「二重国籍」問題も最後にしたいと思う。今は「国籍」と言えば、まずスポーツ界の問題である。五輪が終わったばかりなので、誰でもいろいろと思い当たるだろう。政治家と同様に、オリンピックなどでも、「人は一時期には一つの国しか代表できない」。
国家にも様々あるけれど、どんなに大きな国も、小さな島国も、主権を持つ独立した「国民国家」とみなされる。とりあえず、そういう時代に生きているので、国民国家ごとに一つ認められた「オリンピック委員会」から派遣されないと、五輪大会に出場できない。人口13億を超える中国からも、一国の選手定員しか出場できない。マラソンに強い東アフリカ諸国も、国内の競争が激しく五輪出場が大変である。五輪後の9月25日に行われたベルリンマラソンでは、五輪に出場できなかったエチオピアのケネニサ・ベケレが世界記録にわずかに及ばない記録で優勝した。(調べてみると、アテネと北京の1万m、北京の5千mの金メダリストである。)
こうなってくると、自国の代表になれないなら、国籍を変更して他国の代表として五輪を目指したいという人が出てくるのも当然だろう。卓球の中継を見ていると、ヨーロッパ代表に元中国選手がいっぱいいた。陸上競技の100m走男子のアジア記録を持っているのは、フェミ・オグノデというカタールの選手だが、ナイジェリアから国籍を変更した選手である。日本だって無縁ではなく、ソフトボールの宇津木麗華は中国から、アーチェリーの早川浪、漣姉妹は韓国から国籍変更した選手だった。サッカーとなると、もうあまりにもたくさんいて、ワールドカップにも主力メンバーとして何人も出場したのは、皆知っているところだろう。
その逆に、日本人が外国籍を取る場合もある。フィギュアスケートの女子選手、川口悠子はロシアの国籍を取得して、ロシアの男子選手とペアで世界選手権や五輪に出場している。五輪でメダルは獲得していないが、世界選手権では銅メダルを取っている世界的選手である。一方、「猫ひろし」という「日系カンボジア人のお笑いタレント」(ウィキペディアには、こう書かれている)もいる。この前、「笑点」に出ているのをたまたま見たけど、問題があるというなら、蓮舫よりこっちだろと思う。日本で「外国籍の芸能人として活動している」のだろうか。活動の中心が日本だったら、国籍変更して五輪に出るというのもおかしい。というか、そもそも選手歴として世界的記録を持ってない人物が、国籍を変えてまで五輪に出ることが認められるなら「スポーツの価値」はどうなるのか。
こういう問題を考えていると、現在では「国籍を変える」ということが、それほど問題ではない時代になっているのかなと思う。だからこそ、逆に「国籍問題にこだわる」という人も出てくるんだろう。でも、それは実は世論の中ではごく少数なのだと思う。日本でも、世論調査を見ると、蓮舫氏の国籍問題を重視する人はほとんどいなかった。近年になって、外国人の父親を持ち、父の姓を名乗るスポーツ選手がたくさん活躍していることからも、それが判る。昔はほとんどいなかったと思うのだが。それもアジア系やアフリカ系がたくさんいる。世の中がずいぶん変わったような気がする。
スポーツ選手というのは、10代後半から30代ぐらいに活躍することが多い。だから、同世代の中で、最初に世の中に知られる存在となる。軽々しく言えないけど、日本社会のようすがかなり変わってきているのかもしれない。もちろん、今までにも室伏広治のように、母親が外国出身(ルーマニア人で五輪のやり投げ選手)の場合はあった。だけど、父が外国人であって、日本で活躍したという選手はあまり記憶にないように思う。母が外国人の場合、言われないとわからない場合もあるけど、父方の姓を名乗っていれば外国系とすぐに判る。子どもの学校生活(いじめ等の心配)を考えて、母の姓を名乗って学校へ通うという場合が昔は多かったと思うけど、やはり少し変化があるんだと思う。
思いつく限りで何人か(生年順で)挙げておくと、
ダルビッシュ有(1986~) イラン系、野球、テキサス・レンジャーズ所属
ディーン元気(1991~) イギリス系、陸上やり投げ、ミズノ所属
ケンブリッジ飛鳥(1993~) ジャマイカ系 陸上短距離走、「ドーム」所属
鈴木武蔵(1994.2.11~) ジャマイカ系、サッカー、アルビレックス新潟所属
ファン・ウェルメスケルケン際(1994.6.25~) オランダ系、サッカー、オランダチーム
ベイカー茉秋(1994.9.25~) 米国系、柔道、東海大学所属
オナイウ阿道(1995~) ナイジェリア系、サッカー、ジェフユナイテッド千葉所属
オコエ瑠偉(1997.7.21~) ナイジェリア系、野球、楽天イーグルス所属
大坂なおみ(1997.10.16~) ハイチ系、女子テニス、
宮部藍梨(1998~) ナイジェリア系、女子バレー、金蘭会高校所属
サニブラウン・アブデル・ハキーム(1999~) ガーナ系、陸上短距離走、城西高校所属
まだまだいるようだけど、ここでは若くして世界的に、あるいは日本代表レベルで活躍をしている人を挙げてみた。オコエ瑠偉の妹も、高校のバスケ選手で、高校大会レベルでは活躍しているので、やがて日本代表レベルになるかもしれない。こうしてみると、「90年代半ば」、阪神大震災やオウム真理教事件などがあった1995年前後に生まれた選手が多い。やはりその頃は日本社会の大きな変わり目だったのだろうか。以上の全員は僕もすぐに出てこないで、検索して調べてみたけど、確実に何人かは顔が判ると思う。
こういう時代に、「国籍」にこだわりすぎると、もっと大事なものを見失うような気がする。「二重国籍」だからなんだって言うんだろう。むしろ、どんどん二重国籍を認めて、日本人も世界で活躍してもいいし、外国人も日本に来ればいいじゃないか。いや、ラグビーのように、国籍を問わず外国人選手を受け入れる競技の方がいいのかも。ラグビーは、「7人制」が五輪に採用された結果、逆に国籍が問われるようになったという。ニュージーランド出身の「マイケル・リーチ」も、7人制日本代表になるため日本国籍を取り「リーチマイケル」と表記するようになったということである。「五輪」というものが、「国家意識」と結びついて存在しているということである。
産経新聞に掲載されていた記事に、国籍を取ったなら「身も心も日本人になれ」とお説教が書いてあった。蓮舫は戸籍名「村田蓮舫」だが、「本名で選挙に出ない」ことがまず問題なのだという。それは(前に書いたように)、山本総務相や大塚五輪担当相に先に言ってくれと思うけど、選挙に「芸名」で出た人もどの党にもいるだろうに。「扇千景」で出て、参議院議長までやった人もいた。「イチロー」は鈴木名で登録しないと、国辱なんだろうか。どうも発想がイマドキではない気がする。もう国籍や父系主義にこだわる人は、グッと少なくなってきたんじゃないか。だからこそ、一部の人は過敏に反応しているということなんだろう。
国家にも様々あるけれど、どんなに大きな国も、小さな島国も、主権を持つ独立した「国民国家」とみなされる。とりあえず、そういう時代に生きているので、国民国家ごとに一つ認められた「オリンピック委員会」から派遣されないと、五輪大会に出場できない。人口13億を超える中国からも、一国の選手定員しか出場できない。マラソンに強い東アフリカ諸国も、国内の競争が激しく五輪出場が大変である。五輪後の9月25日に行われたベルリンマラソンでは、五輪に出場できなかったエチオピアのケネニサ・ベケレが世界記録にわずかに及ばない記録で優勝した。(調べてみると、アテネと北京の1万m、北京の5千mの金メダリストである。)
こうなってくると、自国の代表になれないなら、国籍を変更して他国の代表として五輪を目指したいという人が出てくるのも当然だろう。卓球の中継を見ていると、ヨーロッパ代表に元中国選手がいっぱいいた。陸上競技の100m走男子のアジア記録を持っているのは、フェミ・オグノデというカタールの選手だが、ナイジェリアから国籍を変更した選手である。日本だって無縁ではなく、ソフトボールの宇津木麗華は中国から、アーチェリーの早川浪、漣姉妹は韓国から国籍変更した選手だった。サッカーとなると、もうあまりにもたくさんいて、ワールドカップにも主力メンバーとして何人も出場したのは、皆知っているところだろう。
その逆に、日本人が外国籍を取る場合もある。フィギュアスケートの女子選手、川口悠子はロシアの国籍を取得して、ロシアの男子選手とペアで世界選手権や五輪に出場している。五輪でメダルは獲得していないが、世界選手権では銅メダルを取っている世界的選手である。一方、「猫ひろし」という「日系カンボジア人のお笑いタレント」(ウィキペディアには、こう書かれている)もいる。この前、「笑点」に出ているのをたまたま見たけど、問題があるというなら、蓮舫よりこっちだろと思う。日本で「外国籍の芸能人として活動している」のだろうか。活動の中心が日本だったら、国籍変更して五輪に出るというのもおかしい。というか、そもそも選手歴として世界的記録を持ってない人物が、国籍を変えてまで五輪に出ることが認められるなら「スポーツの価値」はどうなるのか。
こういう問題を考えていると、現在では「国籍を変える」ということが、それほど問題ではない時代になっているのかなと思う。だからこそ、逆に「国籍問題にこだわる」という人も出てくるんだろう。でも、それは実は世論の中ではごく少数なのだと思う。日本でも、世論調査を見ると、蓮舫氏の国籍問題を重視する人はほとんどいなかった。近年になって、外国人の父親を持ち、父の姓を名乗るスポーツ選手がたくさん活躍していることからも、それが判る。昔はほとんどいなかったと思うのだが。それもアジア系やアフリカ系がたくさんいる。世の中がずいぶん変わったような気がする。
スポーツ選手というのは、10代後半から30代ぐらいに活躍することが多い。だから、同世代の中で、最初に世の中に知られる存在となる。軽々しく言えないけど、日本社会のようすがかなり変わってきているのかもしれない。もちろん、今までにも室伏広治のように、母親が外国出身(ルーマニア人で五輪のやり投げ選手)の場合はあった。だけど、父が外国人であって、日本で活躍したという選手はあまり記憶にないように思う。母が外国人の場合、言われないとわからない場合もあるけど、父方の姓を名乗っていれば外国系とすぐに判る。子どもの学校生活(いじめ等の心配)を考えて、母の姓を名乗って学校へ通うという場合が昔は多かったと思うけど、やはり少し変化があるんだと思う。
思いつく限りで何人か(生年順で)挙げておくと、
ダルビッシュ有(1986~) イラン系、野球、テキサス・レンジャーズ所属
ディーン元気(1991~) イギリス系、陸上やり投げ、ミズノ所属
ケンブリッジ飛鳥(1993~) ジャマイカ系 陸上短距離走、「ドーム」所属
鈴木武蔵(1994.2.11~) ジャマイカ系、サッカー、アルビレックス新潟所属
ファン・ウェルメスケルケン際(1994.6.25~) オランダ系、サッカー、オランダチーム
ベイカー茉秋(1994.9.25~) 米国系、柔道、東海大学所属
オナイウ阿道(1995~) ナイジェリア系、サッカー、ジェフユナイテッド千葉所属
オコエ瑠偉(1997.7.21~) ナイジェリア系、野球、楽天イーグルス所属
大坂なおみ(1997.10.16~) ハイチ系、女子テニス、
宮部藍梨(1998~) ナイジェリア系、女子バレー、金蘭会高校所属
サニブラウン・アブデル・ハキーム(1999~) ガーナ系、陸上短距離走、城西高校所属
まだまだいるようだけど、ここでは若くして世界的に、あるいは日本代表レベルで活躍をしている人を挙げてみた。オコエ瑠偉の妹も、高校のバスケ選手で、高校大会レベルでは活躍しているので、やがて日本代表レベルになるかもしれない。こうしてみると、「90年代半ば」、阪神大震災やオウム真理教事件などがあった1995年前後に生まれた選手が多い。やはりその頃は日本社会の大きな変わり目だったのだろうか。以上の全員は僕もすぐに出てこないで、検索して調べてみたけど、確実に何人かは顔が判ると思う。
こういう時代に、「国籍」にこだわりすぎると、もっと大事なものを見失うような気がする。「二重国籍」だからなんだって言うんだろう。むしろ、どんどん二重国籍を認めて、日本人も世界で活躍してもいいし、外国人も日本に来ればいいじゃないか。いや、ラグビーのように、国籍を問わず外国人選手を受け入れる競技の方がいいのかも。ラグビーは、「7人制」が五輪に採用された結果、逆に国籍が問われるようになったという。ニュージーランド出身の「マイケル・リーチ」も、7人制日本代表になるため日本国籍を取り「リーチマイケル」と表記するようになったということである。「五輪」というものが、「国家意識」と結びついて存在しているということである。
産経新聞に掲載されていた記事に、国籍を取ったなら「身も心も日本人になれ」とお説教が書いてあった。蓮舫は戸籍名「村田蓮舫」だが、「本名で選挙に出ない」ことがまず問題なのだという。それは(前に書いたように)、山本総務相や大塚五輪担当相に先に言ってくれと思うけど、選挙に「芸名」で出た人もどの党にもいるだろうに。「扇千景」で出て、参議院議長までやった人もいた。「イチロー」は鈴木名で登録しないと、国辱なんだろうか。どうも発想がイマドキではない気がする。もう国籍や父系主義にこだわる人は、グッと少なくなってきたんじゃないか。だからこそ、一部の人は過敏に反応しているということなんだろう。