入学式に担任が出席できないんだったら、初めから違う人が担任をしてればよかったのではないかという意見が結構見られたように思う。担任を決めたのは前年度の校長(異動してなければ今年度も同じ)だが、そう言われても困るなあという学校現場も多いのではないか。大体、4月に異動したばかりの新任校長かもしれず、事情を聞かれても困る場合もあるだろう。(高校の校長は3年ぐらいで異動することが多いので、今回も一人ぐらいは新任校長がいるのではないだろうか。)
小中では(入学式に)休暇が取りにくいという意見も見られたが、そういう違いはあると思う。小中と高校の違いで一番大きいのは、やはり「学校規模の違い」だろう。数だけ見ても、小学校が一番多くて、中学、高校と少なくなる。東京都の場合だが、昨年度の統計で、小学校が1299校、中学校が623校、高校が188校となっている。(他に中等教育学校6校、特別支援学校61校などがある。)小学校は6学年、中学校は3学年だから、小学校の数が倍になるのは当然。東京の場合、伊豆・小笠原諸島があったり、私立学校が多いなど、全国的には特殊な地域なのだが、この数を見るだけで「(一学校あたりの)高校の教員数が断然多い」のは想像できる。
東京の中学では今も1学年8クラス以上もある大規模校もあるが、大体は2クラスか3クラス程度ではないだろうか。高校の場合、学校数は少ないが、1学年のクラス数は多いのである。小中は義務教育だから歩いていけるところに作る必要があるが、高校生は電車やバスである程度遠くまで通学することが前提になっている。夜間定時制などの特別なケースを除き、今でも進学校は8クラス、そうでなくても6クラス程度はある。大規模学級時代に合わせて教室数が作られていて、規模にあった募集数にする。(それでも中堅校以下だと、クラス数はかなり減らしている。)だから各学校あたりの生徒数はそれほど減らず、教員数は多いわけである。もっとも教員が多くても、クラスが多いので必要な担任の数も多い。でも、「3学級のうちの一人」と「8学級のうちの一人」では「(入学式における)休暇の取りやすさ」には大きな違いがあるだろう。
また、高校と中学では授業の持ち時数の基準が違う。授業内容が専門性が高くなるし、また「専門学科」の高校は専門教科の教員が加配されていることが多い。だから教員数は高校にゆとりが多くなるわけである。以上は高校の方が教員数に余裕があるだろうから、入学式当日も代わりを頼みやすいという話である。では、その代わりの人がいっそのこと、一年を通じて担任をすればいいのではないかという点を検討する。まあその通りで、変更しても特に大きな問題もない場合も実際にはあるだろうと思う。でも、「担任を持ってない教員」にも理由があるわけで、そう簡単には変えられないことが多いだろう。「教科的な要因」「学校運営上の要因」「個人的な要因」に分けて考えてみる。
学級担任は教師の基本的な仕事であり、基本的には交代交代で誰もが担当するものである。正課外の部活顧問などと違う。原則的には全員が順番で担当する。ところで、新入生の担任を決める前に、すでに上級生の担任がいるわけだが、基本的には「持ち上がり」だろう。特に2年から3年にかけては、生徒のクラス替えはあっても、進路を控えて学年担任団は変えない。(それなのに、最近は異動年限で自動的に異動対象にしてしまったり、2年終了時に管理職に「昇進」して生徒を置いて去ってしまう人もいないわけではない。病気や介護などもあるので異動を一概にダメとは言えないが。)上級生の担任が異動した場合は、後がまは「教科的な要因」が大きくなる。
高校の場合、日本史は日本史、物理は物理しか教えないから学年に関係ないというケースも多い。でも(普通科高校の場合)国語、数学、英語などの基本教科、あるいは保健体育などは教員数も多いし、進路指導、生活指導の観点からも、各学年に必ず一人はいるものだ。8クラス規模だと同じ教科の教員が二人いることもあるが、まあ6クラス程度なら、同じ学年の担任に例えば理科が二人ということはない。誰かが途中で異動したとしても、教科バランスを考えて後がまが決まる。転任した人の代わりに新任できた教員が、年齢や経験が同じ程度なら、その人が学年に途中から入ることも多いだろう。
一方「学校運営上の要因」というのは、高校の場合、担任以外の教員人事の方が重要だったり、もめることもあるということである。小規模の中学なら、教務主任、生活指導主任が学級担任を兼務せざるを得ない場合もあると思う。しかし、高校の場合、規模が大きいので、原則的には主任専任となるだろう。(授業時数の軽減も認められる。)また進路指導が重要なので、長い経験から進路先と深いつながりを持っている教員が、担任団に入れず「進路部専属」みたいに「塩漬け」になる場合がある。それは「教務」「生活指導」(生徒指導だけでなく、大規模な文化祭担当もある)にも似たような面があある。伝統ある大規模校になればなるほど、「余人をもって代えがたし」と「毎年希望してるのに担任にしてもらえない」人が出てきたりする。実力十分で「入学式の代役」など「やる気満々」だけど、学校としては他の仕事を割り当てる(と校長が判断した)ということである。
最後に「個人的な要因」だけど、これは「担任をしたくない理由」と「担任をさせられない理由」に分けられる。そしてこの要因が最近は増大しているのではないだろう。「担任をさせられない」というのは、病気で休暇を取ることが多い、精神的に不安定といった教員である。「休職明け」で時間軽減を取ってる教員も担任には入れない。近年、教員の病気休職、特にメンタル面の休職が増大していると言われる。統計でみると、むしろ数年前よりは少し減っているようだけど、病休と精神疾患を合わせると1パーセントを超えている。だから大規模校なら1人ぐらいはいることが多い。年度当初から決まっていれば「代替教員」が配置されるが、臨時教員は勤務時間などは同じだが、来年以後いない可能性が高いので、普通は担任に入らない。
「新規採用教員」も、今ではすぐに担任を持つことはないだろう。昔はすぐ担任に入る新採が結構多かったものである。現場も管理職も、そして本人も、周りに教えられながら担任を務めるのが「一番の研修」と思っていた。今は初任者研修が大変過ぎて、とても担任はできない。他県や私立で教員経験済の「30過ぎの新採」といった場合は別だが。(大体「期限付き採用」なので、来年必ずいるとも限らない。東京では、昨年の新採2740人中、正式採用となったのは2661人。2.9%、79人が採用とならなかった。)最近は新採教員がかなり増えているので、担任を任せられないのは、人員上かなり困るケースも多いだろう。
そのうえ、まだ残る「10年研修」、あるいは導入されてしまった「教員免許更新制」なども、それに当たる年には担任をしたくない要因になっているのではないか。それを理由に担任を外れるのは難しいかもしれないが、逆に「3年担任時に当たらないように計算して、担任に入る」という要因としては大きいだろう。実際、3年担任時の「10年研修」は無理だと思うし、夏休みに行われることが多い「更新講習」も3年担任だと厳しいのではないだろうか。このような現場にしわ寄せする政策が多いので、担任決定は校長にとっても大変な仕事だろう。
そういった事情を考えると、「自校の入学式が子どもの入学式と重なる教員」と言えど、その事情は「担任を外れる理由としては低い」と校長は判断するのではないか。子どもが高校生というのだから、新採でも「10年研修」にも関係ない。40代後半ぐらいで、担任としてはベテラン。今までに何回か卒業生を出した経験もあるはず。人事をいじりはじめると玉突きになってしまうし、教科の要因も大きいだろう。学校現場からすれば、余計なものがいろいろ入って担任の選び方が難しくなる一方。人事は校長の専権事項だとして意見も聞かず発令してしまう校長も多くなっている。どうしてそういう担任団になったのか、どうもよく判らないという場合も多いと思うけど、まあ、大体はそういう事情を勘案して、なんとか担任が決まっていくのである。
小中では(入学式に)休暇が取りにくいという意見も見られたが、そういう違いはあると思う。小中と高校の違いで一番大きいのは、やはり「学校規模の違い」だろう。数だけ見ても、小学校が一番多くて、中学、高校と少なくなる。東京都の場合だが、昨年度の統計で、小学校が1299校、中学校が623校、高校が188校となっている。(他に中等教育学校6校、特別支援学校61校などがある。)小学校は6学年、中学校は3学年だから、小学校の数が倍になるのは当然。東京の場合、伊豆・小笠原諸島があったり、私立学校が多いなど、全国的には特殊な地域なのだが、この数を見るだけで「(一学校あたりの)高校の教員数が断然多い」のは想像できる。
東京の中学では今も1学年8クラス以上もある大規模校もあるが、大体は2クラスか3クラス程度ではないだろうか。高校の場合、学校数は少ないが、1学年のクラス数は多いのである。小中は義務教育だから歩いていけるところに作る必要があるが、高校生は電車やバスである程度遠くまで通学することが前提になっている。夜間定時制などの特別なケースを除き、今でも進学校は8クラス、そうでなくても6クラス程度はある。大規模学級時代に合わせて教室数が作られていて、規模にあった募集数にする。(それでも中堅校以下だと、クラス数はかなり減らしている。)だから各学校あたりの生徒数はそれほど減らず、教員数は多いわけである。もっとも教員が多くても、クラスが多いので必要な担任の数も多い。でも、「3学級のうちの一人」と「8学級のうちの一人」では「(入学式における)休暇の取りやすさ」には大きな違いがあるだろう。
また、高校と中学では授業の持ち時数の基準が違う。授業内容が専門性が高くなるし、また「専門学科」の高校は専門教科の教員が加配されていることが多い。だから教員数は高校にゆとりが多くなるわけである。以上は高校の方が教員数に余裕があるだろうから、入学式当日も代わりを頼みやすいという話である。では、その代わりの人がいっそのこと、一年を通じて担任をすればいいのではないかという点を検討する。まあその通りで、変更しても特に大きな問題もない場合も実際にはあるだろうと思う。でも、「担任を持ってない教員」にも理由があるわけで、そう簡単には変えられないことが多いだろう。「教科的な要因」「学校運営上の要因」「個人的な要因」に分けて考えてみる。
学級担任は教師の基本的な仕事であり、基本的には交代交代で誰もが担当するものである。正課外の部活顧問などと違う。原則的には全員が順番で担当する。ところで、新入生の担任を決める前に、すでに上級生の担任がいるわけだが、基本的には「持ち上がり」だろう。特に2年から3年にかけては、生徒のクラス替えはあっても、進路を控えて学年担任団は変えない。(それなのに、最近は異動年限で自動的に異動対象にしてしまったり、2年終了時に管理職に「昇進」して生徒を置いて去ってしまう人もいないわけではない。病気や介護などもあるので異動を一概にダメとは言えないが。)上級生の担任が異動した場合は、後がまは「教科的な要因」が大きくなる。
高校の場合、日本史は日本史、物理は物理しか教えないから学年に関係ないというケースも多い。でも(普通科高校の場合)国語、数学、英語などの基本教科、あるいは保健体育などは教員数も多いし、進路指導、生活指導の観点からも、各学年に必ず一人はいるものだ。8クラス規模だと同じ教科の教員が二人いることもあるが、まあ6クラス程度なら、同じ学年の担任に例えば理科が二人ということはない。誰かが途中で異動したとしても、教科バランスを考えて後がまが決まる。転任した人の代わりに新任できた教員が、年齢や経験が同じ程度なら、その人が学年に途中から入ることも多いだろう。
一方「学校運営上の要因」というのは、高校の場合、担任以外の教員人事の方が重要だったり、もめることもあるということである。小規模の中学なら、教務主任、生活指導主任が学級担任を兼務せざるを得ない場合もあると思う。しかし、高校の場合、規模が大きいので、原則的には主任専任となるだろう。(授業時数の軽減も認められる。)また進路指導が重要なので、長い経験から進路先と深いつながりを持っている教員が、担任団に入れず「進路部専属」みたいに「塩漬け」になる場合がある。それは「教務」「生活指導」(生徒指導だけでなく、大規模な文化祭担当もある)にも似たような面があある。伝統ある大規模校になればなるほど、「余人をもって代えがたし」と「毎年希望してるのに担任にしてもらえない」人が出てきたりする。実力十分で「入学式の代役」など「やる気満々」だけど、学校としては他の仕事を割り当てる(と校長が判断した)ということである。
最後に「個人的な要因」だけど、これは「担任をしたくない理由」と「担任をさせられない理由」に分けられる。そしてこの要因が最近は増大しているのではないだろう。「担任をさせられない」というのは、病気で休暇を取ることが多い、精神的に不安定といった教員である。「休職明け」で時間軽減を取ってる教員も担任には入れない。近年、教員の病気休職、特にメンタル面の休職が増大していると言われる。統計でみると、むしろ数年前よりは少し減っているようだけど、病休と精神疾患を合わせると1パーセントを超えている。だから大規模校なら1人ぐらいはいることが多い。年度当初から決まっていれば「代替教員」が配置されるが、臨時教員は勤務時間などは同じだが、来年以後いない可能性が高いので、普通は担任に入らない。
「新規採用教員」も、今ではすぐに担任を持つことはないだろう。昔はすぐ担任に入る新採が結構多かったものである。現場も管理職も、そして本人も、周りに教えられながら担任を務めるのが「一番の研修」と思っていた。今は初任者研修が大変過ぎて、とても担任はできない。他県や私立で教員経験済の「30過ぎの新採」といった場合は別だが。(大体「期限付き採用」なので、来年必ずいるとも限らない。東京では、昨年の新採2740人中、正式採用となったのは2661人。2.9%、79人が採用とならなかった。)最近は新採教員がかなり増えているので、担任を任せられないのは、人員上かなり困るケースも多いだろう。
そのうえ、まだ残る「10年研修」、あるいは導入されてしまった「教員免許更新制」なども、それに当たる年には担任をしたくない要因になっているのではないか。それを理由に担任を外れるのは難しいかもしれないが、逆に「3年担任時に当たらないように計算して、担任に入る」という要因としては大きいだろう。実際、3年担任時の「10年研修」は無理だと思うし、夏休みに行われることが多い「更新講習」も3年担任だと厳しいのではないだろうか。このような現場にしわ寄せする政策が多いので、担任決定は校長にとっても大変な仕事だろう。
そういった事情を考えると、「自校の入学式が子どもの入学式と重なる教員」と言えど、その事情は「担任を外れる理由としては低い」と校長は判断するのではないか。子どもが高校生というのだから、新採でも「10年研修」にも関係ない。40代後半ぐらいで、担任としてはベテラン。今までに何回か卒業生を出した経験もあるはず。人事をいじりはじめると玉突きになってしまうし、教科の要因も大きいだろう。学校現場からすれば、余計なものがいろいろ入って担任の選び方が難しくなる一方。人事は校長の専権事項だとして意見も聞かず発令してしまう校長も多くなっている。どうしてそういう担任団になったのか、どうもよく判らないという場合も多いと思うけど、まあ、大体はそういう事情を勘案して、なんとか担任が決まっていくのである。