尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「ガーシー」議員問題、どう考えるべきかー政党助成金削減も必要

2023年01月27日 22時48分34秒 | 政治
 2022年7月の参議院選挙で、NHK党からガーシー東谷義和)という人が出馬して当選した。個人得票で約29万票を獲得し、NHK党全体で約125万票となって1議席を獲得したわけである。もともと出馬時点で、UAE(アラブ首長国連邦)のドバイに滞在していて、選挙運動にために一度も帰国しなかった。そして、その後も2回の臨時国会に登院せず、ずっと海外にいる。1月25日に通常国会が始まっても、まだ登院していない。そこで他党からは「懲罰」という声が上がってきた。この問題をどう考えるべきだろうか。
(倒されたままの「氏名標」)
 この「ガーシー」という人を僕は全然知らない。職業は「ユーチューバー」となっていて、「暴露系ユーチューバー」なんだそうだ。芸能人や実業家のスキャンダルを「暴露」しているというんだけど、関心がないから見たこともない。政治家ならともかく芸能人の暴露なんて、週刊誌ならともかく国会議員の仕事じゃないだろう。もちろん何をしている人でも立候補出来るし、当選したら国会議員になれる。そして、この人が国会に来ても来なくても、日本の政治にはほとんど影響はしない。この人が昨年の臨時国会に出席していたら何かが変わったのか。いや、何の変わりもないわけである。

 だけど、国会法には以下の規定がある。「第百二十四条 議員が正当な理由がなくて召集日から七日以内に召集に応じないため、又は正当な理由がなくて会議又は委員会に欠席したため、若しくは請暇の期限を過ぎたため、議長が、特に招状を発し、その招状を受け取つた日から七日以内に、なお、故なく出席しない者は、議長が、これを懲罰委員会に付する。」

 国会議員が国会に出席するのは当然のことで、今回のような事態は想定されていなかっただろう。もともと国会内での「院内の秩序を乱した」場合に懲罰が想定されている。出て来ない議員にはまず一度「招状」というものが必要なのである。これに対して立花党首は「3月には来る、それまで来ない」と言ってる人に「招状」を出すなんてナンセンスといった批判をしているが、法律に規定されているんだから当然の措置だろう。国会はガーシー議員の外国滞在を「正当な理由」がないと認定している。本人は「不当逮捕の恐れ」などと弁明しているようだけど、これがまともな理由にならないのは明らかだ。
(ガーシー議員の主張)
 ところで、ニュース番組で元衆議院議員の杉村太蔵氏がこんなことを言っていた。懲罰は当然だけど、懲罰にはランクがあって重い順に「除名」「登院停止」「公開議場における陳謝」「公開議場における戒告」である。除名は最終手段だから、それに次ぐ懲罰といえば「登院停止」だけど、出て来ない人を「登院停止」にして何になるのか。なるほど、それはそうだ。

 一番最近の懲罰事例を調べてみると、2013年のアントニオ猪木参議院議員だった。許可を受けることなく外国(北朝鮮)を訪問したということで、「30日の登院停止」になっている。現行憲法になってから、除名は2回しかなく、どちらも占領期である。懲罰は圧倒的に戦後混乱期の議場内の発言、行動に対するものが多く、共産党議員に対するものが多い。その意味でも、一般論としては「多数党による少数党圧迫」になる場合もあるので注意が必要だ。与党が「問題法案」を強行採決しようとして、野党が体をはって抵抗して反対する。そういう行動が懲罰に値するとされることが多いのである。

 しかし、今回のガーシー議員のケースは全く違っている。そこで杉村氏が指摘したことは、多くの人が納得出来ないでいるのは、ガーシー議員に多額の税金が出ていることではないかというのである。なるほど、国会議員なんだから「歳費」そのものは出るだろう。しかし、国会活動をしてなくて、ドバイにいるだけなんだから、文書通信交通滞在費(月100万円)や立法事務費(月65万円)がいるだろうか。そういう費用の支払いを止めるという「懲罰」を新設するべきではないのかというのだ。言われてみれば全くその通り。本人が外国にいて国会に来ないんだったら、公設秘書だって不要なんじゃないか。

 そして、NHK党そのものも「政党助成金」を受け取っている。今回、話題になりそうな候補としてガーシー候補を立てて、目論見がうまく当たって2%以上の得票を達成した。しかし、議員活動は一人しかしてないんだから、ならば政党助成金もガーシー議員欠席中の分を返却するべきではないか。国会に出る、出ないというよりも、そっちこそ大問題。選挙の時に有名人を立て政党助成金資格を得るなんて、それこそが最大の問題なのではないか。

 ところで、仮にガーシー氏が「除名」されるか、本人が失職(または)辞任した場合はどうなるか。2位の「山本太郎」候補が繰り上がるのである。明らかに「れいわ新選組」の山本太郎党首と混同させて得票を狙おうというやり方である。それもおかしな話だ。
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