尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

一柳慧、津原泰水、清水信次他ー2022年10月の訃報②

2022年11月08日 23時06分00秒 | 追悼
 2022年10月の訃報、続き。作曲家の一柳慧(いちやなぎ・とし)が10月7日に死去、89歳。1954年、19歳で渡米してジュリアード音楽院で学ぶとともに、作曲家ジョン・ケージに大きな影響を受け、前衛芸術運動に参加した。1956年にオノ・ヨーコと結婚したことでも知られる(62年離婚)。61年に帰国して様々な芸術分野のアーティストと親交を深め、ジャンルを超えた活動を続けた。数多くの交響曲、協奏曲、オペラ、合唱曲などを作曲したが、現代音楽には詳しくないから聞いてはいない。2008年文化功労者、2018年文化勲章。僕は吉田喜重監督の傑作映画『エロス+虐殺』で名前を覚えた。朝日新聞の追悼文で片山杜秀がそのことに触れていて、さすが。素晴らしく美しい旋律に心が震えた。昔渋谷ジァン・ジァンで行われたエリック・サティの「ヴェクサシオン」演奏会で、ピアノを弾いていたのを聞いている。
(一柳慧)(ジョン・ケージと)
 作家の津原泰水(つはら・やすみ)が10月2日に死去、58歳。かねて闘病中だったというが、とても残念。ミステリー、SF、ファンタジー的な傾向の作家だが、広い意味で青春小説と言える作品が多い。『ヒッキーヒッキーシェイク』を版元の幻冬舎が文庫せず、ハヤカワ文庫から出た時に読んで、実に面白かった。そして幾つも読んで「津原泰水を発見せよ」と題して5回記事を書いた。「『ルピナス探偵団』の誘惑」「『ブラバン!』、ビターな青春小説」「凄いな『ヒッキーヒッキーシェイク』」「奇書『瑠璃玉の耳輪』」「津原泰水を発見せよファイナル」である。読み始めたら止められなくなった。『歌うエスカルゴ』のドラマ化希望。
(津原泰水)
 スーパーマーケット「ライフ」創業者、日本スーパーマーケット協会の創設者、清水信次が10月25日に死去、96歳。大阪で両親が経営していた清水商店を母体に、パイナップルやバナナの輸入から店を大きくし、61年に大阪府豊中市に「ライフ」1号店を開店。そこから一代で全国に270店舗を有する巨大スーパーに育てた。中内功(ダイエー)、鈴木敏文(イトーヨーカドー)、岡田卓也(ジャスコ)とともに、戦後流通業界の代表者である。1986年に中曽根内閣の売上税構想に反対したり、テレビの討論番組に出るなどして一般的知名度も高かった。参院選に2回出て落選。『闘魂人生必勝の道』というアントニオ猪木みたいな本も出している。
(清水信次)
 分子生物学者の古市泰宏(ふるいち・やすひろ)が10月8日死去、81歳。1975年、米留学中にmRNAに「キャップ」という構造を発見した。mRNAワクチンで使われていて、ノーベル生理学・医学賞、化学賞候補と言われた。新潟薬科大学客員教授。
(古市泰宏)
 アジア文化史研究者の前田耕作が10月11日死去、89歳。64年に第1次名大アフガニスタン学術調査団に参加、それ以来アフガニスタンのバーミヤン遺跡などを研究した。バーミヤン遺跡の保存、復元のために国際的に活動した。文化人類学者、考古学者の小山修三が10月26日に死去、83歳。オーストラリアの先住民研究を専門としながら、考古学者として三内丸山遺跡の研究も行った。民俗学博物館を経て、大阪府の吹田市立博物館長を務めた。
(前田耕作)(小山修三)
 撮影監督の金宇満司(かなう・みつじ)が10月27日死去、89歳。岩波映画撮影所に入社して、多くの作品で活躍した。熊井啓監督の『サンダカン八番娼館 望郷』の撮影をした人だが、『黒部の太陽』『栄光への5000キロ』の後、71年に石原プロに移籍した。テレビで「大都会」「西部警察」などを担当し、2005年に定年で辞めるまで常務として石原プロを支えたことで知られる。石原裕次郎の看病をした日々の回想記も残している。
(金宇満司)
 俳優、声優、ラジオパーソナリティの近石真介が10月5日死去、91歳。「サザエさん」の初代マスオ、洋画のジェームズ・キャグニー、ジェリー・ルイスなどの声で知られた。ラジオ番組「こんちワ近石真介です」のコーナーから始まった「はがきでこんにちは」は1971年から2020年まで続いた。テレビ「はじめてのおつかい」のナレーションでも知られた。
(近石真介)
 1951年のボストンマラソンで優勝した田中茂樹が10月4日死去、91歳。広島県出身で「原爆ボーイ」の活躍として注目された。柔道界最後の10段だった大沢慶己(よしみ)が10月21日死去、90歳。67キロの小兵で「昭和の牛若丸」と呼ばれた。
(田中茂樹)(大沢慶己)
 アメリカの歌手ジェリー・リー・ルイスが10月28日死去、87歳。エルビス・プレスリーやチャック・ベリーらとロックンロールの黄金時代を築いた。「火の玉ロック」などのヒット曲がある。88年「ロックの殿堂」入り。
(ジェリー・リー・ルイス)
 フランスの抽象画家ピエール・スーラージュが10月25日死去、102歳。墨だけで表現した作品で知られる。世界各地で展覧会が開かれ、特に存命中にルーブル美術館で回顧展が開かれたことで知られる。
(スーラージュ)

上村好男、5日死去、88歳。水俣病互助会長。長女の故・上村智子さんはユージーン・スミスの写真で知られる。
山本豊三、11日死去、82歳。俳優。50年代に松竹の青春映画で活躍。小坂一也、三上真一郎とともに「3代目三羽烏」と言われた。
松永光、11日死去、93歳。政治家。埼玉1区から10回当選し、文部大臣、通産大臣、大蔵大臣などを歴任した。
万波誠、14日死去、81歳。医師。宇和島徳洲会病院で「病気腎移植」を実施したことで知られる。
柴英三郎、18日死去、95歳。脚本家。内田吐夢監督『大菩薩峠』でデビュー。テレビの「三匹の侍」「傷だらけの天使」などを手掛けた。
三戸公(みと・ただし)、18日死去、100歳。経営学者。『ドラッカー』『公と私』などで知られた。立教大学名誉教授。
桃山邑(ももやま・ゆう)、18日死去、64歳。水族館劇場座長。
永田竹丸、19日死去、88歳。漫画家。トキワ荘に出入りし、漫画家として活躍した。第1回講談社児童まんが賞受賞。
矢吹申彦(やぶき・のぶひこ)、28日死去、78歳。イラストレーター。「ニュー・ミュージック・マガジン」「スイング・ジャーナル」などの表紙を手掛けた。また多くのレコードジャケットを手掛けている。東京散歩の本や絵本なども沢山書いている。

エデル・ジョフレ、2日死去、86歳。ブラジルのボクシング選手。バンタム級王者としてファイティング原田と闘い、判定で敗れた。再選でも敗れた後、フェザー級に階級を上げてチャンピオンになった。通算78戦72勝2敗4分けで、2敗が原田戦。
ロレッタ・リン、4日死去、90歳。アメリカのカントリーミュージックの歌手。社会的なテーマも歌ったため、ラジオ局から放送禁止にされた曲もあった。自伝が『歌え!ロレッタ愛のために』として映画化され、シシー・シペイシクがアカデミー賞主演女優賞。
ブリュノ・ラトゥール、9日死去、75歳。フランスの哲学者、人類学者。アクター・ネットワーク理論で知られた。2021年京都賞受賞。
アンジェラ・ラズベリー、11日死去、96歳。アメリカの俳優。英国で生まれたが、渡米して『ガス燈』などで活躍した。テレビドラマ「ジェシカおばさんの事件簿」で知られる。また舞台ではミュージカル「メイム」「スウィーニー・トッド」などでトニー賞を4回受賞。
ロビー・コルトレーン、14日死去、72歳。イギリスの俳優。「ハリー・ポッター」シリーズのハグリット役で知られた。
ハンナ・ホースラル、28日死去、93歳。「アンネの日記」で親友のハンネリとして登場した。戦後はイスラエルに移住した。
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