川島雄三(1918~1963)は45歳で急死したが、ぼう大な監督作品が残されている。まだ発見を待っている状態だ。日活や大映で作った映画しか知られていなかったけど、最初に所属した松竹時代の映画も再評価されつつある。 市川崑(1915~2008)、小林正樹(1916~1996)より若いのに、デビューは戦時中の1944年「還ってきた男」なのである。代表作は間違いなく日活時代の「幕末太陽傳」(1957)。57年のキネ旬第4位だけど、2009年にキネ旬で行った「映画人が選ぶオールタイムベストテン」でも第4位に選ばれている。僕の若い頃は、川島作品では日活の「幕末太陽傳」と「洲崎パラダイス 赤信号」、大映の若尾文子主演「雁の寺」「しとやかな獣」ぐらいしか上映されなかった。
近年になって川島雄三の再評価が進んできた。松竹、日活、東宝(東京映画)と渡り歩き、さらに大映でも若尾文子の代表作を撮った。だからいろいろな俳優と組んでいて、森繁久彌、淡島千景、小沢昭一などの追悼上映では川島作品が欠かせない。田中絹代、原節子、山田五十鈴などの大女優の主演作品も撮っている。だから俳優の特集で上映されやすい。当時は見慣れていた東京の風景をバックにした風俗映画が、今見ると非常に貴重な映像になっている。今回新文芸坐で10本見る機会があった。もっとも半分の5本は見ていた。まあついでに見たのである。まとめて川島雄三論を書きたいところだけど、これがどうもよく判らない。評価が難しい。
今まで上げた作品以外で、傑作という評価が定着したと言っていいのが、若尾文子主演のもう一本、「女は二度生まれる」だ。若尾主演ではこれが一番いいのではないか。松竹時代では「とんかつ大将」が面白い。浅草周辺の貧民街に住みついた医者の佐野周二の物語。角梨枝子がとてもいい。今回はやっていないが「適齢三人娘」はテンポのいいコメディ。「明日は月給日」は今回は見ていないが、結構面白かった。桂小金治の映画出演デビュー作で落語家役。「東京マダムと大阪夫人」は今回初めて見たけど、家電製品購入やニューヨーク支店勤務をめぐる英語ブームなど「社宅」での生活を風刺した内容が映像社会学的に面白い。芦川いづみのデビュー作で、可憐なる役柄を好演している。理解なき父親を心配しながらも、姉のもとに逃げてきてしまう役柄に応援したくなる。高橋貞二をめぐる恋敵は北原三枝(後の石原裕次郎夫人)で、配役も興味深い。
(「女は二度生まれる」)
日活では「洲崎パラダイス」「幕末太陽傳」以外では、「愛のお荷物」が面白いと思う。続いて東宝系の東京映画で、フランキー堺主演のたくさんの映画を撮った。「グラマ島の誘惑」「貸間あり」「人も歩けば」などは、特に評価に困る戦後有数の「怪作」。「グラマ島の誘惑」は森繁、フランキーが皇族の兄弟で戦時中に「慰安婦」とともに無人島に流れ着く。飯沢匡原作の不思議な設定で、原色を散りばめたカラー画面がすごい。この皇族兄弟がとんでもない。「特急にっぽん」は期待していた割につまらなかった。フランキーは何故、こんなにもてるのか。「縞の背広の親分衆」もどうも怪作に近い。
(「グラマ島の誘惑」)
実は初めての「青べか物語」は浦安の今は亡き風景と風俗を伝えて秀逸。また「赤坂の姉妹 夜の肌」が非常に面白かった。冒頭が国会議事堂で樺美智子に花束を捧げようとする場面。淡島千景、新珠三千代、川口知子の三姉妹が赤坂でどう生きていくか。東京風景も面白い。赤坂という政界と結びついた歓楽街、料亭がある街をうまく描いている。こういう「町の解説」みたいなものが冒頭にある映画が多い。今見ると都市論的視点で再評価できるのではないかと思う。二度目の「花影」も、ついこの間観たばかりだけど、ついでに見るとやはり傑作である。二度見た方が傑作だと思った。
近年になって川島雄三の再評価が進んできた。松竹、日活、東宝(東京映画)と渡り歩き、さらに大映でも若尾文子の代表作を撮った。だからいろいろな俳優と組んでいて、森繁久彌、淡島千景、小沢昭一などの追悼上映では川島作品が欠かせない。田中絹代、原節子、山田五十鈴などの大女優の主演作品も撮っている。だから俳優の特集で上映されやすい。当時は見慣れていた東京の風景をバックにした風俗映画が、今見ると非常に貴重な映像になっている。今回新文芸坐で10本見る機会があった。もっとも半分の5本は見ていた。まあついでに見たのである。まとめて川島雄三論を書きたいところだけど、これがどうもよく判らない。評価が難しい。
今まで上げた作品以外で、傑作という評価が定着したと言っていいのが、若尾文子主演のもう一本、「女は二度生まれる」だ。若尾主演ではこれが一番いいのではないか。松竹時代では「とんかつ大将」が面白い。浅草周辺の貧民街に住みついた医者の佐野周二の物語。角梨枝子がとてもいい。今回はやっていないが「適齢三人娘」はテンポのいいコメディ。「明日は月給日」は今回は見ていないが、結構面白かった。桂小金治の映画出演デビュー作で落語家役。「東京マダムと大阪夫人」は今回初めて見たけど、家電製品購入やニューヨーク支店勤務をめぐる英語ブームなど「社宅」での生活を風刺した内容が映像社会学的に面白い。芦川いづみのデビュー作で、可憐なる役柄を好演している。理解なき父親を心配しながらも、姉のもとに逃げてきてしまう役柄に応援したくなる。高橋貞二をめぐる恋敵は北原三枝(後の石原裕次郎夫人)で、配役も興味深い。
(「女は二度生まれる」)
日活では「洲崎パラダイス」「幕末太陽傳」以外では、「愛のお荷物」が面白いと思う。続いて東宝系の東京映画で、フランキー堺主演のたくさんの映画を撮った。「グラマ島の誘惑」「貸間あり」「人も歩けば」などは、特に評価に困る戦後有数の「怪作」。「グラマ島の誘惑」は森繁、フランキーが皇族の兄弟で戦時中に「慰安婦」とともに無人島に流れ着く。飯沢匡原作の不思議な設定で、原色を散りばめたカラー画面がすごい。この皇族兄弟がとんでもない。「特急にっぽん」は期待していた割につまらなかった。フランキーは何故、こんなにもてるのか。「縞の背広の親分衆」もどうも怪作に近い。
(「グラマ島の誘惑」)
実は初めての「青べか物語」は浦安の今は亡き風景と風俗を伝えて秀逸。また「赤坂の姉妹 夜の肌」が非常に面白かった。冒頭が国会議事堂で樺美智子に花束を捧げようとする場面。淡島千景、新珠三千代、川口知子の三姉妹が赤坂でどう生きていくか。東京風景も面白い。赤坂という政界と結びついた歓楽街、料亭がある街をうまく描いている。こういう「町の解説」みたいなものが冒頭にある映画が多い。今見ると都市論的視点で再評価できるのではないかと思う。二度目の「花影」も、ついこの間観たばかりだけど、ついでに見るとやはり傑作である。二度見た方が傑作だと思った。