「カランコエの花」という短編映画が話題になっている。東中野で「Workers 被災地に起つ」を見た後、JR中央線で3駅行った阿佐ヶ谷にある「ユジク阿佐ヶ谷」という小さな映画館に行く。そこで2日まで3時半から上映している。それに気付いて、ぜひ見てみようと思った。わずか39分という短編だけど、高校を舞台に「LGBT問題」を扱っている。料金は一本分と同じなので、なんだかコスパが悪い気もしたけど、逆に早く帰れるから身体に楽。これは見てよかった映画だった。
一ノ瀬月乃という女子高生がいる。母親が赤いシュシュを買ってきて、カランコエみたいで可愛いという。そんなシュシュをして学校へ行く。ブラスバンド部に入っている。クラスには仲良し4人組がいて、一緒に校庭でお昼を食べる。友だちが焼いたクッキーを持ってきて、皆で美味しいと食べあう。そんな学校生活だったけど、ある日英語の先生が休んで自習になるはずのところ、養護教諭が来て「LGBT」の説明を始める。クラスの男子が「他のクラスは普通の自習だった」と言い始める。うちのクラスだけLGBTの授業をしたってことは、このクラスに「当事者」がいるんじゃない?
実際にいるのか、いるとしたら誰なのか? 無責任にはやし立てる男子もいる中、クラスの心が揺れていく。そんな映画で、筋をこれ以上書いちゃうと面白くないから、これで止めておく。39分だから、このワンアイディアで映画が進む。この後どうなるんだろうと思うと終わっちゃうけど。高校生という年齢に身近な設定でセクシャル・マイノリティの問題を考えさせる。どこの高校かなと思うと、田園風景が出てきて途中で水戸行きのバスが出てくる。ラストのクレジットで判るけど、茨城県立那珂高校でロケされた。東京新聞10月19日の紹介記事によると、高校が全面協力して生徒もエキストラで出てるという。地方の高校という場所の設定が効果的。
カランコエ(Kalanchoe)ってどんな花だろう? ベンケイソウ科の低木多年草で、原産地は東アフリカ、南アフリカ、マダガスカル辺り。光をあてる時間を調節すると、一年中花を楽しめるとある。映画の中で、母親がカランコエの花言葉は「あなたを守る」だと言う。それが映画のテーマを象徴するような感じだが、調べてみると他にも「幸福を告げる」「たくさんの小さな思い出」「おおらかな心」というのもあった。どれもこの映画にふさわしいけど、特に「たくさんの小さな思い出」もいいな。
(確かに赤いシュシュっぽいカランコエの花)
主人公の月乃役は今田美桜という女優。「いまだ」と打ち込むと、今田耕司より先に出てくるんでビックリした。主要キャストはやはり皆芸能活動をしている人が演じてる。「その他大勢」がエキストラなんだろう。監督・脚本・編集は中川駿(31歳)という新人。演出や映像にはどうかなというところもないではないけど、高校生を描いているという意味ではあまり気にならない。「カメラを止めるな」もいいけれど、「カランコエの花」もぜひ全国で大々的に上映されて欲しい。時間が短いから高校生割引500円ぐらいで。それと短いから、国会の議員会館でも上映をしてはどうか。
ブラジルで極右と言われるボルソナロという人が大統領に当選した。軍政時代を賛美し、黒人や女性、性的マイノリティへの差別的発言をしてきたという。世界的に性的マイノリティに対する理解が進んでいるかと思うと、反動も大きいのである。それは日本でも同様だが、「いのちに関わる」問題だという認識と想像力が教師には必要だろう。身近にいるはずだが、なかなか見えない。公然と表明している有名人は知ってても、クラスの生徒にいるかどうかは判らない。僕も夜間定時制高校に勤務した時に初めて「GID」(性同一性障害)を自任する生徒と出会った。
それを思うと、この映画の養護教諭のやり方には問題が多い。「個人プレー」になってしまっている。学校論、教師論でよく書いてきたように、学校も行政組織の一つであって「組織」で動かないといけない問題がある。やはり一度学年会や生活指導部会で話し合って、全校的に進めるやり方を模索するべきだった。それにセクシャル・マイノリティの問題を説明するときに、「誰かを好きになるのは素敵なこと」、それは「異性の場合も同性の場合も同じ」だといった風に語りがちだ。でもストーカーに悩んでいる生徒もいるし、「無性愛」(性的な欲求がない、少ない人)という問題もある。LGBTを学校で考える時に配慮しないといけない。この映画は39分だから、授業時間内で見られる。やがてDVDが発売されたら、全国の高校で討論型授業をやって欲しいなと思った。
一ノ瀬月乃という女子高生がいる。母親が赤いシュシュを買ってきて、カランコエみたいで可愛いという。そんなシュシュをして学校へ行く。ブラスバンド部に入っている。クラスには仲良し4人組がいて、一緒に校庭でお昼を食べる。友だちが焼いたクッキーを持ってきて、皆で美味しいと食べあう。そんな学校生活だったけど、ある日英語の先生が休んで自習になるはずのところ、養護教諭が来て「LGBT」の説明を始める。クラスの男子が「他のクラスは普通の自習だった」と言い始める。うちのクラスだけLGBTの授業をしたってことは、このクラスに「当事者」がいるんじゃない?
実際にいるのか、いるとしたら誰なのか? 無責任にはやし立てる男子もいる中、クラスの心が揺れていく。そんな映画で、筋をこれ以上書いちゃうと面白くないから、これで止めておく。39分だから、このワンアイディアで映画が進む。この後どうなるんだろうと思うと終わっちゃうけど。高校生という年齢に身近な設定でセクシャル・マイノリティの問題を考えさせる。どこの高校かなと思うと、田園風景が出てきて途中で水戸行きのバスが出てくる。ラストのクレジットで判るけど、茨城県立那珂高校でロケされた。東京新聞10月19日の紹介記事によると、高校が全面協力して生徒もエキストラで出てるという。地方の高校という場所の設定が効果的。
カランコエ(Kalanchoe)ってどんな花だろう? ベンケイソウ科の低木多年草で、原産地は東アフリカ、南アフリカ、マダガスカル辺り。光をあてる時間を調節すると、一年中花を楽しめるとある。映画の中で、母親がカランコエの花言葉は「あなたを守る」だと言う。それが映画のテーマを象徴するような感じだが、調べてみると他にも「幸福を告げる」「たくさんの小さな思い出」「おおらかな心」というのもあった。どれもこの映画にふさわしいけど、特に「たくさんの小さな思い出」もいいな。
(確かに赤いシュシュっぽいカランコエの花)
主人公の月乃役は今田美桜という女優。「いまだ」と打ち込むと、今田耕司より先に出てくるんでビックリした。主要キャストはやはり皆芸能活動をしている人が演じてる。「その他大勢」がエキストラなんだろう。監督・脚本・編集は中川駿(31歳)という新人。演出や映像にはどうかなというところもないではないけど、高校生を描いているという意味ではあまり気にならない。「カメラを止めるな」もいいけれど、「カランコエの花」もぜひ全国で大々的に上映されて欲しい。時間が短いから高校生割引500円ぐらいで。それと短いから、国会の議員会館でも上映をしてはどうか。
ブラジルで極右と言われるボルソナロという人が大統領に当選した。軍政時代を賛美し、黒人や女性、性的マイノリティへの差別的発言をしてきたという。世界的に性的マイノリティに対する理解が進んでいるかと思うと、反動も大きいのである。それは日本でも同様だが、「いのちに関わる」問題だという認識と想像力が教師には必要だろう。身近にいるはずだが、なかなか見えない。公然と表明している有名人は知ってても、クラスの生徒にいるかどうかは判らない。僕も夜間定時制高校に勤務した時に初めて「GID」(性同一性障害)を自任する生徒と出会った。
それを思うと、この映画の養護教諭のやり方には問題が多い。「個人プレー」になってしまっている。学校論、教師論でよく書いてきたように、学校も行政組織の一つであって「組織」で動かないといけない問題がある。やはり一度学年会や生活指導部会で話し合って、全校的に進めるやり方を模索するべきだった。それにセクシャル・マイノリティの問題を説明するときに、「誰かを好きになるのは素敵なこと」、それは「異性の場合も同性の場合も同じ」だといった風に語りがちだ。でもストーカーに悩んでいる生徒もいるし、「無性愛」(性的な欲求がない、少ない人)という問題もある。LGBTを学校で考える時に配慮しないといけない。この映画は39分だから、授業時間内で見られる。やがてDVDが発売されたら、全国の高校で討論型授業をやって欲しいなと思った。