自民党に批判が集まる時には、大体「世襲が問題だ」という人が出て来る。僕も自民党の有力政治家が「世襲」ばかりになったような現状は大いに問題だと考えている。今までもその事を何回か書いてきた。例えば、『「政治家世襲」は現代の「蔭位制」ー世襲政治家問題①』を2023年6月に書いた。(「蔭位」(おんい)とは親の位階が高い子どもは自動的に幼い時から高い位階を得られる制度。藤原道長が出世出来たのも、源頼朝が12歳で伊豆に流された時にすでに位階を得ていたのも、そのお蔭である。)
(中曽根康隆氏)
中曽根康隆(1982~)という政治家がいる。今回「政治刷新本部」で派閥解消を声高に主張して注目された。しかし、名前を聞けば大方の日本国民ならピンと来るだろう。この人は派閥なんか無くても当選出来るのである。そう、中曽根康弘元首相の孫、中曽根弘文元外相の子である。2017年衆院選で比例単独で当選し、2021年には群馬1区の公認を現職の尾身朝子から奪って獲得し大差で当選した。しかし、この人は「世襲」なんだろうか。親の中曽根弘文は参議院議員である。祖父の中曽根康弘は小選挙区では出たことがなく、最後は比例単独1位で96年、2000年に当選した。従って「親の選挙区を引き継ぐ」という「狭義の世襲」ではない。
そもそも「世襲そのものを禁止することは出来ない」。だから国会議員の世襲を禁止せよなどと大声で主張する人には要注意である。なんで世襲を禁止出来ないかと言えば、憲法の規定である。「第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。」
差別禁止規定と言えば、普通はマイノリティ保護のためだと思いやすい。しかし、「法の下の平等」は政治家の家族にも適用される。政治家の子どもは自らの意思で政治家の親の家庭に生まれたのではない。「性別」や「身分」によって立候補資格を奪うことが出来ないように、政治家の子どもが立候補したいなら誰も止めることは出来ない。政党が公認しないとしても、無所属で出る自由がある。有力政治家の子どもなら、無所属でも当選するだろう。国会議員には居住地条件はない。日本国籍があれば、日本のどこでも立候補出来る。政治家の子どもが好きなところで立候補するのは、国民の基本的権利で誰にも奪えないのである。
(派閥解消を主張する小泉進次郎議員)
しかしと、何となく納得できない思いを持つ人は多いと思う。中曽根康隆議員とコロンビア大学大学院で同期だったというのが、小泉進次郎(1981~)議員である。この人は小泉純一郎元首相が議員引退を2008年に表明し、後継の指名を受けた。そして、2009年の衆院選で初当選したのは28歳の時だった。そして、2012、14、17年と4回当選を重ねて、2019年に38歳で環境大臣に就任した。スタートが早いから当選回数も多くなり、30代で大臣になれた。曾祖父以来の強固な地盤に恵まれ、落選の心配などしたことがないだろう。だからこそ、思い切った主張を展開出来る。
それにしても、総理大臣を長く務めた親の後援会組織をそのまま受け継げるというのは、どうにも不公平だ。どこで立候補してもよいわけだが、20代でさっさと当選出来るなんてアリなのか。僕がそう思ってしまうのは、今では20代が若すぎる感じがするという理由もある。平均年齢も上がり、就職や結婚の事情も大きく変わった。これが横須賀市議選に出るというのなら、誰も文句を言わないだろう。若い時は地方自治を勉強し、それから国会議員になって国家全体のことを考える。その方が良いと思うんだけど。政治家の親も「かわいい子には旅をさせよ」の心で子どもに接するべきではないか。
そこで考えたのだが、現在の立候補年齢(被選挙権)は、衆議院議員が25歳、参議院議員が30歳と分かれている。選挙権年齢が引き下げられたので、立候補可能年齢も下げるべきだという議論がある。僕もそう思っていたのだが、よくよく再考してみれば、20歳で国会議員になっても年長者の使い走りだろう。だから、思い切って「国会議員に立候補可能な年齢は30歳」に引き上げてはどうだろう。その代わり「地方議員に立候補可能な年齢は18歳」と思い切って下げるのである。高校を卒業したら立候補可能にすれば、大学は夜間や通信に通いながら地方議員をやる人が出て来るかもしれない。
そして、「国会議員は30歳以上」だけど、例えば「地方議員を5年以上務めた」場合などは、特例として国会議員に立候補可能とする。特例の条件は他にも考えられる。国際人権団体で5年以上働いた、福祉や教育の現場で5年以上働いたなどなど。問題は世襲そのものより、大した人生経験もない人が親の名前で当選してしまうことの方だ。立候補そのものには資格審査は出来ない。だけど、出来る限り現場感覚を持つ人が国政に増えるように、政治家の子が福祉現場などで働くと早めに立候補可能という制度はどうかなと考えて見たわけである。
(中曽根康隆氏)
中曽根康隆(1982~)という政治家がいる。今回「政治刷新本部」で派閥解消を声高に主張して注目された。しかし、名前を聞けば大方の日本国民ならピンと来るだろう。この人は派閥なんか無くても当選出来るのである。そう、中曽根康弘元首相の孫、中曽根弘文元外相の子である。2017年衆院選で比例単独で当選し、2021年には群馬1区の公認を現職の尾身朝子から奪って獲得し大差で当選した。しかし、この人は「世襲」なんだろうか。親の中曽根弘文は参議院議員である。祖父の中曽根康弘は小選挙区では出たことがなく、最後は比例単独1位で96年、2000年に当選した。従って「親の選挙区を引き継ぐ」という「狭義の世襲」ではない。
そもそも「世襲そのものを禁止することは出来ない」。だから国会議員の世襲を禁止せよなどと大声で主張する人には要注意である。なんで世襲を禁止出来ないかと言えば、憲法の規定である。「第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。」
差別禁止規定と言えば、普通はマイノリティ保護のためだと思いやすい。しかし、「法の下の平等」は政治家の家族にも適用される。政治家の子どもは自らの意思で政治家の親の家庭に生まれたのではない。「性別」や「身分」によって立候補資格を奪うことが出来ないように、政治家の子どもが立候補したいなら誰も止めることは出来ない。政党が公認しないとしても、無所属で出る自由がある。有力政治家の子どもなら、無所属でも当選するだろう。国会議員には居住地条件はない。日本国籍があれば、日本のどこでも立候補出来る。政治家の子どもが好きなところで立候補するのは、国民の基本的権利で誰にも奪えないのである。
(派閥解消を主張する小泉進次郎議員)
しかしと、何となく納得できない思いを持つ人は多いと思う。中曽根康隆議員とコロンビア大学大学院で同期だったというのが、小泉進次郎(1981~)議員である。この人は小泉純一郎元首相が議員引退を2008年に表明し、後継の指名を受けた。そして、2009年の衆院選で初当選したのは28歳の時だった。そして、2012、14、17年と4回当選を重ねて、2019年に38歳で環境大臣に就任した。スタートが早いから当選回数も多くなり、30代で大臣になれた。曾祖父以来の強固な地盤に恵まれ、落選の心配などしたことがないだろう。だからこそ、思い切った主張を展開出来る。
それにしても、総理大臣を長く務めた親の後援会組織をそのまま受け継げるというのは、どうにも不公平だ。どこで立候補してもよいわけだが、20代でさっさと当選出来るなんてアリなのか。僕がそう思ってしまうのは、今では20代が若すぎる感じがするという理由もある。平均年齢も上がり、就職や結婚の事情も大きく変わった。これが横須賀市議選に出るというのなら、誰も文句を言わないだろう。若い時は地方自治を勉強し、それから国会議員になって国家全体のことを考える。その方が良いと思うんだけど。政治家の親も「かわいい子には旅をさせよ」の心で子どもに接するべきではないか。
そこで考えたのだが、現在の立候補年齢(被選挙権)は、衆議院議員が25歳、参議院議員が30歳と分かれている。選挙権年齢が引き下げられたので、立候補可能年齢も下げるべきだという議論がある。僕もそう思っていたのだが、よくよく再考してみれば、20歳で国会議員になっても年長者の使い走りだろう。だから、思い切って「国会議員に立候補可能な年齢は30歳」に引き上げてはどうだろう。その代わり「地方議員に立候補可能な年齢は18歳」と思い切って下げるのである。高校を卒業したら立候補可能にすれば、大学は夜間や通信に通いながら地方議員をやる人が出て来るかもしれない。
そして、「国会議員は30歳以上」だけど、例えば「地方議員を5年以上務めた」場合などは、特例として国会議員に立候補可能とする。特例の条件は他にも考えられる。国際人権団体で5年以上働いた、福祉や教育の現場で5年以上働いたなどなど。問題は世襲そのものより、大した人生経験もない人が親の名前で当選してしまうことの方だ。立候補そのものには資格審査は出来ない。だけど、出来る限り現場感覚を持つ人が国政に増えるように、政治家の子が福祉現場などで働くと早めに立候補可能という制度はどうかなと考えて見たわけである。