尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

意外!事前予測通りの結果だった参院選ー2022参院選①

2022年07月12日 22時44分38秒 |  〃  (選挙)
 2022年7月10日に行われた第26回参議院通常選挙は、選挙戦最終盤に安倍晋三元首相狙撃事件という驚くべき事件が起こった。結果的に自民党が圧勝し、単独過半数を獲得する大勝利となった。そこで、こう思っている人が多いのではないか。「死せる安倍元首相への追悼票が自民党に集中し、安倍氏の悲願だった憲法改正を可能とする議席を改憲派政党が獲得した。」このような言説を外国メディアも報じているし、何となく信じている人もいるだろう。それは本当なのだろうか。
(自民党が勝利した結果)
 どういうことが起これば、その説を証明できるだろうか。僕が思うには、 ①棄権するはずだった有権者が投票に参加して、投票率が上がる。②その有権者が自民党に投票することによって、比例区での自民党当選者が事前の情勢報道より明らかに増える。という二つのことが起きるのではないかと思う。なお、各地の選挙区はもともと自民党候補の優勢が伝えられていたため、安倍氏の事件が選挙結果に影響したかどうかの判定は難しいと思われる。
(投票率の推移)
 そのうち①の投票率に関しては、確かに増えている。今回は52.05%で、前回2019年の48.80%より3.25ポイント増えている。しかし、前回が特に低かったので、上記のグラフを見れば判るように、ここしばらくの「漸減」に戻っただけのようにも見える。細かく調べてみると、やはり地方の自民党の強い地区、つまり「結果が見えている」選挙区では5割を割っているところが多い。一方で、与野党激戦が伝えられた1人区、岩手、山形、新潟、長野、山梨などは軒並み55%ほどを記録している。合区された島根県は高いが、今回自民党候補がいなかった鳥取県は低い。このように選挙区事情により投票率もバラバラである。

 事件が起こった奈良県を中心に、近畿地方の投票率はすべて5割を越えている。しかし、近畿各県では比例区の投票先は和歌山を除き、「維新」が2割を上回っている。大阪、兵庫では第1党である。近畿地方の投票率が高かったのは、安倍事件の影響というよりも、「維新」人気が高かったためなのか判定が難しい。今回は都市部の投票率が比較的高かった。東京(56.5%)、神奈川(54.5%)を始め、愛知を中心に東海から、近畿に掛けて高くなっている。僕は東京がここまで高くなるとは思っていなかった。だから、無党派層がやはり選挙は大切だと思って投票率が上がった可能性はあると思っている。
(自民党本部の岸田首相)
 しかし、それは自民党への「同情票」ばかりではなく、非自民層も投票に行き、特に参政党、NHK党などを押し上げたのかもしれない。実際、3年前に議席を獲得した「れいわ新選組」「NHK党」に加えて、今回初参戦の「参政党」の3党だけで、全比例票の10.06パーセントを占めている。その分、「老舗政党」の獲得議席が減ることになる。「維新」が14.80%なので、4党で4分の1ということになる。今回は全部で10党が比例区で議席を獲得した。今までは9党が最多だったので、今回は新記録になる。

 投票率は確かに上がったが、②で挙げた「自民党への同情票の爆発」は起こらなかったと考えられる。それは今回の結果が「事前予測調査」の通りだったことから判明する。2021年10月の衆院選で、朝日新聞の事前予測はほぼ当たっていた。電話、携帯電話、独自調査に加え、インターネットでの調査を加えたということだった。今回も同様に調査を行ったのではないかと思う。 

 その事前調査の2回目の結果は、7月6日に報道されている。以下の通りである。「下限~上限」で示されている。

自民党  合計(56~65) 当選者63   うち比例区(15~19) 当選者18 
公明党  合計(12~15) 当選者13   うち比例区(6~8) 当選者6 
立民党  合計(12~20) 当選者17   うち比例区(5~8) 当選者7 
維新  合計(10~16) 当選者12    うち比例区(6~9) 当選者8 
国民党  合計(2~7) 当選者5    うち比例区(2~4) 当選者3 
共産党  合計(3~8) 当選者4    うち比例区(3~5) 当選者3 
れいわ  合計(1~5) 当選者3    うち比例区(1~4) 当選者2 
社民党  合計(0~1) 当選者1    うち比例区(0~1) 当選者1 
NHK党  合計(0~1) 当選者1    うち比例区(0~1) 当選者1 
諸派  合計(0~3) 当選者1     うち比例区(0~3) 当選者1 

 このように、すべての党が事前予測通りである。比例区でも自民党が爆発的に得票したわけではなかった。事前に予測された調査通りだったということは、自民党勝利の理由は安倍氏の事件ではなかったことを示している。むしろこの間岸田内閣の支持率がずっと堅調だったことが重要ではないか。安倍、菅政権から岸田政権への「擬似的政権交代」が有効だったこと。ウクライナ戦争など「国難」に立ち向かう「戦時下内閣」として政権を支えるムードがあったこと。コロナ禍が3年目を迎えて業界支援のため与党への期待票があったこと。そのようなことの複合として、もともと今回は自民党が好調だった。それがそのまま出たという参院選の結果だったように思われる。各党の盛衰は次回に。
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