2019年11月20日、安倍内閣が史上最長を記録した。2886日である。何と何と、1年で退任した1期目を覚えている人は、まさかこんな日が来るとは想像も出来なかっただろう。それにしても安倍首相の業績は何だろうか。よく思いつかないんだけど…。5年間だった中曽根康弘、小泉純一郎両首相は、良きにつけ悪しきにつけ、もっと強烈な印象を残している。それに比べて、長い内閣になると「業績」を思い出せない。以下の4人が任期が史上1位から4位の首相だが、名前を言えるだろうか。
左から、安倍晋三、桂太郎、佐藤栄作、伊藤博文である。この4人には共通点がある。それは山口県出身ということだ。桂太郎は陸軍出身で、日露戦争時の首相である。戦争前後は変えられないので長くなったが、顔を見ても名前を判らない人の方が多いだろう。佐藤栄作は「日韓国交正常化」「沖縄返還」が実現した時の首相だが、今に残る問題を残したとも言える。伊藤博文は名前は一番知られているだろうが、首相じゃない時の出来事の方が重要だろう。首相任期歴代順位は以下の通り。
安倍内閣復活より、すでに7年。その間何をしたのか、よく判らない。取りあえず「景気はそこそこ回復した」かもしれないが、これは首相の業績か。リーマンショック(2008)と東日本大震災(2011)による大規模な景気縮小の後に、東京五輪誘致とトランプ政権発足があった。アメリカでは株価が史上最高値を更新しているんだから、日本の株もあがる。だが米中貿易摩擦が報じられると一気に下がる。その繰り返しみたいな株価変動で、安倍政権の政策によって経済が活性化したと思えない。
(史上最長任期を迎えた安倍首相)
それより日銀による「異次元の金融緩和」によって、2年間でデフレを克服し2%の物価上昇率を実現するとかいう話はどうなった? もう僕はそんな物価上昇も困るんだが、それはそれとして全然実現せずに先送りじゃないか。日銀も誰も責任を取ってない。実現しなければ辞めるとか言ってた人がいたはずだが。「天皇代替わり」「五輪」があってムード的に忘れられてるけど、つまりは「アベノミクス」は当て外れだったということか。
消費税は安倍政権下で5%から10%に上昇した。しかし、それは是非はともかく、野田前政権下の「三党合意」によるものだ。沖縄では度重なる民意表明を押しのけて強引に進めてきた辺野古埋め立ては軟弱地盤とかで10年延びるとか。元々は「普天間基地の返還」問題なので、非常に危険な米軍基地をそのままにしておくのか。鳴り物入りで整備するとかいう「IR(統合型リゾート)」、つまりはカジノだが、実現どころか早速怪しいカネに手を出す与党議員が現れたとは恐れ入った。
外交に目を向ければ、拉致問題を解決するというのはどうなってるのか。ロシアのプーチン大統領とは何度も何度も会っていて、「平和条約の締結」、つまりは北方領土問題の解決を目指しているということだった。外交は相手があることだから、一概に政権の責任とも言えない場合もあろうが、トランプ政権に従う姿勢ばかり思い出されて、近隣諸国との関係は悪化した印象だ。トランプとゴルフをするのを「業績」と呼べるなら、それこそが安倍政権の最大の業績かもしれない。
この間、「特定秘密保護法」「安保法制」「共謀罪」を強行し、保守の首相取り巻きからすると「業績」なのかもしれない。だが、これらは「法の整備」なので、そのこと自体で社会がすぐに変化するわけではない。「いざというとき」のために「政権の武器」を整備するもので、それは「業績」とは呼べないだろう(政権支持の立場からしても)。安倍首相は「地方創生」「一億総活躍」「女性活躍社会」「希望出生率」だの判ったような言葉を散々並べてきたが、どれも実現しないどころか悪化したとしか言えない。
こうなってくると、「業績が上がる」=「政権の終わり」とでも思って、第4次政権は「天皇代替わり」と「東京五輪・パラリンピック」をそこそこ無事に終えればいいと思って、特に業績を上げる気もないんじゃないかとさえ思える。そうとでも考えないと、全然後継者を育てる意思がないのが理解出来なくなる。いろんな課題が「先送り」されている。官僚の世界は、ほとんど「忖度」になってる感じで、「虎の威を借る」とでも言うように、官房副長官や首相補佐官ばかりが力を振るっている。
最大の失政は、麻生財務相を切れないことだ。国際的に問題となる「失言」を繰り返してきたが、特に2018年には「森友文書改ざん問題」が起きた。同時に財務次官によるセクハラ問題が発覚し、麻生大臣は「セクハラ罪という犯罪はない」とか問題発言を繰り返した。いくら何でも責任を取るかと思ったら、今も居座っている。いくら批判されても、部下が大問題を起こしても、一切関係なくポストに居座る姿を見せられてきた。その「無責任」が社会を害する度合いは非常に大きい。安倍氏は権力維持のため「泣いて馬謖を斬れない」のである。権力構造内部の人間だけしか頭にない。
自分から辞表を出した下っ端大臣は辞めるけれど、政権維持に必要な麻生、菅、二階は代わらない。いくら問題が起きても、失言しても、ずっと続ける。これでは、ただ単に「長期政権維持そのものが自己目的化」していると言われてもやむを得ないと思う。日本全体も「改元」「五輪」で2年間浮かれて貴重な時間をロスしそうだ。安倍政権は「岩盤の支持率」を誇ってきた。今の権力構造をそのままにすることに利益を見出す人がいるということだ。しかし、そうそろそろ、自民党支持者も、野党支持者も、政治に無関心な人も、「安倍政権の終わらせ方」を真剣に考えないと大変なことになるだろう。
左から、安倍晋三、桂太郎、佐藤栄作、伊藤博文である。この4人には共通点がある。それは山口県出身ということだ。桂太郎は陸軍出身で、日露戦争時の首相である。戦争前後は変えられないので長くなったが、顔を見ても名前を判らない人の方が多いだろう。佐藤栄作は「日韓国交正常化」「沖縄返還」が実現した時の首相だが、今に残る問題を残したとも言える。伊藤博文は名前は一番知られているだろうが、首相じゃない時の出来事の方が重要だろう。首相任期歴代順位は以下の通り。
安倍内閣復活より、すでに7年。その間何をしたのか、よく判らない。取りあえず「景気はそこそこ回復した」かもしれないが、これは首相の業績か。リーマンショック(2008)と東日本大震災(2011)による大規模な景気縮小の後に、東京五輪誘致とトランプ政権発足があった。アメリカでは株価が史上最高値を更新しているんだから、日本の株もあがる。だが米中貿易摩擦が報じられると一気に下がる。その繰り返しみたいな株価変動で、安倍政権の政策によって経済が活性化したと思えない。
(史上最長任期を迎えた安倍首相)
それより日銀による「異次元の金融緩和」によって、2年間でデフレを克服し2%の物価上昇率を実現するとかいう話はどうなった? もう僕はそんな物価上昇も困るんだが、それはそれとして全然実現せずに先送りじゃないか。日銀も誰も責任を取ってない。実現しなければ辞めるとか言ってた人がいたはずだが。「天皇代替わり」「五輪」があってムード的に忘れられてるけど、つまりは「アベノミクス」は当て外れだったということか。
消費税は安倍政権下で5%から10%に上昇した。しかし、それは是非はともかく、野田前政権下の「三党合意」によるものだ。沖縄では度重なる民意表明を押しのけて強引に進めてきた辺野古埋め立ては軟弱地盤とかで10年延びるとか。元々は「普天間基地の返還」問題なので、非常に危険な米軍基地をそのままにしておくのか。鳴り物入りで整備するとかいう「IR(統合型リゾート)」、つまりはカジノだが、実現どころか早速怪しいカネに手を出す与党議員が現れたとは恐れ入った。
外交に目を向ければ、拉致問題を解決するというのはどうなってるのか。ロシアのプーチン大統領とは何度も何度も会っていて、「平和条約の締結」、つまりは北方領土問題の解決を目指しているということだった。外交は相手があることだから、一概に政権の責任とも言えない場合もあろうが、トランプ政権に従う姿勢ばかり思い出されて、近隣諸国との関係は悪化した印象だ。トランプとゴルフをするのを「業績」と呼べるなら、それこそが安倍政権の最大の業績かもしれない。
この間、「特定秘密保護法」「安保法制」「共謀罪」を強行し、保守の首相取り巻きからすると「業績」なのかもしれない。だが、これらは「法の整備」なので、そのこと自体で社会がすぐに変化するわけではない。「いざというとき」のために「政権の武器」を整備するもので、それは「業績」とは呼べないだろう(政権支持の立場からしても)。安倍首相は「地方創生」「一億総活躍」「女性活躍社会」「希望出生率」だの判ったような言葉を散々並べてきたが、どれも実現しないどころか悪化したとしか言えない。
こうなってくると、「業績が上がる」=「政権の終わり」とでも思って、第4次政権は「天皇代替わり」と「東京五輪・パラリンピック」をそこそこ無事に終えればいいと思って、特に業績を上げる気もないんじゃないかとさえ思える。そうとでも考えないと、全然後継者を育てる意思がないのが理解出来なくなる。いろんな課題が「先送り」されている。官僚の世界は、ほとんど「忖度」になってる感じで、「虎の威を借る」とでも言うように、官房副長官や首相補佐官ばかりが力を振るっている。
最大の失政は、麻生財務相を切れないことだ。国際的に問題となる「失言」を繰り返してきたが、特に2018年には「森友文書改ざん問題」が起きた。同時に財務次官によるセクハラ問題が発覚し、麻生大臣は「セクハラ罪という犯罪はない」とか問題発言を繰り返した。いくら何でも責任を取るかと思ったら、今も居座っている。いくら批判されても、部下が大問題を起こしても、一切関係なくポストに居座る姿を見せられてきた。その「無責任」が社会を害する度合いは非常に大きい。安倍氏は権力維持のため「泣いて馬謖を斬れない」のである。権力構造内部の人間だけしか頭にない。
自分から辞表を出した下っ端大臣は辞めるけれど、政権維持に必要な麻生、菅、二階は代わらない。いくら問題が起きても、失言しても、ずっと続ける。これでは、ただ単に「長期政権維持そのものが自己目的化」していると言われてもやむを得ないと思う。日本全体も「改元」「五輪」で2年間浮かれて貴重な時間をロスしそうだ。安倍政権は「岩盤の支持率」を誇ってきた。今の権力構造をそのままにすることに利益を見出す人がいるということだ。しかし、そうそろそろ、自民党支持者も、野党支持者も、政治に無関心な人も、「安倍政権の終わらせ方」を真剣に考えないと大変なことになるだろう。