ピョンチャン五輪から五輪のあり方を考えてみる。競技時間が「アスリート・ファーストではない」という声も大きかった。でも多分東京でも同じだろう。欧米の都合に合わせた時間設定じゃ困ると言っても、ここまで肥大化した五輪を開催するには欧米放送局の放映権料を無視できない。それに選手自身だって、冬季競技の盛んな欧米でナマで見て欲しいだろう。実質プロ選手ばかりだから、人気が出ないと困る。日本のスピードスケート陣は、遅い競技開始に合わせたトレーニングを積んで出場した。そういう対処をして好成績を挙げたわけである。
「スポーツと政治」という問題も大きく取り上げられた。特に「北朝鮮参加」問題だけど、日本のマスコミの捉え方には違和感があった。僕は事前に何も書かなかったけど、まあ多分書くまでもないだろうと思っていた。予想通り、「北朝鮮」は「美女応援団」を送って来たし、安倍首相も開会式に参加した。合理的に考えればそうなると予測できる。キム・ジョンウンが五輪参加をにおわせる発言をしたのは、1月1日。ギリギリのタイミングだが、早くから打ち出してもつぶれたのかと思う。
米国ペンス副大統領と北朝鮮代表団のキム・ヨジョン氏(ジョンウンの妹)に会談の予定があったことが事後に判った。その会談をめぐる虚々実々が多分昨年来続いていたんだろうと思う。結局実現しなかったわけだが、それでも「五輪をきっかけに米朝対話の可能性があった」わけである。これは「五輪の政治利用」には違いないが、「平和の祭典」としての「よき政治利用」なんじゃないか。そういうことが起こり得るのが五輪の意味だと思う。
日本では、国連を中心に制裁を強化している時期になぜ? 北朝鮮に利用されるだけでは? などという人がいた。でも12月にサッカーの東アジアカップが日本で開かれたばかりじゃないか。そこには北朝鮮も参加して、女子は優勝した。(ちなみに男子優勝は韓国。日本はどちらも準優勝。この東アジアカップは4か国が出るが、台湾、香港、グアムなども予選に出ている。)日本政府だって、国際的なスポーツ大会は制裁の例外だと認めて、選手団の入国を認めている。
オリンピックは「東アジア」どころではない大々的な世界大会だから、韓国政府が「北朝鮮の参加」を望むのは当然だ。緊張が高まる情勢だからこそ、オリンピックに出場する意義がある。急な展開で多少無理はあった。そうなんだけど、一緒に競技に参加した意味は大きいと思う。今まで何度か国際大会で南北合同チームが作られたが、確かにその後の情勢緩和にはつながらなかった。でも「参加することに意義がある」はずの五輪で、参加すること、参加を求めることは当然だ。
もちろん、政治家はそれを利用しようとする。いろんな方向で。日本では「ピョンチャン五輪ではなく、ピョンヤン五輪になった」などと実に下品なことを言う人もあった。どうせやれば判ることだから、特に事前には書かなかったけど、五輪が始まればそれぞれの国が自国選手の活躍に熱中した。開催国韓国のいろんな情報も多く報じられ、まさに「民間外交」になった。戦争が起こりかねない地域で、両方の選手がともに参加した五輪が実現できた。良かったじゃないか。
韓国の女子アイスホッケーに北朝鮮選手が交じって参加した。確かにその分韓国選手が出られなくなる。政治家が「韓国にメダル可能性がない」と言って批判されたりもした。でも冷静に考えて、また結果から見ても、韓国チームが最下位なのは間違いなかった。何も合同チームになったから負けたわけじゃない。そういうチームを南北合同にするのは、間違いなのだろうか。現場は大変だったろうが、一緒に練習し、一緒に試合し、「涙の別れ」が報じられた。「北韓」に具体的な顔と名前が思い浮かぶ知り合いがいるということ。それはすごく大切なことじゃないか。
「政治が五輪を利用するな」なんて言うから、てっきり安倍政権を批判してるのかと思うと、今回はどうも韓国のムン・ジェイン政権批判の言葉だった。でも安倍政権の方が東京五輪利用度が高いのではないか。だけどまあ、僕はそういうもんだと思う。スポーツに限らず、注目の高いイベント、人気が高い有名人には利用しようという人が集まってくる。おかしい、嫌だと言っても、そうなる。そのこと自体を取り上げて、さも正論を述べているかのように「政治が五輪を利用してはならない」などといくら言っても何も変わらない。
「政治」と関係がないことは世の中に存在しない。自分がいくら政治に関心がなくても、政治の方ですべての人に関わってくる。スポーツや芸術には、それ自体の価値があるけれど、だからと言って政治と完全に無関係にはなれない。スポーツ界や芸能界で知名度が高くなると、日本では「政治的発言」を控えたりする。本来はおかしなことだ。「政局」や「政治家」にはあまり関わらないで欲しいけど、人間として「平和」を大切にするというメッセージを発するのはオリンピアンの義務だと思う。今回のピョンチャン五輪では、五輪を一つのきっかけにして米朝対話の機運が出てきた。これをジャマする言動の方が「五輪の政治利用」ではないだろうか。
ついでに。有名スポーツ人を一番たくさん選挙に擁立したのは自民党だ。現役では橋下聖子参院議員、馳浩衆議院議員(レスリング、84年ロス五輪出場)、堀井学衆議院議員(スケート)、石井浩郎参議院議員(野球)、朝日健太郎参議院議員(ビーチバレー)。過去には小野清子(体操、64年東京大会団体銅)、荻原健司(スキーノルディック複合)、釜本邦茂(サッカー)、堀内恒夫(野球)、大仁田厚(プロレス)、神取忍(プロレス)などなど、そうそうたる名前がそろっている。(全員参議院議員)そう言えば麻生太郎副総理もクレー射撃で76年モントリオール五輪に出ている。
自民党以外で当選した知名度があるスポーツ選手は、谷亮子(柔道)、アントニオ猪木(プロレス)、江本孟紀(野球)ぐらいだろう。それと新進党が衆院選に立てた旭道山(力士)もいた。これを見ると、圧倒的に「自民党がスポーツを利用している」としか思えないんだけど…。
「スポーツと政治」という問題も大きく取り上げられた。特に「北朝鮮参加」問題だけど、日本のマスコミの捉え方には違和感があった。僕は事前に何も書かなかったけど、まあ多分書くまでもないだろうと思っていた。予想通り、「北朝鮮」は「美女応援団」を送って来たし、安倍首相も開会式に参加した。合理的に考えればそうなると予測できる。キム・ジョンウンが五輪参加をにおわせる発言をしたのは、1月1日。ギリギリのタイミングだが、早くから打ち出してもつぶれたのかと思う。
米国ペンス副大統領と北朝鮮代表団のキム・ヨジョン氏(ジョンウンの妹)に会談の予定があったことが事後に判った。その会談をめぐる虚々実々が多分昨年来続いていたんだろうと思う。結局実現しなかったわけだが、それでも「五輪をきっかけに米朝対話の可能性があった」わけである。これは「五輪の政治利用」には違いないが、「平和の祭典」としての「よき政治利用」なんじゃないか。そういうことが起こり得るのが五輪の意味だと思う。
日本では、国連を中心に制裁を強化している時期になぜ? 北朝鮮に利用されるだけでは? などという人がいた。でも12月にサッカーの東アジアカップが日本で開かれたばかりじゃないか。そこには北朝鮮も参加して、女子は優勝した。(ちなみに男子優勝は韓国。日本はどちらも準優勝。この東アジアカップは4か国が出るが、台湾、香港、グアムなども予選に出ている。)日本政府だって、国際的なスポーツ大会は制裁の例外だと認めて、選手団の入国を認めている。
オリンピックは「東アジア」どころではない大々的な世界大会だから、韓国政府が「北朝鮮の参加」を望むのは当然だ。緊張が高まる情勢だからこそ、オリンピックに出場する意義がある。急な展開で多少無理はあった。そうなんだけど、一緒に競技に参加した意味は大きいと思う。今まで何度か国際大会で南北合同チームが作られたが、確かにその後の情勢緩和にはつながらなかった。でも「参加することに意義がある」はずの五輪で、参加すること、参加を求めることは当然だ。
もちろん、政治家はそれを利用しようとする。いろんな方向で。日本では「ピョンチャン五輪ではなく、ピョンヤン五輪になった」などと実に下品なことを言う人もあった。どうせやれば判ることだから、特に事前には書かなかったけど、五輪が始まればそれぞれの国が自国選手の活躍に熱中した。開催国韓国のいろんな情報も多く報じられ、まさに「民間外交」になった。戦争が起こりかねない地域で、両方の選手がともに参加した五輪が実現できた。良かったじゃないか。
韓国の女子アイスホッケーに北朝鮮選手が交じって参加した。確かにその分韓国選手が出られなくなる。政治家が「韓国にメダル可能性がない」と言って批判されたりもした。でも冷静に考えて、また結果から見ても、韓国チームが最下位なのは間違いなかった。何も合同チームになったから負けたわけじゃない。そういうチームを南北合同にするのは、間違いなのだろうか。現場は大変だったろうが、一緒に練習し、一緒に試合し、「涙の別れ」が報じられた。「北韓」に具体的な顔と名前が思い浮かぶ知り合いがいるということ。それはすごく大切なことじゃないか。
「政治が五輪を利用するな」なんて言うから、てっきり安倍政権を批判してるのかと思うと、今回はどうも韓国のムン・ジェイン政権批判の言葉だった。でも安倍政権の方が東京五輪利用度が高いのではないか。だけどまあ、僕はそういうもんだと思う。スポーツに限らず、注目の高いイベント、人気が高い有名人には利用しようという人が集まってくる。おかしい、嫌だと言っても、そうなる。そのこと自体を取り上げて、さも正論を述べているかのように「政治が五輪を利用してはならない」などといくら言っても何も変わらない。
「政治」と関係がないことは世の中に存在しない。自分がいくら政治に関心がなくても、政治の方ですべての人に関わってくる。スポーツや芸術には、それ自体の価値があるけれど、だからと言って政治と完全に無関係にはなれない。スポーツ界や芸能界で知名度が高くなると、日本では「政治的発言」を控えたりする。本来はおかしなことだ。「政局」や「政治家」にはあまり関わらないで欲しいけど、人間として「平和」を大切にするというメッセージを発するのはオリンピアンの義務だと思う。今回のピョンチャン五輪では、五輪を一つのきっかけにして米朝対話の機運が出てきた。これをジャマする言動の方が「五輪の政治利用」ではないだろうか。
ついでに。有名スポーツ人を一番たくさん選挙に擁立したのは自民党だ。現役では橋下聖子参院議員、馳浩衆議院議員(レスリング、84年ロス五輪出場)、堀井学衆議院議員(スケート)、石井浩郎参議院議員(野球)、朝日健太郎参議院議員(ビーチバレー)。過去には小野清子(体操、64年東京大会団体銅)、荻原健司(スキーノルディック複合)、釜本邦茂(サッカー)、堀内恒夫(野球)、大仁田厚(プロレス)、神取忍(プロレス)などなど、そうそうたる名前がそろっている。(全員参議院議員)そう言えば麻生太郎副総理もクレー射撃で76年モントリオール五輪に出ている。
自民党以外で当選した知名度があるスポーツ選手は、谷亮子(柔道)、アントニオ猪木(プロレス)、江本孟紀(野球)ぐらいだろう。それと新進党が衆院選に立てた旭道山(力士)もいた。これを見ると、圧倒的に「自民党がスポーツを利用している」としか思えないんだけど…。