白石加代子の「百物語」シリーズがついにファイナル公演という。第32話の演目は三島由紀夫「橋づくし」と泉鏡花「天守物語」。(演出は鴨下信一)
このシリーズは20年以上続いてきたが、僕は見たことがなかった。最初の頃、ものすごく評判になり見てみたいと思ったけど、日程が合わなかったりチケットが取れなかったた。その後もずっとやっていたけれど、まあ百までは遠いとなると、演目にあまり関心がない時はパスすることになる。そうして見ないままになった。今回も演目だけで言えば、見なかったかも知れないんだけど、招待に当たったので北千住のシアター1010で見た。(丸井の上階にある劇場で、1010は「せんじゅ」と読ませる。前にも書いてると思うが、○Ⅰ○Ⅰと書いてあるビルに1010があるのは何だかおかしい。)
この「百物語」というのは、必ず「原作」があるわけで、要するに「朗読劇」というのに当たるだろうけど、今回見て実に素晴らしい「一人芝居」だと思った。セットもあるし、黒子も出てくるので、落語のような「一人芸」ではない。井上ひさし「化粧」のような初めから俳優が一人で演じるように書かれたテクストがあるわけでもない。だから、坂本長利「土佐源氏」やマルセ太郎の「スクリーンのない映画館」、あるいは一龍齋貞水の「立体怪談」のような「語り芸」ともちょっと違っている。そのような一人で演じる芸能は日本にかなりあるので、頭の中でいろいろ比較してしまうのだが、白石本人が舞台を動き回るので、一番演劇的。テクストは原作の文章を改編していないので、ナレーション的な説明もない。落語のマクラに当たるようなものがないので、最初は原作が昔のものだとよく判らない感じもする。とにかく「立体朗読」とでも言う不思議な「一人芝居」である。
白石加代子(1941~)は鈴木忠志主宰の早稲田小劇場で「狂気の女優」として有名になり、鈴木メソッドを体現する「アングラ演劇」の代表的女優と言われた。その後、鈴木忠志が演出したギリシャ演劇「トロイアの女」や「バッコスの信女」に出演した辺りは、僕も見ている。早稲田小劇場が富山に移って劇団SCOTと改名した後も所属していたが、1989年に退団。その後の20数年は「百物語」がメインの活動と思っていたけれど、ウィキペディアを見たら、蜷川幸雄の芝居も多く出演しているし、市川崑の映画やテレビ出演も多い。だけど、僕にとっては昔のイメージが強かった。
「百物語」ファイナルの99話「天守物語」はまさに圧巻。もともとが戯曲なので、一人で各役をすべて演じる「究極演劇」になっている。これが磨き上げられた体技と声で、不自然さはみじんもない。「天守物語」は玉三郎の十八番で、この7月にも歌舞伎座でやったばかり。もちろん歌舞伎では玉三郎や海老蔵など原作の指定する役ごとに役者が演じている。それを全部一人で語るというのだから、とんでもない発想である。セットは簡素で、黒子も出てくるけど、これは恐るべき荒業だと思った。それを見る者に納得させてしまうんだから、白石加代子の芸の力は恐るべきものがある。いや、恐れ入りましたという感じ。姫路城の天守に住む「妖怪」の天守夫人の物語だけど、姫路城の修復なった年にこれがファイナルに選ばれたのも因縁。まだ、しばらく各地で公演が続くということで、見る機会があれば是非。
このシリーズは20年以上続いてきたが、僕は見たことがなかった。最初の頃、ものすごく評判になり見てみたいと思ったけど、日程が合わなかったりチケットが取れなかったた。その後もずっとやっていたけれど、まあ百までは遠いとなると、演目にあまり関心がない時はパスすることになる。そうして見ないままになった。今回も演目だけで言えば、見なかったかも知れないんだけど、招待に当たったので北千住のシアター1010で見た。(丸井の上階にある劇場で、1010は「せんじゅ」と読ませる。前にも書いてると思うが、○Ⅰ○Ⅰと書いてあるビルに1010があるのは何だかおかしい。)
この「百物語」というのは、必ず「原作」があるわけで、要するに「朗読劇」というのに当たるだろうけど、今回見て実に素晴らしい「一人芝居」だと思った。セットもあるし、黒子も出てくるので、落語のような「一人芸」ではない。井上ひさし「化粧」のような初めから俳優が一人で演じるように書かれたテクストがあるわけでもない。だから、坂本長利「土佐源氏」やマルセ太郎の「スクリーンのない映画館」、あるいは一龍齋貞水の「立体怪談」のような「語り芸」ともちょっと違っている。そのような一人で演じる芸能は日本にかなりあるので、頭の中でいろいろ比較してしまうのだが、白石本人が舞台を動き回るので、一番演劇的。テクストは原作の文章を改編していないので、ナレーション的な説明もない。落語のマクラに当たるようなものがないので、最初は原作が昔のものだとよく判らない感じもする。とにかく「立体朗読」とでも言う不思議な「一人芝居」である。
白石加代子(1941~)は鈴木忠志主宰の早稲田小劇場で「狂気の女優」として有名になり、鈴木メソッドを体現する「アングラ演劇」の代表的女優と言われた。その後、鈴木忠志が演出したギリシャ演劇「トロイアの女」や「バッコスの信女」に出演した辺りは、僕も見ている。早稲田小劇場が富山に移って劇団SCOTと改名した後も所属していたが、1989年に退団。その後の20数年は「百物語」がメインの活動と思っていたけれど、ウィキペディアを見たら、蜷川幸雄の芝居も多く出演しているし、市川崑の映画やテレビ出演も多い。だけど、僕にとっては昔のイメージが強かった。
「百物語」ファイナルの99話「天守物語」はまさに圧巻。もともとが戯曲なので、一人で各役をすべて演じる「究極演劇」になっている。これが磨き上げられた体技と声で、不自然さはみじんもない。「天守物語」は玉三郎の十八番で、この7月にも歌舞伎座でやったばかり。もちろん歌舞伎では玉三郎や海老蔵など原作の指定する役ごとに役者が演じている。それを全部一人で語るというのだから、とんでもない発想である。セットは簡素で、黒子も出てくるけど、これは恐るべき荒業だと思った。それを見る者に納得させてしまうんだから、白石加代子の芸の力は恐るべきものがある。いや、恐れ入りましたという感じ。姫路城の天守に住む「妖怪」の天守夫人の物語だけど、姫路城の修復なった年にこれがファイナルに選ばれたのも因縁。まだ、しばらく各地で公演が続くということで、見る機会があれば是非。