国際問題としては「台湾情勢」をめぐる問題を書かないといけないと思っているけど、書き出すと何回も掛かりそうである。そこで、その前にフランスとイスラエルで起こっている大規模デモについて考えてみたい。フランスではマクロン大統領が1月に年金制度改革を発表して以来、国民の間に急速に反対運動が広がった。年金改革といっても、62歳支給開始を64歳支給開始に2年遅らせるというものである。日本は基本は65歳からだし、イギリスに至っては現在66歳からが数年後に67歳からになるという。ドイツもメルケル政権下で65歳から67歳支給に延長する予定だという。だからフランス大デモは近隣諸国には波及しない。
マクロン大統領は国家財政の危機として一歩も引かない構えを見せている。フランス大統領は1期5年、2期までと憲法で規定されていて、2期目のマクロン大統領に3選はない。中国やロシアじゃないんだから、自分で憲法を変えて勝手に居座るわけにはいかない。だから支持率がいくら下がろうと気にしない。不人気政策を実現して支持率が下がっても、歴史の中で評価されれば良いという思いがあるんだろう。テレビに出て国民を説得しようとしているが、今のところ国民には受け入れられていないようだ。
(マクロン大統領)
僕はフランスの年金財政については何も知らないけれど、近隣諸国の支給年齢を見ても「62歳支給」を維持するのは大変だろうなあと思う。でもマスコミ報道を見ていると、2年も長く働けというのかという怒りが国民に充満しているようだ。日本では「もっと働けるように定年を延ばせ」という議論になるが、フランスではいつまで働かせるのかとなる。国民性の違いを見る気がする。日本もそういう発想で生きていけば、もっと幸せな人生になるのかもしれない。
ところで、フランス国民議会(577議席)でマクロン与党は250議席なので、過半数を持っていない。左派や右派(国民連合)はともかく、元は保守本流だった共和党グループから支持を得てようやく多数を得る状況になっている。ところが共和党の中からも慎重論が出て来たため、マクロン大統領は「議会の採決を見送り、大統領権限で成立させる」という強硬策に出た。そういうことが憲法上可能なのだという。ただ、野党側にも切り札があり、国会に内閣不信任案を出して可決されれば、そこで審議終了に出来るのである。しかし、野党の出した不信任案は278票と過半数まで9票と迫りながらも、辛くも否決されたのである。
(デモ隊に倒されたマクロン人形)
3月16日に強行成立、20日に不信任案否決である。この強権的手法が国民の怒りに火を付けた。これまでもマクロン政権では強権的手法が目立ち、今回も国民の82%が批判しているという。各地で抗議デモやストが続き、パリではゴミ収集が止まってしまい、エッフェル塔やルーブル美術館も閉まったりしているという話。これはもしかしたら、日本の「60年安保」における「1960年5月19日」になるのだろうか。つまり、岸内閣の強行採決が安保条約の是非を越えて「民主主義の危機」ととらえられた日である。反対派はマクロン大統領のやり方に粘り強く運動を続けると言っている。果たしてどうなるのか、予断を許さない状況が続いている。
イスラエルの状況はもっと深刻である。史上もっとも右派的なネタニヤフ政権は、司法改革を進めてきた。しかし、その内容は議会が最高裁判事の任命権に影響を強めるもので、簡単に言えば最高裁判決を議会多数派がひっくり返せる可能性がある。ネタニヤフ首相は汚職で公判が続いていて、政府職員の解任を裁判所が命じにくくする「改革」も入っていて、自分の身を守るためだとして国民の反発を呼んだ。労働組合の呼びかけたゼネストが続き、人口900万ほどの国で100万人を越える抗議活動が行われた。
(イスラエルの大デモ)
日本ではあまり報じられていないが、イスラエルにとって一番の「同盟国」であるアメリカでは大きな問題になっている。バイデン大統領も慎重な審議を求めている。イスラエルでは兵士の間にも反対が広がり、予備役の召集などに影響が出てきたことから、ガラント国防相も反対を表明して首相から解任されてしまった。ただ極右政党の中には、最高裁がヨルダン川西岸地区への入植に違憲判決を出す可能性があるとして、司法改革を強硬に求めているという。極右の支持を得て僅差で首相に返り咲いただけに、ネタニヤフ首相も引きにくい。
国内各界の反対を受け、首相も審議中断、採決先送りを決めた。しかし、これは一ヶ月間だけということで、このまま廃案になるかどうかは判らない。内閣不統一で政権崩壊したら、毎年やってる総選挙もありえなくはない。今回の大反対を受けて、イスラエル政治では久しく右派が強かった政治状況が変わるのかどうか。中東情勢は世界に大きな影響がある。これも注視していかないといけない。ネタニヤフ政権がやろうとしたことは、ちょっと無茶で取り下げない限り国民の大反対運動は続くと考えるべきだろう。
マクロン大統領は国家財政の危機として一歩も引かない構えを見せている。フランス大統領は1期5年、2期までと憲法で規定されていて、2期目のマクロン大統領に3選はない。中国やロシアじゃないんだから、自分で憲法を変えて勝手に居座るわけにはいかない。だから支持率がいくら下がろうと気にしない。不人気政策を実現して支持率が下がっても、歴史の中で評価されれば良いという思いがあるんだろう。テレビに出て国民を説得しようとしているが、今のところ国民には受け入れられていないようだ。
(マクロン大統領)
僕はフランスの年金財政については何も知らないけれど、近隣諸国の支給年齢を見ても「62歳支給」を維持するのは大変だろうなあと思う。でもマスコミ報道を見ていると、2年も長く働けというのかという怒りが国民に充満しているようだ。日本では「もっと働けるように定年を延ばせ」という議論になるが、フランスではいつまで働かせるのかとなる。国民性の違いを見る気がする。日本もそういう発想で生きていけば、もっと幸せな人生になるのかもしれない。
ところで、フランス国民議会(577議席)でマクロン与党は250議席なので、過半数を持っていない。左派や右派(国民連合)はともかく、元は保守本流だった共和党グループから支持を得てようやく多数を得る状況になっている。ところが共和党の中からも慎重論が出て来たため、マクロン大統領は「議会の採決を見送り、大統領権限で成立させる」という強硬策に出た。そういうことが憲法上可能なのだという。ただ、野党側にも切り札があり、国会に内閣不信任案を出して可決されれば、そこで審議終了に出来るのである。しかし、野党の出した不信任案は278票と過半数まで9票と迫りながらも、辛くも否決されたのである。
(デモ隊に倒されたマクロン人形)
3月16日に強行成立、20日に不信任案否決である。この強権的手法が国民の怒りに火を付けた。これまでもマクロン政権では強権的手法が目立ち、今回も国民の82%が批判しているという。各地で抗議デモやストが続き、パリではゴミ収集が止まってしまい、エッフェル塔やルーブル美術館も閉まったりしているという話。これはもしかしたら、日本の「60年安保」における「1960年5月19日」になるのだろうか。つまり、岸内閣の強行採決が安保条約の是非を越えて「民主主義の危機」ととらえられた日である。反対派はマクロン大統領のやり方に粘り強く運動を続けると言っている。果たしてどうなるのか、予断を許さない状況が続いている。
イスラエルの状況はもっと深刻である。史上もっとも右派的なネタニヤフ政権は、司法改革を進めてきた。しかし、その内容は議会が最高裁判事の任命権に影響を強めるもので、簡単に言えば最高裁判決を議会多数派がひっくり返せる可能性がある。ネタニヤフ首相は汚職で公判が続いていて、政府職員の解任を裁判所が命じにくくする「改革」も入っていて、自分の身を守るためだとして国民の反発を呼んだ。労働組合の呼びかけたゼネストが続き、人口900万ほどの国で100万人を越える抗議活動が行われた。
(イスラエルの大デモ)
日本ではあまり報じられていないが、イスラエルにとって一番の「同盟国」であるアメリカでは大きな問題になっている。バイデン大統領も慎重な審議を求めている。イスラエルでは兵士の間にも反対が広がり、予備役の召集などに影響が出てきたことから、ガラント国防相も反対を表明して首相から解任されてしまった。ただ極右政党の中には、最高裁がヨルダン川西岸地区への入植に違憲判決を出す可能性があるとして、司法改革を強硬に求めているという。極右の支持を得て僅差で首相に返り咲いただけに、ネタニヤフ首相も引きにくい。
国内各界の反対を受け、首相も審議中断、採決先送りを決めた。しかし、これは一ヶ月間だけということで、このまま廃案になるかどうかは判らない。内閣不統一で政権崩壊したら、毎年やってる総選挙もありえなくはない。今回の大反対を受けて、イスラエル政治では久しく右派が強かった政治状況が変わるのかどうか。中東情勢は世界に大きな影響がある。これも注視していかないといけない。ネタニヤフ政権がやろうとしたことは、ちょっと無茶で取り下げない限り国民の大反対運動は続くと考えるべきだろう。