尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

それでも「パワハラ」は否定できないー兵庫県知事選、斎藤前知事が再選

2024年11月19日 22時32分11秒 |  〃  (選挙)

 17日に兵庫県知事選が行われ、斎藤元彦前知事が再選された。斉藤氏は111万3911票で、次点の稲村和美氏が97万6637票、以下清水貴之氏=25万8388票、大澤芳清氏=7万3862票、立花孝志氏=1万9180票、福本繁幸氏=1万2721票、木島洋嗣氏=9114票だった。斉藤氏支援の立花氏を含め、事実上斉藤票は113万票ほど。稲村、清水、大澤3氏合わせれば、130万票ほどになる。

 乱立で斉藤氏が有利になると言われていたが、まさにその通りになった。本来なら「決選投票」を行うべきだろうが、日本の選挙制度にはないので、これで斉藤氏が当選である。まさかそういう結末になるとは予想してなかった人が多いだろう。本来他県の選挙はあまり書かないんだけど、この兵庫知事選には非常に重大な論点があるので、あえて書いておきたい。

 何年か経つと忘れてしまうから、ざっと経緯を書いておくと、2024年3月に斎藤知事の「パワハラ」を告発する文書がマスコミ、県議等に送付された。斎藤知事は文書の作成者を当時の西播磨県民局長と特定したうえで、記者会見で告発を「嘘八百」と否定し「業務時間中なのに嘘八百含めて文書を作って流す行為は、公務員としては失格」と激しく反発した。その後、県議会は6月13日に「百条委員会」(地方自治法に基づき強い調査権限を持っている)を設置して調査を進めていた。

 しかし、その調査結果を待たずに、県議会内で不信任案提出の動きが強まり、9月19日に全会一致で不信任案が可決された。その場合、辞職するか、議会を解散して県議選を行うかになるが、どちらも選択しない場合は、10日後に「自動失職」する。自ら辞職して再選挙に臨む場合、当選した場合の任期は本来の残り(2025年7月)までになるが、自動失職後の選挙で当選した場合、任期は新たに4年間となる。斉藤氏は自動失職を選び、10月17日の知事選で当選したわけである。

(斉藤氏の演説に熱狂する人々)

 今回の選挙が特別な経過をたどったのは、立花孝志氏が参戦したことが大きい。立花氏は「斉藤知事はパワハラをしていないことを確認した」と言って、自分の当選(あるいは自党の勢力拡大)を目的とせず斉藤氏支援のために立候補したのである。しかし、立花氏と言えば7月の都知事選で「ポスター掲示板の掲載権を売買する」という信じられないことを行った人だ。それも「違法ではない」ということなんだろうが、僕は立花氏が「問題ない」と言った時には「眉に唾を付ける」べきだと思う。

 都知事選のふるまいは「違法」じゃないとしても「明らかに不適切」だ。同様に斉藤氏の行為も、(現時点では)違法行為に当たらないとしても、「不適切」なことはあったように思う。7月に『斎藤兵庫県知事の「内部告発」問題ー「維新」知事のパワハラ疑惑』で書いたように、告発者は3月末で退職の予定だったのに、退職を差し止めにしたうえで5月に「停職3ヶ月」の処分となった。この「退職差し止め」「早い処分」はどう見ても、知事権限の不当な行使としか思えない。

(立花孝志氏)

 「パワハラ」は定義がバラバラで、本人がパワハラではなく「厳しい叱責」と言えば、それを信じる人もいるかもしれない。しかし、様々に問題視された件の中でも「処分」は間違いなく知事権限である。「内部告発」者をさっさと停職にしたのは大問題だ。また「オリックス優勝パレード」問題は、未だにその全容がはっきりしていない。その解明を待たずに不信任案を可決した県議会も、問題はあったと思っているが、その問題は違法行為である可能性もある。このように未解明の問題もあるのに、どうして他者が「パワハラはない」と結論できるのか。何か特別の秘密情報でも持っているんだろうか。

 ところがテレビニュースで見たけれど、「SNSで調べたら、パワハラはしてないとわかった」と言ってる若い人が結構いた。これは本当に「調べた」んだろうか。「調べる」とは自分で論拠に当たることで、「パワハラはしてない」(またはパワハラをしている)というサイトを探して見ることではない。探して見た後で、その人の論拠に当たって自分の考えで検証しなければいけない。それが「調べる」ということのはずで、本当に多くの人がそこまでやったのか疑問なのである。

 教育現場で「自ら考える」授業を進めているけれど、僕の経験では「調べた」と称して、たまたま見つけたサイトをコピー&ペーストした「レポート」を提出するような生徒は結構いると思う。対立しているテーマでも、たまたま見つけた新聞の社説に沿って「自分の考え」のように書く。いくつかのマスコミに当たって、対立点を検討したうえで、さらにその問題の本も読んでみるなんて、そんなことのできる生徒はあまりいない。だから、「自分で調べたら、パワハラじゃないことがわかった」という言説には疑問を持つのである。その中の何人が「パワハラがあった」という意見も読んで、クロスチェックしたんだろう。

 都知事選の石丸現象、アメリカのトランプ現象、さらに名古屋市長選も控えている。今回はSNSが「暴走」して、脅迫に近くなったケースもあったらしい。百条委の委員をしている県議が辞任している。また稲村氏の「X」アカウントが不自然に何度も凍結されたという話もある。もちろん新聞やテレビが報じないことはいっぱいある。ネットで探す情報なくして現代は生きていけない。しかし、ネットで候補者側が発信する情報を有権者側がどう生かすか。一応新聞やテレビには「報道倫理」があり、ファクトチェックも可能だ。しかし、ネット情報はどこか権威ある機関が真偽を保証するわけではない。どうすれば良いのか、今は答えがない。

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各党の比例区票、「国民」「れいわ」の躍進、「公」「共」の停滞ー衆院選の結果③

2024年10月30日 21時59分40秒 |  〃  (選挙)

 2024年衆院選の各党の比例区票を検討したい。なお、比例区当選者数だけを見てみると、自民党=59議席、公明党=20議席で、与党計は79議席立憲民主党=44議席、国民民主党=17議席、日本維新の会=15議席、れいわ新選組=9議席、日本共産党=7議席、参政党=3議席、日本保守党=2議席になる。野党系議席は総計で97議席。比例だけなら、与野党の差はもっと大きくなる。(国民民主党は比例名簿登載者が足りず、自民、公明、立民に各1議席を譲ったので、本来なら与党=77、野党=99だった。)

(国民民主党の玉木代表)

★各党を順番に見てみる。まず自民党だが、今回比例区で1458万票、全体の26.7%になる。これは2021年の衆院選の得票率34.43%から激減した。前に紹介した朝日新聞(21日)掲載の情勢報道では、自民党の獲得予想議席は、小選挙区は135~144~154、比例区は49~56~63だった。合わせると、184~200~217となっている。この時は例の「2千万円問題」はまだ報道されてない。最終盤に小選挙区で落ち込んだことが想像できるが、比例区はむしろ予想の中心値より多かったのである。この10数年の政治史を思い出せば、自民党を離れて、より右の、または左の党を作るのは(大阪の「維新」を除き)成功しなかった。従って、自民党を離党して日本保守党に加わったりする政治家は、いても少数に止まり、数年後の党勢回復を待ち望む人の方が多いだろう。

以下に最近6回の国政選挙の得票数を示す。(参院選後のカッコは獲得議席。)
 (16年参院選)→17年衆院選→(19年参院選)→ 21年衆院選→ (22年参院選)24年衆院選
 (2011万=19)→1856万  →(1711万=19)→1991万  →(1826万=18)→1458万
公明党596万票ほどで、ついに600万票を割り込んだ
 (753万=7)→ 698万→ (654万=7)→711万→ (618万=6)→596万
 公明党は16年参院選から減り続けていたが、21年衆院選で久しぶりに700万票台に載せた。しかし、22年参院選で100万票減らし、今回はついに600万票以下に落ち込んだ。自民党の低調に影響されただけではないだろう。比例区票が減っているのは、構造的な原因があると思われる。選挙運動もかつてほどの勢い(というか、「熱心さ」「強引さ」)が見られなくなった。組織の弱体化が進んでいるのかと思う。今後、一時600万票を回復するかも知れないが、遠からず500万票台前半になるのでは。

(公明党の石井代表は落選)
★次は野党を見る。立憲民主党は2017年衆院選で登場したので、そこから見ることにする。立憲民主党は小選挙区では1,540万票を得ていて、非自民票の受け皿として一応の存在を示している。しかし、比例票は下の推移に明らかなように、おおむね過去の衆院選と大差ない。確かに今までで一番多いけれど、今回の「躍進」は自民票が減ったから浮上しただけなのである。

 1108万 → (792万=8)→ 1149万 →(677万=7)→1156万
 
★続けて国民民主党を見ると、ここは確かに22年参院選から300万票増やして「倍増」に近い。「手取りを増やす」と若者向け政策を打ち出したのが一定の効果を上げたらしい。今まで時に自公政権に協力する時もあり、その「中間的立ち位置」は「維新」と共通し、競合する存在なのではないか。近畿を除き、今回は「維新」ではなく、国民民主党が選ばれたということか。
 19年参院選から、(348万=3)→ 259万 →(316万=3)→ 617万
★次に「日本維新の会」を見るが、16年参院選は「おおさか維新の会」で、その時は515万票・4議席だった。今回は前回衆院選から約300万票減らした。大阪万博や兵庫県の斎藤前知事問題などで、一度失った勢いが全国に波及したということか。大阪の小選挙区は全勝したが、それが比例に及ばない。(大阪府でさえ、小選挙区は164万票だが、比例は115万票なのである。)それでも福岡11区で武田良太を破ったのは、維新だった。ここは立民、国民、共産、れいわなど主要野党が立たず、維新と社民党が対抗馬だった。そういう時は維新が受け皿になるときがある。
 (515万=4)→ 339万 →(491万=5)→ 805万 →(785万=8)→ 510万 
共産党336万票ほどで、7議席。どんどん減らしていて、どこで落ち着くのか判らない。今回委員長が田村智子に交代したが、大きな効果はなかった。共産党と競合する立ち位置にあるのは、「れいわ新選組」かなと思う。物価高で困窮する国民への訴求力では、共産党ではなく「れいわ新選組」に分があった。「政治とカネ」問題、あるいは今回の自民非公認候補への2千万円問題などを報道したのは、確かに「しんぶん赤旗」だった。だから「新しいプロセスへ扉を開いたのは共産党」と言うけど、共産党への投票にはつながらないのは何故か。「科学的」に分析してみれば、党の抜本的改革が必要なことが理解出来るはずだが。
 (602万=5)→ 440万 →(448万=4)→ 417万 →(362万=3)→ 336万
(共産党の田村智子委員長)
れいわ新選組は、前回19年に228万票、21年衆院選は221万票、22年参院選は232万だった。今までは200万票台前半を越えられなかったが、24年衆院選で380万票(7.0%)を得た。特に沖縄県で12.1%の得票があり、自立公につぐ第4党になったのが注目される。沖縄4区で立候補した山川仁(元豊見城市長)が比例で当選して、今後沖縄政界にどんな影響を与えるか注目される。一時「沖縄1区」にも擁立の動きがあったし、山本太郎代表は「オール沖縄は歴史的役割を終えた」と発言した。ただ「れいわ新選組」はまだ地方議員が少なく、地域の基盤が共産党、公明党などに及ばない。しかし、徹底したポピュリズム路線でしばらくは拡大するのではないか。
社民党は、93万票で比例区票はゼロだった。まあ全国で集計する参院選比例区なら1議席に届くが、ブロックごとの衆院選比例区では、もう社民党が当選することはないだろう。
 (154万=1)→ 94万 →(105万=1)→ 101万 →(126万=1)→ 93万
★「参政党」は22年参院選で、177万票、3.3%で1議席を獲得した。24年衆院選は187万票を得て3議席を獲得。一時は日本保守党の方に勢いがあるのかと思ったが、実際は参政党の方が多かった。地方議員などもいて、基盤的には大きいのである。極右的、陰謀論的世界観はいずれきちんと論じる必要を感じている。

★今回初参加の「日本保守党」は、1,145,622票を獲得して、政党要件をクリアーした。僕は東京ブロックで1議席取るのかと思ったが、獲得議席ゼロの参政党に及ばなかった。(比例で獲得したのは、東海と近畿。)しかし、社民党より多いのである。この党がどうなるのかは、要注目。今のところ、参政党と日本保守党が競合する可能性もあり、どこまで本格政党になるのかは、2025年参院選を見る必要がある。

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案外低かった投票率、多かった接戦区ー2024衆院選②

2024年10月29日 22時40分52秒 |  〃  (選挙)

 2024年衆院選の話。2回目は、まず投票率を検討したい。今回の投票率は、小選挙区で53.85%比例区で53.84%だった。(少数だけど、比例区だけ投票しない人がいるのである。)前回はそれぞれ、55.93%、55.94%だったから、今回は3.1%ほど低かったのである。全国の比例区票は、54,549,720票だった。日本の人口は約1億2千万人。有権者は約1億人になる。今回の投票率が約54%ということで、全国でおおよそ5400万人が選挙に行ったわけである。

 前回の投票総数は57,465,978人だったから、大体300万人が減ったことになる。この間に亡くなった人、新たに選挙権を得た人などもいるので、何も前回行った人が今回は棄権したということではない。しかし、これほど減ったのには理由があるはずだ。一番先に思いつくのは、「自民党支持者がお休みした」という仮説だ。「裏金」問題で批判が強く、今回は自民党に入れる気がしなかった。しかし、立憲民主党や他の野党に入れちゃうほどの気もしない。そういう人が存在したんじゃないだろうかという予想である。

 前回の自民党比例区票を見ると、19,914,883票だった。今回の自民党比例区票は、14,582,690票である。約533万票も減らしている。300万人より多いが、今回から衆院選に参入した参政党が約187万票日本保守党が約115万票ほどを獲得している。「維新」も約300万票ほど減らしているし、他党の動向を細かく検討する必要があるが、大体の方向として「保守票が自民、新興政党、棄権」に分れ、前回自民票に入れた人たちが減った分、投票率が下がったと考えてよいのではないか。その傍証として、自民党大物議員の得票も減らしている人が多い。(区割り変更の影響があった人もいるだろうが。)

 例えば、岸田文雄(13万4千→10万)、麻生太郎(10万5千→9万2千)、菅義偉(14万6千→12万)、河野太郎(21万→13万)、小泉進次郎(14万7千→13万)、高市早苗(14万2千→13万)といった具合で、これら直接「裏金」に関与したわけではなく、少し減らしても悠々と当選出来る(一人も対立候比例で当選していない)人たちも、軒並み減らしているのである。(河野氏などは激減である。)なお、さすがに石破茂(10万5千→10万6千)首相だけは、少しだけど増やしている。これらの人の選挙区には、有力な対立候補もいないので、どうせ自分が行かなくてもという気になりやすいこともあるだろう。

 ところで、それより気に掛かるのは、広島県と沖縄県で投票率が5割を切っていることだ。広島は前回52.13%が、今回48.40%沖縄は前回54.89%が、今回49.96%である。沖縄の激減ぶりはよくよく考える必要がある。自公政権にも、野党と一部保守系が協力する「オール沖縄」にも、期待出来ない、本土の政権枠組がどうなろうと、沖縄が抱える問題は解決出来ないという「怒り」「抗議」「諦め」のような気分が投票率低下の背景にあるのではないか。

 広島の場合はよく判らないけど、地元の岸田首相を支える意気込みだった人が失望したのかもしれない。あるいは日本被団協のノーベル平和賞受賞にもかかわらず、核禁条約に後ろ向きな自民党への失望が他県より大きいのかも。(長崎県も56.89%から、52.48%へと全国平均以上に減っている。)さらに河井元法相の事件が後を引いていて、地元の保守系地方議員の動きが今も弱くなっているのかもしれない。(7区から6区へ減区され、なじみが少ない候補になった地区が多かったのも影響したかも。)

 続いて接戦区を見てみたい。今回は今まで以上に超接戦が多く、1,000票以内の決着が9選挙区もあった。投票率が低く、与党の勢いが弱いことの影響だろう。また野党乱立の結果、比例区で復活当選する人が2人いて、合計で3人当選者がいる選挙区も多かった。(5つもある。)

和歌山1区 124票差 山本大地(自民、当選=70,869)、林佑美(維新、比例当選=70,745)

愛知10区 162票差 藤原規真(立民、当選=59,691)、若山慎司(自民、比例当選=59,529)

栃木3区 178票差 梁和生(自民、当選=45,546)、渡辺真太朗(無所属、落選=45,368)

群馬3区 214票差 笹川博義(自民、当選=74,930)、長谷川嘉一(立民、比例当選=74,716)

東京28区 336票差 高松智之(立民、当選=50,626)、安藤高夫(自民、比例当選=50,290)

東京10区 591票差 鈴木隼人(自民、当選=93,490)、鈴木庸介(立民、比例当選=92,899)

富山1区 738票差 田端裕明(自民、当選=45,917)、山登志浩(立民、比例当選=45,179)

秋田1区 872票差 冨樫博之(自民、当選=60,387)、寺田学(立民、比例当選=59,515)

神奈川6区 926票差 青柳陽一郎(立民、当選=80,207)、古川直季(自民、比例当選=79,281)

 こんな僅差で決まることもあるんだから、「選挙なんて自分が行っても変わらない」というもんでもない。確かに一票差ではないけれど、名も顔も知らぬ何十万人かの中で、200人以内で決まることもあるのだから。それにしてもこういう選挙区は候補も支援者も大変だろう。痺れるような大接戦、両チームがノーヒットノーランのままで9回を迎えた野球の試合みたいな感じだ。ま「開票速報」を見るのが好きな「選挙観戦ファン」の感想だけど。それにしても以上で勝った9人のうち、6人は自民党。自民はもっと減らすところを数百人の投票行動により、何とか191議席になったわけである。

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しばらくは石破「少数与党内閣」で、2025衆参同日選挙か?ー2024衆院選①

2024年10月28日 20時37分03秒 |  〃  (選挙)

 2024年10月27日投開票の衆議院選挙が終わった。その結果を何回か書いておきたいが、まず今後の内閣がどうなるか。自民党・公明党の連立与党は大きく減らし、過半数を割り込んだ。自民党が大きく減らして191議席公明党が予想以上に減らして24議席。合計で215議席で、過半数の233議席を大きく割り込んだ。牧原秀樹法相、小里泰弘農水相と二人の現職閣僚が比例区当選もならず落選。それ以上に驚いたのが、公明党の石井啓一代表が埼玉14区で落選したことだ。当選した鈴木義弘は今まで比例で3回当選した前職議員だが、立憲ではなく国民民主党。維新や共産も出馬した野党乱立区だから、やはり石井当選かと思っていた。

(ニューヨークタイムスWeb版に掲載された石破首相の写真)

 過半数を下回っている以上、数字上は石破氏以外が内閣総理大臣に指名されることもあり得る。そういう情勢の責任を取って、石破氏が総裁を辞任する可能性も絶無ではない。だけど、今日の記者会見では続投を目指すということだった。党内には反発もあるだろうが、じゃあ誰が後継になるのか。過半数割れの状況から、次の自民党総裁になるだけでは総理への道につながらない。野党と連携すると言っても、どこも(すぐには)組むところはなさそうだ。総裁選で2位だった高市陣営は旧安倍派が大量に落選して支持基盤を大きく減らした。それに来年には参院選があり、今「石破辞めろ」と言うと、参院選で負けたら自分も辞めなければならない。

 一方の野党側だが、数字上は全部まとまれば政権を取れるわけだが、むしろ各党の違いは大きくなっている。労働組合「連合」の支持を受けるという意味で、一番可能性が高いはずの立憲民主党国民民主党の間でさえ政策や方向性が一致していない。ましてや「維新」、「れいわ新選組」、共産党などは立憲民主党との距離が開いている。お互いに組んだからといって過半数を超える組み合わせはない以上、自分の方が譲って首班指名で「野田佳彦」と書く党があるとは思えない。むしろ来年に参院選を控える事情から、各党ともに独自性を高めることが予想される。(下の画像は野田佳彦立憲民主党代表)

 そうなると、1回目の首班指名で1位石破、2位野田となって(他党はそれぞれ自党のトップに投票)、両者の決選投票となる可能性が高い。2回目は自公、立民以外が棄権して、結局衆議院で石破茂氏が指名される(参議院では問題なく石破指名)。そういう少数与党内閣発足の可能性が高いと思う。決選投票は、1979年の大平内閣、1994年の村山内閣の指名で起こって以来の事態となるが、まあそういう想定をしている。結局は来年に参議院選挙が控えている以上、野党も選挙で訴えた「反自公政権」の旗を降ろせないし、野党の選挙協力もなかったのに選挙後に突然組むことも不自然。参院選までそういう状況が続くのではないか。

(議席4倍増となった国民民主党の玉木代表)

 しかし、もしそういう少数与党内閣になると、非常に不安定な政治になる。かつて小渕政権で自民党幹事長だった野中広務氏は、「ひれ伏してでも」と言って、自由党(当時、小沢一郎氏が新進党解党後に結成した党)、さらに公明党との連立をまとめたことがあった。(当時は自民、公明それぞれに連立に否定的な声が強く、最初は「自自公連立」として発足した。)今回もやがては、新しい連立枠組成立(あるいは自民党分裂、政権交代など)が起きて来るもんじゃないだろうか。

 2025年の通常国会は、参院選が控えている関係で大幅延長が不可能だ。従って、予算成立後は政治資金規正法の再改正など以外はなかなか懸案に取り組むのは難しいだろう。そうなると、野党が不信任案を出すのは確実で、過半数を持ってない以上、不信任案が通ってしまう可能性がある。その場合石破首相は総辞職ではなく、衆議院を解散するだろう。ほぼ半年ちょっとしか経ってないけど、衆参同日選になるかもしれない。1980年の大平内閣、1986年の中曽根内閣以来となるし、あまり望ましくないと思うんだけど、止むを得ない場合は許されるだろう。

 そういうこともあるかもという想定で、それまでに突然石破首相が辞めちゃうかもしれないし、どうなるかは読みきれない。取りあえず、国民民主党も維新も連立に加わりそうもなく、逆に立憲と組む可能性もないようだ。となると、こうなるのかなという話。

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「選挙が一ヶ月で出来る国」は誇りであるー「ユポ」という投票用紙

2024年10月27日 22時57分20秒 |  〃  (選挙)

 2024年の衆議院選挙が行われ、まさに今開票中である。テレビの開票速報では、「自公の過半数は微妙」と報じている。まあ、その結果がどうなるかは明日朝までには判明する。結果の分析、そして今後どのように政治が動いていくかは明日以後に考えていきたい。今日はお休みにしようかと思っていたのだが、そう言えば書こうと思って忘れていたことがあったなと思い出した。

 それは日本が「選挙が一ヶ月で出来てしまう国」だということである。もっとも選挙運動期間が短すぎると思っているのだが、それはそれとして、首相が表明して一月も経たずに全国で選挙が可能になった。選挙期間に支持者どうしの衝突などもない。自民党本部に突っ込んだ車があったが、大きな騒乱にならなかった。27日の投開票日には、投票所、開票所に予定される公民館、学校、体育館などに予定が入っていたケースが多かったという。スポーツ、文化行事が多い時期だから、多くの人に影響しただろう。

 それにしても、1億人ほどの有権者の半数以上が投票する。それが夜だけで開票出来るのである。諸外国に比べても、このスピードは半端ない。直接開票作業を担当する地方公務員の人々には、大きな負担だろう。そういう苦労をしている人がいて、初めて日本の民主主義が成り立っている。だけど、公務員の人々が頑張っているだけではない。特にいつの頃からか、投票用紙が大きく変わった。書きやすくて折りやすいが、箱に入れるとすぐに開くという。そんな素晴らしい用紙なんだけど、これは何だろう?

 調べてみるとこれは「ユポ」という紙である。株式会社ユポ・コーポレーションの登録商標。そんな会社は知らないと言う人が多いだろう。三菱ケミカルと王子製紙が5割ずつ出資する会社である。独自に開発された合成紙で、プラスチックフィルムの一種。ポリプロピレン樹脂と、目では識別できないほど細かくした「無機充填材」を混ぜて作られているという。(ハフポスト日本版編集部の記事による。)あれがツルツルしているのは、普通の意味の紙じゃなかったからなのである。そして、選挙ポスターもユポ。(名前の由来は、三菱ケミカルの当時の社名「三菱油化」の油化とペーパー、王子製紙の頭文字を組み合わせたものだという。

 いや、これは知らなかった。いつ選挙になるか判らないから、ある程度ストックしてあるらしいが、こういう「選挙の道具」を支える会社があっての「一ヶ月選挙」なのである。また、ポスター掲示板の製造、設置もあっという間に進んで凄いなと思った。特に東京は知事選が終わって3ヶ月ほどでまた設置したわけで、大変だっただろう。

 開票作業は粛々と進んでいき、開票結果に疑いはない。いや、時々不審票があって処理が問題になる。票数が合わなくて無理やり辻褄合わせをする事件が起きている。だけど、政権が命令して票数を不正に操作するなんてことは起きない。開票作業も見ることが出来るし、結果はその地区の選挙管理委員会のホームページに公表される。それを見れば、ここ10数年ほどの選挙結果は調べることが出来る。どの党が勝つかももちろん大切なんだけど、選挙というシステムを支える多くの人がきちんと働いていること。それを認識することも大事だと思う。

 

 上の2枚目の画像は都知事選の新宿区の開票風景。探すと「リハーサル」の画像もあった。そうかリハーサルしているんだ。まあ学校でも卒業式の予行練習とかしてるのと同様だろう。失敗が許されないものは、手順を確認する必要がある。そうやって今開票しているわけで、比例区もあるし、最高裁裁判官国民審査もあるから大変な仕事だ。終わったらゆっくり休んで欲しいと思う。

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無所属候補の動向、政党票のゆくえー2024衆院選

2024年10月26日 22時35分25秒 |  〃  (選挙)

 この前『二つの季節しかない村』というトルコ映画を見たが、近年の日本もそんな感じ。10月末だというのに「夏日」になって半袖を着たりしている。それでもやはり「暑からず寒からず」の日々が多くなって、ようやく散歩をしてる。美術館に行くことも多くなった。また、この頃谷崎潤一郎をずっと読んでて、そろそろまとめを書きたいんだけど、やはり衆院選の話。衆院選投開票が明日27日に迫っていて、他の記事を書く気になれない。ただし、政策論や勝敗のゆくえなどは書かない。明日になれば当選者は判明するわけで、今さら予測を検討しても仕方ない。じゃあ、何を書くかというと、まず「無所属議員」の検討。

(「裏金非公認候補)

 今回は与党(自民、公明)が過半数割れするかもと言われている。野党各党の考え方は相当違っているが、政権に入ってない党は全部「野党」。そこで開票速報を見ると、「与党」「野党」を大きなくくりで今当確は何人かと出る。両者のちょうど真ん中に「無所属」というのがあり、小選挙区で勝利する候補も10人強いると見込まれている。それらの人々は一体与党寄りなんだろうか、野党寄りなんだろうか。場合によっては、過半数割れしたはずの自公両党が実は「追加公認」などで増えていたりするのである。

 今回は自民党に「裏金問題」があって、非公認候補が10人いる。ホントは13人だったけど、越智隆雄、菅家一郎、今村洋史各氏が立候補を辞退したので、10人となる。諸情報によれば、確実平沢勝栄(東京17)、優勢西村康稔(兵庫9)、三ツ林裕巳(埼玉13)、線上萩生田光一(東京24)、下村博文(東京11)、苦戦上杉謙太郎(福島3)、中根一幸(埼玉6)、小田原潔(東京21)、細田健一(新潟2)、高木毅(福井2)あたりではないかと思われる。もともと同じ選挙区に有力な立憲民主党候補がいたかどうかが大きな違い。有力議員としては、兵庫の西村康稔は対抗馬が立憲、維新、共産の新人候補で、一歩リードと言われる。

 東京の下村博文は立憲民主党の元議員阿久津幸彦が前回から転区してきて2回目で、大分浸透してきたとされる。他に維新、共産、無所属がいるが両者接戦という情報。阿久津が14年まで立っていたのが東京24区で、2009年には萩生田を比例復活もさせなかった。その最注目の萩生田光一はここ数回楽勝だったが、今回は立憲民主党の有田芳生が立った。他に維新、国民、参政、無所属と候補が乱立しているが、情勢報道では有田がややリードとも言われる。最終盤で萩生田が追い上げたという情報もあり、両者の接戦が続いている。ここは創価大学がある地域で、統一協会報道もあった中、公明党の推薦がないことがどう出るかが注目される。

 ところで、「裏金議員」はもう一人いる。和歌山2区の世耕弘成で、そもそも参議院議員だったから公認問題とは関係ない。裏金で離党勧告となり、党を離れているから誰に遠慮することなく衆院選に立候補した。もともと総理を目指すと公言し、いずれ衆院に出ると思われていた。自民党公認候補は二階伸康で、公認がいるのに立候補するのは「反党行為」だ。しかし、大差で世耕がリードしていると諸報道が一致している。当選してもすぐには「追加公認」が出ない見通しだが、首相指名では自民党総裁に入れるはず。

 一方、与党ではなく「有志の会」という独自の会派で活動してきた議員がいる。元々2009年には民主党から当選して、その後落選、民進党や希望の党などいろいろあって、結局2021年衆院選に無所属で当選した人々である。福島伸享(のぶゆき、茨城1)、北神圭朗(きたがみ・けいろう、京都4)、緒方林太郎(福岡9)、吉良州司(大分1)の4人である。本当はもう一人、仁木博文(徳島1)もいたんだけど、同選挙区で競っていた後藤田正純が知事に転じた後釜として自民党から出ている。いずれも当選が有力。

(左から福島、吉良、北神、緒方)

 それ以外の有力無所属候補が数人いる。北から見ると、中村勇太(茨城7)は中村喜四郎の長男で後継。一応野党系。渡辺真太朗(栃木3)は松下政経塾出身だという。この地区出身だった渡辺美智雄、渡辺喜美と関連があるのかと思ったが、そういう情報は出ていないようだ。飯泉嘉門(徳島2)は元徳島県知事で、自民党山口俊一がいるため公認されなかった。広瀬健(大分2)は広瀬勝貞前知事の次男で、自民党江藤征士郎がいるため公認されずに出ている。三反園訓(鹿児島2)も前知事だが、前回無所出て出て当選した。ここも保岡宏武がいるので公認されない。以上は線上が多いが、数人は当選しそう。追加公認もありうる存在である。(東京9区に公民権回復直後の菅原一秀が出ているのを忘れていた。また福井2区に山本拓も出ている。高市早苗の夫で、一度離婚後復縁し、今は高市姓だという話。二人とも元議員で、苦戦が伝えられている。)

 これだけ書いてるだけで長くなってしまった。各党が比例区合計で何票ぐらい取るかを最後に見ておきたい。自民党は前回衆院選で1991万、前回参院選で1826万を獲得していた。今回は日本保守党の登場などもあり、どこまで減るか注目。公明党は前回衆院選では711万票、参院選では618万票だった。支持母体の創価学会会員の高齢化、池田大作氏の逝去、さらに自民党が公明党に譲る(「比例は公明党」と支持者に呼びかける)余裕がなく、どこまで踏み止まるか注目。

 野党系では立憲民主党は前回衆院選で1149万票あったのだが、前回衆院選では677万票だった。どこまで回復して伸ばすか。「維新」はここ数回は全国で800万票程度獲得していたが、今回はどこまで踏み止まるか。国民民主党は今まで300万票程度だが、これを増やせるか。共産党はここしばらく400万票だったが、前回参院選では362万票まで落ち込んだ。今回小選挙区に多く擁立した影響がどう出るか。議席増が予想されているが、問題は票がどこまで出るかだろう。れいわ新選組は結成以来、200万票台前半しか取っていない。これが今回どこまで伸ばせるかも注目だろう。それらは選挙後にまた総括したいと思う。

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与党過半数割れの可能性、「日本保守党」の影響もー2024衆院選終盤情勢

2024年10月23日 19時29分57秒 |  〃  (選挙)
 衆議院選挙の序盤戦情勢を19日に書いたが(『衆院選、「自民単独過半数」をめぐる大激戦=序盤戦情勢報道を読む』)、その後中盤から終盤にかけての報道が出た。21日(月)に朝日新聞が「自公、過半数微妙な情勢」と報じて反響を呼び、それに続くFNN(フジ産経グループ)も同様の傾向だった。そして今日になってJNN(毎日TBSグループ)も「与党失速、過半数微妙 自民苦戦、立憲続伸、国民躍進」と報じた。朝日は19、20の調査だが、毎日は22、23の調査である。そして今日の「文春オンライン」が「《自民衝撃の197議席》衆院選、どこよりも詳しい「最終予測」は…政権交代以来の大惨敗!」と報じている。
(朝日新聞の情勢報道)
 これは一社だけの報道ではないので、序盤から続く自民苦戦が中盤以降にさらに進行していると見るべきだろう。近年の選挙では、情勢報道で優勢と出た陣営が終盤にさらに勢いを強めることが多い。「中選挙区」時代は同じ選挙区から自民党でも数人が立候補していたので、むしろ「当落スレスレ」と報じられた方が同情票が集まると言われていた。「小選挙区」になってからは、選挙区で当選するのは一人なので、当選しそうな方に投票する傾向が強まっていると思う。

 今回は「自民党裏金議員」の対立候補に立憲民主党がいる場合は、他の野党が立っていても立民に集中する傾向が強い。さらに立憲民主党候補がない地区で、国民民主党が立っている場合は(今回好調な)国民民主党が(維新や共産が出ていても)「迫る」などと報道されている。一番強そうな野党候補を選んで投票するということだろう。それだけ「自民党裏金議員」に対する(すごろくにあるような)「一回お休み」を求める有権者の意思がうかがえる。

 朝日新聞の情勢報道は近年当たる傾向が強いので、一応紹介しておきたい。朝日の特徴は(数回前の選挙から)、「上限」「下限」「中心値」を示していることだ。そのため、自民上限=217、公明上限=33が当選した場合、自民党は単独過半数を失うが、与党合計では250議席を確保出来る。しかし、自民下限=184、公明下限=17の場合は、与党合計201と過半数(233議席)を大きく割り込むのである。中心値で見ると、自民=200、公明=25になっていて、合計225議席だから過半数割れということになる。
(石破首相の勝敗ライン)
 野党側も紹介しておく。立憲民主党は、122~138~154となっている。(左から下限、中心値、上限である。)日本維新の会は、28~38~49。日本共産党は、7~12~17。国民民主党は、15~21~27。れいわ新選組は、7~11~15、社会民主党は、0~1~2、参政党は、0~2~5、諸派は、2~3~5。無所属は小選挙区のみだが、11~14~17となっている。

 ここで注目されるのが「諸派」である。東京で「みんなでつくる党」、北海道で「安楽死制度を考える会」というのが出ているが、もちろんそれではない。当選可能性があるのは「日本保守党」である。社民党、参政党は下限がゼロだが、日本保守党は下限でも2議席、中心値が3議席あって、上限5議席を取る可能性もある。その場合公選法上の政党要件を一回で満たすことになる。全国11比例ブロック中で、東北、北陸信越、中国、四国、九州を除くブロックに立てている。中心値の3は、愛知1区の河村たかし、比例東京1位の有本香、比例近畿1位の島田洋一だと思われる。
(日本保守党)
 恐らく自民苦戦の一因は、日本保守党の参戦だろう。日本保守党に共感する有権者は、本来自民党に入れていたはずだ。しかし、安倍元首相死亡後の保守陣営の混迷の中で、日本保守党が結成された。もともと支持していた旧安倍派議員は裏金問題の影響で比例名簿に登載されていない。よって比例区で自民党に入れても、高市支援にならない。もし石破氏が辞めて再び総裁選があっても、高市総裁実現のためにならないのである。今回自民党は比例区で前回の65議席から、10~15議席減らしそうだが、その原因として前回はなかった日本保守党、参政党が登場したことも大きいと思う。

 実際に予測通りになって、ここまで減るとどうなるだろう。自民党は石破カードを切ったのに意味がなかったことになる。辞任を求める動きも出てきて、イギリスのトラス元首相のように1ヵ月で退陣ということもありうる。石破首相が「ぶれた」「従来の自民党に取り込まれた」「総裁選中に主張していたことがなし崩しになっている」という批判はかなり強く、期待外れとして石破内閣の支持率も相当低くなってきた。しかし、今回衆院選では「旧安倍派」を中心に高市陣営にいた議員ほど当選が難しいだろう。自民党内の反石破派は何人生き残るだろう。本来なら起きるはずの「石破おろし」を仕掛ける人がいなくなってしまう可能性もある。

 また数人はいると思われる「自民党追加公認」を繰り入れれば、何とか過半数に達する可能性もある。都知事選のように数十万票単位の差が付くわけではないので、調査で接戦と出ているところがどうなるかは最後まで予測出来ない。数百票単位で決まることもあるから、最後まで油断出来ない。あと数日になったけれど、次第に緊迫感が強まっている。
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衆院選、マイナ保険証を争点に!ー各党の公約を見る

2024年10月21日 21時41分08秒 |  〃  (選挙)
 東京新聞(10月20日)1面トップに『健康保険証 廃止する? 衆院選2024』という大きな記事が掲載されていた。僕は今まで何度も「マイナ保険証」反対の記事を書いてきたから、また書くのも気が引けるが、大事なことだと思うから何度でも書いておきたい。僕に言わせれば、この問題は今回の選挙の一大争点であるべきだ。高齢者・障害者や医療・福祉関係者にとっては、自身に大きな影響があるテーマである。それなのに、あまり取り上げられていないのは何故なんだろうか。
(東京新聞の記事)
 テレビニュースの街頭インタビューを見ていたら、争点には「物価対策・景気」と「政治とカネ(裏金問題)」を挙げる人が多かった。また「国会議員が多すぎる」と言う人も多かった。しかし「マイナ保険証一本化(紙の保険証廃止)」を取り上げる人はなかった。これは聞いている場所が影響していると思う。銀座・有楽町・新橋などで聞いているのだ。新橋で聞けば、仕事帰りのサラリーマンが「景気をよくして」という。銀座で聞けば、買い物帰りの女性たちが「物価」「裏金」を語る。

 だけど大病院の待合室で順番を待ってる人社会福祉事務所に生活保護の申請に来ている人障害者施設に通っている当事者などに「選挙の争点」を聞いてみれば、保険証の問題も出てくると思う。もちろん、そんな取材は不可能だ。顔をマスキングし、声は変えたとしても、そういう取材は断られるだろう。プライバシーを恐れる心配のない人だけが「世論」として通用する。

 自民党には高齢議員がかなり存在する。二階俊博氏は引退したが、麻生太郎氏はまだ出ている。80代を超える人はさすがに少ないが、70代は相当多い。別に僕は年齢が高いからどうのという気はない。だけど、マイナンバーカードはどうしているんだろう? マイナ保険証は使ってるんだろうか? 自分でパソコンやスマホを操作して「マイナ保険証」にしたんだろうか。それとも秘書をしている家族がやってくれたのか? 政治家に「マイナ保険証を見せてください」と聞くべきだ。

 僕も若い頃は一年に一度も病院に行かない年が多かった。(ホントは時々歯医者に行く方が良いんだけど。)その頃は「保険証」なんて気にしたことがなかった。勤め先で入ってる保険証が自動的に貰えたから、それで良かった。それを「自分で設定してください」なんてことにしたら、大変なことになるのは火を見るより明らかだ。「マイナンバーカード」にも期限があるし、「保険証」にも期限がある。それ以上に保険料の支払いが滞る人の場合どうなるのか。

 まだ元気な人は何とかなるだろう。でも世の中には、配偶者も子どももいない高齢者がたくさんいる。お金もない人もいる。病気や障害を抱える人もいる。自分でマイナンバーカードを作って、自分でマイナ保険証を設定する。一体何歳までスマホやパソコンを使えないとダメなんだろうか。スマホを持ってるのが前提みたいな社会になってるけど、スマホを持ってない人もたくさんいるって知らないのだろうか? ま、そんなことは今までも書いたと思うが、書いてると段々腹が立ってくるのである。
(各党の公約)
 それはさておき、今回の各党の公約を紹介しておきたい。自民党は総裁選中は見直すようなことを言ってた人もいたが、結局「マイナ一本化」である。公明党も「マイナ保険証を基本とする仕組みへの移行に向けて、医療機関と連携し、安全かつ着実に運用を図る」。日本維新の会は「マイナンバーの徹底利用」、国民民主党もマイナンバー重視である。

 一方、立憲民主党は「健康保険証の廃止を延期し、一定の条件が整うまで存続」。共産党は「マイナンバーと保険証・運転免許証との一体化の押しつけをやめさせる」、れいわ新選組は「保険証や免許証を現状のまま維持」、社民党も「現行の保険証を残す」。なお参政党は記載なし。日本保守党は現時点で国会議員がいないため出て来ない。まあ改めて見るまでもなく、他の政策と同様な感じで「想定内」というべきか。どの党の公約に共感するかは自由だが、僕はこの各党の公約を投票に生かしたいと思っている。
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衆院選、「自民単独過半数」をめぐる大激戦=序盤戦情勢報道を読む

2024年10月19日 22時04分44秒 |  〃  (選挙)
 15日に公示された衆議院選挙、序盤戦の情勢に関する報道が出始めた。この「序盤」に関しては、選挙期間が短いため調査しないマスコミもある。しかし、いくつかの報道を総合すると、大体同じような傾向がうかがえる。それは「自民党の退潮」と「立憲民主党の堅調」だが、そんなことは言われなくても誰でも知っているだろう。しかし、減るといってももともと議員数が多い自民党だから、石破首相が目標に掲げた「自公で過半数」には届くんじゃないかという予測が多い。それは逆に言えば「自民党単独過半数は微妙な情勢」ということだ。これを「与党過半数確保の情勢」と報じるか、「自民党単独過半数割れも」と報じるかで、ずいぶん印象が変わってくる。ちょっとしたことで情勢は大きく動く可能性がある。
(テレビが報じる予想獲得議席)
 今回は様々な事情が重なり、結果が読みにくい選挙になっている。投票率がどうなるかも、全然予想出来ない。一つには「10増10減」の影響で、今までとは小選挙区の区割りが変更されたところが多く、票の出方が読みにくいのである。自分のところもそうなんだけど、前回から変わって知ってる候補者が一人もいない。「なじみ」がいなくなって自由に投票するのか、それとも棄権が多くなるのか。自民党非公認、比例名簿不登載の影響も読み切れない。小選挙区で当選しないとダメだから陣営が固まる可能性もあるが、有権者が「懲罰」的投票を行う可能性も否定出来ない。
(選挙関心度)
 世論調査による選挙関心度は、「大いに関心がある」から10ポイントぐらい減るのが実際の投票率となる。聞かれた時に「ある程度関心がある」と答える人は、実際には行かない。衆院選は5割は行くが、近年は6割には届いていない。政権交代をもたらした2009年が69%と異例に高く、2012年は59%。その後は、おおよそ53、54、56%推移してきた。これが6割に近づくか、それとも保守系に棄権が出て下がるかは結果に直結するが、どうも読みにくい。
(解散時勢力)
 前提になる議員数を確認しておきたい。衆議院議員の定数は、小選挙区289、比例代表区176の合計465議席。だから、過半数は233議席となる。だけど、それでは議長を出した後の総理大臣指名選挙で過半数を得ることが出来ない。(実際には保守系無所属がいるので、自民党が優位となる。)前回の当選者は、自民党=261、公明党=32で、与党合計293議席だった。小選挙区だけを見ると、自民=189、公明=9だった。解散時勢力は、自民党256、公明党32。野党は前回、立憲民主党=96、日本維新の会=41、国民民主党=11、日本共産党=10、れいわ新選組=3、社会民主党=1、無所属=10。 
 
 今回の解散時議席は、自民党=256、公明党=32で与党合計288、野党は立憲民主党=98、日本維新の会=41、日本共産党=10、国民民主党7、教育無償化を実現する会=4、れいわ新選組=3、社会民主党=1だった。「10増10減」は、まあおおよそのところ自民党が強いところを減らして、野党が強い都市部を増やすんだから、今回は自民が10程度減らすのが前提になる。その上に「安倍派裏金問題」があって、自民党全体が逆風にさらされている。同時に非公認議員や比例名簿不登載があって、地元議員への支持は継続しても、比例区の自民票が減りそうだという観測が強い。

 そのうえ、大阪・兵庫の「公明党擁立区」に「維新」が新たに候補を立てて全面対決になっている。10増10減に伴い、今回公明党は11小選挙区に候補を立てたが、今まで(2009年を除き)「全勝」を誇ってきた公明党だが、今回は小選挙区で全部勝つのは不可能である。ひょっとすると近畿で全滅もあり得る。比例区でも減る可能性もあって、公明党が微減になる予測が多い。そのことも考えると、「自公で過半数」も微妙になるかもしれない。

 「自公で過半数」なら良いはずだが、実際には「自民党単独で過半数割れ」だと、わざわざ禁じ手の石破総裁にした意味がないと考える人も出て来る。「石破首相では参院選が戦えない」と判断して「倒閣運動」が始まるのではないか。石破首相からすれば、安倍派問題で足を引っ張られたのに自分が辞める理由がない。自民党の減り具合では、反石破派が高市早苗を首相候補に立て、それに数議席獲得の可能性がある「日本保守党」などが乗る可能性もあるか。一方、石破側は国民民主党などに働きかけて首相指名を模索する。その可能性は高くはないと思うが、一応頭には入れてある。

 立憲民主党は「保守系」の野田元首相を代表に選出したのがどう出るか。今のところ自民を離れる保守票を獲得する可能性もあって、功を奏したような印象になっている。野党側は(まあ「維新」は除くとしても)乱立が目立ち、その影響は終わってみなければ読めない。共産党やれいわ新選組などの票がどのぐらいになるか、今は読み切れない。立憲民主党が野党の中では一番大きいのは間違いなく、その意味で反自民票が立憲民主に集まる傾向はあるようだ。それが自民系候補を圧倒するまでになるのか。

 まとめてみると、今回で与野党逆転はなかなか厳しいが、石破首相への批判、不満も強く、それは自民党政治そのものへの批判でもある。従って、このままだと2025年参院選の自民党はかなり厳しいことが予想される。次の参議院選挙こそ「天下分け目の戦い」になるんじゃないだろうか。
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他の知事・市長経験者は当選しないー過去の都知事選で判ること

2024年07月26日 22時17分46秒 |  〃  (選挙)
 都知事選のデータを見ていて気付いたこと。今さら都知事選について何を書くのかと思うだろうが、今年の都知事選ではなく過去から見えてくるデータに関心がある。「東京」を繁栄した首都のように思っている人が多いかもしれないが、この町は決して住みやすい町ではない。そのことは今は書かないけど、「東京都制」を何とかして欲しいと思う。「東京都解体」「東京市復活」を掲げて知事選に立候補する人はいないだろうか。暑すぎて映画館に行く気も起こらないので、少し過去の話を。

 今まで都知事選で現職が落選したことがない。これは今回の選挙中も指摘されたことだが、では過去最高得票の落選者は誰か。それは1975年の石原慎太郎候補の2,336,359票である。この時の当選者は3選を決めた美濃部亮吉知事で、2,688,566票だった。かなり迫っていたのである。この時の記憶が高齢の保守系有権者に残っていて、それが1999年の当選につながったのではないか。

 次が1967年の松下正寿候補の2,063,752票。自民、民社が推薦したが、社会、共産推薦の美濃部亮吉候補に競り負けた。美濃部氏は2,200,389票だったから、わずか14万票程度の差だった。落選候補が200万票を越えたのは、この2回だけである。この時は公明党が独自候補を立て、60万票ほどを獲得した。つまり1967年に「革新都政」が成立した最大の原因は、公明党が自民党に付かなかったことである。ちなみに1975年には公明党は美濃部3選を支持したが、79年からは基本的に自民党に同調している。
(過去の主な都知事)
 半世紀前の過去はともかくとして、その後美濃部知事(3期)、鈴木俊一知事(4期)を経て、1995年には青島幸男知事が当選した。当時は「自民、社会、さきがけ」の村山富市内閣だったこともあり、自民、社会などの主要政党がこぞって石原信雄氏(元内閣官房副長官)を推したことに、青島氏が反発して立候補したのである。結局都政に足場がない青島知事は大した業績も残せないまま1期で去った。この経験から、石丸伸二氏には「都議会にはどう対応するのか」を問う必要があった。

 今回の石丸伸二氏のように、他の場所で知事や市長を務めた人が立候補したことはかなり多い。例えば2011年知事選に出た東国原英夫候補である。石原慎太郎知事が4選を決めたが、東国原氏も1,690,669票を獲得し次点だった。(全体の28%。)この時は東日本大震災直後で、選挙運動も盛り上がらないまま現職が当選した。東国原氏は直前まで宮崎県知事を務めていた。しかし、1月にあった知事選に出馬せず、都知事選に立候補したのである。
(2011年都知事選)
 その前に、2007年には石原知事の対抗馬として、前宮城県知事の浅野史郞氏が民主党など野党に支援されて立候補したことがある。後の東国原氏とほぼ同数の1,693,323票を獲得している。2012年には前神奈川県知事の松沢成文氏(現参議院議員)が出馬したが、3位で敗れている。2016年に小池百合子氏が当選したとき、自民党は小池氏ではなく元岩手県知事の増田寛也氏(現日本郵政社長)を推したが、1,793,453票で敗れた。(小池氏は290万票ほど。)古くは1963年に東知事の対抗馬として前兵庫県知事の阪本勝氏が出ているが、こうしてみると当選した人は誰もいない。

 市長経験者としては、1995年に前出雲市長の岩國哲人氏が立候補したが、3位で敗れた。ついでに書くと、2007年には元足立区長の吉田万三氏が出たこともある。保守分裂のため当選した共産党系区長である。この時も共産党推薦で立候補して、63万票近くを獲得している。そして、2024年の石丸伸二氏ということになる。こうしてみると、与党系で出ても、野党系で出ても、完全無党派で出ても、他の自治体トップの経験者は当選出来ないという「法則」があるということか。

 都知事選では200万票を越える得票がないと当選出来ない。今まで他の自治体トップ経験者は160、170万票程度しか取れていない。2016年の増田氏のケースで判るように、何で東京の国会議員がいっぱいいるのに東京以外の人を知事にするのかと反発が出て来る。野党系の場合、野党支持者はまとめられても、無党派層に浸透するのが難しい。今回の石丸氏もずいぶん得票したが、当選には遠かった。「知名度」とともに、なんで地方の市長が東京の知事になりたいのという素朴な疑問を越えられないということか。

 今後も他の自治体トップでは難しいと思う。全都的に支持を得るには、他県、他市のトップだった過去が足を引っ張るのかもしれない。東京の有権者に違和感を感じさせるということではないか。今まで誰も言ってないと思うので、ちょっと書いてみた次第。
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都知事選、「石丸+蓮舫」票が小池票を上回る地区はどこかー都内格差の可視化

2024年07月25日 22時13分59秒 |  〃  (選挙)
 都知事選について、改めてデータに基づき考えたい。当選した小池百合子の得票率は42.77%だった。従って過半数は得ていない。(前回2020年はほぼ6割の得票で、過半数を大きく超えていた。なお、21世紀の都知事選では、2003、2007年の石原慎太郎、2012年の猪瀬直樹が過半数を獲得している。)日本の選挙には「決選投票制度」がないので、これで当選である。

 それはいいんだけど、法定得票(有効投票数の1割)を越えたのは(言うまでもなく)3人だけだった。多数が出ていても、4位の田母神俊雄は27万票弱、全体の4%である。以下、10万票を超えた人が3人いる。それはそれなりに重いんだろうが、選挙情勢的には無視して良い。そこで上位3人を見ると、2位石丸伸二得票率24.3%、3位蓮舫得票率18.81%だった。合計すると43.11%になり、若干小池票を上回る。具体的に票数を見ると、小池(2,918,015)、石丸(1,658,363.406)、蓮舫(1,283,262)となる。石丸+蓮舫=2,941,625.406票となる。

 まあ、二人合わせれば2万票ちょっと上回るわけだけど、これはまあ誤差の範囲である。有力二人合わせて、やっと現職とほぼ同じなのである。知事選後、「石丸候補は何故躍進したのか」「蓮舫候補は何故3位に終わったのか」はいろんな人がいろいろ語っているけれど、本当に検証するべきなのは「前回より減ったものの、小池知事は何故圧勝出来たのか」の方だろう。それを解明せずにあれこれ語っても、2位にはなれても東京で当選出来ない。
(東京各地)
 東京と言っても広い。各地域には大きな違いがある。それを考えるために、何かいい地図がないかなと検索したところ、東京都企業立地相談センターという部署の地図が見つかった。そこでは各地域が色分けされている。23区部は「都心・副都心」「城東」「城南」「城西」「城北」の5つのエリアに分かれている。多摩地区は「北多摩」「南多摩」「西多摩」の3エリア。それに加えて「島しょ」エリアがあり、全部で9つになる。ここで考えたいのは、各エリアで各候補の得票がどう違うのかである。
 
 とは言うものの、全部見るのは大変だ。幾つかを抽出して、「小池票」と「石丸+蓮舫票」を比べてみる。どういう意味があるのかというと、小池知事の支持傾向に地域差があるのかがそれでつかめると思うのである。一票単位で比べるのは面倒なので、千票単位で四捨五入する。先に見たように、全都的には「小池票」=「石丸+蓮舫票」になっている。では、まず国会議事堂、首相官邸がある千代田区を見てみる。小池(1万3千)、石丸(9千)、蓮舫(5千)で、ほぼ全都の傾向と同じである。

 人口が最大の世田谷区(城西地区)を見ると、小池(18万7百)、石丸(13万4千6百)、蓮舫(9万8千7百)なので、小池票は一番なんだけど2位、3位を足すと5万票近く離されている。同じ城西地区の杉並区(小池=11万3千、石丸=7万7千、蓮舫=6万6千)や中野区(小池=6万4千、石丸=3万9千、蓮舫=3万4千)も似たような傾向にある。これは多摩地区の隣接市も同じで、武蔵野市(小池=3万、石丸=2万、蓮舫=1万8千)、三鷹市(小池=3万9千、石丸=2万6千、蓮舫=2万2千)なども同傾向である。

 この城西、北多摩地区には「野党系首長」が多い。選挙前に都内52の区市町村長が小池氏に知事選出馬要請を行った。それに加わらなかった首長も10人いるが、世田谷、中野、杉並、立川、小金井などほぼ城西、北多摩地区の区長、市長である。2021年衆院選で、立憲民主党候補が小選挙区で当選したり、あるいは比例区で復活当選したのも同じ地域が多い。つまり、もともとこの地区では非自民系の有権者が多いのである。

 では先の地域分けの「城東地区」を見てみる。僕が住んでる足立区は小池(14万8千)、石丸(7万)、蓮舫(5万2千)で、2位、3位を足しても現職に2万6千票も及ばない。ここでは都議補選も行われ、千票も差が付かなかったが14万票で立憲民主党候補が当選した。つまり小池支持者でも、都議補選では自民党に入れなかった人が相当いた。だけど、知事選では小池と書くのである。

 続いて足立の隣の葛飾区を見ると、小池=9万8千、石丸=5万3千、蓮舫=3万7千。その南の江戸川区では、小池=14万4千、石丸=7万4千、蓮舫=4万8千。城東地区でも、江東区や台東区では少し両者の票が上回る。しかし、それは「二人合わせれば」ということで、小池を抜いてトップになれるということではない。それにしても、ここで判るのは東京の一番東にあたる城東地区では、石丸票と蓮舫票の差が非常に大きい。先の中野区や三鷹市などを見れば歴然としている。

 面倒なので他の地区は検討しない。僕がここで書きたかったのは、城西、北多摩地区などに住んでいる非自民系の人は、小池知事が盤石ではないという肌感覚を持っていたのではないかということだ。当初石丸候補がこれほど取るとは予想されてなく、もし無党派票が蓮舫候補に集中すれば「勝機あり」と見えていたのではないか。しかし、城東地区に住んでいる自分から見れば、「小池に勝つのは難しいだろう」という肌感覚になる。そして蓮舫陣営の運動は城東地区であまり展開されなかった(と思う)。

 そして、野党系リーダーばかりでなく、野党系「文化人」や「市民運動家」、マスコミ関係者などもおおよそ「城西地区」に住んでいる。そこの感覚で発信するから、城東地区には浸透しないのではないか。非自民系の弱い地域で、地道な運動を行う以外に勝機はない。そして、実はこの選挙データは経済的、文化的な「都内格差」に基づいていると僕は考えている。そこを検証しない限り、東京は変わらないままだろう。(なお選挙のデータは各市区の選挙管理委員会のホームページに出ている。また新聞では、選挙直後の火曜日朝刊の地方版に掲載されている。)
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都知事選ポスター問題再論、内田樹氏のとらえ方

2024年07月24日 22時04分20秒 |  〃  (選挙)
 都知事選関係の問題をもう一度。まず「ポスター掲示板」問題から。「NHKから国民を守る党」が都知事選に24人の候補者を立てて、その「掲示板を利用する権利」を販売したという問題が起きた。選挙後に公職選挙法改正の論議があるところまで書いている。このように一党があまりにも多くの候補者を立てたために、掲示板にポスターが貼れない候補者が出た。都選管はそれに対して「クリアーファイル」を渡して、それに入れて掲示板の外側に貼るように指示した。これが「不公平」であるとして、選挙無効の訴えが相次いでいる。これに対しては僕は「笑止千万」としか思ってない。
(自宅近くの掲示板)
 何が不公平なのか。確かにちゃんと掲示板に貼れないのは公平性に問題がある。だが、それを主張出来るのは全都の掲示板にクリアーファイルを貼っていた候補者だけだろう。前にも紹介したが、わが家近くの掲示板(複数)は最後の最後までたった9人の候補者のポスターしか貼られてなかった。マスコミで「主要候補」に入っているはずの候補でもポスターがない人がいた。僕は別に驚きも嘆きもしない。都知事選や参院選はいつもそんなものだからだ。半分以上の枠が空いたままになるのは僕の地区では通常のことだ。こっちこそ「不公平」だと思う。クリアーファイルで貼っていたポスターは恐らく都心部のごく限られた掲示板だけだと思う。

 僕は下に載せた「掲示板ジャック」も見ていない。クリアーファイルも見てない。知事選の間、何も自宅に引きこもっていたわけではなく、都心部の主な地区には行っていた。だけど、銀座、新宿、渋谷、池袋、上野などで駅から映画館や寄席などに行く動線上にポスター掲示板は一箇所もなかった。人が集まる主要駅にこそ掲示板を立てればいいと思うが、候補者が余りにも多いから掲示板が大きいのである。商業活動に影響を与えるから設置出来ないのかなと思う。住んでる人が駅まで行く途中にはあるんだろうけど、暑い時期にわざわざ裏の方まで入り込まない。東京東部の周辺地域には、都知事選の運動は及ばないのである。
(「掲示板ジャック」)
 ところで、この問題をもう一回書いてるのは、東京新聞7月21日付(日曜)の「時代を読む」というコラムを読んだからである。ここでは毎週違う人が月1回書いてるが、当日は内田樹(うちだ・たつる、1950~)氏の文章が掲載されていた。「性善説システムからのお願い」と題されたその文章を読んで、なるほどそういう見方もあるなあと思ったのである。なお、内田氏の肩書きは「神戸女学院大学名誉教授、凱風館館長」になっている。これじゃ知ってる人にしか判らない。Wikipediaには「フランス文学者、武道家(合気道凱風館館長。合気道七段、居合道三段、杖道三段)、翻訳家、思想家、エッセイスト」となってる。

 まあ、これでも判らないかもしれない。要するにフランス哲学者レヴィナスの研究、翻訳、紹介から始まり、21世紀になる頃から数多くの一般書を書いて知られた人である。僕も最初期の『ためらいの倫理学』や『「おじさん」的思考』なんかを面白く読んだ。対談等を含めると、すでに100冊を遙かに超える本を出していて、とてもじゃないが飽きてしまったが。しかし、うっかり忘れていたような視点からの鋭い指摘は時々ハッとさせるものがある。
(内田樹氏)
 さて、今回の問題に対する内田氏の考え方は以下の通り。「これまでも政見放送や選挙公報にはあきらかに市民的常識を欠いた人物が登場したけれども、それは「民主主義のコスト」だと思って、私たちは黙って受け入れていた。だが、今度の都知事選の非常識さは前代未聞だった。」「でも、こういう行為をする人たちは別に選挙を利用して金儲けをしたり、売名をしたいわけでもないと思う。彼らの目的は公選法が「性善説」で運用されているという事実そのものを嘲笑することにあるのだと私は思う。」

 「供託金さえ払えば、公器を利用して、代議制民主主義というものの脆弱性と欺瞞性を天下にさらすことができる。民主主義というのがいかに理想主義的な仕組みであるか、それを暴露して冷笑することがこのような行為をする人たちを駆動している本当の動機だと私は思う。「民主主義がどれほどくだらない制度だか、オレたちが好き放題にしているのを見ればわかるだろう?」と彼らは国民に向かって挑発的に中指を立てているのである。」

 なるほど、言われてみればこの「民主主義システム嘲笑論」は、世界に広がる「極右」勢力の気分をよく表わしている。今までの常識を「時代遅れ」と決めつけ、タテマエを非難して「ホンネ」を掲げる風潮。禁止されてないんだから、やって構わないという主張。揚げ足を取るようなやり取りで「論破」したと自分でみなす「論争」。そんな様子を思い出すと、彼らはシステムを嘲笑するのが目的なんだというのは、実に正確に言い当てている気がする。

 そして内田氏は「だからといってこういう行為を処罰できるように法整備をすることは原則としては反対である」という。その後の論理展開はかなり面倒くさい議論になっているので、ここでは省略する。詳しく読みたい人は自分で探して欲しい。僕は内田氏と違って、公選法を改正することに反対ではない。というか、常識で理解出来る範囲の問題行動があったとき、それを明文で禁止する法改正を立法院がするのをあえて止める理由が自分にはない。確かに無くて済めばその方がいい規定だろうが、そういうことをした人がいるんだから、僕が反対するような問題でもない。
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公選法改正、「ネット事前運動」や「戸別訪問」の解禁も議論を

2024年07月19日 21時47分03秒 |  〃  (選挙)
 都知事選関連の問題はもっと考えるべきことがある気がしてる。結局それは「東京一極集中」という問題になる。まあ、そのことは後に回して、先に公職選挙法(公選法)の改正問題を考えてみたい。自民、公明両党は改正に向けた議論を始めていて、秋の臨時国会の大きなテーマになるだろう。「つばさの党」事件や「ポスター掲示板販売」問題が起こった以上、それらの明らかに選挙をおかしくする行為を禁止するのは当然だ。ついでに「政党その他の政治団体は、各選挙の当選者定数を越える候補者を公認することはできない」というルールも作って欲しいところだ。

 しかし、そういう「禁止事項を加える」だけでなく、この際「選挙運動の自由」を大幅に拡大するべきだと思う。まず日本の選挙運動期間は非常に短い。アメリカの大統領選なんか、常にガンガン議論している。まだ民主、共和両党の候補を決める段階だけど、事実上「事前運動」をずっとやってる。それが良いかどうかはまた別だが、衆議院選が12日参議院選と知事選が17日は明らかに短すぎる。多くの人が休日の土曜、日曜が(告示の曜日にもよるが)1回か2回しかない。これで議論が活発になるはずがない。だから、普段から顔と名前を売っている現職が出る場合、新人が勝つのはとても難しいのである。

 だけど、実際の選挙運動が長すぎるのも困る。選挙カーが回ってくると騒音だし、燃料代も公費負担である。だから実際の選挙運動は今と同じ期間でもいいけど、ネット上の運動なら告示日なんか関係ない。「次の選挙に立候補します」とネット上で宣言することに何か問題があるだろうか。都知事選なんか「後出しジャンケン」なんて言われて、誰が出馬するのかなかなか判らない。そして選挙期間中もほとんど議論がない。逆に早く立候補を表明して、どんどんネット上で支持を広げる戦略もアリではないか。インターネットの使い方に関しても、上記画像にあるように「SNS」は可なのに、電子メールは不可など、不可解なルールが存在する。こんなバカげたルールは意味不明。何を使っても良いが、他候補への根拠無き非難などを刑事罰で禁止する規定の方が必要だろう。
(ネット選挙の現状)
 一方で、「マスコミの公平性」も緩和するべきだ。今回明らかに小池、石丸、蓮舫3候補が大量得票が見込まれた。(新聞やテレビ局は世論調査をしてるんだから、事前に承知している。)だから、3氏の討論会をやって欲しいわけだが、小池知事が「公務優先」を理由にして出ないということで、実現しなかった(と言われる)。でも、「蓮舫対石丸」の討論会でいいから、テレビや新聞、ネットメディアでやって欲しかった。終わってから石丸氏を各番組に呼ぶんじゃなく、選挙期間中にもやれば良い。他の候補が不公平だと言うだろうが、多少は知名度がある候補数人に5分程度のアピール時間を確保すれば十分だ。

 もう一つ「戸別訪問」の問題もある。もともとなんで禁止なのかというと、「買収が起こりやすい」からと言われる。また労働組合が支持する革新党が有利になることも保守陣営は心配したんだろう。でも今じゃ誰が録音録画しているか判らない。迷惑な戸別訪問をする陣営は、録音がネットに掲載されてあっという間にネットで叩かれるに決まってる。確かに今戸別訪問を解禁すれば、公明党(創価学会)や共産党の支持者がやって来て、支持者じゃない人には迷惑もあるだろう。でも嫌なら嫌で、ビラだけ受け取って帰って貰えば良い。支持しない政党のビラでも貰って読むべきだろう。
(戸別訪問と個々面接の違い)
 理解出来ないルールが残り続け、選挙運動期間も少ない。これでは盛り上がるわけがない。僕は街で選挙運動を見る機会が非常に少ない。ほとんど誰とも会わないのを覚悟している。いつもそうだからである。もっとも今回は都議補選の候補者の演説は二人とも聞いた。(立憲民主と自民から出た。)地元密着の選挙なら、運動にもぶつかるのである。しかし、住民が1400万もいて、離島もある東京都の知事選では、候補者を見る機会が少ない。業界団体や労働組合、宗教団体などに参加している人は今とても少ない。誰からも働きかけがないなら、選挙の投票率が下がるのも当然だろう。自分で調べて投票に行く人ばかりじゃないんだから。以前書いたことと重なる論点もあるが、あえてまた書くことにした。
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2024都議補選の結果を考えるー「反自民」だけど「野党」の勢いも弱い

2024年07月12日 20時25分31秒 |  〃  (選挙)
 2024年7月7日の都知事選に合わせて、9箇所で都議補選が実施された。2021年の都議選以後に死亡、辞職などで欠員が出た地区で、来年7月までの任期の補欠選挙が行われたのである。それぞれの地区で選挙になった事情が異なるので、全都的、全国的な影響度は一概には言えない。しかし、結果として(8地区で擁立した)自民党が2勝6敗だった自民党への逆風は間違いないが、では野党へ追い風が吹いているのだろうか。その問題を点検してみたいと思う。
(都議補選結果)
 まず「欠員」前の所属政党を見ると、自民党5人、都民ファーストの会2人、無所属2人だった。今回の補選の当選者は、都民ファースト3人、自民党2人、無所属2人、立憲民主党1人、諸派1人である。自民党が3人減ったのは間違いないけれど、明確に野党に所属している当選者は1人だけ。今回は都知事選と一緒に行われたが、もし都議補選だけだったら投票率は劇的に低かっただろう。知事選に行ったら、ついでに都議補選の投票用紙も渡されたから、誰かに投票するわけだ。(都議補選だけ棄権することも可能なんだけど、投票所では事実上投票を前提に紙を渡される。棄権または白紙投票も可と告知するべきじゃないか。)
(都議補選、議席の推移)
 今回「都民ファーストの会」が4人立候補して、そのうち3人が当選した。それは知事選で小池百合子氏が当選したのと連動している。知事選で「小池」と書いた人がどの地区でも最多なんだから、ついでに補選があると「都民ファースト」に入れる。そういうことじゃないか。北区補選は前回トップ当選の山田加奈子(自民党)が区長選に出て当選したために行われた。自民、都民ファースト、共産、維新が出て、都民(5万8千)が当選、自民(4万4千)、共産(3万)、維新(2万6千)の順。自民出身の区長がいても、自民は落選。しかし、「共産」「維新」は「非自民」の受け皿になれないことが判る。

 一方、隣の板橋区では唯一都民ファーストの会が4位で落選した。当選したのは自民(9万1千)で、共産(6万2千)、維新(5万2千)、都民(4万5千)の順番。共産も維新も前回都議選より大幅に得票を増やしているが、自民には及ばなかった。ここで都民ファーストの会が大敗したのは、恐らく前職の辞職理由にあると思う。3年前に3位で当選した議員が、選挙運動期間中に無免許状態で運転していたことが発覚したのである。この時の対応に有権者が今も納得していないのではないか。有効投票数を調べると、知事選は27万、都議補選は25万と2万票も違う。都民、自民、共産、維新いずれも入れたくないということだろう。では立憲民主党は出ないのか。3年前に当選した現職議員がいて、来年には改選だから出なかった。

 板橋区の当選者は自民党だが、3年前に6位(定数5)で落選した元議員だった。もともと知名度があり、同情票も期待出来た。それでも立憲民主党との一騎打ちなら当落は判らなかっただろう。しかし、野党代表が共産党だった場合は、反自民票は結集しないのが現実である。 江東区では4人中4位、中野区では4人中3位だった。板橋区で2位というのは健闘した方なのである。「維新」は国会で自民党と協力したり(反発したり)、「反自民票の受け皿」には向かない。関西はともかく、東京では共産党の方が地力があるということだろう。逆に「一騎打ち」になったところを見る。

 八王子市萩生田光一元政調会長の地元である。裏金問題で役職停止1年になったものの、それは党中央のことで地方組織は別だと言い張って自民党都連会長を続投している。補選では自民党は市議の馬場貴大氏を擁立したが、10万票弱で落選。当選したのは諸派の滝田泰彦氏(14万4千票)と4万票以上の差が付いた。滝田氏は2017年に都民ファーストの会から当選して1期都議を務めた。3年前に落選して、「新時代の八王子」から出馬したが実質無所属だという。立民、共産は現職がいるから候補を立てず、結果的に「非自民票」の受け皿となったわけである。この間市長選にも出たということで、知名度もあったのだろう。
(八王子の都議補選結果)
 もう一つ、自分の地元の足立区でも立憲民主党の銀川ゆい子(141,326票)が自民党の榎本ふみ子(140,564票)をわずか762票差で振り切って当選した。僕はもう少し差が付くかと思っていたのだが、やはり足立区は自民党、公明党の基礎票が強い。それでも立憲民主党が勝ったのは、区議選で知名度があった候補だったこともあるが、要するに「反自民票が立憲民主党に集まった」ということだろう。なお、多摩地区の府中市も自民党が当選したが、他に無所属候補が2人立っていて、合計すれば自民候補を上回る。国政野党が候補を立てなかった理由は不明。

 東京の政治風土が全国と同じとは言えないだろう。しかし、今回の選挙結果を見ると、有権者の「反自民党感情」は強いように思う。だから仮に「維新から共産まで」の候補者調整が行われた場合、自民党(と公明党)は政権を失うのではないか。しかし、そんな選挙協力は不可能である。もしあり得るとしても、「立憲民主党と国民民主党」、「立憲民主党と共産党」のブリッジ共闘とも言えない、「勝手に選挙区調整」ぐらいだろう。だけど、その場合候補が立憲民主党の場合のみしか機能しない。ということで、小選挙区で「乱立」するから、自民党は結構当選する。という衆院選結果を都議補選は予告しているのではないか。
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「石丸伸二ブーム」をどう考えるかー2024都知事選②

2024年07月09日 22時08分59秒 |  〃  (選挙)
 2024年都知事選では、石丸伸二氏(前安芸高田市長)が166万票近くを獲得して2位となった。それは何故で、今後の日本政治にどのような意味を持つのだろうか。第1回目で「蓮舫大敗」が今回の最大問題だと書いたが、それは来たるべき衆院選への影響が大きいと考えるからだ。しかし、今後の歴史の推移によっては「石丸2位」こそが最大の問題だったとなるかもしれない。石丸伸二氏は「日本政治のゲームチェンジャー」なのだろうか、それとも「空疎なデマゴーグ(煽動政治家)」なのだろうか。いろいろと考えて、「結論的には今のところなんとも言えない」が結論になる。考える材料が少なすぎるのである。
(石丸伸二氏)
 今回「石丸伸二」とフルネームで書くようにしてきたが、それは都知事選には「石丸幸人(ゆきと)」氏も立候補していたからだ。何やら間違えて投票したという声もあるらしい。結果は9万6千票ほどを獲得して、第8位だった。「石丸幸人党」である。この人は弁護士兼医師というスゴイ人。(関東圏では)過払い金のCMで知られた「アディーレ法律事務所」の創設者である。お騒がせ問題も多い事務所らしいが、選挙公報には「伝説の弁護士」と大きく出ている。子どもが出来たのを機に保育士の資格も取ったというから、資格だけなら都知事に最適かもしれない。まあ単なる資格マニアかもしれないが。
(石丸幸人氏)
 教員として多くの生徒を教えたが、「石丸」姓は一人もいなかった。幸人氏は北海道出身で、石丸伸二氏(以下は単に「石丸氏」と書きたい)は広島県の安芸高田市出身である。「安芸」(あき)は旧国名で、「高田」は濁らずに「たかた」と読む。広島県北部にあって、戦国大名毛利氏の本拠地として知られる。毛利の居城、郡山城跡は、国史跡に指定され日本百名城に選ばれている。人口は2万4千ほど。2020年4月に当選したばかりの児玉市長が河井元法相事件に関わって同年7月に辞職した。後継市長が無投票になりそうだというので、三菱UFJ銀行に勤務していた石丸氏が立候補して当選したわけである。
(安芸高田市の場所)
 そこら辺の経過はかなり知られてきたと思うが、2020年8月の当選だから本来ならまだ1期目の途中である。しかし、石丸氏は任期満了を待たずに辞職し、都知事選に出た。後継の市長選は都知事選と同日に行われ、反石丸派の藤本悦史氏が当選した。つまり、安芸高田市長として多くの業績を挙げ、地方自治のスターとなって都知事選にチャレンジしたわけではない。はっきり言えば政治家としては「失敗した市長」と言うべきだろう。地元に何も残せなかったというのに近い。もっとも「知名度を高める」というのが目的とすれば、ネットを駆使して反対派議員を「さらし」、全国的に知られた。議員から訴えられ敗訴しているぐらいである。
(石丸氏が訴訟で敗訴)
 石丸氏の街頭演説は大変な盛り上がりだったようである。今回は誰の演説も聞いてないが、猛暑でとてもそんな気が起きない。それにホームページを見ても、載ってないことが多い。(「つばさの党」問題以後の特徴である。)「X」(旧ツイッター)を丹念に追ってれば判るのかもしれないが、そこまでする気もなかった。しかし、テレビで見たり画像を検索すると、驚くべき人だかりだ。今回の有力候補の中で一番知らないから、聞いてみたいのか。短く断言するような演説で、どんどん画像を撮って、知り合いに送ってくれと言う。一度評判になれば、立ち止まって聞きたくなるし、勢いが付くとブームになる。
(石丸氏の街頭演説)
 政策的には何も言ってないに等しい。選挙公報では「政治再建」「都市開発」「産業創出」と大きく3つを訴えているが、具体策は特にないように思う。まあ、それは他の候補も似たようなものだが。「政治屋一掃」というような主張も聞いたが、誰が「政治屋」なのか定義は言わないから、既成政党全部を否定しているように取る人もいる。だけど、都議会には何の足場もないんだから、まかり間違って当選したらどうするんだろう。政策論争も大事だが、本当に石丸氏が訴えるべきは「都議会対策」だったはず。1年間は都議会多数派と妥協するしかないが、来年の都議選では新党を作って多数派を目指すとか。

 完全無所属で出馬した石丸氏はもっとも徹底した反小池を訴えていた。都庁舎の「プロジェクション・マッピング」は何の効果も無い愚策で直ちに中止。関東大震災時の朝鮮人虐殺事件の追悼文は送ると明言していた。(だから少なくとも「極右」ではない。)小池都知事が街頭にもテレビにも(ほぼ)出ず、政策論が盛り上がらなかった中で、石丸氏のはっきりした物言いが受けた面はある。蓮舫陣営は「昔の名前で出ています」的な応援弁士が多い。「民主党政権」なんて十何年も前のことで、若い人には記憶自体がないだろう。石丸氏は「小池と蓮舫の間」で、共産党が付いている蓮舫が忌避されたとは決めつけられない。

 今回の「石丸ブーム」は関西の「維新」や、数年前の「れいわ新選組」に近いかも知れない。国政は議院内閣制だし、地方政治は首長と議会の「二元代表制」である。政治は一人ではできない。「同志」が必要である。一人ではすべての政策を作れないから、すぐれた「ブレーン」も大切。今後石丸氏が再び選挙に出るなら、「誰と組むか」が大きな問題。その時にこの人の立ち位置がはっきり判るだろう。かつて1993年に日本新党がブームとなり、細川護熙氏が首相となった。今の政治情勢では自公も、他野党も多数を取れず、「石丸新党」がキャスティングボートを握り、一気に石丸首相が誕生するなんて展開も全くの夢想じゃないだろう。
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