと思う。
もう一つ不思議なことは、オランダとベルギーの違いだ。オランダは人口1730万、面積4万1千㎢。ベルギーは人口1142万、面積3万㎢。オランダの方が人口、面積ともに大きいけれど、隣国だし文化的にも近い。しかし、オランダは感染者約5万、死者が5890人、ベルギーは感染者5万7千、死者が9千3百人ほどと感染者数に比べて、ベルギーの死者が倍近く多い。ベルギーの致死率はEU最悪らしいが、老人ホームなどでの「感染疑い例」もPCR検査抜きで死者にカウントしているとも言われている。
このようにまだ判らないことが多い。最近は南アメリカ(ブラジル、ペルー、チリなど)や中東(エジプト、サウジアラビア、カタールなど)で感染が急拡大していて、未だ全体像を分析できる段階ではない。そういう中に、日本のケースもある。日本で何で感染者が少ないのか。それでも今期のインフルエンザの推定死者数を超えたと思われる。インフルエンザ感染者は今期は少なくて、700万人台と推定されている。致死率0.1%ほどとみなすと、700人前後が亡くなったことになる。現時点で日本の「コロナ」の死者は867人だから、インフルエンザを上回った可能性がある。
日本を考えると、要するに「2月、3月に多くの人がマスクをしていた」ことが一番感染者を増やさなかった理由だと思う。「3・11」の時、世界のニュースには「マスクをして通勤する東京の人々」の画像が流れた。そこには「放射能を恐れる人々」という解説が付いていた。いくら何でも、マスクで放射線が防御出来ると思うはずがない。もちろん、それは「花粉症を恐れる人々」だった。今年は「新型コロナウイルス」もあるが、それ以上に「花粉症を防ぐ」ためにマスクをしていた人が多いはずだ。
(花粉症対策でマスクをして通勤する人々)
マスクの穴よりもウイルスの方が断然小さい。ウイルスも通さないマスクになったら、人間が呼吸できない。しかし、マスクをしていれば、飛沫をある程度防ぐことも出来る。そして、それ以上に「無症状の感染者」が他人に「飛沫感染させるリスク」は大きく減るだろう。僕も無症状の段階で感染力があるとされてからは、「感染防止におけるマスクの有効性」を評価するようになった。ただ日本には「マスク文化がある」などと言う人もいるが、それはおかしい。花粉症や風邪が嫌だから、仕方なくしているんであって、家でも年中マスクをしている人はさすがに日本にもごく少数だろう。
誰だったか、「免疫力を高める」という表現はおかしいと言っていた人がいた。「自然免疫力を一定レベルで維持する」と言うべきだという。そもそも「免疫力を高める」ということの意味が医学的にはおかしいらしい。仮に「免疫力が高まる」食事で実際に高まったりしたら、どうなるか。体内に入る異物どころか、自分自身をも攻撃する「免疫暴走」が起こるかも知れない。「免疫不全」も困るけど、「免疫暴走」も困る。免疫が高すぎるとアレルギーが起こりやすい。
(「免疫力を高める食品」)
上の画像にあるように、よくテレビのバラエティ番組などで「免疫力を高める」とされるのは、「発酵食品」や「海藻」が取り上げられる。それが本当に正しいかどうか、僕はよく判らないけれど、一般論として健康には良さそうだ。そして、味噌、醤油、納豆、鰹節、チーズ、ヨーグルト、キムチやピクルスを含めた漬物などの発酵食品、海苔、ワカメ、昆布などの海藻類と名を挙げてみれば、日本人は特に意識しなくても十分以上に摂取している。むしろ醤油、味噌、漬物などで「塩分の取り過ぎ」が大問題だ。
昔なかった「花粉症」が増えたのは、林業政策の問題でもあるけれど、日本の衛生環境が良くなって(つまり「綺麗になりすぎて」)、同時に日本人の免疫力も食事などで高まったからではないだろうか。アレルギーも増えているようだし。十分日本人の免疫力は高くなっているし、だからこそ花粉症発症者が増えた。そう考えると、スギ、ヒノキ花粉が激増する2月から4月頃は、首都圏に住む人々の体内では免疫系総動員になっているかと思う。
細菌やウイルスには、一端かかれば次は発症しない、あるいは軽症化するという「獲得免疫」がある。一方、もともと人間には「自然免疫」が備わっていて、病原体侵入に際して免疫系の活動で防御する。中世のペスト大流行の時でも、死者は3分の1で助かった人の方が多い。先に読んだマンゾーニ「いいなづけ」は、ペストに罹患したものの助かった人と助からなかった人のドラマだった。一番恐ろしいエボラ出血熱でも致死率9割とされ、1割の人は助かるのである。
花粉症の季節は、発症する人もしない人も、花粉という異物がどんどん体内に入ってくるから、体内の免疫系はたとえて言えば「緊急事態宣言」が出ているだろう。突然コロナウイルスが侵入したのではなく、ウイルスではないにせよ体は準備していた。そのため感染、発症がある程度押さえられたのではないか。これが成り立つかどうか、僕は医学研究者ではないから判らない。でも人と同じことを書いても仕方ないから、何か他のファクターを考えた時に思いついた「花粉症仮説」である。
それにしても、アメリカが感染者172万、死者10万、ブラジルが感染者43万、死者2万6千、ロシアが感染者38万、死者4千、イギリスが感染者27万、死者3万7千、スペインが感染者23万、死者2万9千、イタリアが感染者23万、死者が3万3千…と感染者数を並べると、人口規模や人口密度が全然違うけれど、ロシアだけ死者数が一ケタ違う感じがする。これは計算方法だけでは説明できないと思う。
もう一つ不思議なことは、オランダとベルギーの違いだ。オランダは人口1730万、面積4万1千㎢。ベルギーは人口1142万、面積3万㎢。オランダの方が人口、面積ともに大きいけれど、隣国だし文化的にも近い。しかし、オランダは感染者約5万、死者が5890人、ベルギーは感染者5万7千、死者が9千3百人ほどと感染者数に比べて、ベルギーの死者が倍近く多い。ベルギーの致死率はEU最悪らしいが、老人ホームなどでの「感染疑い例」もPCR検査抜きで死者にカウントしているとも言われている。
このようにまだ判らないことが多い。最近は南アメリカ(ブラジル、ペルー、チリなど)や中東(エジプト、サウジアラビア、カタールなど)で感染が急拡大していて、未だ全体像を分析できる段階ではない。そういう中に、日本のケースもある。日本で何で感染者が少ないのか。それでも今期のインフルエンザの推定死者数を超えたと思われる。インフルエンザ感染者は今期は少なくて、700万人台と推定されている。致死率0.1%ほどとみなすと、700人前後が亡くなったことになる。現時点で日本の「コロナ」の死者は867人だから、インフルエンザを上回った可能性がある。
日本を考えると、要するに「2月、3月に多くの人がマスクをしていた」ことが一番感染者を増やさなかった理由だと思う。「3・11」の時、世界のニュースには「マスクをして通勤する東京の人々」の画像が流れた。そこには「放射能を恐れる人々」という解説が付いていた。いくら何でも、マスクで放射線が防御出来ると思うはずがない。もちろん、それは「花粉症を恐れる人々」だった。今年は「新型コロナウイルス」もあるが、それ以上に「花粉症を防ぐ」ためにマスクをしていた人が多いはずだ。

マスクの穴よりもウイルスの方が断然小さい。ウイルスも通さないマスクになったら、人間が呼吸できない。しかし、マスクをしていれば、飛沫をある程度防ぐことも出来る。そして、それ以上に「無症状の感染者」が他人に「飛沫感染させるリスク」は大きく減るだろう。僕も無症状の段階で感染力があるとされてからは、「感染防止におけるマスクの有効性」を評価するようになった。ただ日本には「マスク文化がある」などと言う人もいるが、それはおかしい。花粉症や風邪が嫌だから、仕方なくしているんであって、家でも年中マスクをしている人はさすがに日本にもごく少数だろう。
誰だったか、「免疫力を高める」という表現はおかしいと言っていた人がいた。「自然免疫力を一定レベルで維持する」と言うべきだという。そもそも「免疫力を高める」ということの意味が医学的にはおかしいらしい。仮に「免疫力が高まる」食事で実際に高まったりしたら、どうなるか。体内に入る異物どころか、自分自身をも攻撃する「免疫暴走」が起こるかも知れない。「免疫不全」も困るけど、「免疫暴走」も困る。免疫が高すぎるとアレルギーが起こりやすい。

上の画像にあるように、よくテレビのバラエティ番組などで「免疫力を高める」とされるのは、「発酵食品」や「海藻」が取り上げられる。それが本当に正しいかどうか、僕はよく判らないけれど、一般論として健康には良さそうだ。そして、味噌、醤油、納豆、鰹節、チーズ、ヨーグルト、キムチやピクルスを含めた漬物などの発酵食品、海苔、ワカメ、昆布などの海藻類と名を挙げてみれば、日本人は特に意識しなくても十分以上に摂取している。むしろ醤油、味噌、漬物などで「塩分の取り過ぎ」が大問題だ。
昔なかった「花粉症」が増えたのは、林業政策の問題でもあるけれど、日本の衛生環境が良くなって(つまり「綺麗になりすぎて」)、同時に日本人の免疫力も食事などで高まったからではないだろうか。アレルギーも増えているようだし。十分日本人の免疫力は高くなっているし、だからこそ花粉症発症者が増えた。そう考えると、スギ、ヒノキ花粉が激増する2月から4月頃は、首都圏に住む人々の体内では免疫系総動員になっているかと思う。
細菌やウイルスには、一端かかれば次は発症しない、あるいは軽症化するという「獲得免疫」がある。一方、もともと人間には「自然免疫」が備わっていて、病原体侵入に際して免疫系の活動で防御する。中世のペスト大流行の時でも、死者は3分の1で助かった人の方が多い。先に読んだマンゾーニ「いいなづけ」は、ペストに罹患したものの助かった人と助からなかった人のドラマだった。一番恐ろしいエボラ出血熱でも致死率9割とされ、1割の人は助かるのである。
花粉症の季節は、発症する人もしない人も、花粉という異物がどんどん体内に入ってくるから、体内の免疫系はたとえて言えば「緊急事態宣言」が出ているだろう。突然コロナウイルスが侵入したのではなく、ウイルスではないにせよ体は準備していた。そのため感染、発症がある程度押さえられたのではないか。これが成り立つかどうか、僕は医学研究者ではないから判らない。でも人と同じことを書いても仕方ないから、何か他のファクターを考えた時に思いついた「花粉症仮説」である。