今年の米国アカデミー賞で主演男優賞、メイクアップ&ヘアデザイン賞を受賞した「ウィンストン・チャーチル」を見て、なかなか面白かった。まあ日本人が受賞(特殊メイクの辻一弘)してるし、歴史ものだから一応見ておくか程度の気持ちで見に行った。この手の映画は筋書きを知ってるわけだし、「政治的配慮」がシナリオに付きまとうから、案外つまらない出来の場合も多い。でも、この映画は「イギリスの一番長い一カ月」といった作りで飽きさせない。
ウィンストン・チャーチル(1874~1965)は、BBCが2002年に行った「偉大な英国人」選出投票で1位になった。そのことはかつて「チャーチルの『第二次世界大戦』を読む」を書いたときに触れた。(この記事は戦後になってチャーチルが書いた大戦回顧録を読んだ感想で、チャーチルはその本でノーベル文学賞を得た。)シェイクスピアやニュートン、ダーウィンより偉大なのかとも思うけど、映画の副題「ヒトラーから世界を救った男」と考えると英国史上最高の偉人にもなる。
この映画を見るとチャーチルは英国政界で決して強い勢力を持っていなかったことが判る。1940年、ドイツの電撃戦開始後、チェンバレン首相に不満が高まり、反ヒトラーのチャーチル海軍大臣が首相となって挙国一致内閣を率いる。だが、かつて第一次大戦時の海軍大臣での失敗(ガリポリ上陸戦の惨敗)などがいつまでも記憶され、また保守党を離れ自由党に入るも再び保守党に復党した過去があり、保守党内に信用がなかった。国王も不信感を持っていて、閣内には和平論者が多くて四面楚歌である。
保守政治家の中には、ナチスへの宥和政策論が強い。フランスも降伏しそう、米国は中立法に縛られ大規模な援助ができない。国王もイギリスを離れカナダに移るべきだという意見さえある。そんな情勢の中、イギリスを守るためにはドイツと交渉すべきだというわけである。イタリアのムッソリーニが和平のあっせんを申し出ていた。もともと保守政界にはナチスよりソ連を危険視する人が多い。チャーチルの心もゆれ動くけど…。ということで、決して泰然自若として戦争指導をしたのではなく、チャーチルも揺れながらも国民の支持を得て戦争を遂行していったことが判る。
最近ダンケルク撤退作戦を描く映画が多い。戦争描写に徹した「ダンケルク」(アカデミー作品賞にこの作品とともにノミネートされた)や「人生はシネマティック!」(国策映画でダンケルク撤退を描こうとする人々を描く)などである。この映画も全く同じ時期を英国政治に舞台を極限して描いている。最近の映画だから、女性タイピストやチャーチル夫人も出てくるが、内容的にはほとんど男性政治家ばかりの映画だ。この映画を見て、ダンケルク撤退作戦の裏に「カレー守備隊」の犠牲という悲劇があったことがよく判った。
イアン・マキューアンの傑作小説「贖罪」を映画化した「つぐない」という映画があった。主たるテーマじゃないけど、この小説と映画のラストにダンケルク撤退が大きな意味を持って描かれた。その映画の監督を担当したジョー・ライトが今度の映画でも監督をしている。「アメリ」などを撮ったフランスのブリュノ・デルボネルが撮影監督をして素晴らしい映像で英国議会を捉えている。
チャーチル役のゲイリー・オールドマン(1958~)は、途中から本人かと思えるほどになってくる。「裏切りのサーカス」でアカデミー賞ノミネートの他、いくつもの映画に出てきたが、今回はアッと驚くメイクの「なりきり演技」である。最近実在人物を演じてアカデミー賞を取るケースが多い。80年代には「ガンジー」(ベン・キングズリー)ぐらいだったけど、21世紀に入るとリンカーンやジョージ6世、ホーキング博士、レイ・チャールズやウガンダのアミン元大統領など。女優でもエリザベス女王やマーガレット・サッチャーなどがいる。こう見ると英国関係が多いのも面白い。以下の写真は、最初が本人、次に映画のチャーチル、最後がオールドマン。いかにすごいメイクか判る。
ウィンストン・チャーチル(1874~1965)は、BBCが2002年に行った「偉大な英国人」選出投票で1位になった。そのことはかつて「チャーチルの『第二次世界大戦』を読む」を書いたときに触れた。(この記事は戦後になってチャーチルが書いた大戦回顧録を読んだ感想で、チャーチルはその本でノーベル文学賞を得た。)シェイクスピアやニュートン、ダーウィンより偉大なのかとも思うけど、映画の副題「ヒトラーから世界を救った男」と考えると英国史上最高の偉人にもなる。
この映画を見るとチャーチルは英国政界で決して強い勢力を持っていなかったことが判る。1940年、ドイツの電撃戦開始後、チェンバレン首相に不満が高まり、反ヒトラーのチャーチル海軍大臣が首相となって挙国一致内閣を率いる。だが、かつて第一次大戦時の海軍大臣での失敗(ガリポリ上陸戦の惨敗)などがいつまでも記憶され、また保守党を離れ自由党に入るも再び保守党に復党した過去があり、保守党内に信用がなかった。国王も不信感を持っていて、閣内には和平論者が多くて四面楚歌である。
保守政治家の中には、ナチスへの宥和政策論が強い。フランスも降伏しそう、米国は中立法に縛られ大規模な援助ができない。国王もイギリスを離れカナダに移るべきだという意見さえある。そんな情勢の中、イギリスを守るためにはドイツと交渉すべきだというわけである。イタリアのムッソリーニが和平のあっせんを申し出ていた。もともと保守政界にはナチスよりソ連を危険視する人が多い。チャーチルの心もゆれ動くけど…。ということで、決して泰然自若として戦争指導をしたのではなく、チャーチルも揺れながらも国民の支持を得て戦争を遂行していったことが判る。
最近ダンケルク撤退作戦を描く映画が多い。戦争描写に徹した「ダンケルク」(アカデミー作品賞にこの作品とともにノミネートされた)や「人生はシネマティック!」(国策映画でダンケルク撤退を描こうとする人々を描く)などである。この映画も全く同じ時期を英国政治に舞台を極限して描いている。最近の映画だから、女性タイピストやチャーチル夫人も出てくるが、内容的にはほとんど男性政治家ばかりの映画だ。この映画を見て、ダンケルク撤退作戦の裏に「カレー守備隊」の犠牲という悲劇があったことがよく判った。
イアン・マキューアンの傑作小説「贖罪」を映画化した「つぐない」という映画があった。主たるテーマじゃないけど、この小説と映画のラストにダンケルク撤退が大きな意味を持って描かれた。その映画の監督を担当したジョー・ライトが今度の映画でも監督をしている。「アメリ」などを撮ったフランスのブリュノ・デルボネルが撮影監督をして素晴らしい映像で英国議会を捉えている。
チャーチル役のゲイリー・オールドマン(1958~)は、途中から本人かと思えるほどになってくる。「裏切りのサーカス」でアカデミー賞ノミネートの他、いくつもの映画に出てきたが、今回はアッと驚くメイクの「なりきり演技」である。最近実在人物を演じてアカデミー賞を取るケースが多い。80年代には「ガンジー」(ベン・キングズリー)ぐらいだったけど、21世紀に入るとリンカーンやジョージ6世、ホーキング博士、レイ・チャールズやウガンダのアミン元大統領など。女優でもエリザベス女王やマーガレット・サッチャーなどがいる。こう見ると英国関係が多いのも面白い。以下の写真は、最初が本人、次に映画のチャーチル、最後がオールドマン。いかにすごいメイクか判る。