非常に重大な証言だと思うから、ここで紹介しておきたい。21世紀初頭に東京都教育委員会(以下、都教委)を中心に荒れ狂った「性教育弾圧」の中心として運動を行っていたのは、旧統一協会系の人々だったというのである。朝日新聞が毎週火曜日に「性教育を問う」というシリーズ記事を掲載していて、1月16日に「学校の指導 萎縮生んだ批判の波 「七生養護学校事件」が残した禍根」という大きな記事を掲載した。そして、1月23日掲載の「停滞招いた反対運動 背景は 実態は 中心で活動した元中学教諭に聞く」という記事で、反対運動の中心にいた野牧雅子氏にインタビューしているのである。
(七生養護学校事件)
野牧雅子氏は少なくとも当時はなかなか知られた人物で、「のまりん」と名乗ってホームページで性教育反対運動を展開していた。インターネット勃興時代で、結構大きな影響力があったのではないか。僕も時々「敵情視察」的に読んでいた。今はもうないようで、僕も大分前にお気に入りから削除してしまった。いま思うと、現職教員が実名でやるには色が付きすぎていたかもしれない。確か神奈川県の中学教員で音楽担当だと思う。新聞には肖像写真も載っているが、まあ紹介することもないだろう。
その記事では2002年11月(「七生養護学校事件」の前年)から「過激な性教育」反対の動きを始めていて、東京都港区の中学校にファクスや手紙(中には爆破するという脅迫もあった)が送られていた。野牧氏は「(私が学校に)授業を見せるように求めたのは事実だが、脅迫ファクスは送っていない。当時、情報交換する人が約100人いた。」という。その100人はどんな人だったのかという質問には「宗教関係者や保守系の団体の人もいた。その中で一番頑張ってくれたのは、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)のお母さんたちだったと認識している。私は信者ではないが、法律婚をしている男女の家庭を(性教育によってもたらされると考える「性の乱れ」から)守るという方向性は同じだった」という。
数々の動きの中で最大の事件となった「七生(ななお)養護学校」(現・特別支援学校)事件については、ここでは詳細を省略する。(Wikipedia等で調べられる。)都教委により大量の処分がなされ、当時の校長が降格処分になるという信じられないことが起きた。「国旗国歌問題」の「10・23通達」(2003年)も同じ年。翌年には新設される白鴎高校附属中の社会科教科書(歴史的分野)に扶桑社を採択した。都教委「暴虐」の絶頂期で、正直あまり思い出したくない。多くの人が今も癒えない傷を負っているだろう。七生養護学校事件は裁判となり、都教委と中心的に騒ぎ立てた3人の都議に賠償を認める判決が最高裁で確定している。
(七生養護学校事件に関する本)
ところで、ではなぜ性教育が問題なのだろうか。そのような新聞記者の問いに対して、野牧氏は「性教育をすると性に興味がわく。子どもの年齢にもよるが、性からは遠ざけなければならない。」と言う。さらに「誤った情報を信じたり望まない妊娠をしたりする実態があるのでは。」と問われると、「性教育では、性の自己決定権が強調されるが、誰とでも性交をするようになると、性被害が起きると思う。結婚していない男女関係の乱れを認めることになり、家庭崩壊につながる。」と答えている。
正直僕には何を言っているのか、全く判らない。よく右の人が左の人に対して「頭の中がお花畑」と批判することがあるが、こういう例を見るとむしろ右の方がお花畑に住んでいるのではないか。「性から遠ざけるために、性教育をしない」のが有効な対策だというのである。しかし、中学校を出れば待っているのは「JKビジネス」である。「性の商品化」の世の中に出ていく前に、妊娠も避妊も教えない方が良いと言うわけである。日本の現実の中から出て来た発想じゃないとしか言えない。
それはともかく、このような「性教育弾圧」を中央で支えたのが、「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」を立ち上げ座長を務めた安倍晋三衆議院議員だった。そのような安倍氏が政権を担うとどんなことになるのかと当時危惧したが、今のようになったわけである。(ついでに言っておくと「過激な性教育」というのは、義務教育最後の中学生に対して、妊娠や避妊の仕組みを教えるという程度のことである。これは欧米諸国に比べて「穏健すぎる」ものだろう。)
性教育攻撃、統一協会、安倍政権というものが分かちがたく結びついていたことを改めて教えてくれる「野牧証言」である。なお、安倍派(当時は森派)はその頃から「裏金」作りをしていたとされている。
(七生養護学校事件)
野牧雅子氏は少なくとも当時はなかなか知られた人物で、「のまりん」と名乗ってホームページで性教育反対運動を展開していた。インターネット勃興時代で、結構大きな影響力があったのではないか。僕も時々「敵情視察」的に読んでいた。今はもうないようで、僕も大分前にお気に入りから削除してしまった。いま思うと、現職教員が実名でやるには色が付きすぎていたかもしれない。確か神奈川県の中学教員で音楽担当だと思う。新聞には肖像写真も載っているが、まあ紹介することもないだろう。
その記事では2002年11月(「七生養護学校事件」の前年)から「過激な性教育」反対の動きを始めていて、東京都港区の中学校にファクスや手紙(中には爆破するという脅迫もあった)が送られていた。野牧氏は「(私が学校に)授業を見せるように求めたのは事実だが、脅迫ファクスは送っていない。当時、情報交換する人が約100人いた。」という。その100人はどんな人だったのかという質問には「宗教関係者や保守系の団体の人もいた。その中で一番頑張ってくれたのは、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)のお母さんたちだったと認識している。私は信者ではないが、法律婚をしている男女の家庭を(性教育によってもたらされると考える「性の乱れ」から)守るという方向性は同じだった」という。
数々の動きの中で最大の事件となった「七生(ななお)養護学校」(現・特別支援学校)事件については、ここでは詳細を省略する。(Wikipedia等で調べられる。)都教委により大量の処分がなされ、当時の校長が降格処分になるという信じられないことが起きた。「国旗国歌問題」の「10・23通達」(2003年)も同じ年。翌年には新設される白鴎高校附属中の社会科教科書(歴史的分野)に扶桑社を採択した。都教委「暴虐」の絶頂期で、正直あまり思い出したくない。多くの人が今も癒えない傷を負っているだろう。七生養護学校事件は裁判となり、都教委と中心的に騒ぎ立てた3人の都議に賠償を認める判決が最高裁で確定している。
(七生養護学校事件に関する本)
ところで、ではなぜ性教育が問題なのだろうか。そのような新聞記者の問いに対して、野牧氏は「性教育をすると性に興味がわく。子どもの年齢にもよるが、性からは遠ざけなければならない。」と言う。さらに「誤った情報を信じたり望まない妊娠をしたりする実態があるのでは。」と問われると、「性教育では、性の自己決定権が強調されるが、誰とでも性交をするようになると、性被害が起きると思う。結婚していない男女関係の乱れを認めることになり、家庭崩壊につながる。」と答えている。
正直僕には何を言っているのか、全く判らない。よく右の人が左の人に対して「頭の中がお花畑」と批判することがあるが、こういう例を見るとむしろ右の方がお花畑に住んでいるのではないか。「性から遠ざけるために、性教育をしない」のが有効な対策だというのである。しかし、中学校を出れば待っているのは「JKビジネス」である。「性の商品化」の世の中に出ていく前に、妊娠も避妊も教えない方が良いと言うわけである。日本の現実の中から出て来た発想じゃないとしか言えない。
それはともかく、このような「性教育弾圧」を中央で支えたのが、「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」を立ち上げ座長を務めた安倍晋三衆議院議員だった。そのような安倍氏が政権を担うとどんなことになるのかと当時危惧したが、今のようになったわけである。(ついでに言っておくと「過激な性教育」というのは、義務教育最後の中学生に対して、妊娠や避妊の仕組みを教えるという程度のことである。これは欧米諸国に比べて「穏健すぎる」ものだろう。)
性教育攻撃、統一協会、安倍政権というものが分かちがたく結びついていたことを改めて教えてくれる「野牧証言」である。なお、安倍派(当時は森派)はその頃から「裏金」作りをしていたとされている。