昨日は「マッカーサー記念室」を見る前に、映画「アリスのままで」を見た。記念室は二人入れるので夫婦で行ったのだが、銀座周辺でそれなりの年の夫婦が見る映画はこれかなということで。確かに若い人はほとんどいなくて、夫婦とおぼしき連れも多かった。こういう映画も必要である。その前日に「人生スイッチ」という映画を見た。これはまた、ちょっと類例を見ないほど忘れがたいトンデモ映画で、映画の作り方もまだまだアイディアが残されている。
「アリスのままで」は、ジュリアン・ムーアがアカデミー賞主演女優賞を獲得した映画で、若年性アルツハイマー病に侵された言語学者を演じている。若年性と言っても50歳なんだけど、これはアルツハイマーとしては若いということだ。家族性で、遺伝すると描かれている。ウィキペディアによると、映画の説明は正しいようだが、家族性はアルツハイマー型認知症の1%ほどで、遺伝子も特定されているということである。もう完全にアルツハイマーになり切っていて、確かに名演である。最近では「愛、アムール」のエマニュエル・リヴァのような、高齢女優が認知症患者を演じるのはいくつか思い出せる。だけど、50歳というのは体力もあり、キャリアの中途で記憶が減退していくという恐怖は非常に大きいだろう。そこがこの映画の見所で、感動的なスピーチ場面など、忘れがたい名場面がいくつもある。
だけど、映画としては案外淡彩で、スラスラ見られてしまって、淀みがどこにもない。それはそれでいいんだけど、こういうアメリカ映画というのは結構多いなと思う。家族を描いて、丁寧な演出で見事に見せる。だけど、本人が大変な分、活躍する言語学者、医学者である良き夫と3人のこども。設定が恵まれすぎている。家も大きいし。だから病気になってもいいということはないわけだが、まあ、それまで恵まれていたんだからと思ってしまう。もっとも、18歳の時に母と姉が事故死して辛かった過去を持つが、傷心のギリシャ旅行で夫と知り合ったらしい。リチャード・グラッツァーとウォッシュ・ウェストモアランドという二人が脚色、監督している。グアッツァーは4年間の闘病の末、今年3月に亡くなったという。そういう体験もこの映画に入っているのか、患者の恐怖や自尊心がきめ細かく描かれている。まさに「夫婦50割引き」向き映画ではないかと思う。
一方、「人生スイッチ」というのは、アルゼンチンで大ヒットしたという映画で、アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされた。しかし、アート系映画ではなく、ひたすらブラックなコメディで、というかこれは笑えるコメディと言えるかどうか不明なほど、ぶっ飛んでいる映画である。大体6つの挿話に分かれたオムニバス映画なんだけど、ストーリイ上のつながりはない。だけど、設定の共通性があり、入れてはならない「人生スイッチ」を入れてしまった男女の物語である。人生には不条理が無数にあるが、まあやむを得ないからみんな我慢して暮らしている。たまに駐車違反やスピード違反を取られても、他に違反車はいっぱいいるではないか、もっと悪質なのがいっぱい…と思うけれども、まあ違反は違反だしと不運を嘆きつつ罰金を払うしかない。だけど、不運に不運が重なり、駐車禁止でもない場所でレッカー移動されたのを始め、毎日毎日レッカー移動されてしまったら。そしてその人が爆破の専門家だったら…。展開は言わずとも判るだろうが、スピーディな演出で、見事に興味を引きずっていく。
今の話は4話目なんだけど、最初に出てくる超絶の機内恐怖は驚きのひとこと。で、どうなったということで話が変わって、次の挿話に関係するかと思うと、全然つながらない。3話目の車のドライバーどうしのケンカ、6話目の結婚式が夫の浮気発覚でぶっ飛ぶというようなストーリイは、どっかで見たような話なんだけど、ここまでアナーキーなのも初めてか。「ハングオーバー」なんかもハチャメチャだけど、その混乱ぶりを笑って見ていられる。「人生スイッチ」は各挿話がみな悪意を秘めていて、そのぶっ飛び具合がすごい。いや、映画のタネはつきない。脚本、監督は1975年生まれのアルゼンチン人、ダミアン・ジフロンという人で、日本初紹介。だけど、スペインのペドロ・アルモドバル監督と弟のアグスティン・アルモドバルが製作を務めている。自ら名乗りを挙げたというだけの、面白い脚本。暑すぎる夏に、ふさわしいような映画かな。
「アリスのままで」は、ジュリアン・ムーアがアカデミー賞主演女優賞を獲得した映画で、若年性アルツハイマー病に侵された言語学者を演じている。若年性と言っても50歳なんだけど、これはアルツハイマーとしては若いということだ。家族性で、遺伝すると描かれている。ウィキペディアによると、映画の説明は正しいようだが、家族性はアルツハイマー型認知症の1%ほどで、遺伝子も特定されているということである。もう完全にアルツハイマーになり切っていて、確かに名演である。最近では「愛、アムール」のエマニュエル・リヴァのような、高齢女優が認知症患者を演じるのはいくつか思い出せる。だけど、50歳というのは体力もあり、キャリアの中途で記憶が減退していくという恐怖は非常に大きいだろう。そこがこの映画の見所で、感動的なスピーチ場面など、忘れがたい名場面がいくつもある。
だけど、映画としては案外淡彩で、スラスラ見られてしまって、淀みがどこにもない。それはそれでいいんだけど、こういうアメリカ映画というのは結構多いなと思う。家族を描いて、丁寧な演出で見事に見せる。だけど、本人が大変な分、活躍する言語学者、医学者である良き夫と3人のこども。設定が恵まれすぎている。家も大きいし。だから病気になってもいいということはないわけだが、まあ、それまで恵まれていたんだからと思ってしまう。もっとも、18歳の時に母と姉が事故死して辛かった過去を持つが、傷心のギリシャ旅行で夫と知り合ったらしい。リチャード・グラッツァーとウォッシュ・ウェストモアランドという二人が脚色、監督している。グアッツァーは4年間の闘病の末、今年3月に亡くなったという。そういう体験もこの映画に入っているのか、患者の恐怖や自尊心がきめ細かく描かれている。まさに「夫婦50割引き」向き映画ではないかと思う。
一方、「人生スイッチ」というのは、アルゼンチンで大ヒットしたという映画で、アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされた。しかし、アート系映画ではなく、ひたすらブラックなコメディで、というかこれは笑えるコメディと言えるかどうか不明なほど、ぶっ飛んでいる映画である。大体6つの挿話に分かれたオムニバス映画なんだけど、ストーリイ上のつながりはない。だけど、設定の共通性があり、入れてはならない「人生スイッチ」を入れてしまった男女の物語である。人生には不条理が無数にあるが、まあやむを得ないからみんな我慢して暮らしている。たまに駐車違反やスピード違反を取られても、他に違反車はいっぱいいるではないか、もっと悪質なのがいっぱい…と思うけれども、まあ違反は違反だしと不運を嘆きつつ罰金を払うしかない。だけど、不運に不運が重なり、駐車禁止でもない場所でレッカー移動されたのを始め、毎日毎日レッカー移動されてしまったら。そしてその人が爆破の専門家だったら…。展開は言わずとも判るだろうが、スピーディな演出で、見事に興味を引きずっていく。
今の話は4話目なんだけど、最初に出てくる超絶の機内恐怖は驚きのひとこと。で、どうなったということで話が変わって、次の挿話に関係するかと思うと、全然つながらない。3話目の車のドライバーどうしのケンカ、6話目の結婚式が夫の浮気発覚でぶっ飛ぶというようなストーリイは、どっかで見たような話なんだけど、ここまでアナーキーなのも初めてか。「ハングオーバー」なんかもハチャメチャだけど、その混乱ぶりを笑って見ていられる。「人生スイッチ」は各挿話がみな悪意を秘めていて、そのぶっ飛び具合がすごい。いや、映画のタネはつきない。脚本、監督は1975年生まれのアルゼンチン人、ダミアン・ジフロンという人で、日本初紹介。だけど、スペインのペドロ・アルモドバル監督と弟のアグスティン・アルモドバルが製作を務めている。自ら名乗りを挙げたというだけの、面白い脚本。暑すぎる夏に、ふさわしいような映画かな。